icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科22巻6号

1968年05月発行

文献概要

綜説

皮膚科における細網系腫瘍,特に皮膚細網症ならびに近縁疾患について

著者: 川田陽弘1

所属機関: 1順天堂大学医学部皮膚科

ページ範囲:P.533 - P.542

文献購入ページに移動
I.はじめに
 細網内皮系は周知の如くAschoff,清野によつて設定された1つの機能的細胞系統(貪食能)であるが,従来炎症,肉芽腫性病変,代謝障害の面から,また一方造血系との関係,殊に単球白血病の本態に関連して検討されてきた。更に最近に到り,めざましい電子顕微鏡技術の進歩ならびに免疫学の進展にともない,リンパ球と関連した諸問題が論義の対象になつてきている。かような著るしい進歩にもかかわらず,この系統の細胞の分化,生成とか,その構造,機能についての知見はいまだ不充分であり,従つてまたこの種系統の腫瘍の病理なり分類に種々の論義が多く,統一された見解に達していない。この論義の中心になるものが所謂細網症であつて,このものが今日まで色々の混乱をもたらした原因は究極的には広く腫瘍自体の本質,形態学についての知識の不完全なことによるものであるが,一方不統一な概念とか用語にも一端の責任がある。
 皮膚科領域においても,所謂細網症は周知の如く,その国なりまた学者によつて色々異る概念とか用語が使われてきている。綜説のたてまえとしては最近の動向なり,新知見を整理,紹介するのが一般の傾向かも知れないが,この種系統の疾患においては個々の見解の羅列に終始してしまう怖れがあること,また本邦でも従来の諸家の見解なり,分類法は既に相当くわしく紹介されているので,今回は一方にかたよるきらいはあるが,筆者が日頃抱いている考えを述べることにする。というのは今後それについて批判なり,反論を頂ければ,そこにこの領域の問題点が浮き彫りにされ,また何等かの一致点に到達する可能性も生まれてくるのではないかという希望的観測をひそかに抱いているからである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?