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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻13号

1968年12月発行

雑誌目次

特集 第67回日本皮膚科学会総会 宿題報告

皮膚真菌症

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.1269 - P.1300

I.はじめに
 本宿題報告の詳しい記載は,すでに日本皮膚科学会雑誌の第67回日本皮膚科学会総会号に発表した。実際の演説は,終始スライドによつて図表を映写しつつ行なつたのであるが,そのスライドの数は100枚を越えて,あまり多いゆえに,上記学会雑誌に図表を掲載することは見合わせた。しかるに本誌において総会特集号の刊行が企画され,その一部として宿題報告に使用された図表の全部を登載するよう慫慂されたので,その勧誘に従つて本稿を草することにした。それゆえ本稿は図表の掲載を主目的とし,本文はそれの解説に重点をおいたので,数字その他の詳細については上記学会雑誌上の記載を参照されたい。もちろん両者は書きかたが変つているだけで,その主旨は同一であり,記述は重複しているところが多い。

シンポジウムⅡ 下腿の炎症性硬結

下腿の炎症性硬結—序言

著者: 藤浪得二

ページ範囲:P.1310 - P.1310

 下腿の炎症性硬結と一口に言つても可成り広汎囲の,原因とか発症機転を異にする疾患が数多く含まれ,その整理は甚だ困難である。例をErythema nodosumとかErythema induratum Bazinにとつてみてみてもその原因が未だ確定されておらず,両者間にも中間型,移行型があり臨床上これ等を如何に取り扱つてよいものか,とまどう場合が少くない。原因や発症機転と直接結びつく病名が最も望ましいがその段階に達するにはまだ程遠いものと思われる。
 今回のシンポジウムでは結節性紅斑,硬結紅斑,結節性動脈周囲炎,アナフィラキシー様紫斑,游走性血栓性静脈炎,Weber-Christian脂肪織炎およびBehçet症候群によるものを中心に論議していただくこととし,一方,混乱を防ぐために診断用語としては今回限りのことであるが,①結節性紅斑とは急性の経過をとり,1〜2か月以内に瘢痕を作らず完全に消失するもの。②硬結性紅斑(Bazin)は結核性,非結核性を問わない,従つて,Montgomeryらの言うnodular vasculitisをもこれに含める。③アナフィラキシー様紫斑,真皮アレルギー性血管炎(Ruiter,過敏性血管炎,Gougerotの3徴候(trisymptome),結節性アレルギー疹,白血球破壊性血管炎などはアナフィラキシー様紫斑によつて代表せしめることにした。

下腿の炎症性硬結に関する概論

著者: 水野信行 ,   北郷修 ,   西田尚史 ,   石橋康正 ,   高岩堯 ,   松橋直 ,   臼井美津子 ,   鈴木秀郎 ,   三上理一郎

ページ範囲:P.1311 - P.1323

I.はじめに
 いわゆる炎症性下腿結節症のentityの理解および診断には,(1)臨床および病理像,(2)成立機序,(3)原因,(4)経過および治療に分けて考えてゆくのが便利である。ここで注意すべきことは,同じ臨床あるいは病理像をとるものでも,その原因がちがうことがあることである。たとえば結節性紅斑の滲出性炎は連菌の感染でもおこり,あるいは結核感染,そのほかいろいろの原因でおこりうることである(第1図)。

下腿炎症性皮下硬結の臨床

著者: 宮崎寛明

ページ範囲:P.1325 - P.1329

I.はじめに
 下腿の炎症性皮下硬結を主徴とする諸疾患は,その典型的なものは診断容易であるが,特に近年は診断に迷う事も少なくない。時代の推移と共に幾分その臨床像に変化の見られる可能性も考えられるので,最近10年間に観察した症例を集計し,その臨床像を窺つて見た。

下腿硬結症における細菌性抗体

著者: 小林健正 ,   原紀道 ,   滝沢和彦 ,   高野元昭 ,   苅谷英郎

ページ範囲:P.1331 - P.1339

I.はじめに
 下腿は炎症性結節ないし硬結の好発部位であり,それらの病変の主体をなすものは臨床的には著しい多形性を示す散在性の比較的小さな発疹を特徴とするものと,比較的単一な形態をとり,1個ないし少数の盆状皮疹を特徴とするものとに大別できる。しかし,それらを組織学的にみる時には前者が多数の吻合を持つ表在性血管を反応の場とし,後者が真皮・皮下境界部ないし終末動脈に貫流される脂肪織内の血管変化を前景に示すという差こそあれ,いづれの場合も本質的には白血球の迷走および崩壊,血管壁の腫脹ないし破壊に特徴づけられた血管炎である。このような皮膚および皮下脂肪織の血管炎は異つた原因因子によつても同じ臨床像と組織像とを示すいわゆるréactioncutanéeとされており,原因因子としては内因的諸因子の役割を無視できないとはいえ,薬剤アレルギー性血管炎と結核菌を含めた細菌その他の微生物感染の意義とが強調されて来た(Schnei—der1))ことはいうまでもなく,著者に課せられた命題は下腿の炎症性硬結を示す患者における細菌性抗体の検討である。

下腿炎症性硬結の循環因子について

著者: 坂本邦樹 ,   杉山吉蔵

ページ範囲:P.1341 - P.1347

I.はじめに
 課せられた命題について,短期間に行つた実験のゆえに例数が少ない恨みがある。将来さらに症例を重ねて報告する予定にしている。ここでは,硬結性紅斑と結節性紅斑に焦点を絞つて循環的背景をとらえんとした予報である。

下腿の炎症性硬結における血管変化について

著者: 宮沢偵二 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.1349 - P.1358

I.はじめに
 結節性紅斑,硬結性紅斑を血管変化の立場に立つて,病理組織学的に再検討し,この検索資料を基礎にして,臨床的にこれら両者の中間型の鑑別を試みた。またこれら疾患にみられる如き血管炎を実験動物に再現し,この実験を通して,血管炎の発生,ひいてはこれら疾患の発症病理の解明を企てた。これらの研究,特に後者の実験的研究はいまだ極めて不十分であり,報告するに未だしの感があるが,今後の研究を進めて行く上の整理をかねて,敢えて発表する次第で,この点御寛恕ならびに御批判をいただければまことに幸いである。

皮下脂肪織炎の組織病因—とくにLipolyseを中心として

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1359 - P.1365

 結節性紅斑及びバザン硬結性紅斑が,皮下脂肪組織及び真皮の炎症,つまりDermopanniculitisであるのに対して,主として皮下脂肪組織だけに限局した炎症性病変を,脂肪織炎(Panniculitis)という。ここではそのうちの脂肪融解(Lipolyse)を一次的な病変とする脂肪織炎を中心として述べる。
 一般に皮下脂肪組織の炎症の病理組織標本を見る場合には,一次的な病変が主として葉間結合織にあるか,脂肪細胞の集団の中にあるかを判断する必要がある。何故ならば葉間結合織の炎症は,比較的容易に真皮にまで拡大波及して,Dermo-panniculitisの形となり,われわれが真皮で通常遭遇する炎症と同じ過程をたどるのであるが,一方脂肪細胞集固の炎症は,脂肪細胞の破潰,すなわちLipolyseをおこし,その修復機転として脂肪喰食細胞(Lipophagen)が出現し,脂肪肉芽腫(Lipogranulom)を生ずる傾向がある。

下腿の炎症性硬結—経過と治療

著者: 三木吉治 ,   川津智是 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.1369 - P.1378

Iはじめに
 下腿に炎症性硬結をきたす疾患のうち,蜂窩織炎,刺虫症,沃度疹など原因の明らかなものを除き結節性動脈周囲炎,結節性紅斑,硬結性紅斑,アナフイラキシー様紫斑(アレルギー性真皮細小血管炎),Weber-Christian脂肪織炎,遊走性血栓性静脈炎などは臨床所見,病理組織学的所見の上から共通点や相似点が多く,鑑別の困難なことが少くない1〜3)。この意味で表題のような症状名による綜合,再検討が提議されてきた4)
 そこで,本研究においてはこれらの疾患を一括して下腿の炎症性硬結として取り扱い,アンケートその他の方法で判明した各症例の経過と臨床像,検査所見,および,治療法を比較検討し,どのような臨床像,所見を呈する症例が治療上の問題例となり得るか,更に,それに対する対策について述べたいと思う。

討論

著者: 藤浪得二 ,   宮崎寛明 ,   水野信行 ,   坂本邦樹 ,   小林健正 ,   三木吉治 ,   宮沢偵二 ,   西山茂夫

ページ範囲:P.1381 - P.1393

結節性紅壊と硬結性紅斑との別鑑
 藤浪以上で演者の方々の講演を終り,討論に入ります。先ず,結節性紅斑と硬結性紅斑との鑑別が何時も問題になりますが,これについて御意見をどうぞ。
 宮沢私自身の見解では,急性の経過をとり,全身症状を伴ない,再発性に乏しく,下腿伸側に主として出現するものを結節性紅斑とします。そして,再発性で慢性のものの多くは硬結性紅斑と考えています。また,炎症性下腿硬結のある患者を診断するに際し,常にBehçet病や結節性動脈周囲炎を念頭におく必要があります。

〈掲載論文抄録〉

下腿の炎症性硬結に関する概論,他

著者: 水野信行 ,   北郷修 ,   西田尚史 ,   石橋康正 ,   高岩堯 ,   松橋直 ,   田井美津子 ,   鈴木秀郎 ,   三上理一郎

ページ範囲:P.1395 - P.1395

 下腿の炎症性硬結について,1)臨床および病理像,2)成立機序,3)経過および治療にわけ考察した。
 病理像からは,変化は真皮,皮下脂肪織および血管系の—itisおよび—osisにわけられる。前者は滲出と肉芽反応であり,後者は変性と再来である。臨床像と組織像との間には一定の関係があり,前者から後者を想定することができる。

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臨床皮膚科 第22巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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