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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科21巻3号

1967年03月発行

原著

胃粘膜疹を伴つた第2期梅毒

著者: 岡本昭二1 原紀道1 伊藤光政1

所属機関: 1千葉大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.269 - P.276

文献概要

I.はじめに
 第2期梅毒において,胃に梅毒性病変が出現するか否かについては従来より賛否両論がある。胃梅毒といわれる変化はそのほとんどが第3期梅毒のゴム腫性,あるいは胃粘膜線維性肥厚変化であり,1827年Andralの報告以来数多くの症例もこれに属する。本邦では細井1)によると明治19年片山の報告以来昭和9年までに既に71例の報告がみられるが,いずれも梅毒性変化と明らかに確認されたものは少ない。胃癌の診断の下に胃切除をおこない組織学的に梅毒性病変を確認した木村2)および細井の症例も第3期梅毒性変化であつた。Gigon3)(1931)は胃梅毒を病理解剖学的および臨床的所見を加味して,(1)梅毒性胃炎,(2)限局性胃ゴム腫および(3)胃粘膜瀰漫性線維性肥厚の3群に分類している。(2)(3)は晩期梅毒の胃病変であるが,(1)のいわゆる梅毒性胃炎は早期梅毒にみられる低酸症性汎発性胃炎の型の機能的胃症状であつて,梅毒感染に基づく特異的な器質的な病変ではないと考えるものが多い(Konjetzny4),Fetzer)。しかしStokes5)は230例の早期梅毒にも約8%の胃症状がみられるというが,彼らもかかる胃炎は梅毒性の変化だとは考えていない。木村は胃に器質的変化を有せず,胃痛,嘔吐,食欲不振などの症状を示すものは全身症状の一分症であつて胃壁に梅毒性変化を生じた胃梅毒とはおのずから別個に考えるべきものと説いている。
 今回われわれは皮膚に第2期梅毒の丘疹性発疹を生じ,レ線撮影,および胃カメラ検査により胃肉腫を疑つたほどの胃粘膜に梅毒性器質性病変を発見した例に遭遇し,組織学的にも胃梅毒と診断することができたのでここに報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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