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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科22巻1号

1968年01月発行

文献概要

原著

肥満を伴つた良性黒色表皮腫の1例

著者: 皆見紀久男1 田代正昭1 児浦純生1

所属機関: 1鹿児島大学医学部皮膚科教室

ページ範囲:P.55 - P.60

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I.緒言
 Acanthosis nigricans黒色表皮腫(黒色棘細胞増殖症)はJanovsky1)とPollitzer2)がそれぞれ乳嘴状増殖,色素沈着,角質増殖を臨床上の特長とし,それが腋窩,項,頸,外陰などに主に好発する疾患と記載し,UnnaがAcanthosis nigricansと命名したが,本症にはDystrophie papillaire et pigmentaire Darier, Melano-dermie papillaire, Keratosis nigricans,などの異名があるが,一般にAcanthosis nigricans (以下ANと略す)が多く用いられている。DarierがAN症例中に内臓癌の合併を指摘して以来,高齢者にしばしば悪性腫瘍を伴うものが観察される一方,比較的若年者で悪性腫瘍を伴わない症例も多いことから,Bogr-ow3)は本症を悪性腫瘍合併の有無により悪性型maligne AN (MANと略す)。良性型benigne AN (BANと略す)に分類した。またANの年齢的分布が思春期と中年以降の高齢者にピークを示すことから,若年型,老年型に分類することもあるが,これはBAN, MANとは必らずしも一致しない。Miescher4)はかかる症候学的差異に関係なく病因論的立場から原発性本態性型と続発性症候性型とに分類し,向井は癌種を伴わないANが真性型で,伴うものは症候型として別個に取扱うべきとした。Curth5)6)は若年者にも悪性腫瘍を伴うものがあり,成人でもそれを伴わないものもある所から,若年型,成人型という分類よりも,良性型,悪性型に分類する方が適切であるとし,さらに従来良性型あるいは若年型と診断されるものの中に肥満と平行して皮疹の消長がみられるものがあり,これをPseudoacanthosis nig-ricans (PANと略す)と命名,悪性型,良性型に対する第3型に分類した。その後PANは一応その独立性は認められながらも,Heite u.von der Heydt7)はANを悪性型と良性ANに分け,後者は狭義のBANと良性群の特殊型としてPAN, Papillomatose confluente et rét-iculée, Pseudoatrophodermia colli, Parakéra-tose bzw. Atrophie brillanteを属せしめたごとく,PANはなおBANやその周辺の疾患との関連について論議されている。われわれは最近肥満を伴つた若年性のANの1例を経験したので,その症例の大要を記載し,BANとPANとの関連につき若干の考察を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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