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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科22巻1号

1968年01月発行

文献概要

綜説

皮膚科領域におけるブドウ球菌の問題

著者: 朝田康夫1

所属機関: 1関西医科大学皮膚科教室

ページ範囲:P.13 - P.21

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I.はじめに
 ブドウ球菌属はミクロコッカス科に属する好気性ないし通性嫌気性の菌属で,この中に黄色ブ菌と表皮ブ菌が大別されている。(尚お絶対嫌気性ブ菌の存在についてはBergy(10)によるとPepto-COCCUSとして記載されている)。黄色ブ菌と表皮ブ菌の細菌学的区別では,現在コアグラーゼ産生の有無とマンニット分解能が最も重視される10)。尚お近時DNase (Deoxyribonuclease)産生の有無が重視される傾向にある12)62)。この三者は,一致することが多いが、必ずしも常に全て一致するとも限らない。例えばコアグラーゼ陰性でDNase陽性の株に強い毒性の認められる場合もある。然し現在の段階でBergyに従うならば,コアグラーゼ陽性のみでも一応黄色ブ菌として好いとするのが一般の趨勢である。色素産生,溶血,ゲラチン液化、フォスファターゼ等の性質は区別指標としての比重のかけられ方は低いが,溶血毒,殊にα毒素はかなり病原性と関係が深いとされる。
 黄色ブ菌は一般に病原性,表皮ブ菌は非病原性とみなされる。然し感染症は生体と菌の相互関係によつて成立する以上,表皮ブ菌も時として(例えば生体の条件の悪化,感染する菌が多数であるとき等)感染症を起し得るし,黄色ブ菌も常に感染症を生ずるとも限らない。従つて臨床的にはブドウ球菌属は一応病原性とみて,その中に強い毒力ないし病原性を示す黄色ブ菌と,弱毒力ないし弱病原性を示す表皮ブ菌が大ざつぱに分けられると考える方が自然であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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