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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科21巻10号

1967年09月発行

雑誌目次

図譜・252

レックリングハウゼン神経線維腫症

著者: 平田光夫

ページ範囲:P.940 - P.941

患者 M.T.18歳,男子,職工。
初診 昭和42年3月6日。

図譜・253

悪性黒色腫

著者: 吉田実夫 ,   渡辺通泰 ,   久保泰平

ページ範囲:P.944 - P.945

患者 56歳,女。農業。初診昭和41年2月21日。
現病歴 5年前,右第2趾間に外傷を受け,その後傷が治らず,2回に亘り創面の切除を受けている。

第18回西日本皮膚科連合地方会 シンポジウム 皮膚疾患の地理病理学的検討

皮膚科疾患と自然環境との関係

著者: 野瀬善勝

ページ範囲:P.947 - P.955

I.まえがき
 過去1カ年間(昭和40年7月〜41年6月)にわたつて,西日本の皮膚科医によつて診断された各種皮膚科疾患について,公衆衛生学的立場から地理病理学的検討を試みた。
 説明の便宜上,皮膚科疾患を,(A)一般に多い疾患(円形脱毛症,帯状疱疹,癜風及び尋常性白斑),(B)一般に少ない疾患(乾癬,皮膚癌及び皮膚結核),(C)特定の地域に発生する疾患(熱帯性疾患)の3群に大別して,生活環境,特に気候,地質,土壌などの如き自然的環境との関係について考察を試みた。

帯状疱疹および熱帯性疾患

著者: 野北通夫 ,   今福武 ,   平島正泰 ,   阿南貞雄

ページ範囲:P.957 - P.960

I.帯状疱疹
第1図は西日本地区における帯状疱疹の分布状態の色分けの規準を示したもので,人口10万対の患者数を横軸にとり,各々に該当する地域数を縦軸下にとり,これらの地域数の高さが大体似かよつたものを1群として大ざつぱに区切つた各群に属する地域数の総数を縦軸上に示したものであるが,ただ患者数50以上では分布も極めて疎らになるので,区切のよいように50から100迄と100以上とに分けた。すなわち:
 第1群は患者数が「0」及至1.9迄の地域で,「0」地域が49,1.9迄の地域が5,総計54地区である。

梅毒・軟下疳—西日本における皮膚疾患の地理的分布の実態について

著者: 樋口謙太郎 ,   中垣謙一

ページ範囲:P.961 - P.964

 梅毒患者数は社会的背景と鋭敏に反応し,とくに戦争によつて大きく左右されることはよく知られている。最近でも第2次大戦終戦後の急激な増加は驚異的なものであつた。その後世相の安定するに従い,またペニシリンの登場によつて,顕症梅毒はほとんどあとを絶つにいたつたのであるが,昭和35年項より再び早期梅毒患者をみるようになり,その後次第に増加の傾向を示している。今梅毒,軟下疳の地理的分布の実態について考えてみると,はなはだ興味深い問題であると同時に今後の性病対策の上からいつても非常に重要な点であると考える。今回西日本各地の臨床医の協力の下に,昭和40年7月より41年6月迄の1年間にわたり報告してもらつた資料に基いて検討考察を加えたので報告する。
 西日本13県(香川・愛媛・高知を除く)の梅毒の総数は2547,軟下疳の総数は88である。梅毒ではその内訳は顕症梅毒644,潜伏梅毒1786,先天梅毒117で梅毒全体の中では顕症梅毒25.3%,潜伏梅毒70.1%,先天梅毒4.6%の割合をしめる。今人口10万対受診率を罹患率とすると西日本13県で梅毒12.4,軟下疳0.4となる(第1表参照)。

癜風,尋常白斑,乾癬,皮膚結核—西日本における皮膚科疾患の地理的分布

著者: 占部治邦 ,   安元健児 ,   岸正宏

ページ範囲:P.965 - P.969

I.緒言
 昭和40年7月より昭和41年6月の間に西日本(中国,四国および九州の16県)の皮膚科医により診断された表記疾患の地理病理学的検討を行つた。集められた資料は郡市別および県別の人口10万当りの発生率であり,これより海岸,山間地域に区分して,地勢,気象,産業などと発生状況との問に関連が認められるか否かについて検討した。

皮膚悪性腫瘍および癌前駆性疾患

著者: 藤田英輔 ,   岩尾英一 ,   室積繁子

ページ範囲:P.971 - P.978

I.はじめに
 私達は,先に,皮膚悪性腫瘍の地理的分布を山口県について検討した結果,皮膚悪性腫瘍の山口県における郡市別罹患率分布は年間快晴日数,微酸土壌及び全癌死亡率の各分布にそれぞれ密接に関連を示すことを見出した。そこで,今回は調査対象地域を西日本全域に拡げた場合,これらの事項が如何なる関係を示すかについて検討して見た。

パネルデイスカッションI 皮膚疾患の臨床病理学的検討

薬疹の臨床病理学的検討

著者: 吉田彦太郎 ,   小野公義

ページ範囲:P.979 - P.991

I.はじめに
 現在迄にもある種の薬物たとえばクロールプロマジン,サルバルサン,サルファ剤,若干の抗生物質などが肝機能あるいは骨髄機能に対ししばしば重大な影響をおよぼすことはよく知られており,内科学的,病理学的立場より,かなり十分な検討が加えられている。しかし,あつかわれた症例の多くは皮膚に発疹がなく,またたとえ存在したとしてもその程度,種類,範囲などに対しては,ほとんど考慮されず,皮膚病変あるいは皮膚機能障害という1つの要素の介在した状態における全身的機能検査については,ほとんど知られていない。今回日本皮膚科学会第18回西日本連合地方会の主題の1つとして取り上げられた「皮膚疾患の臨床病理学的検討(外因性疾患の全身状態について)」の一環としてわれわれは薬疹のそれを担当したので,西日本各施設から提供された重症薬疹例にもとづき,主として末血像,血清蛋白像,肝機能所見について検討を試みることにした。

熱傷の臨床病理

著者: 中村家政 ,   桑原宏始

ページ範囲:P.993 - P.1002

I.はじめに
 熱傷,就中重症患者の予後は急救処置の良否と密接な関係がある。従つて熱傷の治療は患者から可及的速やかに治療に必要な資料を収集することが肝要であるが,一般に治療の対象となる患者の大半は乳幼児で,しかも既にショックに陥つている場合が多く,臨床検査の困難な場合が少なくなく,熱傷の臨床病理の実態を把握出来る機会は意外に少ない様である。事実筆者らも表記のテーマを頂いて早速教室の症例を蒐集したが,後述する如く十分検査を実施した症例は甚だ少なくやむを得ず,西日本各大学の御協力を仰いで,漸く9例を得ることが出来た。か様に考えると今回のパネルディスカションに熱傷を加えられたことは甚だ有意義と考える。

外因性疾患の全身状態について:感染症

著者: 矢村卓三

ページ範囲:P.1003 - P.1005

 微生物が宿主に感染するためには種々の抵抗にうちかち,さらにその宿主体内での環境に適応しなければならない。一方宿主も微生物を排除または局所に限局するために局所的,全身的な反応で応答する。感染症はこの両者の相互干渉の総和としてあらわれる。ここに微生物および宿主の感染に関与する因子を要約する(第1図)と,寄生体側から侵入定着を容易にするためヒアルロニダーゼ,プロテアーゼの産生,食菌に対する抵抗性として菌体表面物質,aggressin,leucocidin,宿主に作用する菌体内,菌体外の毒性物質産生などがある。一方宿主側から食菌作用,ライソザイムなどの血球中の抗菌性物質,塩基性ポリペプチッドなどの組織および体液の抗菌性物質,局所性,全身性の代謝異常,体液性または細胞性の免疫反応にあづかる特異的な抗体産生である。
 ここに提出され,検討される症例は

外因性疾患の全身状態について

著者: 柴田進

ページ範囲:P.1007 - P.1010

 大平洋戦争終了後の我が国の臨床医学の特色の一つは診断技術の進歩と臨床検査の活用であろう。内科学においては検査を中心にした診察法が熱心に研究され,一部においてはそれが日常診療に活用されている。臨床病理学とはこのような検査の臨床医学における利用をテーマとする学問である。
 今日,ここにくわしい検査の記録をそなえた皮膚科患者のcase recordが沢山蒐集され,それらが供覧されているが,これを見るにつけても皮膚科学も内科学と同様の発展と変革の道を歩みつつあることを知つて驚かされる。私達が医科大学の学生として約30年前に皮膚科学を習つた頃には皮膚科の患者の病巣は肉眼で直接調べ得る身体の外表面にあるから,その診断に臨床検査は無用のものであるという印象を受けたものである。しかしそれは皮相な見解であつて,皮膚疾患と内臓の機能との間にある程度の病因論的関係があることは既に洞察されていた。従つて皮膚科学と内科学は密接不離の臨床医学部門と見做され,実際に一部の外国においては内科のなかで皮膚科的患者を診療している有様である。このようなことを考えると,内科と同様に皮膚科で臨床検査が盛に使用されるようになつて来たのは当然だとも云える。

パネルデイスカッションII 皮膚疾患の組織病理学的検討

病理学的立場からみた前癌性疾患と癌との関係

著者: 細川修治

ページ範囲:P.1011 - P.1013

 癌前駆性疾患と呼ばれるものは周知の如く,経験上長い経過中にしばしば癌化の傾向のある色々の病変の総称であつて決して特徴ある確立された疾患ではない。したがつてこれに含まれる疾患も広く,かつその性状や基源等は全く異なる諸種の病変にわたることは勿論である。皆見座長の解説にもあるように狭義のものは白色角化症,老人性角化腫,色素性乾皮症,広義のものは火傷,レ線皮膚炎,狼瘡などの慢性炎症の基地のあるもの等多数の病変が含まれる訳である。今回提示された症例は極めて広範な病変が包含されているが,これを通覧して癌前駆性疾患から癌化への過程における共通的変化がうかがえるかははなはだ疑問ではあるが,病理形態学的立揚から考察してみたいと思う。
 そこでこれら症例を大別すれば次の通りである。

教室紹介

東京大学/神戸大学

著者: 北郷修

ページ範囲:P.1014 - P.1015

 東京大学皮膚科学教室の歴史について語るには,わが国の近代西欧的医学教育の黎明期にまでさかのぼらなければならない。東京大学医学部の前身である医学所および大病院は明治2年大学東校とよばれるようになり,明治4年にドイツのMüllerおよびHoffmannを招聘した。Müllerと明治8年に着任したSch-ultzeは時々梅毒学の講義をしたという。明治14年Scribaが外科教師として就任し,外科の講義のかたわら皮膚病学梅毒学の講義も行なつた。
 これよりさき明治8年大学東校内にいわゆる通学生教場が開かれるとともに花岡真節,宇野朗の両先生が皮膚病学梅毒学の講義を担当していた。明治19年帝国大学令が公布され,宇野先生が外科教授に就任するとともに本科生にたいして繃帯学の外に皮膚病学梅毒学の講義を行なつた。明治23年になつて村田謙太郎助教授によつて皮膚科学梅毒学がはじめて正式に開講され,村田先生は明治24年教授に昇任されたのであるが,翌年病のため夭折された。明治26年講座制が布かれ,皮膚病梅毒学もまた講座となり,外科の宇野教授が兼任教授としてもつぱら皮膚科学の講義をされた。この頃皮膚科泌尿器科の病室がはじめてもうけられ皮膚病教室と称した。明治27年東京帝国大学に皮膚病学梅毒学の専任教授をおく必要がおこり,たまたまHeidelberg大学に留学中の土肥慶蔵先生に文部省は皮膚科学専攻を命じたので,土肥先生はWien大学に転じ,Kaposi教授の下で皮膚科学を勉学することとなつたのである。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.1016 - P.1017

THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY 47 : 2, August, 1966
Effect of Chloroquine-Diphosphate Administration on the Skin Damage in Guinea Pigs Caused by X-Ray Irradiation : T. Bielicky, M. Zák, P. Barták and L. Malina. 73
The Relationship of Skin Color to Zygosity in Twins : R.N. Collins, A.B. Lerner and J.S. McGuire 78

〈掲載論文抄録〉

皮膚科疾患と自然環境との関係,他

著者: 野瀬善勝

ページ範囲:P.1029 - P.1029

 過去1ヵ年間(昭和40〜41)にわたつて,西日本の皮膚科医によつて報告された各種の皮膚科疾患について,その地域差と生活環境との関係を,医学的生態学的な立場から考察し,次の如き知見を認めた。
 1.帯状疱疹,癜風,円形脱毛症尋常性白斑及びフィラリア症の5疾患は,それぞれ罹患率を異にし,地域差が著明である。しかしその分布は気候と関係が深い。すなわち日照時間が長く,夏季の気温が高温となるところほど多発する傾向がある点で軌を同じくしていることは注目に値する。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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