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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科21巻12号

1967年11月発行

雑誌目次

図譜・256

ノルウェー疥癬

著者: 五十嵐俊弥

ページ範囲:P.1134 - P.1135

患者 身寄りのない72歳の老女。群馬県外に住んだことはなく,某病院の炊事婦および某温泉旅館の釜炊き婦をしていたらしい。
既往歴および現病歴 患者がはなはだ魯鈍なため不明であるが,現病は最近発病したものではないらしい。昭和42年1月17日気管支拡張症で入院中の某病院から当科に紹介された。

図譜・257

足菌腫

著者: 福代良一 ,   北村清隆 ,   池田真康 ,   金原武司 ,   鍛冶友昭 ,   松本鐐一 ,   玉井健三

ページ範囲:P.1138 - P.1139

患者 46歳,農家婦兼清掃員,富山市在住。初診昭和41年6月29日。
家族歴 特記なし。既往歴 20歳,肺浸潤他に著患はない。

展望

皮脂腺に影響を与える2,3因子について

著者: 佐藤良夫 ,   鷲尾勝

ページ範囲:P.1141 - P.1151

I.はじめに
 人の脂腺はholocrine glandsであつて,脂腺辺縁部の未分化脂腺細胞は脂腺中央部に移動していくとともに成熟分化し,脂質生成蓄積のためその大きさは数倍またはそれ以上に膨大し,排出管前部でついに自壊して皮脂となり排出管を通つて排出される。この間に,脂腺辺縁部にて未分化細胞の増殖がおこり,自壊排出される脂腺細胞の供給をなしている1)2)。それゆえ脂腺が正常の機能を営なんでいる時には自壊排出される脂腺細胞と未分化細胞の増殖の間には一定のバランスが保たれている1)。このため正常脂腺の大きさは部位によつてほぼ定まつている。また以上の点から脂腺の機能は,脂腺細胞のturn-over timeの遅速,脂腺辺縁部の未分化細胞の増殖度に大きく関係するといわれる。そのため脂腺の機能とその大きさについて古くから検討されて来たが,現在,人においても皮表皮脂量と脂腺の大きさは大体平行関係にあることが確められている3)4)5)。この際,脂腺の大きさを正確に知るためには連続切片によるquantitative planimetric studyが必要とされ4),われわれの行なっているthick sectionによる観察は推奨されるべきものと考えられる。しかし,このような方法をもつてしても,形態学的に大小の差異を比較検討することは,その差異が微小なうちはこれを識別することはかなり困難である。しかも鼠,二十日鼠などの脂腺と異なり,人の脂腺の場合は多腺葉性であるため,脂腺の機能を形態学的にのみとらえようとすることには限界がある。最近は皮脂の採取法,定量法に改善が加えられ生化学的皮脂生成量の測定により,一層確実に脂腺の機能を知ることができるようになつた5)6)。しかし,まだ毛孔より脂腺由来の皮脂そのものを採取することは困難であり,表皮由来の皮表脂質の混入は避けられない。このような現状から,脂腺の機能を確実に知ろうとするときは,形態学的変化の観察と皮表脂質の生化学的定量分析の併用が理想的である。
 今回は脂腺機能に影響を及ぼす諸因子のうち,年令,性別,ホルモン,食餌,神経支配,毛周期が,脂腺機能すなわち脂腺の形態ならびに皮脂生成にいかなる変化を与えるかについて展望してみたい。

原著

AlbinismとAlbinoidismについて

著者: 浜田稔夫 ,   斎藤忠夫

ページ範囲:P.1153 - P.1161

I.緒言
 albinismは普通,全身の皮膚,毛髪および眼のメラニン色素の欠如によつて特徴づけられる遺伝性疾患であるが,人間においては完全なものでも組織や中枢神経などの一部に多少ともメラニン色素が認められるので厳密にいえばalbinoidismとなる1)2)。しかし実際にalbinismにはFitz-patrickら3)が述べているようにgeneralizedalbinismとして,complete albinism, incom-plete albinism,さらに,albinoidismの3つが含まれており,一般にincomplete albinismとalbinoidismとはalbinism (complete albi-nism)の変種であるとされている4)。Fitzpa-trick5)は1960年albinismを新しく,1) oculo-cutaneous albinism,2) ocular albinism,3)localized cutaneous albinismの3つに分類しているが,普通albinismといえば,このoculo-cutaneous albinismを指し,先のgeneralizedalbinismに相当している。
 complete albinismでは皮膚,毛髪や眼の脈絡膜などにメラニン色素が完全に欠如し,その合成が行なわれないものである。すなわち皮膚,毛髪は白色を呈し,瞳孔は赤く虹彩もピンク色で,羞明,眼球振盪などの眼症状が著明なもので,単劣性遺伝形式をとることが一般に認められている。incomplete albinismは年令が進むにつれて皮膚,毛髪および眼に少量のメラニン形成がみられるようになり,また紫外線照射によつて皮膚に点状色素斑が出現して来る。それ故,皮膚,毛髪は最初,白色であつたのが,後に淡褐色に変化し,虹彩も最初ピンク色を呈していたのが,淡青色ないし黄褐色を示すようになる。また羞明や眼球振盪が存在し,劣性ないし不規則優性遺伝子によつて遺伝される。1961年Huら6)はalbinism皮膚にDOPA陽性メラノサイトを認めたことを報告し,またKugelmanら7)もalbinism皮膚にtyrosinase活性を認めており,albinismの表皮メラノサイトにtyrosinaseの合成が全く行なわれないものより多少とも行なわれるものまであることから,臨床的には皮膚や毛髪の色調にいくらかのバリエーションがみられ,albinismをcomplete albinismとincomplete albinismの2つに完全に分けることは実際には困難であつて,両者の関係はある程度相対的なものと言えよう。

重症熱傷の1例—全身管理の問題点について

著者: 大城晶子 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.1163 - P.1168

I.はじめに
 人類が火の利用を発見して以来,熱傷は,外因性皮膚疾患として古い歴史を有している。文明が進歩するにつれ,受傷機会も多くなり,状況も複雑となり,その死亡率も決して減少していない1)。熱傷の治療に関しては,古来いろいろ異なつた方法があり,それぞれ効果をあげているようであるが,未だに多くの問題を含んでいるように思われる。皮膚科医が,全身症状を伴う重症熱傷を扱う機会は,外科医に比して,それほど多いとはいえないが,常に全身管理に対処する知識の準備は必要であろうと思われる。我々は,最近重症熱傷で,心,腎の合併症をもち,各科の意見の相違等から,いろいろ問題を含む症例を経験したので,ここに報告するとともに,若干の考察を加えてみた。

Morphealike basal cell epithelioma—症例報告

著者: 塚田貞夫 ,   熊谷武夫 ,   川島愛雄 ,   福代良一

ページ範囲:P.1169 - P.1174

I.はじめに
 morphealike basal cell epitheliomaの記録1)−3)はわが国にはまだ少数しかない。以下,われわれの観察した本症の1例を述べ,若干の考察を加える。

電撃性菌状息肉症の1例

著者: 村田貢 ,   高橋万里子

ページ範囲:P.1175 - P.1178

I.症例
患者 42歳,家婦。
初診 昭和41年5月7日。

検査法

梅毒血清反応

著者: 皆見紀久男

ページ範囲:P.1179 - P.1187

I.はじめに
 梅毒に対する恐怖は昔も今も変りない。そして人々は血清反応を行つては安どの胸をおろすのである。一方梅毒にかかつて血清反応が陽性となり,いくら治療しても陰転せずに,ついにはノイローゼとなり,頭がバカになると本気で心配している哀れな人々も相当数にあると思う。しかしながらわれわれ医者はこの血清反応を唯一の診断根拠として患者の体内に薬剤を注入し痛めつけている。しかしなぜ牛心リポイド抗原が梅毒に陽性にでてくるのかが現在でもはつきりと解明されていない。さらにこのリポイド抗原によつて生物学的偽陽性反応(非特異的反応)が出ることが問題となり,特異的反応といえるトレポネーマを使用した反応が進歩してきた。
 とくに最近は新鮮梅毒の増加が目立つてきたため,梅毒血清反応の行われる率も増加し,大きな社会問題となつている。血清反応はトレポネーマ自体に対する抗体を検出するトレポネーマを抗原とする反応と,患者自身の組織とトレポネーマとの反応から生ずる抗体(ワッセルマン抗体あるいはレアギンとよばれる)を検出するための非トレポネーマ抗原,すなわち脂質抗原による反応の2つに分けられる。

薬剤

Phenyl-11-Iodo-10-Undecynoateによる白癬の治験

著者: 田沼葏 ,   矢口秀男

ページ範囲:P.1189 - P.1192

I.緒言
 脂肪酸類が白癬に有効なことは1938年Peck等1)2)の報告以来知られているが,わが国でも,戦後はウンデシレン酸および,その誘導体についての研究や,治療への応用がさかんに行われている。
 さきに上野等3)4)は10-undecynoic acidの末端のエチニル水素をヨードで置換した11-iodo-10-undecynoicacidを合成し,さらにそのPhenyl esterであるphenyl-11-iodo-10-undecynoateを開発した。これらの薬剤は従来のウンデシレン酸およびウンデシレン酸誘導体に比し,より高い抗菌価と実験白癬に対するすぐれた効果が認められている。またこれら薬剤の臨床成績についても幾つか発表されている5)6)7)8)9)

印象記

第13回国際皮膚科学会議に出席して

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.1194 - P.1197

 国際皮膚科学会議は,戦後はロンドン(第10回,1952),ストックホルム(第11回,1957),ワシントン市(第12回,1962)と5年毎に催されてきたが,今回は7月31日(月)から8月5日(土)まで西独ミユンヘン市において第13回目(XIIIInternational Congress of Der-matology)が開催された。今回の国際会議の詳細については福代良一教授が記されることになつているので筆者は以下の気づいたことを若干述べるに止める。
 参会者 前回の時は地元アメリカの人達が多く,参会者は総数3,000余名と聞いているが,今回はそれに匹敵するような盛況であつた。閉会式の時の挨拶の中で登録者数が公表されたが,確か総数2,900名であった。この中には同伴家族もあり,医師の出席は2,100名とのことである。

教室紹介

東京医科大学/関西医科大学

著者: 斉藤常道

ページ範囲:P.1198 - P.1199

教室の歴史
 本校の始まりは他大学の創立と少しく異り,ある事件により当時の日本医専(現日本医大)の学生達が血書の盟約を行い幾多の努力を重ねながら大正5年5月16日に学生が日本医専総退学を決行して118日を経た9月11日に東京医学講習所として開設された特異な歴史をもつた学校であります。皮膚科教室の歴史も藤谷弥三郎教授を初代として昨年満50周年を迎えました。以後の歴代教授は2代上林豊明教授,3代小池正朝教授,4代広田康教授,5代中川清教授,6代北村包彦教授,7代小嶋理一教授であります。戦後昭和21年,中川教授の時代に東京医科大学となり医局員も次第にその数を増し,昭和31年には東日本連合地方会の主催校を引受け,更に北村教授,引続き小嶋教授と皮膚科学会の責任的地位にある両先生を迎える事によつて益々皮膚科教室は名実共に充実して参りました。又昭和36年北村教授の時代にアレルギー総会の主催校となり昭和38年御退任になり東京逓信病院長となられましたが本年再び今度は東京医科大学長に就任され,又小嶋教授も本年東京医科大学病院院長に就任され,大学のため,病院のため又皮膚科教室のため御活躍中であります。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.1200 - P.1203

ARCHIVES OF DERMATOLOGY 95 : 1, January, 1967
Methotrexate for Psoriasis : R. B. Rees, J. H. Bonnett, H. I. Maibach and H. L. Arnold 2
Screening for Drug Toxicity by Wave Lengths Greater Than 3,100 A : H. I. Maibach, W. M. Sams and J. H. Epstein 12

〈原著論文抄録〉

AlbinismとAlbinoidismについて,他

著者: 浜田稔夫 ,   斎藤忠夫

ページ範囲:P.1205 - P.1205

 私どもはAlbinismの姉妹例(37歳,33歳)およびAlbinoidismの3例(26歳,♀;9歳,♂;20歳♂)について,特に両者の関係を皮膚,眼の臨床像ならびに皮膚組織像より検討を加えた。
 Albinismは皮膚,毛髪および眼のメラニン欠如で特徴づけられており,私どもの姉妹例も皮膚,毛髪は白色を呈し,乳房では乳輪部の色素沈着もみられない。虹彩は赤味を帯び,眼底は明るく,血管がすけてみえる。しかし妹例では腹部の表皮基底層にDOPA陽性メラノサイトを軽度に認めた。osmium zinc iodide法では表皮の主として基底層にかなりの樹枝状細胞が存在している。また紫外線照射によつて点状色素斑の出現する場合もみられた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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