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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻6号

1968年05月発行

雑誌目次

図譜・268

Nevoxanthoendothelioma

著者: 田中清隆 ,   早川律子

ページ範囲:P.526 - P.527

患者 1歳2カ月,男児。家族歴特記するものはない。
現病歴 生後8カ月頃,右額部に半米粒大の疣贅様小腫瘍を2,3個認めた。その後同様な皮疹が,漸次増加して全額に散在し,更に1歳になる頃には顔面全体に及んだ。自覚症状はない。昭和42年9月11日当科受診。

図譜・269

汎発性環状肉芽腫

著者: 三浦隆 ,   棚橋善郎

ページ範囲:P.530 - P.531

患者 68歳,女。
家族歴・既往歴 特記すべきことなし。

綜説

皮膚科における細網系腫瘍,特に皮膚細網症ならびに近縁疾患について

著者: 川田陽弘

ページ範囲:P.533 - P.542

I.はじめに
 細網内皮系は周知の如くAschoff,清野によつて設定された1つの機能的細胞系統(貪食能)であるが,従来炎症,肉芽腫性病変,代謝障害の面から,また一方造血系との関係,殊に単球白血病の本態に関連して検討されてきた。更に最近に到り,めざましい電子顕微鏡技術の進歩ならびに免疫学の進展にともない,リンパ球と関連した諸問題が論義の対象になつてきている。かような著るしい進歩にもかかわらず,この系統の細胞の分化,生成とか,その構造,機能についての知見はいまだ不充分であり,従つてまたこの種系統の腫瘍の病理なり分類に種々の論義が多く,統一された見解に達していない。この論義の中心になるものが所謂細網症であつて,このものが今日まで色々の混乱をもたらした原因は究極的には広く腫瘍自体の本質,形態学についての知識の不完全なことによるものであるが,一方不統一な概念とか用語にも一端の責任がある。
 皮膚科領域においても,所謂細網症は周知の如く,その国なりまた学者によつて色々異る概念とか用語が使われてきている。綜説のたてまえとしては最近の動向なり,新知見を整理,紹介するのが一般の傾向かも知れないが,この種系統の疾患においては個々の見解の羅列に終始してしまう怖れがあること,また本邦でも従来の諸家の見解なり,分類法は既に相当くわしく紹介されているので,今回は一方にかたよるきらいはあるが,筆者が日頃抱いている考えを述べることにする。というのは今後それについて批判なり,反論を頂ければ,そこにこの領域の問題点が浮き彫りにされ,また何等かの一致点に到達する可能性も生まれてくるのではないかという希望的観測をひそかに抱いているからである。

原著

爪カンジダ症

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.543 - P.552

I.はじめに
 爪カンジダ症は爪白癬に比べて頻度は低いのであるが,指爪を侵すことが多く,美容上における重要性は爪白癬にいささかも劣るものではない。しかし,カンジダによる爪変形についての記載はSamman1)がやや詳しく記しているのみで,その他の成書2〜5)には極めて僅かしか記されていないのが現状である。このように爪カンジダ症に対する認識はまだ充分とはいえず,本症が他種疾患と誤つて加療され,患者に対して経済的,時間的浪費を強いている例がしばしばみられるのである。それ故に,著者はこの3年間に経験した爪カンジダ症に基づいて,その臨床像,組織像ならびに治療法について報告し,併せて本症の成因について若干の考察を試みた。

種痘様水庖症の親子同胞間発生例

著者: 三浦隆 ,   大沼秀雄 ,   牧野好夫 ,   秋葉弘

ページ範囲:P.553 - P.559

I.緒言
 種痘様水庖症の遺伝的発生に初めて言及したのはAnderson1)およびWhite2)であるが,その後10余家系の家族内発生例が文献上報告されている。しかし,ポルフイリンその他に関する生化学的検査法が進歩するにつれて,本症がポルフイリン症その他の特発性光線性皮膚症中の類似疾患から明らかに区別されるようになつたのは最近のことである。従つて,過去の種痘様水庖症例のうちには,今日の時点において考えれば果して真の種痘様水庖症であつたかどうかが疑わしい例が少なくないものと思われる。この意味において,本症が果して遺伝的に発生しうるかどうかについて,改めて検討を加える必要がある。
 今回われわれは,種痘様水庖症の3症例を経験したが,これら症例は親子同胞間の発生例であつた。加えるに,この家系内には上記3症例以外にも本症患者と思われる例が多く,濃厚な遺伝関係が推測された。

網状肢端色素沈着症(北村)症例追加

著者: 田久保浩 ,   花岡宏和

ページ範囲:P.561 - P.566

I.はじめに
 本症は昭和18年北村・赤松1)が,「一種の対側性肢端色素異常症」なる病名で,18才男子の症例を報告したのが最初で,その後昭和28年2)その特異な臨床像および組織像よりAcropigmentatio reticularis kitamura (網状肢端色素沈着症・北村)なる名称が提唱され,今日迄既に多数の症例の集績をみている。我々は最近3代28名中,9名の本症をみる家系で,2代3名の本症を経験したので報告する。

皮膚の血管筋腫の1例

著者: 木村正方 ,   宇野千春 ,   角田秀雄 ,   佐藤浩平 ,   田辺靖彦

ページ範囲:P.567 - P.571

I.はじめに
 本邦における皮膚の血管平滑筋腫の報告は少く,菅原ら1)によれば,1959年までに氏等の症例を含め,未だ9例にしか至つていない。その後現在までの報告は,私達が文献を渉猟した限りでは,上田ら2)の1例を加え,計10例を数えるにすぎない。
 最近私達は,45歳,男の左下腿伸側に出来た胡桃大の腫瘤を組織学的に検索し,血管平滑筋腫と診断し得た1例を経験したので報告する。

魚鱗症患者の血清脂酸について

著者: 柿沼豊 ,   皆川禎子

ページ範囲:P.573 - P.577

I.はじめに
 1906年Tswettは粗製の葉緑素を石油エーテルに溶かし,炭酸カルシウムを充填したガラス塔に流し続けると緑と黄色の着色帯に分離することを発表した1)。以来クロマトグラフィーの技術は毛細管クロマトグラフィーから薄層クロマトグラフィー迄急速に発達してきたが,これらの多くのものは移動相として液体を用いたもので,その分析結果を得るまでには長時間を必要とした。
 1952年Martin&James2)は移動相として気体を用い,少量の試料で短時間に正確な分析結果が得られるガス—クロマトグラフィーを用い脂酸の分析を行ない,更にCopper&Heywood3)は脂酸をメチール化すると容易に分析出来ることを報告した。その後ガス—クロマトグラフィーはカラム,検出器,恒温槽等に改良が加えられた結果,現在は各種分析に利用され,医学の分野でも広く応用されるようになつた。皮膚科的にも本方法を使用した多くの報告があり,本邦でも皮膚の各層4),脂漏性湿疹患者血清5),乾癬患者血清6)並びにその落屑7)の脂酸についての報告がある。

いわゆるAlveolar soft-part sarcomaと思われる1例

著者: 池田直昭 ,   水川秀海 ,   臼井紀一

ページ範囲:P.579 - P.584

1.緒 言
 その大部分が大腿部に原発し,後腹膜,腕,頸部にも発生する腫瘍で,組織像が蜂窩状の構造を示すのが特長的であり,その上皮様配列から,一見,上皮性腫瘍の如き観を呈する肉腫については,Christopherson, Foote&Stewart1)(1952)等によりalveolar soft-part sarcomaと命名され(以下ASPSと略),それ以後類似の腫瘍について既に種々報告されているが,最近同氏等13)は本症の53例について詳細に分析して再び報告している。本邦では深田,北村,武田2)(1955)が本腫瘍に類似するparaganglioma (Smetanaet al.3)1951)を含めてASPSと見做せる33例を一括報告しているが,著者等は最近両大腿に原発したと思われる腫瘍の組織を検し,その所見からASPSと考え得る症例に遭遇する機会を得たのでここに報告する。

検査法

LE現象

著者: 小林敏夫 ,   石川芳久

ページ範囲:P.585 - P.592

I.はじめに
 LE細胞は急性全身性エリテマトーデスに特異的に発現する特殊の形態を呈する細胞である。好中球を主とする貪喰細胞の中にgiemsaやwright染色で紫赤色に染まる大きな均一無構造の類円形封入体を認める細胞である。
 最近自己免疫疾患の概念が各科領域で興味をもたれるようになつたが,エリテマトーデスにおいてLE細胞現象を生ずるLE因子も1種の自己抗体で,患者の白血球などの核蛋白(DNA,Histon)に特異的に作用する数種の抗体の混合物(抗核抗体)と考えられている。

薬剤

緑膿菌感染を伴う難治創に対するカスガマイシンの使用経験

著者: 橋本和夫

ページ範囲:P.601 - P.604

I.はじめに
 われわれは,日常熱傷,外傷,中間層恵皮部など広大な肉芽創に接することが多いが,その治療中時に緑膿菌の感染をうけ,入院時既に感染状態にある患者も少くなくない。本菌の感染は,良好な肉芽の生育を妨げるのみならず,体液の漏出をきたし,更には敗血症の危険さえはらんでいる。
 しかも日常,我々の使用している消毒剤は緑膿菌には全く無効であり,又一旦創より根絶しても,患者の周囲に残存し無菌的操作をくぐつて再感染を起すなどまことにわずらわしい。

海外見聞記

第26回 American Academy of Dermatology

著者: 堀嘉昭

ページ範囲:P.608 - P.610

 第26回American Academy of Dermatology年次総会は,シカゴPalmer Houseにおいて,Dr. C. S. Livingoodを会長として12月2日より6日間,約2,000人の会員を集めて,催された。例年なら,雪が見られるとのことであつたが,今冬は暖くオーバー無しで,街のレストラン,カフエテリアに食事に行ける程であつた。クリスマスの近ずいた街は,美しく飾られ,教会の聖歌隊を,街角にくり出して,宣教している光景も見られた。会場のPalmer Houseのあるところは,down townの中心部であるので昼間は,買物の人々で,歩道は満たされ,夜は,食事に出かけた家族連れで,賑かであり,さすが,アメリカ北部の中心であると感じられた。
 御承知の方も多いと思いますが,このAmerican Academy of Dermatologyは,教育を主とした学会で,レジデントから開業医を含めた皮膚科医のためのSpecial lectureがあり,これにはHistopathology,Radiation therapy,Fundamentals of Cutaneous Allergy and Immunology,Structure and Function of the Skin,Cutaneous Surgery,Advances in Biological Sciences in Relation to Dermatology,MicrobiologyそれにMedical Writingと広範囲でありGrenzgebietから医学論文の書き方等についても,細かい指導が得られることになつている。講師には,その領域における一流の人々が当るわけであるが,中にはいたずらに時間をとるのみにて,要領を得ない講師もあつたとの不平を聞きました。筆者は,Advances in Biological Sciences in Relation to Deromatologyを聴講しました。皮膚科学におけるRescarch ToolsとしてChromatographic Techniquesでは,ガス,液体,ペーパー各クロマトグラフイーについての概論。Fluorescence Microscopyが螢光抗体に用いられること,その実際例のスライド供覧。AutoradiographyのHistology及びElectronrnicroscopyへの利用,講師はDr. Epsteinで,安価に出来ることを強調していた。Epidermal Cell Cultureについては一般の組織培養手技の常識を披露したにとどまり,電子顕微鏡についても,routineのことについて述べたあと,negativestain,shadowingが皮膚科領域においても用いられようと,簡単に概説しただけであつた。

教室紹介

昭和大学/三重県立大学

著者: 滝口都三

ページ範囲:P.611 - P.612

教室の歴史
 当教室は昭和3年の昭和医学専門学校設立と共に皮膚泌尿器科教室として開設,以来40年の歳月を閲する。初代荻原省三教授は所謂創業の基礎を固め,27年間在職,昭和30年逝去された。その間,昭和13年4月植田貞三教授が泌尿科講座と臨床外来講義を分担されたが,昭和18年に出征。その後任として来られた故楠教授(前阪大教授),小嶋理一教授(現東医大教授)も相次いで出征されるという暗い谷間の一時期があつた。
 昭和21年昭和医科大学,同39年薬学部の新設と共に昭和大学医学部と改称された。泌尿器科教授としては篠田倫三教授についで,昭和26年より赤坂裕教授が在職しておられる。荻原教授病臥中,昭和29年4月群馬大学皮膚科教室より,橋本謙教授が赴任され,事実上,泌尿器科との分離をみた。当時教室員の数も少なかつたが,次第に,その数を増し,充実の度を加えていつた。助教授は鳥山悌(現都立荏原病院皮膚科医長),関建次郎(現横浜市大助教授)の両先生についで,39年に東大皮膚科教室より藤沢助教授が赴任された。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.613 - P.617

DER HAUTARZT18 : 11, November, 1967
Die morphologische und funktionelle Organisation der Melanocyten in menschlicher Haut : D. Petzoldt 481
Über histogenetische Beziehungen zwischen Mastzellen und Melanocyten. Fähigkeit der Mastzellen Melanin zu bilden : M. R. Okun, P. Grob, L. Edelstein und W. F. Lever 489

〈原著論文抄録〉

爪カンジダ症,他

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.619 - P.619

 著者は爪変化を伴つて,患部よりカンジダを培養によつて証明し得た55症例を臨床的に観察し,また一部は抜爪を行つて組織学的に検討した。
 爪カンジダ症はカンジダの感染部位により,後爪廓炎型,側爪廓炎型および爪甲剥離型の3型に分けることが出来る。これら3型の臨床像は相当異なつているが,病因論的には同一機序によつて発生するものである。すなわち,カンジダ感染により爪甲が上皮より遊離し,ついで角質増殖を生じることに起因している。各3型における角質増殖の程度の差は爪の解剖学的構造によつて生じ,またそのために臨床像に差を生じるものである。本症におけるカンジダの寄生部位は角質増殖部を主とするが,爪甲中にも見い出し得る。寄生形態は爪甲中では菌糸型を主とし,大気に接しやすい部位では胞子型を主とする。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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