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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科21巻4号

1967年03月発行

雑誌目次

特集 皮膚疾患の電子顕微鏡像

著者: 宮崎寛明

ページ範囲:P.335 - P.335

 近年,医学或は広く生物学の分野での電顕の応用は益々盛んになつてきている。電顕の持つ役割は,従来の光顕的形態学を,macromoleculeのレベル迄推進める事により,moleculeのレベルでの生化学と結び付ける所にあり,皮膚の構造と機能を併せて理解して行く上に不可欠の方法という事ができる。
 従つて皮膚科領域においても,ここ数年来電顕に対する関心は急速に高まつてきており,これ迄にも総会や連合地方会等を機としては,これに興味を持つ人々の間で,何回か集会,討議が行われ,研究の進歩を促がしてきた。そして今や電顕は,自らそれを扱うと否とにかかわらず,もつと広く一般に皮膚科学を学ぶ人々に親しまれるべき段階迄きていると思われる。

一般細胞並に表皮細胞の微細構造—病的皮膚の電顕像を理解するために

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.337 - P.346

I.はじめに
 本書の読者には蛇足となるであろうが,ここに集録されている病的皮膚の徴細構造的所見をよりよく理解して頂くために,細胞一般の微細構造,正常皮膚の微細構造と現在において問題となつている事項を解説することにした。
 ただ,紙面の都合で,本書で取上げられている構造の若干について記述するにとどめたので,断片的になることをお許し願いたい。

Senear-Usher症候群の電顕的研究

著者: 遠藤秀彦 ,   相模成一郎

ページ範囲:P.347 - P.355

I.はじめに
 Senear-Usher症候群は,天疱瘡の一型と考えられ,その病理組織学的特徴は,顆粒層あるいは,有棘層上部の,棘融解による水疱形成である。
 光学顕微鏡で「棘」といわれる所は,電子顕微鏡におけるTonofilament-Desmosome Complexに相当する。そして,WilgramやBraun-Falcoなどの研究によつて,棘融解を主徴とする一連の天疱瘡群においては,この部分に一次的な変化の生じることが知られている。

2,3角化症における表皮の超微細構造について

著者: 岩下健三 ,   外松茂太郎 ,   若杉正弘

ページ範囲:P.357 - P.364

I.はじめに
 電子顕徴鏡的にみた表皮の角化過程に対してはTonofibril, Keratohyalin顆粒,Desmosomeあるいは細胞膜などの関与が種々論ぜられており1)2)3)4)5),最近ではさらにOdland小体の意義が注目されている6)7)
 著者は角層肥厚を来す疾患として尋常性魚鱗癬,黒色表皮肥厚症,鶏眼を選び,それらの表皮の超徴細構造を正常表皮のそれと比較検討し,角化過程についていささか知見をえたので記載しようと思う。

Lamellar ichthyosisにおけるMembrane coating granuleの態度について

著者: 高木靖信

ページ範囲:P.365 - P.370

I.はじめに
 先にSelby(1955)1),Odland(1960)2)などによつて認められた,上皮有棘層の一部,および顆粒層の細胞内に出現する特異な小顆粒について,曾つてこれをビールス3),あるいはミトコンドリアの崩壊産物2)とする考え方もあつたがMatoltsy4)がいちはやく,これを上皮の角化に関連する細胞内要素としてmembrane coating granule (以下M,C.G.と略す)と命名して以来これがトノフィラメント,ケラトヒアリン顆粒,デスモソームなどの細胞内要素と並んで角化に重要な役割を果しつつあるとの考えが強くなつて来た。特に最近この顆粒が高度にorganizeされた内部構造を有することが明らかとなつて,その本体,機能,特に角化との関連はますます興味ある問題となりつつあり活発な議論が行なわれている。われわれも角化機転におけるM.C.Gの役割を解明するため,正常並びに数種角化異常症の上皮について,その微細構造を特にこの顆粒を中心として観察追求しつつあるが,偶々lamellar ichthyosisの症例で若干の知見をえたのでここに報告したい。

疣贅様表皮発育異常症におけるいわゆる澄明変性細胞の電顕像

著者: 西部武嗣

ページ範囲:P.371 - P.375

I.はじめに
 疣贅様表皮発育異常症を独立した遺伝性皮膚疾患とする昔の説1)に対して,最近はこれを扁平疣贅の特殊形と見做す説2)が有力になりつつある。著者は上の2つの疾患の,それぞれ定型例と思われるものの皮疹を電子顕微鏡で観察し,それらの異同を解明しようと試みた。ここでは前者,疣贅様表皮発育異常症における成績を簡単に述べる。

Paget病の細胞病理

著者: 相模成一郎 ,   堀木学 ,   田端誠

ページ範囲:P.377 - P.385

I.はじめに
 Paget病の組織像1)はPaget細胞をもつ表皮細胞層の肥厚と表皮索の延長であり,Paget細胞は大型で核と細胞質はヘマトキシリン,エオジンにそれぞれ淡染し,孤立または集簇して表皮細胞層内に存在するが,周囲の表皮細胞との間に細胞間橋は見出しえないのが特徴である。さらに,ジアスターゼで消化されないところのPAS陽性物質あるいは,アルシアン青に染色性の物質やサイオニンに異染性の物質がPaget細胞内に見出され,中性粘液多糖類2)3)や酸性粘液多糖類2)の存在が示唆されている。のみならず,乳房Paget病では乳管または乳腺の癌がほとんどつねに見出され,乳房外Paget病ではアポクリン腺または汗管の癌4)5),あるいは,ムチンの産生能をもつ腺癌6)が同時に証明されることから,Paget病は乳腺やアポクリン腺の癌性変化に対する表皮細胞層の随伴現象であつて,Paget細胞は表皮細胞の悪性化したものではないとされている7)8)。この説を肯定するならば,Paget病は前癌状態あるいは表皮内癌であるとの考え方が否定されるのみならず,Paget病の独立性も疑われる結果になろう。
 Paget病は乳腺やアポクリン腺,または,それらの導管の癌に随伴した表皮細胞層の単なる変化であろうか。ムチンが陽性であるからPaget細胞は表皮性の細胞ではないといえるのであろうか。これらの疑問の解決を本稿で試みようとするものではないが,実験的事実に基づく論議は,たとえそれが異論であつても,許されるであろう。これこそ本問題をふたたび9)とりあげた所以である。

上皮性腫瘍の電顕所見

著者: 下田祥由

ページ範囲:P.387 - P.394

I.はじめに
 正常人皮膚の超微細構造は諸家の研究によりほぼ判明している1)。各種疾患についても次第に研究され,そのいくつかは報告されている2)3)4)。皮膚腫瘍の超微細構造についても種々報告5)6)7)8)9)があるが今回棘細胞癌,Bowen氏病,Paget氏病の微細構造につき観察し,その相互間の類似性及び相異点に関し若干の知見を得たので報告したい。もちろん正常細胞と腫瘍細胞の対比が非常に困難である現況において各腫瘍間の微細構造の相異に関して論ずることはむつかしいが,おおよその傾向についてある程度の相異を見出した。なお本文中には非常に興味ある所見を呈した移植皮膚癌の微細構造については省略し,その知見については別の機会に譲る。

基底細胞癌の電顕像

著者: 荒尾龍喜 ,   桑原宏始

ページ範囲:P.395 - P.401

I.はじめに
 皮膚の基底細胞癌は皮膚に発生する悪性腫瘍の中でも比較的しばしばみられるものの1つで,腫瘍の組織像やその性格については一般によく知られるところである。しかしその組織発生には未だ多くの議論があり,表皮基底細胞説,毛母細胞説,皮膚付属器官の胎生迷芽説などの諸説があつて諸家の一致するところとなつていない。基底細胞癌の腫瘍細胞を電顕的に検索することは単にその超微細構造を知りうるのみならず,表皮細胞や各皮膚付属器官の上皮細胞,他の上皮性腫瘍細胞との比較検討から,腫瘍の組織発生を論ずる上においても有益な資料となるものと思われる。
 われわれの観察した材料は症例1,72歳男子,前額に発生した色素沈着性基底細胞癌で,組織学的に腺様構造を示した腫瘍,症例2,80歳男子,右前額に生じた色素沈着性充実性基底細胞癌,症例3,61歳男子,鼻背に生じた色素沈着性充実性基底細胞癌の3例,および症例4,66歳男子の上口唇に生じた小指頭大の腫瘍で,組織学的に大部分は充実性ないし腺様構造をなした基底細胞様腫瘍細胞の増殖を示すが,数カ所に癌珠形成を認め,その周囲に明らかに棘細胞様腫瘍細胞の増殖があり,かりに基底棘細胞癌(basal squamous cellcarcinoma)と診断した1例を加え,以上の腫瘍の電顕像について述べることとする。症例1,2,4は切除後直ちに2.5%グルタールアルデヒド前固定,1%オスミウム酸固定,エポン包埋,症例3のみは切除後直ちに1%オスミウム酸固定,メタクリレート包埋をなし,いずれもLKB超ミクロトームで超薄切片作成,日立製中型電子顕微鏡で観察,写真撮影を行なつた。

色素性蕁麻疹におけるマスト細胞の微細構造

著者: 堀木学

ページ範囲:P.403 - P.411

I.はじめに
 マスト細胞には好塩基性で異染性の多くの顆粒が存在し,これらにheparin, histamine, seroto—nin等が関与していることが知られている。この顆粒の微細構造に関する論文も散見されるが1)2)3)4)5),形態のもつ生物学的意味づけはもとより,微細像そのものについても一定の説明がなされていない。著者は,色素性蕁麻疹の皮疹を電子顕微鏡で観察したところ,多くのマスト細胞をとらえてその微細構造を知り得た。更に,機械的刺激やCompound 48/80局注の前処置を施したマスト細胞を観察し,マスト細胞の脱顆粒を形態的にとらえたので,ここに報告する。

間葉性melanin細胞の電子顕微鏡的観察

著者: 玉井定美 ,   伊藤実

ページ範囲:P.413 - P.421

 間葉性melanocyteの超微細構造を,主としてmelanin顆粒の状態を中心として観察した。用いた材料は蒙古人斑,青色母斑の真皮の色素細胞であり,白色烏骨鶏眼瞼周囲部,筋膜部さらに鰌の真皮の色素細胞を参考とした。固定方法その他は第1表のごとくである。

単純性血管腫の電子顕微鏡的研究

著者: 大橋勝 ,   増田三千男

ページ範囲:P.423 - P.429

I.緒言
 血管腫の分類は一般にLever1),山碕2)の3型分類が行なわれている。すなわち,(a)単純性血管腫(ブドウ酒様血管腫,port-wine nevus)。皮膚面より隆起しない毛細血管拡張性のもの。(b)苺状血管腫(strawberry mark)・皮膚面より隆起し鮮紅色紫紅色で苺状にみえる。組織学的には毛細血管の増殖著明で,その内皮細胞は数層に肥厚している。通常数年以内に自然に退縮する。(c)海綿状血管腫(angioma cavernosum)。深在性ないし皮下血管腫に相当し,組織学的には薄い一層の内皮細胞よりなり,外皮細胞(perizy-ten)の著明に増殖しているもの。以上に分類される。
 単純性血管腫の組織学的所見については多くの文献がある。しかしながら血管内皮細胞については,その細胞が小さいため光顕においては明らかになしえないのである。われわれはかかる点から電顕的観察によってその構造を明らかにしたいと思う。文献的には電子顕微鏡による研究の報告は未だこれを見ない。

Glomus tumorの電顕的所見

著者: 石橋康正 ,   池田重雄 ,   川村太郎

ページ範囲:P.431 - P.440

I.緒言
 四肢末梢部に発生する有痛性小腫瘍の存在については,古くから知られていた。Greig1)によればすでにHippocratesおよびGalenの書にもこれと思われる記載があるという。それらはCheselden2)以来painful subcutaneous tubercle3),Angios-arkom4),Perithelioma subunguale5),Endotheli-oma vasculare6),等種々の名称のもとに報告されて来たが,その本体や由来についての鋭い考察はなされなかつた。
 1924年Masson7)は正常指端の動静脈吻合部の特殊構造を組織学的に検索し,この構造が爪下に発生する有痛性小腫瘍のそれと極めて類似している点に着目し,この腫瘍を動静脈吻合部に由来するものとしてtumeur glomiqueと呼んだ。

Lymphomaの電顕像—特に鍍銀線維について

著者: 石原和之 ,   岩屋利勝

ページ範囲:P.441 - P.447

I.はじめに
 光顕的に細網肉腫あるいは菌状息肉症を呈する症例について微細構造並びに鍍銀法による鍍銀線維の観察を行なつた。
 細網肉腫あるいは菌状息肉症の電顕的観察の報告は,辻村5),藤田2)3),野口等2,3を見るのみである。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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