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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科22巻8号

1968年07月発行

文献概要

綜説

皮膚科における精神身体医学

著者: 樋口謙太郎1 中川俊二2

所属機関: 1九州大学医学部皮膚科教室 2精神身体医学教室

ページ範囲:P.751 - P.755

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I.はじめに
 これまでの皮膚科学は,その病変をあるがままの状態で記載していく,いわゆる「記載皮膚科学」と呼ばれるものが主流をなしてきた。しかし生体はその環境にたいして,絶えず一定の反応を示し順応してゆく力をもつている。疾病においても,一定の組織,臓器が侵されるだけでなく,体全体として疾病に反応することが考えられる。そこで近時は皮膚に現われた変化を,体内病変の表現とみる内科的な考え方が強くなつてきつつある。このため蕁麻疹,皮膚炎,湿疹,紅斑症などは,体内の病的過程に対する皮膚の反応として現われるものということで,「反応性皮膚疾患」という名称が与えられるようになつた。しかも皮膚は発生学的に神経と同じ外胚葉性のものであつて,皮膚と神経は相互に密接な関連をもつており,神経系統の異常状態が皮膚に影響をおよぼすことも当然考えられるわけである。また皮膚が心理面の影響によつて種々の反応をしめすことも,すでに古くから知られている。たとえば興奮,緊張,恐怖,不安,怒り,差恥などの情動は,皮膚に発赤,蒼白,発汗,発疹などの形で反応を示す。すなわち皮膚血管の拡張,収縮,発汗,立毛などの現象が現われる。
 これらはすべて自律神経の刺激によるものであつて,その刺激の程度に応じた反応が末梢の皮膚に現われた現象であると考えられる。一過性の情動の場合には,皮膚反応もそれによつて一過性に経過する場合が多いが,一方,心的葛藤の抑圧,欲求不満,環境への不適応などによる精神的緊張が長期にわたつて持続すれば,それにもとずいて現われる皮膚の変化も持続し,ついには器質的疾患にまで発展する可能性も充分に考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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