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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻1号

1968年01月発行

雑誌目次

図譜・260

Duhring疱疹状皮膚炎

著者: 藤沢竜一 ,   滝口都三 ,   中山芙蓉

ページ範囲:P.6 - P.7

患者 22歳,未婚女子。家族歴 特記すべきことなし。
既往歴 3カ月前にTonsillitisに罹患した以外,特記すべきことなし。

図譜・261

陰嚢石灰沈着症

著者: 松尾聿朗

ページ範囲:P.10 - P.11

患者 35歳,♂。初診 昭和41年9月26目。
主訴 陰嚢皮膚の多発性腫瘤。

綜説

皮膚科領域におけるブドウ球菌の問題

著者: 朝田康夫

ページ範囲:P.13 - P.21

I.はじめに
 ブドウ球菌属はミクロコッカス科に属する好気性ないし通性嫌気性の菌属で,この中に黄色ブ菌と表皮ブ菌が大別されている。(尚お絶対嫌気性ブ菌の存在についてはBergy(10)によるとPepto-COCCUSとして記載されている)。黄色ブ菌と表皮ブ菌の細菌学的区別では,現在コアグラーゼ産生の有無とマンニット分解能が最も重視される10)。尚お近時DNase (Deoxyribonuclease)産生の有無が重視される傾向にある12)62)。この三者は,一致することが多いが、必ずしも常に全て一致するとも限らない。例えばコアグラーゼ陰性でDNase陽性の株に強い毒性の認められる場合もある。然し現在の段階でBergyに従うならば,コアグラーゼ陽性のみでも一応黄色ブ菌として好いとするのが一般の趨勢である。色素産生,溶血,ゲラチン液化、フォスファターゼ等の性質は区別指標としての比重のかけられ方は低いが,溶血毒,殊にα毒素はかなり病原性と関係が深いとされる。
 黄色ブ菌は一般に病原性,表皮ブ菌は非病原性とみなされる。然し感染症は生体と菌の相互関係によつて成立する以上,表皮ブ菌も時として(例えば生体の条件の悪化,感染する菌が多数であるとき等)感染症を起し得るし,黄色ブ菌も常に感染症を生ずるとも限らない。従つて臨床的にはブドウ球菌属は一応病原性とみて,その中に強い毒力ないし病原性を示す黄色ブ菌と,弱毒力ないし弱病原性を示す表皮ブ菌が大ざつぱに分けられると考える方が自然であろう。

原著

Gianotti-Crosti症候群について

著者: 前田一郎 ,   佐野栄春

ページ範囲:P.23 - P.29

I.まえがき
 小児の四肢伸側にみられる毛嚢性丘疹で,比較的急速な経過をしめし,かなりの比率に感冒などの前駆症状を認める例は往々にして経験される。古くは急性紅色苔癬の一亜型とされていたようであるが,近時ヨーロッパ諸国で注目をひき,その臨床像,病因等につき検討されると共に独立疾患となす観方がつよくなつてきた。
 即ち1953〜1955年,Gitanotti1)はミラノで従来報告をみない独自の病像を呈した3例の小児例を報告し,1956〜1957年にGianotti及びCrosti2)は"Akrodermatitis papulosa eruptiva infa—ntilis"として文献上初めて記載した。1960年にはGianotti及びCrosti3)により同様症状を呈する症例約60例が集められ,"Gianotti-Crosti Syndrom"と命名され,その外貌が愈やく明らかとなつてきた。

Sclérodermie atypique lilacée et non-indurée(Gougerot)とAtrophodermia idiopathica progressiva(Pasini)の関係について

著者: 渡辺靖 ,   今井信子 ,   永島敬士

ページ範囲:P.31 - P.37

I.はじめに
 最近我々はAtrophodermia idiopathica progressiva (以下AIと略)と,sclérodermieatypique lilacée et non-indurée(Gougerot)(以下SALNと略)と診断すべき症例,各々1例を経験した。AIに関しては1923年Pasini1)が報告して以来,近年限局所鞏皮症を併発している症例がみられるということから,本症を鞏皮症の亜型とする意見が多数報告されている。ここに我々の経験した症例を詳しく観察して若干の考察を加えてみたいと思う。

Hemangiopericytomaについて

著者: 久保縁

ページ範囲:P.39 - P.47

I.緒言
 Stout & Murray1)は1942年,691例の血管系腫瘍を集計したが,その中にZimmermann2)の唱えた毛細血管のpericyteに由来すると思われる腫瘍9例に対してHelnangiopericytomaと命名した。さらにStout3)は1949年に本腫瘍の25例を纒めて報告し,このものを従来の他の血管系腫瘍から別箇のものとして新しい概念を確立した。
 本腫瘍は皮膚のみならず,毛細血管の存するところ全身諸臓器に生じ得るもので,欧米諸国においては今日まで比較的多くの報告がみられるが本邦では少なく,いまなお比較的稀な疾患と考えられている。著者は最近顔面皮膚に発生した本腫瘍の1例を経験し,あわせて自験例を含めた本邦の31報告例4)〜30)について若干の文献的考察を試みたのでここに報告する。

爪下外骨腫(Exostosis subungualis)の2例

著者: 新妻寛 ,   中山秀夫 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.49 - P.53

I.緒言
 末節骨先端部爪甲下に軟骨性外骨腫を生ずるものを爪下外骨腫(Exostosis subungualis)といい,1817年,Dupuytrenの報告以来,欧米には多数の報告1)があり,特に珍稀な疾患ではないが本邦報告例は少い。
 最近我々は,34歳主婦の右拇指先端に,また11歳男児の左第1趾先端内側に生じた本症の2例を経験したので,ここに報告し,その臨床像及び病因につき若干の文献的考察を行いたい。

肥満を伴つた良性黒色表皮腫の1例

著者: 皆見紀久男 ,   田代正昭 ,   児浦純生

ページ範囲:P.55 - P.60

I.緒言
 Acanthosis nigricans黒色表皮腫(黒色棘細胞増殖症)はJanovsky1)とPollitzer2)がそれぞれ乳嘴状増殖,色素沈着,角質増殖を臨床上の特長とし,それが腋窩,項,頸,外陰などに主に好発する疾患と記載し,UnnaがAcanthosis nigricansと命名したが,本症にはDystrophie papillaire et pigmentaire Darier, Melano-dermie papillaire, Keratosis nigricans,などの異名があるが,一般にAcanthosis nigricans (以下ANと略す)が多く用いられている。DarierがAN症例中に内臓癌の合併を指摘して以来,高齢者にしばしば悪性腫瘍を伴うものが観察される一方,比較的若年者で悪性腫瘍を伴わない症例も多いことから,Bogr-ow3)は本症を悪性腫瘍合併の有無により悪性型maligne AN (MANと略す)。良性型benigne AN (BANと略す)に分類した。またANの年齢的分布が思春期と中年以降の高齢者にピークを示すことから,若年型,老年型に分類することもあるが,これはBAN, MANとは必らずしも一致しない。Miescher4)はかかる症候学的差異に関係なく病因論的立場から原発性本態性型と続発性症候性型とに分類し,向井は癌種を伴わないANが真性型で,伴うものは症候型として別個に取扱うべきとした。Curth5)6)は若年者にも悪性腫瘍を伴うものがあり,成人でもそれを伴わないものもある所から,若年型,成人型という分類よりも,良性型,悪性型に分類する方が適切であるとし,さらに従来良性型あるいは若年型と診断されるものの中に肥満と平行して皮疹の消長がみられるものがあり,これをPseudoacanthosis nig-ricans (PANと略す)と命名,悪性型,良性型に対する第3型に分類した。その後PANは一応その独立性は認められながらも,Heite u.von der Heydt7)はANを悪性型と良性ANに分け,後者は狭義のBANと良性群の特殊型としてPAN, Papillomatose confluente et rét-iculée, Pseudoatrophodermia colli, Parakéra-tose bzw. Atrophie brillanteを属せしめたごとく,PANはなおBANやその周辺の疾患との関連について論議されている。われわれは最近肥満を伴つた若年性のANの1例を経験したので,その症例の大要を記載し,BANとPANとの関連につき若干の考察を加えた。

尋常性疣贅の精製痘苗療法

著者: 大矢正巳

ページ範囲:P.61 - P.64

I.緒言
 尋常性疣贅に精製痘苗の有効なことは,野口の報告以来多数の報告で知られているが,その成績は報告者によつて差があり,なお確実な治療法とは考えられていない。私は経験上注射法如何が効果を左右することを知り,従来一般に行われている局所少量分割注射法に対し,始めより可及的大量を,疣贅部が完全に白変するように局所皮内注射することにより,注射部位の疣贅についてはほぼ確実に治癒させ得ると考えるに至つたので,未だ少数例ではあるが報告する。

検査法

DOPAハクリ標本についての新しい試み

著者: 水野信行

ページ範囲:P.69 - P.77

I.はじめに
 Medawar, P. B.(1941)が表皮ハクリ法を考案してから,表皮Melanocyteの観察に新しい進歩をもたらした。Becker, S. W. et al.(1952)はDOPAハクリ標本を作製し,つづいてBilling-ham, R. E. and Medawar. P. B.(1953),Szabo, G.(1954)あるいはStarico, R. J. and Pinkus, H.(1957)らによりいろいろの工夫と改良とが加えられてきた。

薬剤

ビタミンB2酪酸エステルによる尋常性乾癬の治験

著者: 川村太郎 ,   石川英一 ,   森俊二 ,   鎌倉和江

ページ範囲:P.85 - P.95

I.緒言
 近年漸増する傾向にある尋常性乾癬の発生病理に就ては,まだまだ解明されていないことが多い。我々は,併しながら,この点に関して数年来の研究1)2)3)を通じて,一応,次のような見解を有するに至つた。すなわち血管炎に原発する皮膚血管反応の繰り返しが,乳頭体毛細血管係蹄の延長,屈曲を含む新生,内腔の拡張等の本症に特異的とされている血管変化を来し,それとともに増大する血流により,表皮には特徴的皮膚細胞の増殖(アカントーゼ),表皮代謝の異常(例えばDNA—代謝の転換率の促進),諸酵素(例えばコハク酸脱水素酸素,Tran-saminase, Tripeptidase等)活性の上昇,鱗屑水溶成分の異常(可溶性蛋白,SH-蛋白,五炭糖,Uracilの上昇,遊離アミノ窒素の減少,ヘキソースアミンの増加)等がおこると解される。血管炎の発生要因として,第1に,咽頭病巣その他の病巣の細菌性多糖類(あるいは,それに類似する皮膚酸性ムコ多糖類)によるアレルギー反応toxische Wirkung又は,逆に血管側のIntoleranz Reaktionが考えられ4),そして所謂Kobner現象あるいは,本症に認められる血管系の異常反応は,繰り返しておこる皮膚血管反応の結果,血管が非特異的に反応するに至つたと解釈したい。従つて,本症の治療に関しても次のような諸点の改善が望ましいと思われる。
 ①咽頭その他,病巣感染の抑制:急性経過をとつて発症,あるいは,尋常性乾癬例で悪化,しばしば高いASLO,ASta値を示す滴状乾癬では,抗生物質の使用は時に有効であるが(Korting)5)併し,慢性傾向の強い尋常性乾癬の定型疹では,この治療は効を奏しない。

印象記

第13回国際皮膚科学会見聞記

著者: 福代良一

ページ範囲:P.97 - P.102

 この夏(昭42,1967)ミユンヘンで開かれた第13回国際皮膚科学会(XIII.Congressus Internationalis Dermatologiae,略してCID)には日本から北村包彦,北村精一の両先生のほか,100名近い人々が参加した。この人数は独・米・仏・英からの各参加者数に次ぐ大部隊で,開会式の席上,事務総長のSchirren教授の挨拶において特に言及され,拍手が起つたほどである。私もその1人として出席した。以下,この学会において見聞したこと,その他を述べるが,前回の国際学会(ワシントン,昭37)との比較にも触れてみたいと思う。なお,佐藤教授の印象記も本誌に発表されたが(21巻12号1194頁に掲載された),同教授と予め記事分担の話合いをしていないので,重複する点のありうることをお断りしておきたい。

日本皮膚科学会第31回東日本連合地方会印象記

著者: 帷子康雄

ページ範囲:P.103 - P.105

 第31回東日本連合地方会は昭和42年10月6,7の両日,信州大学高瀬教授を会長として松本市々民会館2会場において盛会裡に行なわれた。
 内容は一般演題65(紙上発表20,欠演2),スライド供覧45,特別講演1,シンポジウム1と云う充実したものであつた。私達の学会も年々着実な進歩を示し,最近では電顕像等もroutineとなつた感があるが,研究内容の細分・専門化も著しく,演題の全てを理解することは到底困難となり,討論も専門家同志で交わされる傾向にあることは否めない。従つて本連合地方会創設当初の所謂ゆかたがけで話し合う趣旨はスライド供覧に伝わつたもののようで,第1日の全てがこれに当てられたことも学会の共通の場としての意義を深く感じさせるものである。

教室紹介

京都府立医科大学/慶応義塾大学

著者: 上田恵一

ページ範囲:P.106 - P.107

 京都府立医科大学80年史(昭和30年発刊)によると本学は明治5年(1872)に療病院として発足し,明治12年(1879)に医学校となり,皮膚科が出来たのは明治28年頃からで明治30年(1897)に皮膚科・耳科担当駆梅院長江馬章太郎教諭という記載があり,ここで皮膚病学,梅毒学,耳科学が講ぜられた。越えて大正3年(1914)から佐谷有吉先生が府立医学専門学校教諭として,更に大正11年(1918)からは中川清先生が府立医科大学教授として夫々皮膚科,梅毒科,泌尿器科の教育,研究,診療にあたられ,中川先生は本邦最初のHebra氏疱疹状膿痂疹例を報告されている。かくて昭和22年(1947)には片岡八束先生が皮膚泌尿器科教授となられ,皮膚の内分泌機能,即ちHauthormonの研究に主力を注がれ,晩年には本学学長として大学の運営に当たられた。次いで昭和30年には岩下健三先生が北大教授から赴任され皮膚科泌尿器教室として小田助教授(現泌尿器科教授),外松助教授が補佐にあたり,昭和40年に泌尿器科が分立するまでこの陣容が保たれていた。分立後は診療病棟も全く一新され,皮膚科教室として現在に至つている。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.108 - P.111

ARCHIVES OF DERMATOLOGY95 : 3, March, 1967
ANA Titers in Lupus Erythematosus and Certain Chronic Dermatoses : G. J. Carnabuci, H. A. Luscombe and I. L. Stoloff 247
Rhinophyma With Carcinoma : D. W. Acker and E. B. Helwig 250

〈原著論文抄録〉

Gianotti-Crosti症候群について,他

著者: 前田一郎 ,   佐野栄春

ページ範囲:P.113 - P.113

 小児の四肢伸側にみる毛嚢性丘疹で,比較的急速な経過と感冒等の前駆症状をもつ疾患は1957年Gianotti及びCrostiの報告以来ヨーヨッパ諸国では注目されているが,本邦では未だその記載がない。そこで我々は昭和38年以降かかる症例に注目,数例を蒐集したが,症例1,2はいづれも1歳の男子の四肢,顔面にみたもので,Gianotti-Crostiの記載に合致する。他の4例は年齢,発症部位等多少の疑問点があるが,いずれも上気道感染の前行があり,臨床像も類似して恐らく本症候群に近いものと思われる。尚症例2では皮疹組織中に封入体とおぼしき像を得,ウイルス感染説を支持するものである。
 次いで欧米報告例の文献的考察を行い,年齢,性,発症季節,部位,病状,病因等につき総括紹介すると共に,小児扁平苔癬をはじめ鑑別診断上問題となる疾患との関係につき述べた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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