文献詳細
文献概要
原著
色素分界線の知見補遺
著者: 浜田稔夫1 東禹彦1
所属機関: 1大阪市立大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.153 - P.161
文献購入ページに移動I.緒言
1913年松本1)2)は腋窩上界において上腕内面より胸部にかけ,また大腿内側においては会陰部より膝窩内縁にわたり,ほぼ線状をなす色素分布の境界線を認め,これを「Voigt境界線において,しばしば見られる皮膚色素分布の境界」と題して報告されて以来,色素分界線は本邦において三浦(修)3)−5),原田ら6),松本7),伊藤8)等の報告に接するが,本症は余り目立たないこと,自覚症状のないこと,また後記するごとく,進行性に漸次著明となる例はほとんど認められなかつたことなどより,これを主訴として来院する患者は非常に少ない。このようなことから本症の報告は少なく解明されていない点も多々あるものと思われる。これまでの本症の報告は本邦人のみで,白人や黒人ではむしろ色の濃淡の差がはつきりせず,判定しにくいような理由もあつて未だ外国人にみられたという報告はない。
本症の分布より色素形成と神経との関連性が推測されるため,これの研究は皮膚色素異常症の解明に役立つものと考え,私どもはこれまでに皮膚科診察の際などに本症の存在を注意深く観察すると共に,学校検診においてその頻度等を調査し,得られた症例について組織検査を含めて種々の検索を加えたので,ここに報告する。
1913年松本1)2)は腋窩上界において上腕内面より胸部にかけ,また大腿内側においては会陰部より膝窩内縁にわたり,ほぼ線状をなす色素分布の境界線を認め,これを「Voigt境界線において,しばしば見られる皮膚色素分布の境界」と題して報告されて以来,色素分界線は本邦において三浦(修)3)−5),原田ら6),松本7),伊藤8)等の報告に接するが,本症は余り目立たないこと,自覚症状のないこと,また後記するごとく,進行性に漸次著明となる例はほとんど認められなかつたことなどより,これを主訴として来院する患者は非常に少ない。このようなことから本症の報告は少なく解明されていない点も多々あるものと思われる。これまでの本症の報告は本邦人のみで,白人や黒人ではむしろ色の濃淡の差がはつきりせず,判定しにくいような理由もあつて未だ外国人にみられたという報告はない。
本症の分布より色素形成と神経との関連性が推測されるため,これの研究は皮膚色素異常症の解明に役立つものと考え,私どもはこれまでに皮膚科診察の際などに本症の存在を注意深く観察すると共に,学校検診においてその頻度等を調査し,得られた症例について組織検査を含めて種々の検索を加えたので,ここに報告する。
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