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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科21巻1号

1967年01月発行

綜説

接触アレルギー

著者: 宮沢偵二1

所属機関: 1仙台逓信病院皮膚科

ページ範囲:P.9 - P.15

文献概要

 皮膚疾患のうち,アレルギー性疾患といわれているものは数多い。しかし,それらが明らかに抗原抗体反応によつて惹起されるという証明はきわめて不明確である。Pirquetによってアレルギー学説が樹立されてから60年,その考えが皮膚科学に導入されてから久しいにもかかわらず,アレルギー性皮膚疾患の解明が困難であつたのはどこにあつたのであろうか。そのおもな理由は遅延型アレルギーが即時型アレルギーのアナフィラキシーと異なつて,血清からの抗体証明が不可能であり,従来の免疫化学的方法が適用されないところにあつたのではないかと考えられる。遅延型アレルギーとしてはツベルクリンアレルギーをもつて代表される感染アレルギーが最も代表的であるが,接触アレルギーもこれに入り,また臓器移植によつて起こる過敏症もこの範疇に属する。これら3者に共通することは上述したように血清抗体ではなくして細胞性抗体であること,抗原の再浸襲後の反応惹起に一定時間を必要とすることがあげられる。しかし個々の点になるとこれら遅発型アレルギーの各病型の間には多くの差異がみられる。ツベルクリンアレルギーと接触アレルギーの両者における最も根本的な差異は抗原である。ツベルクリンアレルギーの抗原は蛋白か多糖類であるに反し,接触アレルギーでは低分子の化学物質,すなわち単独では抗原となりえないHaptenである。このHaptenであるということが接触アレルギーをアレルギー領域でもきわめて特異的な位置におしあげてきた大きな理由である。Haptenがいかにして感作能を有する完全抗原となりうるのかは接触アレルギーの研究分野において重要な研究テーマである。
 即時型アレルギーであれ,遅発型アレルギーであれ,アレルギー機序は2つの段階──個体が感作されて抗体がつくられる段階およびこの感作された個体に抗原が再浸襲して反応を発生する段階──に分けられる。ヒトのアレルギー性疾患の全貌が動物実験データから明確に解明されえないことは論をまたないところである。たとえばモルモットのアレルギー性接触皮膚炎はヒトにみられるそれとは臨床的にも組織学的にも異なつている。また動物実験において使用された抗原の濃度,あるいは抗原浸襲が表皮接触によつて行なわれたのか,注射によつたのかも,その実験的アレルギー性接触皮膚炎を理解する上に考慮しなければならない重要事項である。しかし抗原の浸襲経路がどうであろうと,2度目の抗原接触によつて皮膚に反応が起きるということはヒトにおいても動物においても共通した事実である。「なぜに,どのようにして反応が惹起されるのか」というこのアレルギーにおける原則的な命題を接触アレルギーに焦点を合わせ,動物実験成績を中心にして述べてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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