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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻8号

1968年07月発行

雑誌目次

図譜・272

家族性良性慢性天疱瘡

著者: 原美津子

ページ範囲:P.744 - P.745

患者 26歳♀。初診 昭和41年6月13日。
主訴 左乳房を中心とする糜爛及び痂皮。

図譜・273

Alopecia Mucinosa(Pinkus)

著者: 白取昭 ,   嶋崎匡 ,   伝法玲子

ページ範囲:P.748 - P.749

患者 6歳,女児。初診 昭和42年3月6日。
主訴 左頬部における軽度瘙痒性紅斑。既応歴・家族歴 特記すべき事なし。

綜説

皮膚科における精神身体医学

著者: 樋口謙太郎 ,   中川俊二

ページ範囲:P.751 - P.755

I.はじめに
 これまでの皮膚科学は,その病変をあるがままの状態で記載していく,いわゆる「記載皮膚科学」と呼ばれるものが主流をなしてきた。しかし生体はその環境にたいして,絶えず一定の反応を示し順応してゆく力をもつている。疾病においても,一定の組織,臓器が侵されるだけでなく,体全体として疾病に反応することが考えられる。そこで近時は皮膚に現われた変化を,体内病変の表現とみる内科的な考え方が強くなつてきつつある。このため蕁麻疹,皮膚炎,湿疹,紅斑症などは,体内の病的過程に対する皮膚の反応として現われるものということで,「反応性皮膚疾患」という名称が与えられるようになつた。しかも皮膚は発生学的に神経と同じ外胚葉性のものであつて,皮膚と神経は相互に密接な関連をもつており,神経系統の異常状態が皮膚に影響をおよぼすことも当然考えられるわけである。また皮膚が心理面の影響によつて種々の反応をしめすことも,すでに古くから知られている。たとえば興奮,緊張,恐怖,不安,怒り,差恥などの情動は,皮膚に発赤,蒼白,発汗,発疹などの形で反応を示す。すなわち皮膚血管の拡張,収縮,発汗,立毛などの現象が現われる。
 これらはすべて自律神経の刺激によるものであつて,その刺激の程度に応じた反応が末梢の皮膚に現われた現象であると考えられる。一過性の情動の場合には,皮膚反応もそれによつて一過性に経過する場合が多いが,一方,心的葛藤の抑圧,欲求不満,環境への不適応などによる精神的緊張が長期にわたつて持続すれば,それにもとずいて現われる皮膚の変化も持続し,ついには器質的疾患にまで発展する可能性も充分に考えられる。

原著

Wegener's Granulomatosis

著者: 山口淳子

ページ範囲:P.757 - P.765

I.はじめに
 1936年,ついで1939年にF.Wegener1)2)は気道,とくに上気道の進行性壊死性過程が先行し,全身に散布性病巣,とくに腎に障害のみられることの多い疾患について病理学的に検討し,壊死性鼻炎よりこれを分離,一独立疾患とした。その後欧米諸家の報告があいつぎ,その独立性が確認されたが,本邦でも1940年宮田3)の報告以来,耳鼻科,内科,眼科領域で症例が多くみられるにいたつた。一方皮膚科領域ではその主たる病変が他科領域に属するためか,わずか5例の報告しかみていない。ここに自験例を報告し,あわせて集め得た本邦例について若干のかんがえを加えてみたい。

遺伝性対側性色素異常症の1例

著者: 近藤湘子 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.767 - P.771

I.はじめに
 本症は,対側性肢端色素沈着症(土肥・駒屋)1)また対側性点状網状色素欠乏症(松本)2)と同一疾患とされ,網状肢端色素沈着症(北村)と共に,本邦特有の色素異常症の1つであり,欧米での報告はなお認められていない。本症はまた,雀卵斑,色素性乾皮症との関係において,種々論議のある疾患でもある。
 最近,筆者らは本症の1例を経験し,若干の検索を行つたので,ここにその概要を報告したい。

いわゆる膠原病の臨床的観察,特にその遠隔成績について

著者: 菅原光雄 ,   道部秉

ページ範囲:P.773 - P.779

I.緒言
 1941年Klempererが病理形態学的立場から,全身の膠原線維に類線維素変性を中心とする病変が系統的に表われる疾患の存在に注目して,膠原病の概念を提唱した1)。その後病変は膠原線維のみでなく,血管,筋肉,結合織全般にわたることが明らかにされ,膠原・血管病,結合織病などの名称もあり2)3),その範囲も当初はリウマチ熱,リウマチ性関節炎,エリテマトーデス,汎発性鞏皮症,皮膚筋炎,結節性動脈周囲炎の6種であつたが,今日では極めて多数の疾患が本症とみなされている。皮膚科領域においても上記の他に,We-ber-Cristian病,Behçet病,Shönlein-Henoch病,栓球減少性紫斑病,Bürger病,全身性血栓性静脈炎,側頭動脈炎,結節性紅斑,多形滲出性紅斑,Osler病,血清病等の帰属が問題となつている。狭義のそれとしては,エリテマトーデス,汎発性鞏皮症,皮膚筋炎,結節性動脈周囲炎および成年性浮腫性硬化症があげられる。今回,昭和25年から40年迄の16年間にわたり,当教室を訪ずれた狭義のこれらの疾患患者について,臨床的観察を行なうと共に,その遠隔調査をしたので,以下に報告する。なお慢性円板状エリテマトーデス(DLE)については諸家の見解が必らずしも一致しないが,SLEとの間に移行型ないし中間型の存在も知られていることから本病類に入れた。又これら疾患は,周知の如く,膠原病の概念が導入される以前から予後不良の皮膚病といわれていたもので,皮膚疾患の予後研究の一環として遠隔成績の調査を行なつたものである。

顔面播種状粟粒性狼瘡の13例

著者: 藤沢竜一 ,   滝口都三 ,   末延清志 ,   中山芙蓉 ,   内野モモヨ ,   矢代昭夫

ページ範囲:P.781 - P.790

I.はじめに
 顔面播種状粟粒性狼瘡は1878年のT.Foxの報告にはじまり,本邦では大正4年,土肥の報告を嚆矢とする1)。以後,本症に関する発表,報告は枚挙に遑なく,現在,本邦では結核疹の中の一代表疾患とされている1)2)。周知の如く,本邦における本症の問題点としては,統計的に第2次大戦後,特に昭和30年代以後増加をみること,さらに病理組織学的には定型的結核結節の形成を主体とし,そのほか類肉腫様構造,上皮嚢腫形成,毛嚢表皮腫様構造を呈する場合もあること,皮膚結核中,ツ反応陽性率が最も低いこと,治療学的には抗結核剤による化学療法に対し反応し難いことなどであり,これらに関連して,類肉腫症との関係が本態論として問題とされている。
 当教室では昭和37年から42年までの6年間に30例の皮膚結核症例を経験したが,うち真正皮膚結核は僅かに2例であり,第1位は本症の13例であつた。これらの症例について報告する。

骨髄性皮膚白血病の1例

著者: 菊池滋 ,   河村節子 ,   阿保博己 ,   清野義郎 ,   工藤一

ページ範囲:P.791 - P.797

I.緒言
 皮膚症状を伴う白血病の本邦第1例は明治40年北川1)が記載した「皮膚のリンパ状白血病」であり,以来,多くの報告に接する。著者等は特異な皮膚病変を伴い,末期には獅子面状顔貌を呈した急性骨髄性皮膚白血病の1例を経験したので剖検所見と併せて報告する。

薬剤

Cephaloridine(セポラン)による梅毒治験例

著者: 植村隆 ,   小林三郎 ,   渡辺義一 ,   善養寺浩 ,   西条頼広

ページ範囲:P.805 - P.816

I.はじめに
 梅毒の治療にペニシリン(Pc)が使用されるようになり各国の梅毒患者数は著しく減少してきたが,我が国に於ては近年顕症梅毒患者が次第に増加しつつある。この原因は医学的にも社会的にも複雑な問題であると思う。
 ところで現在駆梅療法には各種抗生物質を始めとして重金属剤が使用されているが,Pcの駆梅効果に較べると他の薬剤が劣ることが一般に知られている。Pcにはアレルギー及び耐性の問題はあるが投与法が便利である点は今日広く使用されている理由の1つであろう。1965年Cephalosporium acremoniumからPcと類似の核をもつCephalosporin Cなる新抗生物質が分離され,その誘導体Cephaloridine(CER)が半合成され広い抗菌性スペクトラムとPcとの交叉耐性が少い点から一般細菌感染症の治療薬として諸家の注目を浴びるに至つた。一方梅毒治療面に於ても家兎実験梅毒に関してもPcと同様の効果があることが示され,人梅毒の治験例の報告も最近見られる様になつた。然しながら末だその報告も少く諸種梅毒に対する投与量に関しても確定していない。吾々はCERに関する体内濃度,Pcとの交叉アレルギー及び梅毒治験例の文献を紹介し併せて吾々の症例に就て報告したいと思う。

海外見聞記

65.Tagung der Vereinigung Südwestdeutscher Dermatologen am 27/28, April 1968 in Heidelberg

著者: 徳永信三

ページ範囲:P.819 - P.821

 (前略)当地は,只今春酣と云つた所で黒々とした冬の暗さは影をひそめ今はすつかり美しい新緑に色どられ溜息が出る程の見事さです。去る4月27・28の両日ハイデルベルヒで春の学会があり小生も医局の連中と一緒に会に出席致しました。学会は病理の講堂で行なはれました。大体東京地方会より少し多いかと思われる出席者で,今は引退して居られるProf. GansがPräsidentとして座長のSchnyder教授と会を主催され81歳で矍鑠たるものです。日本人は小生と東大皮膚科の石橋先生と東京医歯大の病理の人の3人でした。別表の様に皮膚の病理組織の演題が主でとくに電顕の仕事が多いようでした。ケルン大学のSteiglederは新進気鋭の教授で比較的理解しやすく印象的でしたが,とにかく小生の語学力をもつてしては残念乍ら未だ正確に内容を把握する事は不可能ですからその内容については報告を遠慮致します。学会には何時も必ず名物男が居るものですがこの学会ではMünchenのBraun-Falco,MainzのKortingだそうでKorting教授は,殆ど毎回の演説に何か発言して居た様です。WürzburgのRöckl教授がBedeutung der Histopathologie für die Diagnose knotigenUnterschenkeldermatoseと云う題で,P. N. 結節性紅斑,バサン,アレルギー性血管炎等につき話し,バサンには組織学的にPathognomonicな所見がないので従来バサンと臨床的に考へられて来た症例は殆ど前記何れかのカテゴリーに含める事が出来る。従つて結核菌が証明されない限り本症の診断を決定するには,慎重な考慮を要するのではないかと思うと云うような事を云ひました所,ムックリと起ち上がつて自分はそうは思はない,組織学的にはそうかも知れないが臨床的には,バサンと云う皮膚疾患は,charakterischなものである。あなたのような論法で話をすれば皮膚疾患はなくなつて終うと極端に云へば云へると云うような事を始めは,平静に次第に顔を真紅にして手を振りあげて反論しRockl教授も敗けじと又これに反論し聴衆はニヤニヤしながら両大家の論争を楽しんで居たようです。
 夜はネッカール河畔のStiftsmühleと云うホテルで夕食会がありましたが会がはねる頃各自さいふから自分の食べたり飲んだ分を各自の席で係のボーイに支払うのですがこんなマナーになれない小生には一寸奇妙な感じがしましたが或はこれがまともなのかも判りません。

教室紹介

順天堂大学/金沢大学

著者: 矢口秀男

ページ範囲:P.822 - P.823

教室の歴史
 順天堂は医育機関としても,その歴史は古く,創立以来,今年で130年を数える。順天堂医院皮膚泌尿器科は,明治36年,阿久津三郎先生により創設されたが,わが国の民間病院では,最初の独立診療科であるといわれている。
 その後,坂口勇,藤谷弥三郎,小池正朝の諸先生により引き継がれて来たが,昭和19年,順天堂医学専門学校が設立されるとともに,皮膚泌尿器科教室が開設され,教授には小池正朝先生が就任された。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.824 - P.825

THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY 49 : 5, November, 1967
In Vitro Lympholysis in Peripheral Blood of Percutaneously Sensitized Guinea Pigs : T. Matsuo and S. Ofuji 430
The Relationship of Transferrin and Iron to Serum Inhibition of Candida albicans : N. B Esterly, S. R. Brammer and R. G. Crounse 437

〈原著論文抄録〉

Wegener's Granulomatosis,他

著者: 山口淳子

ページ範囲:P.837 - P.837

 1936年ついで1939年にWegenerの報告した気道,とくに上気道の進行性壊死性過程が先行し,全身に散布性病巣,とくに腎に障害のみられることの多い疾患について,病理学的に検討し,壊死性鼻炎よりこれを分離,一独立疾患とした。Wegener's granulomatosisにつき本邦の報告例73に自験例を加え外国例との比較を行つた。
 34歳女子,約6年前,慢性副鼻腔炎様の症状で始り,診断のはつきりしないまま下鼻甲介からの試験切除にて本症と診断され,以来鼻症状に加え眼,尿,血液,関節などの全身症状が出現し大量鼻出血にて本学耳鼻科に入院。当科初診時,鞍鼻,顔面浮腫があり頭,前額,顔面,両耳後,両前腕,両手背部に米粒大から示指頭大の水疱の多発をみとめ,両指背,下腿,両膝蓋部,肘頭,足関節には痂皮を有する壊死性丘疹の散在をみとめた。組織学的には下鼻甲介の組織は巨細胞性肉芽腫様像を示し,前腕部小水疱のそれは壊死性血管炎様像を示した。自験例を含め74例についての考察では,男女別では大差なく,30代に頻発し,臨床像としては鼻,眼,腎の症状のそろつているものがもつとも多く,皮膚では露出部位に潰瘍,紅斑,出血斑,水疱などを示すものが多く,又1年前後の死亡率が高かつた。なお発熱,関節症状,血液および血清所見,赤沈の促進,血圧,心電図所見,胸部レントゲン検査などについても考察を行つた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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