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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻5号

1968年04月発行

雑誌目次

特集 皮膚疾患の電子顕微鏡像(2)

著者: 斎藤忠夫

ページ範囲:P.397 - P.397

 「臨床皮膚科」誌は一般開業の先生方にも随分広く読まれているすぐれた専門誌である。その本誌が皮膚に関する電子顕微鏡像の特集号を再度にわたり公表する編集責任者にまず敬意を表する。
 しかしこのような企てもあながち不自然なこととは言い得ない。と言うのは電顕像とか,微細構造などの言葉は皮膚科の一般演題から徐々に消えつつあって,光顕像と同様にどの論文にも顔を出しつつある状態になつて来たからである。したがつて誰もが電顕像というものを光顕像と同じように知らなければならない世の中になつて来たというわけである。

凡例

ページ範囲:P.398 - P.398

 1)全論文を三つに分け,それぞれの末尾に"まとめ"として各論文に対する論評,展望,将来への指針について執筆していただいた。
 2)各論文は電顕像を主にし,本文はできる限り簡略に記述する方針をとつた。参考文献についても主要なもののみに止めて他は省略するようにした。

器官培養人胎児皮膚の電子顕微鏡像

著者: 上田恵一 ,   外松茂太郎

ページ範囲:P.401 - P.408

I.はじめに
 皮膚を器官培養し電子顕微鏡的に観察したのは文献的には1963年にJackson&Fell4)が鶏胚で行つたもののみである。
 私達は人胎児皮膚を器官培養しその電顕的所見をすでに数回にわたり報告して来たが8)9),今回は13週人胎児皮膚を6〜8日間培養し,その際に表皮細胞が増殖,分化して成人の表皮細胞像に酷似していく過程を,とくにつぎの点につき観察した。すなわち(1)棘形成,(2) Tonofibrilの形成とTonofilament-desmosome complex,(3) Od-land小体の出現,(4) Keratohyaline顆粒の新生,(5)角層の形成,(6)色素顆粒を有する細胞などである。

家鶏胎児の表皮の分化に関する電子顕微鏡的研究—とくにtonofilamentの出現と表皮角化の機序について

著者: 山本桂三

ページ範囲:P.409 - P.414

I.はじめに
 表皮角化機転の電子顕微鏡による解明は,すでに多くの人々によつて試みられているが,個体発生的にtonofilamentsの発生や,keratohya—lin顆粒の出現を観察した研究は殆んどない。そこで今回家鶏胎児を用いて,この両構造の形成機転を電子顕微鏡により個体発生的に追求し,興味ある知見を得たので,概略を述べてみたいと思う。

Darier病および家族性良性慢性天疱瘡の電子顕微鏡的観察

著者: 荒井邦夫

ページ範囲:P.415 - P.420

I.はじめに
 家族性良性慢性天疱瘡とDarier病,これら両者における共通の病理組織学的所見は表皮層内の棘融解によるラクーネの形成である。棘融解はWilgramら2)4)5)6)のいうように,トノフィラメント・デスモゾーム複合体の崩壊によると思われるが,その際,トノフィラメントとデスモゾームのどちらが先に侵されるかについては問題がある。著者はこの問題点を解明する目的で以下の研究をした。

家族性良性慢性天疱瘡の電子顕微鏡的研究,特にAcantholysisとDyskeratosisについて

著者: 諸橋正昭 ,   佐藤信輔 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.421 - P.428

I.緒言
 家族性良性慢性天疱瘡は,病理組織学的には有棘層下部から基底層にかけてのacantholysisによる水疱形成を特徴とする。一般的にacanth-olysisの成因については,細胞間橋に相当するtonofilament-desmosome complexに変化が生じるということが,今までの天疱瘡群に関する一連の電顕的研究1)〜14)によつて観察されているけれども,その真の機序についてはまだ不明である。著者等は家族性良性慢性天疱瘡患者の患部皮膚を電子顕微鏡的に観察し,若干の興味ある知見を得たので報告する。

Toxic epidermal necrolysisおよび固定疹におけるエオジン嗜好性表皮細胞の電子顕微鏡像について

著者: 河村甚郎 ,   小川靖子 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.429 - P.434

I.はじめに
 Toxic epidermal necrolysis (TEN)は,1956年Lyell1)により提唱されて以来多くの症例報告をみるものであるが,その成因については,ある患者においては薬剤アレルギーが関係していると推定されるものの2)23)尚不明である3)
 Lyellが,TENを独立性疾患とした特徴的な組織像は,真皮の変化をほとんど伴わず,壊死性変化を主体とする表皮細胞の変化であつた。もしTENが薬剤アレルギーであるならば,このことは表皮細胞自身でアレルギー反応が生じている可能性を示唆する。そこで著者らは,TENと思われる患者において,壊死表皮細胞の形能的変化を中心に電顕的観察を行なつたところ,核,mito-chondriaなどの変化の他に,光顕でeosinに好染する変化に相当すると思われるtonofibrilの変化を認めた。

まとめ(1)

著者: 太藤重夫

ページ範囲:P.435 - P.437

 胎児皮膚,培養皮膚の電顕的観察は,正常皮膚細胞内諸構造の経時的なBiologyを明らかにする意味で意義のあることである。本号に於いては,上田・外松が器官培養人胎児皮膚,山本が家鶏胎児表皮の電顕像を報告している。
 文献的には,Fell (The Epidermis, p.61, 1964)—家鶏培養,Breathnach & Wyllie (J Invest Derm.,45;179,1965.)—人胎児,Brody & Larsson (Biolo-gy of the Skin and Hair Growth, p.267,1965:)—マウス胎児,Fujita & Asagami (皮紀要,61;228,1966)—人胎児,Hashimotoら(J Invest Derm.,47;317,1966)—人胎児,岩下(日皮会誌,76;477,1966)—人胎児,相模ら(日皮会誌,76;557,1966)—人培養などの報告がみられる。

Negative stainingによるeczema vaccinatumとeczema herpeticumのウイルス学的鑑別法

著者: 夜久正治

ページ範囲:P.441 - P.444

I.はじめに
 日常の臨床において,診断確定のため,ウイルス学的検索が必要な場合が往々ある。いわゆるKaposi's varicelliform eruptionといわれる症状を見た揚合にも,ウイルス学的検索は不可欠で,その病原体がvaccinia virusであることが証明されて,はじめてeczema vaccinatumの診断は確定し,同様に,その病原体がherpessimplex virusであることが証明されて,はじめてeczema herpeticumの診断が確定する。
 病原ウイルスの証明方法には,皮膚病巣から得た疱疹内容のsmear標本又は疱疹内容を接種したrabbit corneaにおける封入体の観察,卵黄嚢膜の接種実験での発育の観察,患者の回復期血清の抗原抗体反応などがある。

疣贅症の電子顕微鏡像—とく空胞化細胞について

著者: 堀木学 ,   遠藤秀彦 ,   相模成一郎 ,   藤浪得二

ページ範囲:P.445 - P.452

I.はじめに
 尋常性疣贅がvirus性疾患であることはすでにみとめられている。全身に多発した疣贅症の一例を経験し,その各皮疹を電顕下で観察した。今回はそのうち尋常性疣贅様の皮疹の空胞化細胞を主にその超微細構造とvirus様粒子について観察した結果を報告する。

有棘細胞癌とBowen病における細胞間接合の形態について

著者: 田端誠 ,   相模成一郎 ,   藤浪得二

ページ範囲:P.453 - P.460

I.はじめに
 細胞相互間の接合についてはExtracellularMaterial1),Long-range Force2),Ca++-bridgeBondingt3),Differential Adhesiveness4)などの物理化学的検索や分子生物学に基盤をおく形態学的検索5)からの所見が多く発表されている。組織や細胞が病的状態に在るときは,この細胞接合も異常を示すことが考えられ,著者らも天疱瘡6)7),皮角8),Paget病9)における細飽間接合について既に発表し,またその研究の展望をも試みた10)。ここでは,有棘細胞癌とBowen病における病的表皮細胞の接合の電顕像を記述する。

基底細胞癌の電子顕微鏡的観察

著者: 江竜喜史

ページ範囲:P.461 - P.467

I.はじめに
 基底細胞癌を構成する腫瘍細胞は表皮基底細胞や表皮附属器の未分化細胞に形態学的に似ているが,それの由来については諸説がある。また,この細胞が癌細胞としての何か特徴を持つているかどうかについても,議論がある。ここでは,基底細胞癌ならびに,それとの比較の意味で,基底細胞型細胞の増殖している老人性疣贅をとり上げ,電顕的に観察し,上述の問題解明に寄与しようと試みた。

まとめ(2)

著者: 相模成一郎

ページ範囲:P.468 - P.469

 以上5題は藤浪教授座長の下に報告がなされたものであるが,都合によりまとめは私がすることになつた。この点読者にお詫びすると共に第8番目**の演題発表が本誌に寄稿不可能となつたことも併せて陳謝する。
 さて,以上の論文を便宜上1)ウイルス性皮膚疾患と2)皮膚腫瘍に分けてそれぞれについて論評を試みたものが以下である。

発癌物質DMBA滴下により現われるHairless Mouse皮膚の変化の電子顕微鏡的観察

著者: 辻卓夫

ページ範囲:P.471 - P.478

I.はじめに
 Hairless Mouse (濃色素株)の背部皮膚に発癌物質DMBA (7,12-Dimethyl-Benz〔α〕anthr-acene)の1%溶液を滴下すると,4週以後に斑状の色素性腫瘍および乳嘴様丘疹の発生を見る(第1図)。この色素性腫瘍部の光顕像はBluenevusの像と類似する(第2図)。今回私は電顕的にこの部を観察し,表皮および真皮にそれぞれかなりの変化を見たので報告する。

Melanin顆粒を含むLangerhans細胞の電子顕微鏡像—予報

著者: 佐藤昌三 ,   高橋誠

ページ範囲:P.479 - P.485

I.緒言
 Langerhans細胞は鍍金染色,超生体染色,組織化学的染色法により,皮膚,粘膜,皮膚附属器官内に樹枝状の細胞として認められ,電子顕微鏡的にも本細胞の胞体が淡明で,隣接の細胞とdesmosome結合によらず直接相互の形質膜で接し,核は不整形で切れ込みがあり,非特異的ながら特徴的なBirbeck顆粒を含むなど,形態像が明らかになつたが,その本態は今後の問題として残されているが現状である。Langerhans細胞を表皮内神経要素1)〜5),melamocyte由来細胞6)〜11),melanocyteと異質の細胞系12)13)とする見解はさておき,melanocyte,角化細胞と共棲するLangerhans細胞にmelanin顆粒が存在するとのFerreira-Marques1)(1951)の所説は,幾多の光学顕微鏡的,電子顕微鏡的検索がなされたにも拘らず確認され難かつたのであるが,1965年以後ようやく欧米14)〜16),本邦17)〜20)でmela-nin顆粒を含有するLangerhans細胞の電子顕微鏡像の報告をみるに至り,細胞本態の究明に重要な所見として注目を浴びている。我々は健常な皮膚,粘膜を用いてLangerhans細胞内へのmelanin顆粒出現を電子顕微鏡的に追求しているので,実験成績を予報的に述べてみたい。

慢性円板状エリテマトーデスの真皮上層小血管の電子顕微鏡的観察

著者: 小林敏夫 ,   大橋勝

ページ範囲:P.487 - P.496

I.はじめに
 エリテマトーデスの病変の場である血管についての電顕的研究は急性型で腎糸球体の病変について行われ,その変化は内被細胞の膨化と増殖および基底膜の肥厚とその部へのfibrinoidの沈着として報告されている。皮膚の血管病変としては,先に報告した如く,腎と同様に内被細胞に細胞1つ1つを単位としておこる種々の程度の膨化と増殖で,基底膜もまた肥厚している。全身臓器の侵襲を欠き皮膚のみを侵す円板状エリテマトーデスでの皮膚の変化は組織学的所見では表皮の変化および血管周囲の細胞侵潤が急性型と異なつているが血管の拡張,出血像は常に認められ,病理標本から両型を鑑別することは不可能な事がある。これは組織化学的,皮膚顕微鏡的観察においても同様であつて急性型と慢性型との間には質的な差はなく量的な変化があるのみとされている。かかる観点から慢性円板状エリテマトーデスの血管の微細像を観察した際,血管内被細胞内に多数のDense bodyの存在が認められた。炎症におけるlysosomeの役割は最近重要視され,実験アレルギーではArthus現象でimmune complexを貧食した白血球内のlysosomeが崩壊し,多くのAcid hydrolaseを放出し,これが強いアレルギー性炎症を惹起することが知られている。膠原病の内ではリウマチ様関節炎で関節液内の白血球がRA因子を貧食し,lysosomal hydrola-seの放出がおこり,これが炎症をおこし,同時に関節液中ではこれらの酵素活性の上昇が認められている。エリテマトーデスにおいてはこの疾患によく見られる光線過敏性が紫外線によるlyso-somal enzymeの放出に由来する可能性がBa-er1)により指摘された。これは,lysosomeが紫外線によりその膜を失うこと,およびこの変化がクロロキン,副腎皮質ホルモンにより防止出来ることから考えられている。エリテマトーデスでは上記薬剤が有益な治療薬ではあるが,実験アレルギー,および関節炎とはことなり白血球反応を伴うことが少ないのでlysosomeを有する細胞として白血球を考えることに難点がある。かかる点で病変の場である血管内被細胞の変化とその内に多数存在するlysosomeの問題を考えて見たい。

電子顕微鏡による慢性湿疹類の皮膚毛細血管の観察

著者: 三田一幸 ,   大橋勝 ,   筧秀夫

ページ範囲:P.497 - P.502

I.緒言
 アトピー性皮膚炎を中心とする湿疹類の組織学的研究は電顕によるものを含めて己に多くの発表があるが,その多くは表皮を中心としたものであり,真皮特に皮膚毛細血管に観察の焦点を合はせその微細構造について述べたものは少ない。
 一方湿疹を含む全ての皮疹は何らかの意味で必ず皮膚毛細血管の関与が考えられ,皮膚毛細血管が該疾患の成立に大きな役割を演じている場合が多い。

いわゆる血管拡張性肉芽腫の電子顕微鏡像

著者: 増田三千男 ,   大橋勝 ,   香ノ木宏 ,   矢崎喜朔

ページ範囲:P.503 - P.509

I.緒言
 血管拡張性肉芽腫は一般に露出部に生ずる小さな赤色の突出せる有茎ないし半球状の腫瘤で,しばしばビラン又は結痂し少量の膿汁を分泌し,臨床経過は慢性であつて良性ではあるが完全に破壊されなければ再発の傾向が強いものと定義されている。
 本症の本態については当初Botryokokkenが原因に擬せられていたが,その後症例の追加と共に炎症性肉芽腫説が強くなつてきた。本邦においても五十嵐1)は組織的に多くの拡大血管を有する特殊の炎症性肉芽腫と考えている。しかし1932年Freundが血管腫瘍であるとの見解を発表した。この血管腫瘍説はNödl2),Knoth et al3)らにより支持を受け現在ではこの考え方が支配的になつている。Knoth et al3). は116個の本症の組織を検索し血管腫新生物が67.2%をしめていたと報告している。

毛細血管拡張性肉芽腫における毛細血管の微細構造

著者: 白井利彦 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.511 - P.514

I.はじめに
 主に大豆大前後の大きさを有し,半球状ないしややくびれた有茎性の紅色の小腫瘍を臨床的特徴とする,いわゆる毛細血管拡張性肉芽腫の成因については大別して,皮膚の病的状態を背景に外傷または感染などの誘因が加わつて生じた肉芽腫の一型とする考えと後天的に発生する特殊な血管腫とみなす説とがある1)2)
 最近,我々は本症の毛細血管を電顕的に観察する機会を得たのでその観察結果を報告するとともに本症の成因についていささか私見を述べてみたい。

まとめ(3)

著者: 福代良一

ページ範囲:P.515 - P.516

 先般の中部連合地方会の電顕研究会の際,あとで感想を書くよう,相模助教授から依頼があつた。最近,同助教授の好意により,私の担当範囲(演題11〜16)の各位の原稿を通読することができた。これをもとに,当時の記憶をよび起こしつつ,以下に私なりの感じを述べることにする。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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