icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻4号

1968年04月発行

雑誌目次

図譜・266

弾力線維性仮性黄色腫

著者: 藤沢竜一 ,   山川泰光

ページ範囲:P.308 - P.309

患者 21歳,女子。
家族歴,既往歴 特記すべきことなし。

図譜・267

Hydroa vacciniforme

著者: 菊池礼子

ページ範囲:P.312 - P.313

患者 3歳,男児。初診 昭和42年4月。
既往歴 生後1か月頃より頭部に痂皮形成し,長く治癒しなかつた。

綜説

皮膚疾患と脳波

著者: 林原祐治

ページ範囲:P.315 - P.322

I.はじめに
 1924年Hans Bergerによつて人体脳波が発見されAdrianによつて確認されて以来,脳波の研究は急速に拡がり,1936年Gibbs,F.A.,Davis,H.,Lennox,W.G.等がてんかん小発作の患者が発作時に,3c/s wave and spikeをしめすことを発見し,またWalter,W.G.は1936年脳腫瘍の際に脳波に徐波が出現するからその出現部位を決定すれば脳腫瘍の部位をかなり正確に局在づけうることを見出し,脳波の臨床診断への応用面をさらに開拓した。
 さらに最近では各種の内科領域の疾患,例えば消化器潰瘍,高血圧,内分泌疾患にも応用される等,脳波の臨床面への応用はますます拡がりつつある。しかし皮膚科の分野では脳波検査の行なわれることは非常に少なく,発生異常に基づくと考えられる2,3の疾患,例えばBourneville-Pringle病,Recklinghausen病等にてんかんを併有することが知られている関係上,時に行なわれるに過ぎなかつた。しかし脳波が内科的疾患のかなりルチーンの検査としてとり入れられつつある現在,皮膚科領域でももつと注目される必要があるのではなかろうか。脳波は心電図等と比較してまだ不明な要素が多く,したがつて異常の判定が困難であること,さらに脳波は大発作てんかん,小発作てんかん,精神運動性てんかん,脳腫瘍,脳外傷等のごく限られた疾患にのみしか適用されないという固定概念が強いこと等が皮膚科における脳波検査が重視されない理由になつていると思われる。

原著

種痘様水疱症の1例

著者: 菊池礼子

ページ範囲:P.323 - P.326

I.緒言
 幼少時より日光照射部位に,再発性に,紅斑,中心臍窩を有する水疱及び痂皮を生じ,瘢痕を以つて治癒する一見痘瘡に類似せる特徴を持つ疾患に,1862年BazinはHydroa vacciniformeと名付け,一独立疾患とした。しかしその後,皮膚症状が本症のそれに著しく類似せるものの中で,尿中にPorphyrinを排泄する患者が発見され,Porphyrin尿症として区別された。そして更に,Hydroa vacciniformeは逆にPorphyrin尿症の不全型で,Porphyrin尿がみられないものに過ぎないと云う考えすらも出現し,昨今いささか両症の関係が混乱しているかに見受けられる。我々が最近検索した限りに於いては,Porphyrin代謝には異常を認めず,Bazinの古典的記述に一致すると思われる3才男児の症例を経験したので,ここに報告する。

先天性限局性皮膚萎縮症の父子例

著者: 秋葉弘 ,   大沼秀雄

ページ範囲:P.327 - P.332

I.結言
 現在皮膚萎縮症という分類に属するものには非常に多数の疾患が含まれている。しかしその分類はもつぱら臨床的ないし組織学的に行なわれているのが現状であり,その発生機序には不明な点が多く,又臨床的,組織学的に皮膚萎縮症と考えられてもこれらの分類中いずれに属せしめうるか迷う症例に遭遇することがまれではない。われわれは最近,父と息子にみられた先天性ならびに遺伝性と考えられる一種の皮膚萎縮症例を経験したので以下にその大要を報告する。

Cutis marmorata teleangiectatica congenitaの1例

著者: 赤井昭

ページ範囲:P.333 - P.336

I.緒言
 Cutis marmorata teleangiectatica conge-nita (以下C.m.t.c.と略す)は1922年Lohuizen1)により稀有な先天性皮膚異常に対し初めて命名されたものである。
 以来症例を重ねるうち今日までに本症はその特異な臨床ならびに病理組織学的様相から疾患としての独立性が確認されている。本邦では1963年水野2)の報告が最初と思われる。すなわち彼は初め先天性陥凹性網状紅斑として報告したが,後にその病像が本症に全く一致することから先駆者にならつて診断名をC.m.t.c.と訂正した。以後今日までに本邦における本症の症例報告は数える程しかなく3)−8),原著としての報告は横関,北川7)および浅越8)の2論文をみるにすぎない。そしてまた浅越の記載によれば内外の症例をあわせても30例を数えるにすぎない。

Toxic epidermal necrolysis(Lyell)剖検所見について—自験例を中心とする本症の概観

著者: 升水達郎 ,   平野京子 ,   河野均也

ページ範囲:P.337 - P.345

I.はじめに
 我々は今回Toxic epidermal necrolysisと診定される1症例に遭遇した。入院3日目に死の転帰をとり,剖検の機会を得たので以下にこれを記載し,既報の剖検例と比較検討した上,本症の概要を記してみたい。

全身性肥胖細胞症の1例

著者: 斎藤信也

ページ範囲:P.347 - P.352

I.緒言
 従来色素性蕁麻疹は皮膚のみの変化と考える人が多く,皮膚以外の組織変化については,注意されることが少なかつた。リンパ節において肥胖細胞の増殖を証した報告はあつたが(Gray1),1938),本症が全身性変化を示すと考えられるまでには至らなかつた。しかし1949年,Ellis2)は肝,脾,胸腺,骨髄,腎,膵およびリンパ節に肥胖細胞の著明な増殖を認めた剖検例を報告して,本症が全身性疾患であることを指摘した。以後全身性変化を伴なう症例が相次いで報告され,現在では従来の色素性蕁麻疹と,全身性変化を伴なうものとを一括して,肥胖細胞の増殖を来たす疾患という意味で,肥胖細胞症Mastocytosisなる名称が広く用いられている。本邦でもすでに3例の全身性肥胖細胞症が西脇ら3),西脇4)および福代ら5)によつて報告されている。
 特異な皮疹を示し,骨髄および末梢血に肥胖細胞の増殖を認めた1例を経験したので報告する。

Dermatofibromaの1例

著者: 木村正方 ,   角田秀雄 ,   福士勝久

ページ範囲:P.353 - P.358

I.はじめに
 私達が今回報告する腫瘍は,旧来非常に多くの名で呼ばれて来た皮下腫瘍,即ちfibroma sim-plex, hartes Fibrom, nodular subepidermalfibrosis, fibroma en pastille, dermatofibromalenticulare, noduli cutanei, histiocytoma,histiocytoma cutis, xanthoma, fibrous xan-thoma, sclerosing hemangioma等1)2)3)の範疇には入ると思われるものである。
 腫瘍を病理組織学的に検索した結果dermato-fibromaと診断し,更に上記諸腫瘍との関係を吟味してみた。

印象記

第19回西日本皮膚科連合地方会

著者: 藤田英輔

ページ範囲:P.368 - P.370

 第19回西日本皮膚科連合地方会は九州医師会医学会の皮膚科分科会として,11月19,20日の両日,別府市白雲山荘において行なわれた。会長の伊藤教授(九大温研)は泌尿器科分科会会長をも兼ね,これを皮膚科学会と並行して行なわれたので,教授を始めとする教室員各位の御苦労は並々ならぬものであつたと思われる。皮膚科学会の方は,19日午後の病理組織検討会をもつて開幕され,20日は早朝から,特別講演,シンポジウム2,一般講演,スライド供覧と豊富な内容でぎつしりと充実して行なわれた。
 先づ,病理組織検討会であるが,これは西日本では一昨年の米子での学会の時から始められ,今回は第3回目の開催であつた。第1回の時から本学会とは異なつて,自由で活発な雰囲気のあることから,特に若い人達に人気があつたが,回を重ねるごとに一層充実したものとして育つて来たことに感慨を深くしておられる方は少なくないと思う。特に,今回は出題症例の組織標本が予め参加教室に配布され,事前に検討の機会が与えられていたので,一層勉強になつたように思う。今後も,このように良いと思われる試みをどしどし実行して学会を少しでも良い方向にもつて行くよう皆で心掛けて行きたいものと思う。症例は昨年と異なり自由課題であつたが,期せずして腫瘍,特に,Lymphoma関係が多く集まつた。他にWegener's granuloma,necrobiosis lipoidica diabetico-rum等の診断例もあつて終始活発な論議をわかせた。ともかく「こんなことを発言すると笑われるのでは」というような消極的で煮えきらない雰囲気が無くなつて,参加者全員,老いも若きも,どしどし各自の意見を自由に述べる機運の高まつて来たことは何よりも喜ばしいことであつた。

教室紹介

横浜市立大学/鳥取大学

著者: 高梨雄蔵

ページ範囲:P.372 - P.373

教室の歴史
 本学は横浜市立十全病院を母胎とし,昭和19年横浜市立医学専門学校として誕生,旧制横浜医科大学を経て,今日の横浜市立大学医学部へと発展した。医専時代は故宮村一利教授が,また大学に昇格した昭和25年に小野茂良助教授が皮膚科を担当された。昭和27年皮膚科学講座独立と共に初代教室主任として野口義圀教授が着任現在に至つている。当教室は昨年野口教授開講15周年を祝つたが,独立した研究室をもつてわずかに4年,15年間の前半は名実共に皮膚科教室の独立のためにかなりの精力がそそがれた。昭和27年当時皮膚科も本学の他の臨床各科と同じく,助教授又は講師1,助手3,研究費年額10万円となていた。当時教授は大変張切つておられたが就任されてみると助手のジッツは実は1つだけ,新に永井隆吉講師をむかえたものの,研究費も前年度の皮泌科赤字分を差引かれて相当減つており早くも苦難の歴史は始つた。悪条件にたえ,よく今日の教室をきづいたものは,教室員の忍耐とともに,内外における皮膚科学の進歩がこれを不可避たらしめたものと思われる。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.374 - P.376

ARCHIVES OF DERMATOLOGY 96 : 3, September, 1967
Prevalence of Epoxy Resin Dermatitis : L. E. Gaul 227
Ethylenediamine Contact Dermatitis : T. T. Provost and O. F. Jillson 231

〈原著論文抄録〉

種痘様水疱症の1例,他

著者: 菊池礼子

ページ範囲:P.379 - P.379

 3歳男。既往歴及び家族歴に特記すべきことなし。毎年春に増悪を示す皮疹が本年は4月23日潮干狩に行つた後に出現した。即ち額,頬部,耳輪及び手背に紅暈を伴つた小豆大迄の,或るものは中心臍窩を示す水疱,血痂,僅かに中心陥凹せる瘢痕が,散在性,一部集簇性に認められる。一般検査,尿及び並且液中porphyrin検査に異常なく,僅かに結膜の充血を認める。
 水疱組織所見:表皮内多房性水疱で網状変性を示し,乳頭,乳頭下層は浮腫状で,主にリンパ球様小円形細胞より成る稠密な細胞浸潤が認められ。ために表皮真皮の境界は判然としない。又真皮,皮下脂肪組織では,血管,皮膚附属器周囲に中等度同様細胞浸潤を認める。血管拡張,内皮細胞膨化及び血管壁肥厚が存在する。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?