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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科22巻9号

1968年08月発行

雑誌目次

図譜・274

先天性魚鱗癬

著者: 長谷川末三 ,   堀口和江

ページ範囲:P.850 - P.851

患者 生後17日目の新生男児。
初診 昭和42年2月6日。

図譜・275

紅色陰癬

著者: 原田鍾造

ページ範囲:P.854 - P.855

患者 16才,♂。
初診 昭和42年12月28日。

綜説

表皮剥離法

著者: 大城戸宗男 ,   花岡宏和 ,   松雄聿朗 ,   籏野倫

ページ範囲:P.857 - P.864

I.はじめに
 皮膚科領域に生理・生化学的知識が導入され出してから久しく,その貢献は測り知れぬものである。しかしその多くが内科的傾向,云い換えるなら皮膚疾患に対する全身的検索に重点が置かれている結果,皮膚症状のみで各種検査に異常を呈さぬ場合には,最近の進歩しつつある生物学的研究方法の恩恵には浴さぬ事が多い。検査法としては各種自動分析器,放射性同位元素の普及による微量化が可能となつて,皮膚局所の基礎研究に発展を見つつあるが,その臨床的応用はほとんど見られず,両者のギャップは驚く程大きいのは衆知の事実である。
 近年流行している分子生物学的研究法の皮膚疾患に対する応用は1,2の例外を除いて,細胞顆粒の分画分離に充分な材料を得られぬので望めぬとしても,組織レベルでの病態生理の知識に関してさえ意見の統一を認めていない。この理由として種々挙げられるであろうが,その1つに採取した皮膚より表皮を剥離する完全且つ簡単な方法がない事である。

原著

Reticulohistiocytosis(皮膚型)

著者: 田久保浩

ページ範囲:P.865 - P.869

I.はじめに
 皮膚に結節状皮疹を作り,網内系細胞よりなる疾患群の1つにreticulohistiocytomaと称する疾患がある。その疾患概念はまだ明確化されたとはいえないが,近時この種の疾患に対する関心が増したせいか,かかる病名が適切と思われる症例が本邦においても数例報告されている。本症の如き疾患では診断の殆んどが組織検査に負う為,鏡検によりはじめて正しい診断が成されるのが普通で,臨床上その特徴はきわめて少ないものである。ただ本症と殆んど同一の組織像をとりながら,皮膚の他に関節・骨・粘膜などを侵す全身型reticulohistiocytosisについては,その臨床症状は有力な診断的根拠となるものと考える。
 著者は最近,臨床的に皮膚線維腫若しくは粉瘤が疑われた皮下結節で,病理組織所見よりreticulohistiocytosisなる病名が最も適当と思える症例を経験したので之を報告し,該疾患と近縁関係にある疾患,殊に本症の全身型即ちOrkin等のいうmulticentric reticulohistiocytosisとの関連をいささか考按したので述べてみたい。

一家系内に発症した色素性乾皮症の2例

著者: 佐藤昭彦 ,   牧野好夫 ,   藤山忠昭

ページ範囲:P.871 - P.876

I.緒言
 色素性乾皮症は劣性遺伝性疾患であり,その大多数は幼児期に発症し,20歳以前に不幸な転帰をとる。しかし稀には成人に発症し,高齢まで生存するものもある。われわれが経験した第1例は72歳の女子であり,第2例は同家系内の従兄妹を両親とする16歳の少年である。ここに両症例を報告するとともに,第1例の下口唇にみられた腫瘍が基底細胞癌の上に生じた毛細血管拡張性肉芽腫の興味ある所見を呈したので,併せてその詳細を述べ,発生病理につき若干の考按を加えたい。

顔面下疳様膿皮症の1例

著者: 木村恭一 ,   小野公義

ページ範囲:P.877 - P.882

I.はじめに
 1934年,E.Hoffmann1)によつてはじめて記載された顔面下疳様膿皮症なる疾患は,主に顔面を侵し,そのあたかも硬性下疳を思わせる特異な臨床所見に対して与えられた病名である。多くの場合,病巣部より葡萄球菌が証明されることにより,一応細菌性疾患に分類されてはいるものの,その原因菌としての充分な意味ずけとなると,今なお,不明な点が多い疾患であるが,本邦における報告例は極めて少ない。われわれは,最近,本症と考えられる1例を経験したので以下に報告する。

姉妹に見られた円板状ならびに全身性エリテマトーデス

著者: 水元俊裕 ,   高島巌 ,   郭功基

ページ範囲:P.883 - P.890

I.はじめに
 紅斑性狼瘡(以下LE)が,その多様な病像から皮膚科ばかりでなく各科領域での興味をひくようになつてすでに久しいが,その家族発生例については,Weidenhammer1)のlupus vulgarisとLEとを併有する兄の弟にLEをみた報告をはじめとして,稀なものとされながらも次第にその数を増し,Hauser2)(1958)は,世界文献に39例をみるとしている。わが国でも,小林3)は,LE患者の家族で血清補体値の低値をみるとして,家族発生の要因の一端を明らかにしているが,報告例の多くは,急性播種状紅斑性狼瘡(以下SLE)または慢性円板状紅斑性狼瘡(以下DLE)のいずれか1型の発生例で,SLEとDLEとの組み合わせはそれ程多くはなく,さらにそれを兄弟ないしは姉妹に限定してみると稀有なもののようである。最近われわれは姉にDLE,その妹にSLEの発症をみた例を経験したので報告する。

紅色陰癬

著者: 原田鍾造

ページ範囲:P.891 - P.895

I.緒言
 紅色陰癬は本邦では比較的稀な疾患とされ従来原因菌として真菌が擬せられ,それはmicrosp-orum minutissimumまたはnocardia minut-issimaなどと呼ばれていた。1961年Sarkany等6)7)8)9)はグラム陽性の桿菌を本症の鱗屑より培養することに成功し,紅色陰癬が表在性細菌感染性疾患であることを明らかにした。この桿菌の名称はcorynebacterium minutissimum (以下C.m.と略す)として認定され9),一般的となつた。
 筆者は最近本症の典型例を経験したので,その概略を紹介すると共に,本邦報告例を統計的に観察し,若干の文献的考察を加えてみた。

下腿潰瘍の2稀有例—先天性動静脈瘻による下腿潰瘍および下腿潰瘍を伴つたベーチェット病の各1例

著者: 三浦隆 ,   斉藤信也 ,   笠井達也 ,   秋葉弘 ,   佐藤昭彦 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.897 - P.903

I.緒言
 下腿潰瘍は一般に,原疾患によつてその発生機構も当然異なつて来る。例えばLeu1)によれば,下腿潰瘍を伴う疾患として,1)静脈疾患,2)動脈疾患,3)動静脈短絡,4)毛細血管の疾患,5)細菌性疾患,6)真菌性疾患,7)淋巴管の疾患,8)神経栄養障害性疾患,9)血液疾患,10)巨脾症,11)強皮症,12)慢性の瘻孔を形成する疾患,13)良性腫瘍および悪性腫瘍,14)各種の系統的疾患,などの14項目があげられており,しかもそのいずれの場合にも潰瘍の臨床形態はかなり類似しているという。さて,本症の治療に際しては,潰瘍そのものにたいする局所療法のみによつて根治させることは多くの場合困難で,原疾患にたいする根本的治療が不可欠のものである。従つて下腿潰瘍を診た場合,その原疾患を正しく診断することが最も必要となる。それには,潰瘍部の組織学的検査を始め,細菌学的あるいは真菌学的検査などが一般にあげられている。しかしながら,われわれが日常外来において遭遇するのは,静脈ないし動脈の疾患に起因して発生する例が多い1)。これらの脈管性下腿潰瘍例においては,局所を中心とした血管造影法によつて始めて原疾患が正しく診断され,適切な治療法が構じられることとなる。すなわち,血管造影法は本症の診断,ひいては治療に大いに役立つている。
 今回われわれは,ほぼ同様の臨床所見を呈した下腿潰瘍例2例を経験した。われわれはこれら症例について上述の血管造影法を実施し,それぞれ稀有なる成因によることを初めて明らかにすることが出来た。すなわち,1例は先天性動静脈瘻による下腿潰瘍,他の1例はベーチェット病に合併した深部静脈血栓症による下腿潰瘍の2症例である。以下,これら2症例につき述べ,文献的考按を加えたい。

検査法

自律神経機能検査法—概論と実際

著者: 池上寿彦

ページ範囲:P.911 - P.919

I.はじめに
 生体があらゆる内的および外的環境に順応して,生活を維持していくためには,色々な調節が必要であり,この調節機能を果すものとして,自律神経系や内分泌系などがある。もしこの調節機能が順調に行われなければ,環境に適応出来なくなり,正常な生活が営む事が出来ず,種々の疾患発生の要因となる。自律神経系は内分泌系および精神活動と密接な,そして複雑な関係にあり,また常に変化していく環境に対応して変化しているものであるから,検査に当つては,その影響される因子を常に考慮に入れ,一定の条件のもとで行う様に心がけなければならない。

薬剤

皮膚科領域におけるインドメサシンの治験

著者: 斎藤忠夫 ,   須貝哲郎

ページ範囲:P.921 - P.927

I.はじめに
 非ステロイド系抗炎症剤の研究開発は近時活発に推進され,phenylbutazoneを始めとして相次いで新しい化合物や誘導体が登場した。1963年Merck社研究陣のWinterら1)はindomethacinすなわち1-(p-chlorobe-nzoyl)-5-methoxy-2-methylindole-3-acetic acidが強力な抗炎鎮静作用と抗肉芽腫形成作用を有することを見出し,臨床的研究においてもリウマチ性疾患に有効であることが続々と報告された2-4)。著者らはたまたま本剤の皮膚科領域における治験を日本メルク万有会社から依頼され,現在まで7カ月間にわたる本剤(商品名インダシンIndacin)の治験をえているが,今回は主として,アレルギー性血管炎に対する治療成績について,報告する。

印象記

第67回日本皮膚科学会総会並びに学術大会印象記

著者: 土肥淳一郎

ページ範囲:P.930 - P.933

 第67回日本皮膚科学会総会並びに学術大会は東北大学高橋吉定教授を会頭として昭和43年5月21(火),22(水),23(木)日の3日間,緑濃い仙台市川内東北大学記念講堂において開催された。十勝沖地震の余波がようやく落付いた東北路であつたが非常に多数の会員が参会し第1日の第1会場などはさしもの広い会場が満員の盛況であつた。
 学術大会は例によつて宿題報告,一般演題,スライド供覧,学術展示の他に毎日1主題についてシンポジウムが行なわれ,また国際皮膚科学交換講座として西独ミュンヘン大学のO.Braun-Falco教授の講演が行なわれた。午前中は連日一般演題を午前8時30分より10時30分迄2会場で同時に行い,あとの時間を宿題報告,招待講演にあて,午後はシンポジウムに充分な時間をさき,そのあとをスライド供覧,学術展示討議にあてたことは好ましい時間割であつた。しかもこのような時間割であつて一般演題の口演数は73題と近年になく多数であつた。

教室紹介

信州大学/日本大学

著者: 池上寿彦

ページ範囲:P.934 - P.935

教室の既史
 信州大学医学部皮膚科の前身である松本市営病院皮膚泌尿器科は昭和2年4月に,北村包彦先生を迎えて開設され,以来約2年間設立と拡充に努力され,現在の信大医学部皮膚科の基礎が築かれたのである。
 太平洋戦争も敗色の濃くなつた昭和19年3月,国立松本医学専門学校が設立されて皮膚泌尿器科教室となり,初代教授として,現在横浜におられる小野淼先生が就任され,戦後昭和23年国立松本医科大学皮膚泌尿器科教室に昇格し,初代教授は,今はなき橋本満次先生であつた。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.936 - P.939

DER HAUTARZT18 : 12, Dezember 1967
Vulva-Beteiligung bei Lichen sclerosus : G. F. Klostermann und V. Ipsen 529
Biochemische Stigmata der Epidermis-Reaktivität. I. Das Verhalten der säurelöslichen, UV. absorbierenden Verbindungen der Meerschweinchen-Epidermis unter dem Einfluss von Autolyse, Regenerations-Stimulierung, Cetan-Applikation und Methotrexat-Behandlung : E. Schwarz und F. Klaschka 532

〈原著論文抄録〉

Reticulohistiocytosis(皮膚型),他

著者: 田久保浩

ページ範囲:P.941 - P.941

 細網組織球性細胞より成る一種の細網症で高度に多核巨細胞の出現する一群にreticulohistiocytoma,或いはreticulohistiocytosisと呼ばれる疾患がある。現在本症には皮膚のみに限局して起る皮膚型と,粘膜・関節・骨等をも侵し特異な全身症状な呈する全身型が区別されているが,著者はこの皮膚型と思われる単発性の本症を報告した。
 症例は26歳男子会社員,約1年前より存在する左耳後部の硬結である。外傷等の誘因なく,自覚症状もない。硬結は初診時1.2×0.7cmであつたが,手術時には略半分の大きさに自然縮小していた。組織学的に多数の多核巨細胞を混えた細網組織球性細胞が,真皮深層に稠密に限局して浸潤し,肉芽腫状を呈し,この巨細胞原形質はスリ硝子状。原形質内に糖質及び脂質を少量,複合物質の形で不規則に含有していた。併せて全身型との異同につき若干の考按を試みた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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