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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科21巻11号

1967年10月発行

雑誌目次

図譜・254

Naevus naevocellularis partim lipomatodes

著者: 雨宮直幹

ページ範囲:P.1042 - P.1043

【臨床像】
第1例 24歳,女子。十数年前より頭頂部に発生した小腫瘤で,小指頭大,淡紅色,皮膚面から半球状に隆起し,表面一部顆粒状を呈し,中央部に数本の硬毛を見る。弾性軟で自覚症状を欠く(第1図)。
第2例 48歳,主婦。約10年前より顔面に発生した小腫瘤で,左頬骨部及び左鼻翼部上方では半球状の常色ないし淡褐色の小豆大小結節,左眼瞼下方には表面平滑,半球状の淡紅褐色の大豆大小結節を認める。いずれも弾性硬(第2図)。

図譜・255

弾力線維性仮性黄色腫に続発したElastosis Perforans

著者: 中内洋一

ページ範囲:P.1046 - P.1047

患者 29歳,女子。
現病歴 十数年来頸,項,腋窩,上腕,胸,腹,鼠蹊部に弾力線維性仮性黄色腫あり。昭和40年7月に右上腕屈側に,同年12月に右項頸部に誘因なく角化性丘疹を生じ,徐々に拡大した。

展望

皮膚疾患と全身

著者: 野原望

ページ範囲:P.1049 - P.1056

I.はじめに
 近時,皮膚と全身,あるいは皮膚と内臓などのフレィズをしばしば見聞きするようになつた。膚(またはその病変)を全身(またはその病変)との相関において認識しあるいは理解しようとすることは,極めて自然な発想であつて,おそらく歴史的にさかのぼつてみても,その初段階が既にそのような志向をもつて出発しているに違いないと思われる1)2)。しかし,その後の歴史の流れからみると,19世紀中葉以来,HebraやUnnaらにより漸く体系づけられてきた近世皮膚科学は,その後一途に形態学的観察方向へと発展を遂げ,(morphologisme),今日の記載皮膚科学の確立をみるに至つたことは周知の事実である。皮膚病変に対する緻密な形態学的分析やその整理が,皮膚疾患の本質の把握にとつて不可欠の前提であろうことはあまり異論のないところであろうし,むしろそのような思考態度こそ皮膚科学の特性といつた方がよいかも知れない。しかしながら皮膚の肉眼的変化,すなわち皮膚発疹は例えば人種,性,年令,職業,季節,身体部位などの別によつてもしばしば微細な差異を生じうるものであつて,その蔭には皮膚の複雑な組織学的構造はもとより,全身あるいは皮膚の場の生理的生化学的動向もまたその因として関与しうるものであることを看過しえない。

原著

皮膚におけるPolyvinylpyrrolidon沈着症例

著者: 福士堯 ,   上原伸一 ,   高谷彦一郎 ,   鈴木啓充 ,   田村弘幸

ページ範囲:P.1059 - P.1065

I.緒言
 皮膚に皮疹を顕示しないで,瘙痒のみを訴えるものを,皮膚瘙痒症となし,それには,全身性と限局性とがあることは,周知の如くである1)2)。瘙痒を惹起する原因は多種で,しばしば基礎疾患の1症候として現われ,診断上の指針になるともされている1)。その基礎疾患としては,更年期障害,糖尿病,黄疸,胃腸障害,血液病,精神神経性疾患,腎疾患,老人性由来のもの等1)2)が云われている。
 今回われわれは,Polyvinylpyrrolidon(以下PVPと略す)投与後,皮膚に,痛みとも,痒みともつかない,針で刺すようなかんじの異常感(瘙痒?)を訴えた症例に遭遇し,若干の検索の結果,その異常感(瘙痒?:以下異常感あるいは瘙痒として表現する)は,PVPの皮膚沈着に由来するものと推定したので,そのことについて報告する。

線状萎縮症の1例—特に成因についての考察

著者: 清水夏江 ,   松尾聿朗 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.1067 - P.1071

I.はじめに
 線状萎縮症は妊娠,肥満症,成長期,クッシング症候群,副腎皮質ホルモン長期大量内服,感染症等に際して生ずるとされている。その成因に関しては,従来皮膚の過度伸展という機械的な因子が第一義的に考えられていたが,近年では下垂体一副腎皮質系ホルモンの真皮結合組織に対する影響を重要視するものが多い。
 我々は最近,両側乳房部に放射状に太く長い,赤色線状萎縮を生じた20歳未婚女子の1例を経験した。しかも臨床検査で軽度の副腎皮質機能亢進を認めることが出来たので,本症の成因についての考察を中心にこれを報告したい。

陰茎結核疹に続発した片側性の結節性結核性静脈炎の1例

著者: 石川陽吉 ,   小嶋理一

ページ範囲:P.1073 - P.1076

I.はじめに
 1896年Darierが真正皮膚結核に対し,結核疹をtuberculides cutanéesと命名してより,その後多くの臨床家において,結核疹として腺病性苔癬,壊疽性丘疹状結核疹,バザン氏硬結性紅斑,結節性結核性静脈炎,陰茎結核疹,顔面播種状粟粒性狼瘡等の病名が提唱され,これらの各症の間には移行型ならびに合併症も認められている。結核疹の1つである陰茎結核疹は欧米においては,殆どその報告がなく,陰茎に発生する変化は殆ど真正結核に属する。しかるに本邦においては真正皮膚結核を陰茎に認めた報告は殆どなく,1911年森1)に始まる陰茎結核疹は本邦人特有な皮疹の1つであることが学会において認められるに至つた。最近,欧米の文献を渉猟すると,1940年Nobl2))を始め2,3の陰茎結核疹症例の報告がある。しかし,それらの症例は壊疸性丘疹状結核疹の合併症として報告されており,本邦人にみる陰茎結核疹とは多少その趣を異にしている。ここに掲げる症例は,陰茎結核疹に,更に右下腿に限局して,個疹は壊疸性丘疹状結核疹様外観を示して,しかもその排列は線状,環状をなし,かつ索状物を触れ,更に組織的所見において血管炎と考えられる症例を得たので報告する。

Chromoblastomycosisの1例

著者: 岡吉郎 ,   古田島昭五 ,   塚原叡 ,   田辺一雄

ページ範囲:P.1077 - P.1084

I.はじめに
 Chromoblastomycosisは,主として皮膚および皮下組織を侵すが時には内臓にも病変を起すこともある黒色真菌による深在性真菌症である。本症は中南米,北米に多いといわれるが,わが国でもすでに30例以上1)〜39)の報告があり,特に近年その報告数が増加してきている。しかし地域的には関東,東北地方に多く,北陸地方には極めて少ない。私達は本症の新潟県での最初の例を経験したのでこれを報告し,あわせてわが国のこれまでの症例をまとめてみる。

Angiokeratoma corporis circumscriptum naeviformeについて

著者: 松本維明 ,   大国剛 ,   蔭山亮市

ページ範囲:P.1085 - P.1088

I.はじめに
 Angiokeratomaに関してはMibelli (1889)11)の記載にはじまりFordyce (1896)5)及びFabry(1898)4)が夫々Angiokeratoma scroti(For-dyce)及びAngiokeratoma corporis diffusumuniversale(Fabry)を報告している。しかしながら本症は前記3者とはやや趣を異にした疾患でFabry(1915)3)により記載されたもので大抵は生れつきに,又遅くとも思春期頃までに主として下肢に偏側性に血管腫様の紅斑又は暗赤色斑が出現し,時の経過とともに,一部は(小)結節様となり,疣贅様の外観を呈する,皮膚面より隆起した暗赤色の出血し易い病変を主体とする疾患である。Fabry(1915)3)以後も本症は記載されることは少いのであるが,それは単なるHaemangiomaの異型として片付けられているためであるのかも知れない。本邦に於ても報告例は少く伊藤8),二見6),岩間9),等の報告が見られる。

Keratoacanthomaの1例

著者: 藤沢伸次

ページ範囲:P.1089 - P.1093

I.はじめに
 本症についての最初の記載は1889年にJona-than Hutchinsonが"Crateriform ulcer of theskin"と題して発表した症例であるとされている1)。続いて1893年にはLassarが,又,今世紀に入つてからはGougerot(1917),Dupont(1930)などが本症と思われる症例を夫々報告したが,本症が一般に注目されるようになつたのは1936年MacCormac & Scarffがmolluscumsebaceumと名づけて本症の10例を一括報告してからであると云われている2)。それ以来30年間に欧米では頗る多数の報告例があり最早珍らしい疾患ではなくなつた。
 他方,我国に於いては古谷等3)が第1例を報告した昭和32年から今日までの10年間に可成りの症例が報告され,それらは文献上少なくとも60余例に達するが尚現在でも比較的珍らしい疾患に属している。殊に本邦例では顔面,頭部,頸部など所謂首から上の露出部位に生じたものが殆んどであつて,その他の部位に生じたものも報告されてはいるが稀である。

Recklinghausen氏病の1例

著者: 木村正方 ,   杉山喜彦 ,   磯野雄也 ,   木村然二郎 ,   加藤昭義

ページ範囲:P.1095 - P.1100

I.はじめに
 Recklinghausen氏病については,古くから研究がなされている。しかし,その組織由来については,Schwann氏鞘細胞,結合織,或いはその両者と,未だ一定した見解に達していない。また,腫瘍発生の組織学的部位や誘因等についてもあまり論ぜられていない。私達は,これらの観点からRecklinghausen氏病の1例を検討してみた。

検査法

免疫電気泳動法

著者: 樋口光弘 ,   野口義圀

ページ範囲:P.1101 - P.1109

I.はじめに
 Tiseliusに始まる電気泳動は1950年Durr-um1)による血漿蛋白質の炉紙電気泳動法により更に簡単な操作で行なえるようになつたが1955年Grabar2)等はこれにOuchterlony3)を始めとする寒天内2重拡散法を組合せて血清のような複雑な組成を有する液体を更に細かく分画する方法を発表した。以来免疫電気泳動法は長足の発展を遂げ,例えばヒト血清では30種以上の成分が沈降線として検出され得るようになつたと云われている。臨床面では多発性骨髄腫を始めとして各種の免疫グロブリン異常症等の診断及び検索に欠かせぬようになつている。但し従来優秀な抗血清を作製することが難しく従つて充分満足し得る免疫電気泳動パターンを得ることが困難であつた。しかし最近では優秀な抗血清が市販され比較的手軽に行われるようになつた。更にScheideggerの微量法4),Kohnのセルローズアセテート膜による免疫電気泳動法13)の開発により,より微量の抗原,抗血清で分析の目的を達し得るようになつた。さて実施法については既に多数の文献(寒天免疫電気泳動4)〜11),セルローズアセテート膜免疫電気泳動12)〜18))があるがここでは我々の行つている寒天及びセルローズアセテート膜による免疫電気泳動法について述べ更に免疫グロブリンの簡単な定量法としてのImmuno-Plate (Hyland)を紹介したい。

教室紹介

東京医科歯科大学/大阪市立大学

著者: 佐藤吉昭

ページ範囲:P.1110 - P.1111

 当教室は,昭和19年5月本学の前身である東京医学歯学専門学校に,故原田儀一郎教授をお迎えして皮膚泌尿器科学教室が開講されたのに始る。その後昭和21年8月東京医科歯科大学となり,35年6月には泌尿器科が分離してそれぞれ独立講座として発足,現在に至つているが,開設以来長年にわたつて手狭をかこつていた病棟,研究棟も本年5月19日に一応完成,この間大学自体の膨張もあつて,計画当初に予期したほどの余裕はないとはいうものの,初めて各科が教室の形態を整えることが出来た。開講以来,大学というには余りにも貧弱な施設の中で,常に内外の充実に努力して来られた原田教授が,その完成を目前にした昨年11月他界されたことは,まことに残念というほかはない。
 さて教室の現況を紹介すると,昨年12月16日,第2代教授として着任された清寺真先生を筆頭に,以下助教授1,講師2,非常勤講師1,助手7,副手3,大学院学生3,専攻生8(うち1名はタイ国留学生),技能員3,計29名(うち2名は米国,1名は西独にそれぞれ留学中)が日夜研鑚しているが,とくに清寺教授の御着任後は,従来のレパートリイになかつた新しい分野──Melanin──が導入されて,その消化と発展に全力をあげる一方,診療,学生指導など種々の面においても教授の情熱が反映して,まことに生気溢れる昨今となつている。教室の主たる研究内容をあげると,教授を中心としたMelanin生成に関する研究,山田助教授を中心とした薬剤アレルギーの研究,石田講師を中心としたスルフォンアミド剤の研究の3主題があり,教室員はそのいづれかのグループに属しているが,中でもやがて教室に設置される電子顕微鏡のグループは,目下講習に,実習に大童の毎日である。漸増傾向を示す200名の外来患者,17床の病棟患者の診療以外に,教室の定例行事としては,型通りの抄読会,病理組織デモのほか,近々定期的な他大学との合同セミナーが予定されており,また本年度よりの外国との人事交流や,過日H. Pinkus教授を招いて開催したセミナーのごとく,あらゆる機会を利用して密度の濃い研究を続けて行くことを念願としている。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.1112 - P.1113

ARCHIV EUR KLINISCHE UND EXPERI-MENTELLE DERMATOLOGIE 226 : 1, 1966
Die Melaningranula im Naevuszellnaevus : H. Tröger und G. Kingmuller 1
Die Haarmelanogenese bei der Endoxan-Alopecie und deren Beeinflussung durch Corticosteroide : W. Kostanecki, E. Kwiatkowska und J. Zborzil 13

〈原著論文抄録〉

皮膚におけるPolyvinylpyrrolidon沈着症例,他

著者: 福士堯 ,   上原伸一 ,   高谷彦一郎 ,   鈴木啓充 ,   田村弘幸

ページ範囲:P.1121 - P.1121

 第1例,45歳,男,水産業。右中足骨析後の障害治療の目的で,中分子PVP 280gおよび分子量不詳のPVP 111gの投与をうけた。経過中に,皮膚に異常感(ちくちくする疼痛とも瘙痒ともつかない感じ),眼瞼浮腫を訴えた。他に特記すべき皮疹をみない。検査事項中,赤沈値亢進,血清ルゴール反応強陽性,PSPの低下をみた。組織学的に,皮膚においては,Congo red染色上,真皮小血管の傍に,陽性に染る顆粒状物質の堆積をみた。表在リンパ節においては,H.E.染色上,泡沫細胞,巨細胞をみ,Congo red染色上,前記細胞は,陽性に染まつた。数ヵ月を経るも,皮膚の異常感,眼瞼浮腫に改善をみなかった。
 第2例,25歳,男,豊業。視神経網膜炎治療の目的で,低分子PVP,1日6g連日投与を受け,総量は450gに達した。経過中に,主に上半身に,第1例と同様の皮膚異常感を訴えた。特記すべき皮疹をみない。検査事項中,特に異常所見をみない。組織学的に,皮膚においては,Congo red染色上,真皮全層,表皮の一部,真皮小血管沿いに,陽性に染る顆粒状物質の沈着をみた。又表在リンパ節においては,H.E.染色上,若干の泡沫細胞をみた。Congo red染色上,泡沫細胞が陽性に染まる他,特にリンパ節辺縁部において,陽性に染まる顆粒状物質の沈着をみた。第2例においてはPVP投与中止後の6週目には,異常感が可成に改善した。又組織学的にも,皮膚においてCongo red陽性の顆粒状物質の減少をみた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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