icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻2号

1968年02月発行

雑誌目次

図譜・262

乳房Paget病

著者: 原田鍾造

ページ範囲:P.124 - P.125

患者 58歳,♀。
初診 昭和41年12月12日。

図譜・263

毛孔性紅色粃糠疹を伴えるMelanodermitis toxica lichenoides

著者: 武田克之 ,   秦敦

ページ範囲:P.128 - P.129

症例 34歳,男,職業は漁師。
現病歴 18年前から重油使用の漁船のエンジン係りとして,終日海上生活を送ってきたが,約5年前から「日やけ」をしやすくなり,耳介部から項・頸部,顔面,腕へと色素斑を生じ,冬期,顔面が寒さに敏感になつたという。2年後には躯幹前面,4肢伸側などの生毛部に毛孔に一致した淡紅色小丘疹が散発し,膝蓋に比較的境界明確な潮紅角化局面をつくった。現在自覚症はない。

展望

紫外線1回照射後のMelanocyteの変動

著者: 水野信行

ページ範囲:P.131 - P.143

I.はじめに
 紫外線を照射した後のMelanocyteの数および形態の変化に関しては,Shnell,R.S.(1962),Quevedo, W.C. and Smith, J.A.(1963),およびMitchel, R.E.(1963)などの論文がある。しかしこれらは(1)動物を使つた実験であるということ,および(2)何回も紫外線をかけた後のMela—nocyteの状態を示しているという点,また(3)Melanocyteの形態学的な変化を形態学的な記載だけにとどめMelanocyteのTyrosinase活性を同時に計つていないという点などにおいていくつかの欠点がある。

原著

Acanthosis nigricans congenitalisの2例

著者: 南路子 ,   大原一枝

ページ範囲:P.145 - P.151

I.はじめに
 Acanthosis nigricansは1890年,Pollitzer及びJanovskyが夫々独立に記載したのに始まる比較的稀れな疾患で,(1)好発部位にみられる乳頭様増殖,(2)色素増生,(3)臨床的に著しくなくても組織学的には必ず証明できる角質増殖を3主徴とする1)
 本症は悪性腫瘍との合併率が高いゆえに,皮膚科医のみならず他科の医師によつても注目される疾患の1つであるが,中に悪性腫瘍を合併しない良性の経過をとるもののある事が古くから注目されており,その原因,分類に就てはDarier以来屡々論議されてきた。

色素分界線の知見補遺

著者: 浜田稔夫 ,   東禹彦

ページ範囲:P.153 - P.161

I.緒言
 1913年松本1)2)は腋窩上界において上腕内面より胸部にかけ,また大腿内側においては会陰部より膝窩内縁にわたり,ほぼ線状をなす色素分布の境界線を認め,これを「Voigt境界線において,しばしば見られる皮膚色素分布の境界」と題して報告されて以来,色素分界線は本邦において三浦(修)3)−5),原田ら6),松本7),伊藤8)等の報告に接するが,本症は余り目立たないこと,自覚症状のないこと,また後記するごとく,進行性に漸次著明となる例はほとんど認められなかつたことなどより,これを主訴として来院する患者は非常に少ない。このようなことから本症の報告は少なく解明されていない点も多々あるものと思われる。これまでの本症の報告は本邦人のみで,白人や黒人ではむしろ色の濃淡の差がはつきりせず,判定しにくいような理由もあつて未だ外国人にみられたという報告はない。
 本症の分布より色素形成と神経との関連性が推測されるため,これの研究は皮膚色素異常症の解明に役立つものと考え,私どもはこれまでに皮膚科診察の際などに本症の存在を注意深く観察すると共に,学校検診においてその頻度等を調査し,得られた症例について組織検査を含めて種々の検索を加えたので,ここに報告する。

Necrobiosis lipoidicaの1例

著者: 田久保浩 ,   大城晶子 ,   左奈田精孝

ページ範囲:P.163 - P.169

I.緒言
 Necrobiosis lipoidicaは1929年Oppenheim1)がEigentliche disseminierte Degeneration des Bindegewebes der Haut bei einem Dia-betikerの表題で症例を紹介したのが最初で,爾来1930年,1931年に再び供覧,19322)年にはこの症例につきDermatitis atrophicans lipoides diabeticaとして報告したのを嚆矢とする。同年Urbach3)は同様症例を新しい糖尿病性皮膚疾患としてNecrobiosis lipoidica diabeticorum (以下NLDと略す)なる名弥のもとに報告しているが,両者は同症であり以来NLDの名弥のもとにほぼ統一今日迄種々の角度から検討されて来ている。本症の欧米諸外国での発生は決して少なくなく,多数症例の検討報告がある。しかし我が国では本症の発生は甚だ稀であり,確かな報告は現在迄松原等4),西尾等5),磯田等6),原田等7),佐藤等8),出村9)の僅か6例をみるにすぎない。この他高田10),高瀬等11)より本症としての報告例をみるが,前者は組織上脂質検索の不備又後者は組織像に於いてやや典型例とはいい難い像を呈している。昭和42年度日本皮膚科学会総会にスライド供覧された樋口等12)の症例に関しても,脂質沈着の検索不備が指摘されている。
 本症は糖尿病を有する女性の下肢に好発する疾患で外傷が誘因となること多く,初期の発疹は境界鮮明,紅色,円形乃至楕円形の硬い光沢性丘疹で遠心性に拡大,中心部は漸次陥凹黄色調となり軽度の鱗屑をみる。又その表面には毛細血管拡張,時に潰瘍をみることもあり特異な臨床像をつくる。辺縁隆起部は紫紅色の色調を示し,環状発疹の観を呈するのが普通である。自覚症状なく経過は慢性でかつ進行性,多発する場合には相互に癒合することもある。本症の特異なることは之等臨床像の他に組織像にみられ,真皮に水平帯状に拡がる膠原線維の類壊死とこの領域にズダンⅢ染色で染め出される脂質の沈着すること,又類壊死巣周辺にみられた巨細胞を含む類上皮細胞,線維芽細胞,リンパ球の浸潤,真皮中層より深層に亘る小血管の内被細胞増殖と壁の肥厚等があげられている。なかでも脂質の沈着は殆んど全ての本症にみられ,診断上最も重視される所見となつている。

惡性変化を伴つた増殖性毛嚢嚢腫の1例

著者: 日戸平太 ,   後藤博子

ページ範囲:P.171 - P.177

I.緒言
 Sebaceous cystの嚢壁細胞はMcGavran & Bennington1)により毛嚢細胞であることが証明され,またその良性増殖型腫瘍の特長はJones2)により明確にされた。毛根鞘腫瘍におけるclear cellの出現はHaedington & French3)の症例に見られる。最近,著者等は澄明細胞の胞巣性増殖を伴い,他方浸潤性転移巣をも示す毛嚢性腫瘍の1例を経験したので,以下その大要を述べると共に,旧来の粉瘤癌あるいは毛嚢癌等との関連について考察を加える。

重症熱傷死の剖検例

著者: 浜本淳二 ,   大浦武彦

ページ範囲:P.179 - P.183

I.はじめに
 近年の物質文明の進歩発展と共に,大は戦争,交通災害,産業災害,小は一般家庭生活において軽症から重症にいたるさまざまの程度の熱傷の発生をみている。一方近代医学の進歩と共に,熱傷に対してもその救急処置,治療,後遺症対策などの面において,大きな進歩がみられ,受傷直後から専門家の治療をうければ,かなり広範囲の患者であつても救命しうるし,またその後遺症も軽減される。こうした熱傷医学を世界的なものにするために,1960年に第1回国際熱傷会議がワシントンで開催されている。
 熱傷患者における病態生理は,熱傷という局部の侵襲と,それに対する全身反応の総合1)であり,これに対する正しい理解がなければ救命しうる患者も救いえないといえよう。われわれはこのたび受傷面積92%におよぶ広汎な重症熱傷例を経験,死後解剖したので,その臨床経過と剖検所見および組織所見を報告しあわせて若干の考察を加えたい。

検査法

メラニンに関する検査法

著者: 飯島進 ,   橋本憲樹 ,   長尾貞紀

ページ範囲:P.191 - P.196

 生体色素としてのメラニンそのものについての検査法はきわて少ないので,以下メラニンのみならずメラノサイトおよびその保有する酸素チロシナーゼ,更にメラノサイトとの異同が注目されているランゲルハンス細胞,メラニン異常症についての検査法をもあわせて記載する。

印象記

第18回中部連合地方会印象記

著者: 伊賀征央

ページ範囲:P.197 - P.198

 昭和25年初めて本会が名古屋大学担当の下に開催せられてからすでに18回を数え,回を追うて充実しその発展ぶりは往年の総会にも匹敵するほどの地歩を占めるに至つたことは斯界のためご同慶にたえない。今秋は大阪市立大学斎藤教授を会長として同教室が担当され,10月29日大阪の中枢地区中之島の関電ホールにおいて開催せられた。会場はゆつたりとした感じでしかも大へん静かで学会にふさわしい雰囲気が自然にかもし出されており,整備運営の手際と相まつて担当者各位の苦心のほどが偲ばれた。
 総会議事の報告承認についで学会にうつり,伊藤ら(奈良医大)は汗腺性を思わしめる組織嫁を呈した皮膚混合腫瘍例を報告し,森田ら(天理病院)は石灰化表皮腫の組織所見を示し好塩基性細胞増殖を休止期にある未分化毛包に由来するとの見解を述べ,三木(阪大)の質問に対し休止期の長いことが素因的要素たり得るとした。池田ら(京大)は抗生物質の投与によつて治癒をみた顔面の良性肉芽腫においてその所見から鼻腔内プソイドモナスによる発症の可能性が想定せられたので,いわゆるgranuloma facialeの細菌由来について検討中であると述べた。小谷(三重大)は同様に副鼻腔炎を伴い抗生物質療法によつて治癒した顔面肉芽腫例を追加した。

教室紹介

京都大学/奈良県立医科大学

著者: 山田瑞穂

ページ範囲:P.200 - P.201

 明治32年京都帝国大学に医科大学が創設されて間もなく,外科の猪子教授が兼担されていたが,同36年に松浦有志太郎先生が初代教授として就任され,我々の教室が誕生した。松浦先生は日本住血吸虫病の皮膚よりの感染,正円形粃糠疹などを手がけられ,皮膚病治療薬ピチロールを創製された。大正8年第二代教授に松本信一先生が就任され,皮膚科紀要,皮膚病図説,ルエスを刊行せられ,先生の実験梅毒,実験スピロヘトージスに関する御研究は世界的に有名で,その他に臨床面でのお仕事も多いが,前癌症に関する御研究はその代表的なものの1つである。これらの松本先生の御功績に対して,野口賞,シャウディンホフマンプラケットが贈られ,昭和41年文化功労者として顕賞せられた。昭和19年第三代教授に山本俊平先生が就任せられ,早くから皮膚病と全身状態との関連に着目されて,これを追求された。昭和37年第四代教室主任として現太藤重夫教授が就任された。以来5年余,現在教室における研究は主に細菌,真菌アレルギー,接触型アレルギー,薬疹の病理の解明に向けられ,これに螢光抗体法,電子顕微鏡,組織培養などが駆使されており,アトピー皮膚炎,毛嚢性湿疹,夏季に増悪する紅斑などについての臨床的研究も行なわれている。また,池田助教授の円形脱毛症の臨床的ならびに発生病理に関する研究は国際的に注目され,現在は梅毒の新しい血清反応に取り組んでおり,山田は皮膚ならびに白血球の蛋白分解酵素の組織化学的研究,薬疹の研究に,早川は腫瘍の細胞学的研究および軟レントゲン線による治療に従事し,一方形成グループは植皮術,肥厚性瘢痕の治療に工夫をこらしている。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.202 - P.202

THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY47 : 4, October 1966
Nail Fold Capillaroscopy-A Useful Aid in the Diagnosis of Collagen Vascular Diseases : J. B. Ross 282
Quantitative Histochemistry of the Primate Skin. VI. Lactate Dehydrogenase : J. C. Michael and K. Adachi 286

〈原著論文抄録〉

Acanthosis nigricans congenitalisの2例,他

著者: 南路子 ,   大原一枝

ページ範囲:P.205 - P.205

 生下時又は生後まもなくよりみとめられたAcanthosis nigricans congenitalisの2例を報告した。即ち,第1例は9歳女子。家族に同症を認めず。生下時より頸,項,腋窩,臍,外陰,肛囲,腎部,手指背に乳頭状増殖があり,皮野が粗大化し褐黒色調を呈する。頭髪は黒く濃く又,上肢は毳毛が黒くて長い。歯牙は大型で配列が乱れており,口唇,頬,舌粘膜が顆粒状,乳嘴状で深い皺襞を形成する。検査では脳下垂体がやや狭小,Thorn's Teseが軽度低下。
 第2例は1歳4か月男児。肝硬変で小児科に入院中。発症の時期は母の供述がはつきりせずよくわからないが,項部から側頸,前頸にかけて,及び腋窩,両手関節背面,両足の趾背にかけて皮膚は高度の褐黒色調を呈し皮野が粗大でビロード状を呈する。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?