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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻3号

1968年03月発行

雑誌目次

図譜・264

サルコイドージス

著者: 植村隆

ページ範囲:P.218 - P.219

患者 60歳,家婦。
現病歴 45歳頃より疲労感,咳嗽,息切れがあり50歳頃より耳前部に発疹を生じ,数年間に徐々に顔面各所に増生した。又,2年前頃より左手Ⅲ指第一関節伸側にも小結節を生じた。この間,自然治癒は認められなかつた。

図譜・265

Adenoma of the nipple

著者: 長島正治

ページ範囲:P.222 - P.223

患者 30歳,未婚女子。
初診 昭和38年5月17日。

展望

癩の鑑別診断

著者: 肥田野信

ページ範囲:P.225 - P.231

I.はじめに
 かつて皮膚科外来患者の2〜3%をしめた癩も近年本邦では著しく減少して,大学病院に勤務する皮膚科医でさえ遭遇する機会がはなはだ稀になつてきた。これは一面大いに喜ばしいことではあるが,他面皮膚科医の癩の臨床や病理に対する認識が弱まり,その診断に困難をきたす結果となり,ひいては誤診をおかす危険もなしとしないように思われる。
 しかも獅子顔のような一見してそれとわかる症状を呈する患者は益々稀となり,化学療法の発達した現在,早期診断が個人の予後からいつても,公衆衛生上からいつても益々要求されていることは論をまたない。

原著

予後からみた尋常性白斑の治療成績

著者: 菅原久栄 ,   坂元征行

ページ範囲:P.233 - P.240

I.はじめに
 従来尋常性白斑の治療成績についての報告は数多いが長期経過を追求観察した報告は少ない。我々は昭和26年から昭和39年迄の14年間に福島医大皮膚科を訪れた尋常性白斑患者362名について,主としてアンケートにより,又一部は直接患者に接して予後調査を行ない,治療成績および予後との関連事項について種々検討を加えて見た。
 予後の判明したものは362例中242例で,便宜上予後を治癒,改善,不変,悪化の4段階に,又病巣の程度を大,中,小の3段階に分けて検討した。なお治癒は全治および略治例を含み,又昭和41年12月の時点で再発のないもの,即ち最低2年以上再発のないものを治癒と見做した。又病巣の程度は大勢を見るのに支障はないと考え,おおよそ次の基準に従つた。病巣が多発性,汎発性であるか或いは又単発性でも客観的に極めて大きいものを大とし,手拳大以下の病巣が1乃至数コに止まり比較的限局性のものを小とし,大小の中間にあたるものを中とした。

実験動物の自然感染白癬と人への感染例

著者: 池谷田鶴子

ページ範囲:P.241 - P.244

I.はじめに
 実験動物に白癬の自然感染の生ずる事例は,諸外国では以前から報告がある。本邦ではそれ程注意されていなかつたが,昭和40年松田2),大越ら1)によつて東京都内の各所に於けるラットの白癬自然感染例が観察された。このような実験動物の自然感染白癬では時にそれに気付かずに推移する中には周囲の人への感染も割合容易に起り得るであろう事は想像に難くない。偶々吾々も都内研究所の技術員中に白癬の集団的な発生を見,更にその接触するラットを検索して白癬の自然感染を認め,これがラットの白癬に由来するものである事を証明し得たのでここに報告したい。

Dimethyl Sulfoxide(DMSO)添加苛性カリ液を用いた真菌直接鏡検法

著者: 高橋伸也 ,   斎藤信也

ページ範囲:P.245 - P.250

I.緒言
 皮膚真菌症の診断にあたつては,病的材料について菌の存在を証明することがきわめて重要であることはいうまでもない。真菌の検査法には,a)直接鏡検法,b)培養法,c)組織学的検査法がある。この中で最も頻々に行なわれるのが真接鏡検法で,これによつてある程度原因菌の菌属を推定することも可能である。しかも直接鏡検法において菌が陰性であれば,培養を行なつてもほとんど陰性であるので,直接鏡検法を確実に行なうことが皮膚真菌症の診断にははなはだ大切なことになるのである。
 浅在性皮膚真菌症の場合,検査材料は鱗屑,毛,爪といつた角質物である。これらの材料中の菌を検出するためには,20〜40%苛性カリ液にて処理した無染色標本の真接鏡検法(以下に苛性カリ法と略称する)が広く一般に行なわれて来た。この苛性カリ法は,簡便で優れた方法ではあるがa)厚い材料(爪甲,爪甲下角化物,厚い角質層など)の場合には,菌検出までにかなりの時間を要する,b)この時間を短縮するために加熱を要することが少なくない,c)菌要素と角質物とのコントラストがあまり明瞭でないので,菌要素の発見が困難なことがある,d)厚い材料の場合,透明度が低いので菌要素が見えにくく,材料を圧延する必要がある,従つてe)菌の寄生形態が不自然になる,等の煩わしさ,欠点があつた。

セルローズアセテート膜電気泳動法による水疱液蛋白の分析

著者: 橋本功 ,   木村瑞雄 ,   山本欣一 ,   山内晢

ページ範囲:P.253 - P.257

I.緒言
 従来水疱液の電気泳動的分析法としてはチゼリウス法,濾紙法などが用いられていたが,これらは操作が複雑であること,分離再現性がやや劣ること,比較的大量の試料が必要であること,時間がかかることなどの欠点があつた。近年導入されたセルローズアセテート膜法はこれらの欠点がなく,しかも試料が微量(約0.0004ml)でも充分であるという特長があり,微量の試量しか得られぬことが多い水疱液の分析法としては好適の方法と考えられる。著者らは本法を用いて比較的多数の症例につき水疱液蛋白を分析し得たのでその結果を報告する。

Pityriasis lichenoides et varioliformis acuta(Mucha-Habermann)の1例

著者: 山内晢 ,   福士堯 ,   上原伸一

ページ範囲:P.259 - P.263

I.緒言
 本症はMoller u. Afzelinus(1903)がpara-psoriasis vom varicellentypとして記載したことに初まり,その後Mucha(1916)が壊死性座瘡様丘疹を有する急性型をparakeratosis variegataに似た1特異症例として報告,ついでHabermann(1925)も類似例を観察しこれをPityriasis lichenoides et varioliformis acutaと命名した1)
 本症の報告について,欧米に於てはCaccialanza u. Belloneによると1957年までに165例であり2),本邦に於ては僅かに10数例の報告があるのみで我国ではこの病名に接する機会が少ない。

Adenoma of the nipple

著者: 長島正治

ページ範囲:P.265 - P.268

I.はじめに
 中年女性の乳頭に発生する慢性糜爛結痂性病変が,乳房Paget病の主要臨床症状であることはよく知られている。しかしかかる臨床症状を示していても,組織学的にPaget病が否定され,むしろ汗腺腫瘍類似の管腔腺様構造が,そこに発見されることがある。筆者は,たまたまかかる乳頭腫瘍を経験し,それが文献上adenoma of thenipple8)と記載される腫瘍に一致することを知つた。本腫瘍は,皮膚科領域で殆んど注目されておらず,また汗腺腫瘍との鑑別上興味あるものと考えられるので,ここにその1例を報告する。

検査法

脂腺機能検査

著者: 佐藤良夫 ,   鷲尾勝 ,   猪股成美

ページ範囲:P.277 - P.283

I.はじめに
 脂腺機能検査には化学的方法,オスミウム酸を用いて直接あるいは間接に皮脂排出の動態を観察する生理学的方法,組織化学も含む組織学的形態的方法などがある。
 このうち化学的方法は排出皮脂を最も正確に,かつその組成を分析することにより一層精細に脂腺機能の動態を推知できるものとして広く用いられている。しかし脂腺で生成された皮脂は皮表に排出されると,表皮由来あるいは部位によりアポクリン腺由来の脂質と混ずるために,また排出過程や皮表の微生物による影響を受ける。排出皮脂を純粋に採取しえない現在においてはこれらを含めた皮表脂質について検討することになるため,化学的方法には一定の制約がある。

教室紹介

東京慈恵会医科大学/新潟大学

著者: 神田行雄

ページ範囲:P.284 - P.285

 教室の歴史本学は明治14年5月1日に創立された成医会講習所をもつて始まり,医学専門学校を経て,大正10年10月19日に東京慈恵会医科大学となり,実に創立以来87年を経過している。さて皮膚科学教室は,後年日本皮膚科学会名誉会頭に推された笹川三男三教授を初代として明治29年に開講され,以後朝倉文三教授,渡辺一郎教授,土肥章司教授と続き,昭和21年には現在の土肥淳一郎教授が就任せられ,その翌年泌尿器科教室が分離してから,次第に医局員の数も増え,研究に,外来診療に,又学生の教育にと教室は一層充実され,現在では,在籍医局員は実に32名の多きを数えるに至つた。その間,土肥淳一郎教授には,昭和35年東部連合地方会会長となられ,昭和39年青戸分院長に,更に昭和41年12月から附属病院長として御活躍中であり,又昭和44年第68回皮膚科学会総会には,私学として初の会頭に推挙され,教室内には既に総会ムードが横溢している。
 研究テーマ主なる研究テーマは1)皮膚外用剤の吸収に関する研究,特にその経皮吸収及び薬効学的研究は,武蔵工大原子力研究所の協力を得て多方面より実験中であり,その一部は第68回皮膚科学総会において宿題報告として発表される予定である。2)皮表細菌特にブドウ状球菌に関する研究,ウィールスの電子顕微鏡学的研究は,長年に渉り各種ウィールスについて発表していたが現在はこの他に経皮吸収に関する研究の一環として活躍中である。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.286 - P.288

ARCHIVES OF DERMATOLOGY95 : 5, May, 1967
Skin and Muscle Indurations in Phenylketonuria : S. Jablonska, A. Stachow and M. Suffczynska 443
Morphology of Mycobacterium leprae in Tissue Sections : L. Levy, P. Fasal and L. P. Murray 451

〈原著論文抄録〉

予後からみた尋常性白斑の治療成績,他

著者: 菅原久栄 ,   坂元征行

ページ範囲:P.291 - P.291

 昭和26年からの14年間に受診した尋常性白斑患者362例中,予後の判明した242例について,予後と病巣の程度,治療,合併症,臨床症状等との関連を検討した。
 このシリーズの治癒率は約20%,有効率は約50%であつた。初診時年齢では患者は若年者に多いが,若年者の予後は必ずしもよいとはいえない。病巣が小さく発生6か月以内のものは予後がよい。顔面は躯幹,四肢より予後がよい。治療は6ヵ月以内に開始し少なくとも3ヵ月以上継続すべきである。家族内発現,白毛,アレルギー関与疾患の合併は治癒率を低下させるものではない。瘙痒は先行しない方が,又オクソラレン療法では,水疱形成の有つたものの方が予後がよい。剥皮術,オクソラレン療法,硫酸鉄イオントフォレーゼ法,ヘマトポルフィリン(アロフィリン)局注療法が秀れ,これ等の間に有意差は認められなかつた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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