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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科21巻5号

1967年04月発行

雑誌目次

皮膚科図譜・242

中毒性黒色皮膚炎

著者: 戸田浄

ページ範囲:P.452 - P.453

患者 54歳男,20数年板金加工に従事。初診昭和41年8月10日。主訴顔面,上肢の色素沈着。
既往歴・家族歴 特記することなし。

皮膚科図譜・243

外陰癌

著者: 姉小路公久

ページ範囲:P.454 - P.455

患者 48歳,未婚女性。主訴約1年前からの外陰部腫瘤。
現症 右外陰唇に小鶏卵大,境界明瞭,隆起した硬い腫瘤があり,表面糜爛し,小顆粒状の肉芽面様の外観を呈し,疼痛はない。陰核を中心とし小陰唇に境界の比較的鮮明な白色浸軟局面があり痒い。右鼠径リンパ節は大豆大のもの数個触知出来る(第1図)。

綜説

軟膏療法,とくにコルチコイド軟膏の最近の進歩

著者: 中村家政

ページ範囲:P.457 - P.465

Ⅰ.はじめに
 corticoid (以下「コ」と略す)製剤に限らず,軟膏療法の優れた特徴は薬剤を直接病巣に作用せしめることが可能で,而も全身性の副作用を少しも考慮する必要のないことであろう。しかし皮膚には凡ゆる外的刺激から護るために角層を中心に一種のbarrierがあり,このために投与された薬剤もここで阻止されて充分な量が真皮に入つて行かず,全身投与に比べるとどうしても適用範囲が狭い,又後述するように薬剤の吸収経路は主として毛嚢,脂腺系で,従つて生理的に毛嚢を欠き,しかも角層が著しく厚く出来ている手掌足底や,これに近い状態にある病的皮膚では従来軟膏療法が殆んど無効とされていた。処が,最近Sulz-berger & Witten1),Scholtz2),Tye3)らが「コ」軟膏を特殊な方法で密封する,いわゆるocclu-sive dressing technique (密封療法,以下O.D.T.と略す)を考案,爾来軟膏の適応範囲は著しく拡大され,上述の如き部位でも結構皮膚内における病巣の修復を期待されるようになつた。しかも都合のよいことはその際吸収される「コ」の吸収量が全身性の副作用を惹起する程大量でないことである。かくてO.D.T療法は軟膏療法に一大進歩を斉らし,これを契機に薬剤の皮膚吸収に関する研究も再び活発に論議され,最近この方面にも数々の知見が報ぜられている。そこで以下O.D.T.療法を中心に軟膏療法の最近の動向を述べ,併せて些か私見を加えてみたい。

展望

顕症梅毒について

著者: 佐野栄春 ,   本間真

ページ範囲:P.467 - P.477

Ⅰ.まえがき
 いうまでもないが,性病とくに梅毒は奥深く人間のサガに根ざすものだけに,その根絶はなかなか容易なことではない。とはいえ,社会状勢,治療法の進歩,予防対策の如何によりその動静に大きな変化がみられる。事実かの第2次大戦後の猖獗期からさほど日を経ぬうちに,社会の安定化,抗生物質の登場と共に新鮮梅毒患者を絶えてみぬようになり,講義材料にもこと欠く有様で,いつしか梅毒が地球上から絶滅したような錯覚に陥つていた。之は我が国のみならず欧米においても同様で,Arch.of Derm. & Syph.からSyphilologyの名が消えたのもその間の模様を如実に物語る。所が昭和36年に到りかかる太平ムードをあざ笑うが如く,突如として近畿瀬戸内地方,北九州に勃発的に顕症梅毒の出現をみ,2〜3年のうちに全国的に蔓延をみて,我々専門域のみならず重大な社会問題として取上げられるに到つたことは耳新しい所である。急遽日本皮膚科学会では昭和40年5月,学会シンポシウムとして「最近の顕症梅毒」が論じられ,機関誌「性病」が復刊され,又近くは性病予防法の改正が行われる等,一般啓蒙と共にその積極的対策が講じられつつある。
 今回「顕症梅毒」なるテーマを与えられたが,今次流行の初めに当り警鐘をならした一人として適当な解説をすべき責任も感じているか,既に上記シンポシウムをはじめ各所でこの問題は縦横に論じられているので,新たに附加すべき何物もない。ここでは最近の梅毒の疫学的俯瞰につき簡単にふれ,後は主として顕症梅毒の臨床像につき自験例をもととして略述し,今次流行期の特徴の2〜3について考察することにしたい。

原著

Acrochordonについて

著者: 籏野倫 ,   長島正治 ,   田久保浩 ,   中村絹代 ,   新妻寛 ,   三宅一夫 ,   吉村晶子

ページ範囲:P.479 - P.488

Ⅰ.はじめに
 主として成人の頸部,前胸部等に好発し,従来よりAcrochordon或はcutaneous tagと呼ばれている線維腫様小新生物に関しては,後述する如き種々多数の同義語があり,日常我々のよく経験する所であるにも拘らず,それが臨床上全く良性で単に美容上の意味を持つにすぎないためか,今日まで殆んど充分なる検討が行われていない。
 今回我々は,かかる小新生物に対し,病理組織学的検索並びに臨床統計的観察を試み,いささかの知見を得たので,従来の文献を慨説し,その結果を報告したい。

膠状稗粒腫の経験—とくにそのゼリー状物質の本態の検索併せて本症の統計的観察について

著者: 鈴木啓之

ページ範囲:P.489 - P.496

 膠状稗粒腫は1866年Wagnerにより初めて記載されて以来,海外では130例余りの報告をみるのに比し,本邦では1923年松本1)の報告をもつて嚆矢とし,土井2)の集めた松本3)(1923),戸沢4)(1947),島5)(1956),藤浪6)(1943),大隅7)(1955),東大8)(1961),帷子9)(1964)の8例のほか,安部ら10)(1965)の1例を加えて,9例を数えるにすぎない。本疾患の発生機序に関しても全く不明であり,その名称もWagnerのColloidmiliumを初めとして,Pseudomiliumcolloïdale(Arrighi,Wolfram,ら),Kolloid-milien(Marchionini,Luger),Pseudo-kollo-idmilium(Nicolau,Bizzozero),Dégénéresc-ence colloide du derm(Besnierら,Feulardら),Colloidoma miliaris(Jarisch),Pseudo-milo-colloide(Pelizzari,Lombardo,ら),Mi-lium colloide(Pouget,Dubreuilh,ら),Coll-oid milium(Arnord,Robinson,ら),Pseudo Milium colloidale(Werther),Milium coloi-de(Alvaro Lapa),Degeneratio colloidalis miliaris(Ketzan),Colloid pseudomilium (Percivalら),Elastosis colloidalis conglo-merata(Ferreira-Marquesら)等の多数が提唱されている。
 わたくしは最近,膠状稗粒腫の1例を経験したのでこれを記載し,併せて本疾患の統計的観察を試み,かつ病巣部ゼリー状物質の本態解明のために行つた若干の実験成績を記し,その文献的考察を述べたい。

皮疹を伴つた伝染性単核球症の1例

著者: 関藤成文

ページ範囲:P.497 - P.503

Ⅰ.緒言
 伝染性単核球症(腺熱)は発熱,リンパ節腫張及び血液像の変化を3大徴候とする予後良好な伝染性疾患であり,従来主として内科領域で検索の対象となつていたが,近年前記Trias以外に種々の皮疹を併発せる事例の故に,皮膚科領域においても注目されるに至つた。筆者は東大分院皮膚科において,臨床的に本症を疑い,血液学的並びに血清学的検索により本症と確診した1例を経験したので,ここに報告したい。

Familiäre Akroosteolyseについて

著者: 蔭山亮市 ,   大国剛 ,   松本維明 ,   岩津昭

ページ範囲:P.505 - P.509

Ⅰ.はしがき
 足穿孔症の中には家族的にあらわれる骨変化が原因になつているものがある。1950年にHarna-sch1)がDie Akroosteolyse, ein neues Krank-heitsbildと発表して以来,1つの独立疾患と認めるもの,あるいは1つの症状に過ぎないとするものとの争論が絶えないのであるが,最近吾々はこの記載に一致すると思われる症例を経験したので報告する。

検査法

薬理学的皮内反応

著者: 高瀬吉雄 ,   池上寿彦

ページ範囲:P.510 - P.517

はじめに
 疾患の抗原の確立,経過および皮膚諸機能を窺う目的で皮膚反応が汎く行われている。皮内反応は皮膚反応の代表的なものの一つであり,抗原判定や免疫状態の動態を知るための免疫学的皮内反応と,ある薬理的効果を持つ物質に対する個体の反応程度を知るための薬理学的皮内反応とがある。
 薬理学的皮内反応は生体に既知の薬理効果を示す物質の一定濃度,一定量により生じた皮膚の潮紅,膨疹形成,毛髪反射,発汗反応や時に蒼白反応などを疾患患者に観察して,対照群のそれらと比較検討,その物質に対する疾患者の皮膚生理機構の素因的動向を知らんとするものである。また疾患発生,あるいは経過中の,該個体の変調を窺わんともする。その方法および術式は概ね一定しており,かつ一般に簡便である。しかしその成績は絶えず,年齢,性,季節,温度,湿度,部位などの非特異的影響をうける。このためその判定は必ずしも容易でないことは,免疫学的皮内反応の場合と同様である。

薬剤

アスレタン軟膏(K-4249-O軟膏)による白癬の治療成績

著者: 北村清隆 ,   熊谷武夫 ,   西部武嗣 ,   小西喜朗 ,   石崎宏 ,   金原武司

ページ範囲:P.519 - P.522

 K-4249-O軟膏は,K-4249(科研化学株式会社開発)を主剤とした軟膏である(処方別記)。K-4249は下記の組成をもつた黄色油状物質で,かなり強い抗真菌作用(星芒状白癬菌に対する最小発育阻止濃度は5μg/ml)
  IC≡C・(CH28COO(記号省略)
  C17H21O2I
  Phenyl−11—iodo−10—undecynoate
   処方
  K-4249………0.5%
  水溶性基剤………99.5%
をもつといわれる1)。われわれ2)はさきに,本物質を主成分としたチンキ剤による白癬の治療成績を報告したが,今回はK-4249-O軟膏による成績を述べる。

代謝性綜合ホルモン剤による尋常性痤瘡の治療

著者: 小谷宜丸 ,   浜口次生

ページ範囲:P.525 - P.529

Ⅰ.緒言
 尋常性痤瘡はその多くは思春期,青年期に生ずるものでAndrews1)によれば約90%にもみとめられるといわれる。したがつて極く軽度のものは生理的のものと考えられ治療の対象とすべきものでもないが皮疹が顕著で治療を要するものも決して少なくはない。
 本症の成因より考えればその治療上問題とすべき点は多方面にわたつており,多種の要因が複雑に関連し,就中内分泌の関与するところが極めて大きい。事実本症に対して各種のホルモン剤が有効な場合のあることは諸家により報告されてはいるが各内分泌臓器は互いに関連し調和を保つておりホルモン剤の使用については特に慎重を要する。

随筆

私の後任

著者: 谷村忠保

ページ範囲:P.530 - P.530

 私は昭和30年3月定年退職した。その後後任は中々決定せず,翌年8月やつと定まつた。すなわち皮膚科は京大助教授藤浪得二博士が,また泌尿器の方は新潟大学教授楠隆光博士に決定した。
 藤浪教授は既に京大におられた頃から,皮膚組織培養について,すぐれた仕事をせられ,その後阪大に転ぜられてからも,この方面に精進せられ,殊に皮膚癌については,進んだ成績をあげている。

教室紹介

岩手医科大学/久留米大学

著者: 昆宰市

ページ範囲:P.532 - P.533

教室の歴史
 当教室は昭和5年4月 故増田六之助教授の御着任をもつて初まる。増田教授は遠山,太田両教授に師事し,白癬菌についての造詣が深く,又優れた人格者であつたとも承わつている。当時の教室は創立後間もなく,医局員もきわめて小人数であつたにも拘わらず,非常な御努力をもつて,日夜研讃に励まれ,白癬菌に関する研究の他多方面に亘る研究がなされ着々教室の基盤を固められた。ついで昭和30年8月には増田教授死去に際し,その後任者として慶応大学皮膚科学教室より現伊崎正勝教授が赴任された。すなわち伊崎教授は故横山砧教授に師事し,慶応大学医学部において助手,講師を歴任され,更に中野組合病院皮膚科医長を経て岩手医科大学皮膚科泌尿器科教室教授として着任された。以後伊崎教授はその温厚,篤実な人格とヒユーマニズムに富んだ理念の下に故増田教授の築かれた基礎の上に医局内の整備,充実に当り,皮膚科担当として慶応大学より黒沢誠一郎講師(後に助教授に昇任)を招聘,泌尿器科担当として岩手医科大学出身の赤坂俊夫助教授を任用し,着々その実を挙げられた。更に古きものに新しきものを導入して伊崎教授年来の研究テーマであつた老人性変化を中心として皮膚科領域における線維素溶解酵素に関する研究,細菌学的諸問題に関する研究,更には癩に関する研究等を強力に推進し,現在に至つている。又昭和37年4月には長年泌尿器科助教授として敏腕を振るわれた赤坂助教授が辞任され,新たに慈恵医大泌尿器科教室より大堀助教授が着任し,泌尿器科学講座を引き続き担当され研究に従事することになつた。昭和40年8月に長年医局に貢献された黒沢助教授が辞任された。その後昭和41年4月には両講座の充実,発展が認められ,大堀助教授の教授昇任と相まつて皮膚科学講座ならびに泌尿器科学講座の実質的な分離が行われるに至つた。以後既に工年,皮膚科学教室は伊崎教授の下,小人数ながらも一致団結して診療に研究に精励して日夜不断の努力を続けている。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.537 - P.540

DERMATOLOGICA 132: 4, 1986
Skin Damage by Washing: D.J.H. Vermeer, J.C. Jong and L.A. Donk 305
Tinea Nigra: F. Kerdel-Vegas and M.C.B. Albornoz 320

〈原著論文抄録〉

Acrochordonについて,他

著者: 籏野倫 ,   長島正治 ,   田久保浩 ,   中村絹代 ,   新妻寛 ,   三宅一夫 ,   吉村晶子

ページ範囲:P. - P.

 従来Acrochordon或はcutaneoustags of the neck等と呼ばれた小新生物につき,慶大皮膚科外来患者20例を対象とした病理組織学的検索並びに同皮膚科外来患者716例および同産科外来患者(妊婦)231例を対象とした臨床統計的観察を試み,およそ次の結果を得た。
 本症は思春期頃より,年令の増加に伴い,男女性別に関係なく発生増加する有茎小丘疹で,頸部,前胸部肩また腋窩等に好発する。組織学的には,角質増殖,表皮肥厚,乳頭腫症また基底部のくびれ等基本的な4病変を示した。本症は肉眼的にその存在が認められた時よりすでに有茎状を呈するものであって,同時に多数混在した無茎丘疹の大部分は,組織学的に老人性疣贅であった。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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