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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科21巻7号

1967年06月発行

雑誌目次

図譜・246

伝染性膿疱性皮膚炎

著者: 芝木秀臣

ページ範囲:P.652 - P.653

症例1 30歳,男。
現病歴 50前に左前腕屈側に小丘疹が生じ次第に拡大した。疼痛はない。

図譜・247

Franceschetti-Zwahlen-Klein Syndromeの家族例

著者: 大浦武彦 ,   谷藤順士 ,   浜本淳二

ページ範囲:P.654 - P.655

本症はBerry (1889),Collins (1900)によつて発表されて以来,いわゆるmandibulo-facial dysostosisといわれていたが,Franceschetti (1949)は多数の類症を検討し,これを完全型,不全型,片側型,頓坐型,非典型型の5型に分類整理して考察を加えている。
完全型は,反蒙古人様眼裂,眼瞼欠損,頬骨発育不全の3症状(不全型あるいはCollins syndrome)のほかに,耳,口腔,毛髪,骨格などの奇形を伴うものである。

綜説

じんましん

著者: 矢村卓三

ページ範囲:P.657 - P.662

 じんましんはかゆみとともに,卒然として,発赤をともなう膨疹としてあらわれ,数分ないし数時間後あとかたもなく消えさる疾患である。すなわち,それは一過性,表在性,限局性浮腫である。
 じんましんの経過を観察するに,多くは局所の皮膚発赤が先行する。それとほとんど同時に局所の瘙痒を訴えてくる。やがて,その部に粟粒大の丘疹状膨疹が「とりはだ」のようにあらわれてくる。この丘疹状膨疹は急速に増大し,あるいは融合して完全なじんましんとなる。皮膚発赤からじんましん完成まで要する時間は1〜5分内外である。かゆみのため掻くと,さらにじんましんの発生は増長され,発赤,膨疹はさらに増大してくる。

原著

CONTAGIOUS PUSTULAR DERMATITIS(ORF.)

著者: 芝木秀臣

ページ範囲:P.663 - P.671

 contagious pustular dermatitisは緬羊,山羊の口唇に疣状痂皮を形成する良性限局性のvi-rus性疾患で,人には直接感染動物との接触により伝染し,痘瘡様の発疹を生じる。1923年Ayn-aud1)が緬羊の発生例を報告して以来,緬羊と山羊を飼つている世界各国から報告があり,本邦では1948年秋に国立衛生研究所で緬羊に発熱を伴つた発疹が流行した例と2),1950年夏に長野県の緬羊牧場で3),また1950年山梨でいずれも緬羊に発生している2)。人間への感染は1943年Newsomら4)が緬羊から人への伝染例を,またPeterkin1)5)がイギリスで"ordinary variolous vaccinia"と似た単発の病巣を示した5例を報告しており,その他フランス1),ドイツ6),アメリカ7)8),スカンジナビア9),ニユージーランド10),オーストラリア11),ソ連12)など各地でみられ,報告された例数は少いが,実際にはかなり多いものと考えられる1)12)
 1965年5月に当地の種畜場で緬羊の間に本症が多発したが,獣医と労働者の3例に本症をみたので報告する。

ゴム皮膚炎の臨床的観察—特にゴムおよび加硫促進剤の貼布成績

著者: 斎藤文雄 ,   袖山英男 ,   山蔦淑江

ページ範囲:P.673 - P.683

緒言
 ゴム皮膚炎,ゴム湿疹はゴム工場で発生する職業性のものと,ゴム製品の使用によつて発生する非職業性のものとに大別される。職業性のものの発生頻度は米国では1〜3%,独では1%1),非職業性のものはHerrman2)によると接触皮膚炎8000例の約8%といわれている。ゴム製品に配合される無機,有機の化学物質の数は実に1000〜1500種及ぶが,ゴム皮膚炎の主な原因物質としてSchwartz et al3)によると多数の加硫促進剤accelerators,老化防止剤antioxidantsが注目されている。ゴム製品の使用の際,上記の物質が発汗などにより溶出して刺激性またはアレルギー性の皮膚炎を発生する。ゴム製品の種類も多種多様で,衣類用ゴム(靴下,ソックス,ストッキング,靴下止め,ズボン吊り,ブラジャー,パンティ,エプロン,コルセット,ヘアーネット,ドレスシールド,汗除け),履物用ゴム(革靴,長靴,サンダル,草履,ズック),保護用ゴム(手袋,指サック,コンドーム,麻酔用マスク,防塵用マスク,毒ガス用マスク,眼鏡),その他(マットレス,カーペット,テーブルクロス,ゴムホース,クッション,ラバースポンジ,ラバーフォーム,オムツカバー,氷枕,消ゴム,玩具,ステトスコープ,雨衣,潜水服)があげられる。接着剤などを原因とするゴム皮膚炎の臨床像は複雑で診断の困難な場合も少なくない。著者は10年間に経験した職業性の4例を含む42例のゴム皮膚炎の臨床的観察とゴム製品,加硫促進剤の貼布成績ならびにゴム皮膚炎の原因としての加硫促進剤の意義について報告する。

手掌の角質増殖型皮膚カンジダ症の2例—ならびに副甲状腺機能低下症(hypoparathyroidism)と表在性カンジダ症との合併に関する文献的考察

著者: 高橋伸也 ,   三浦隆

ページ範囲:P.685 - P.695

 皮膚カンジダ症は白癬についで多くみられる皮膚真菌症であるが,その多くは間擦部に限局性発生を示し,手掌,足蹠といつた角質層の厚い皮膚に原発あるいは続発することははなはだ稀である。通常みられる皮膚カンジダ症の症状は,ときに浸軟,糜爛を伴なう落屑性紅斑であつて,浸潤,角化,肥厚を合併することはほとんどない。われわれは,これまでに記載をみない,手掌に原発し,角質増殖性病変を伴なつた皮膚カンジダ症の2例を経験したのでその詳細について報告する。
 なお,そのうちの1例は特発性副甲状腺機能低下症に合併したものであるが,近年この両疾患の合併例が少なからず報告され,両者の因果関係が問題にされている。そこでこのような症例をひろく収集し,この問題について文献的考察をも合せ行なつた。

各種皮膚疾患におけるセルローズアセテート膜電気泳動法による血清蛋白分画

著者: 橋本功 ,   木村瑞雄 ,   山本欣一 ,   山内晢

ページ範囲:P.697 - P.704

I.緒言
 皮膚疾患における血清あるいは血漿蛋白分画の系統的観察はすでに多くの研究者によつてなされているが,これらはいずれも比色法17)20)23),Ti-selius法13)15)16)21)ないし濾紙電気泳動法1)〜5)9)11)によるものであり,このうち濾紙法が最も普及していた。
 近年セルローズアセテート膜が電気泳動法に導入されてから,この支持体による方法は分離・再現性にすぐれ,泳動時間が短かく,微量の試料で充分であるなどの点から急速に普及し,従来の濾紙法にとつて代りつつある。しかし,本法は従来の方法に比べてアルブミンがやや高値を示すなど測定値に多少の差が認められており22)28),従つて本法による分画値はそのまま従来の方法による値とは比較できない。

検査法

健常皮表ならびに皮膚化膿巣からの細菌学的検査

著者: 朝田康夫

ページ範囲:P.705 - P.717

I.本篇で対象とする疾患
 本篇では皮膚科領域における臨床細菌学的検査法について日常よく遭遇する疾患を中心に記載する。対象とするものは,健常皮膚面,膿皮症,皮膚ジフテリア,皮膚結核,癩,尋常性痤瘡,酒皶,2次感染創面(火傷,植皮部等),湿疹病巣とする。性病,真菌症,寄生虫症,ウイルス性疾患等は除外する。

薬剤

ペルガレンによる瘢痕ケロイドの治療と予防

著者: 塚田貞夫 ,   西部武嗣

ページ範囲:P.721 - P.723

 ペルガレン(Pergalen,日本ヘキスト株式会社提供)は,ヘパリン類似の作用を持つといわれるポリエチレンスルフオン酸ナトリウムを主成分とし,これにニコチン酸ベンチルエステルを加えた油中水型乳剤性軟膏である。これを,形成外科的手術の後療法および瘢痕ケロイドの治療に使用した成績を下に述べる。

還元型Glutathione製剤(Tathion)の皮膚科領域における応用—特に色素沈着症に対する効果について

著者: 浜田稔夫

ページ範囲:P.725 - P.729

 近年SH化合物が諸種アレルギー性皮膚疾患に応用され,その効果が報告されているが1)〜4),SH化合物の代表的なものとして挙げられる還元型グルタチオンは1921年Hopkinsによつて酵母,肝臓,その他種々の生物体組織から発見されて以来,生体の酸化還元機構に関与し,生体内における各種酵素の活性化作用および広汎な解毒作用等のあることが報告されており,また抗アレルギー作用のあることも知られている。
 一方,1946年Rothmanら5)は人表皮抽出液中にSH化合物が存在し,これらはtyrosinaseを阻害し,SH毒によつて回復することを報告した。in vitroにおいて,SH化合物はtyrosinasc活性を阻害し6)7),これはまたSH基がtyrosinase中に含まれる銅イオンと結合するためであることも知られている6)。実際,臨床的に色素沈着症について,SH化合物を用いた報告は余りみられない。

随筆

過去に生きる方々

著者: 北村精一

ページ範囲:P.731 - P.731

 故恩師土肥慶蔵先生以下既に物故された先輩,後輩で日本の皮膚科学界に多くの足跡を残し,且つ私自身面識があり,大小の知遇を受けた方々を思い出して,その氏名を列記して見たら実に30余名の多きを数えた。
 私が大正14年東大教室に入局以来,最初の訃音に接したのは旭憲告先生で本郷の麟祥院で東京での追悼法会があり,故土肥先生から,「旭は癌だつたのだよ」と承つたその後3年には土肥先生がやはり癌でなくなつた。かなしい記憶は今も忘れられない。

教室紹介

徳島大学/群馬大学

著者: 藤田和典

ページ範囲:P.732 - P.733

教室の歴史
 徳大医学部の母体は昭和18年に設立されておりますが,皮膚科泌尿器科はなく,正式に皮膚科泌尿器科学講座が設置されたのは昭和23年2月のことで,同年の11月10日に荒川忠良教授が初代皮膚泌尿器科教授として来徳されております。最初医局員は教授以下3名という少人数で実験器具もまともに揃わない状態から四国の地に皮膚科学の新しい歴史が始まつたわけです。以来今年で19年,その間,昭和38年に泌尿器科(黒川教授)が分科独立し,現在皮膚科は荒川教授以下常勤医局員が14名,4月よりの新入医局員が3名予定されておりますので研究体制は増々充実して来ていると云えましよう。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.734 - P.736

THE BRITISH JOURNAL OF DERMATOLOGY
78 : 7, July, 1966
Some Remarks on the Future of Dermatological Research : R. Cameron 365
Cholinesterase in Moles : G.C. Wells, I.A. Magnus and G.J. Farthing 374

〈原著論文抄録〉

Contagious Pustular Dermatitis,他

著者: 芝木秀臣

ページ範囲:P.745 - P.745

 contagious pustular dermatitis(orf.)は,緬羊,山羊の口唇に疣状の痂皮を形成する良性限局性のvirus性疾患で,人には感染動物との直接の接触により伝染し,痘瘡様の発疹を生ずる。著者は,北海道滝川市の種畜場で,緬羊の間に本症が多発したさいに,獣医1名,労働者2名の計3名に,本症が発生したのを観察した。いずれも手指または前腕に,単発性の痘瘡様膿疱を生じたもので,組織学的には,マルピギー層細胞の空胞変性と核の濃縮,水疱形成があり,真皮には乳頭層の強い浮腫と,乳頭下層のリンパ球を主とした炎症性細胞浸潤が認められた。3例ともに2〜4週間の経過で治癒したが,フェノキシエチルペニシリンは無効のようで,テトラサイクリンの使用により2次感染を防止し,経過を短縮させることができた。
 本症は,緬羊および山羊を飼養している世界各国からの報告があり,本邦でも緬羊間の発生が報告されているが,人への感染報告はまだないようである。しかし,世界の報告例をみても,文献的には比較的少ないが,実際にはかなりあるものと考えられる。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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