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原著
下腿潰瘍の2稀有例—先天性動静脈瘻による下腿潰瘍および下腿潰瘍を伴つたベーチェット病の各1例
著者: 三浦隆1 斉藤信也1 笠井達也1 秋葉弘1 佐藤昭彦1 高橋伸也1
所属機関: 1東北大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.897 - P.903
文献購入ページに移動下腿潰瘍は一般に,原疾患によつてその発生機構も当然異なつて来る。例えばLeu1)によれば,下腿潰瘍を伴う疾患として,1)静脈疾患,2)動脈疾患,3)動静脈短絡,4)毛細血管の疾患,5)細菌性疾患,6)真菌性疾患,7)淋巴管の疾患,8)神経栄養障害性疾患,9)血液疾患,10)巨脾症,11)強皮症,12)慢性の瘻孔を形成する疾患,13)良性腫瘍および悪性腫瘍,14)各種の系統的疾患,などの14項目があげられており,しかもそのいずれの場合にも潰瘍の臨床形態はかなり類似しているという。さて,本症の治療に際しては,潰瘍そのものにたいする局所療法のみによつて根治させることは多くの場合困難で,原疾患にたいする根本的治療が不可欠のものである。従つて下腿潰瘍を診た場合,その原疾患を正しく診断することが最も必要となる。それには,潰瘍部の組織学的検査を始め,細菌学的あるいは真菌学的検査などが一般にあげられている。しかしながら,われわれが日常外来において遭遇するのは,静脈ないし動脈の疾患に起因して発生する例が多い1)。これらの脈管性下腿潰瘍例においては,局所を中心とした血管造影法によつて始めて原疾患が正しく診断され,適切な治療法が構じられることとなる。すなわち,血管造影法は本症の診断,ひいては治療に大いに役立つている。
今回われわれは,ほぼ同様の臨床所見を呈した下腿潰瘍例2例を経験した。われわれはこれら症例について上述の血管造影法を実施し,それぞれ稀有なる成因によることを初めて明らかにすることが出来た。すなわち,1例は先天性動静脈瘻による下腿潰瘍,他の1例はベーチェット病に合併した深部静脈血栓症による下腿潰瘍の2症例である。以下,これら2症例につき述べ,文献的考按を加えたい。
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