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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科23巻1号

1969年01月発行

雑誌目次

図譜・282

Pasini型先天性表皮水疱症

著者: 荒田次郎 ,   三好薫

ページ範囲:P.8 - P.9

患者 25歳女子。
初診 昭和41年7月27日。

図譜・283

乳嘴形成性汗腺嚢胞性腺腫様母斑

著者: 永井隆吉 ,   徳田安基

ページ範囲:P.10 - P.13

患者 48歳,♀。
初診 昭和42年11月。

綜説

性病の治療

著者: 岡本昭二

ページ範囲:P.15 - P.21

I.はじめに
 ペニシリンをはじめとする各種抗生物質の進歩は性病の治療に本質的な変換をもたらした。梅毒の治療が砒素剤を主体とする重金属療法からペニシリンを中心とする抗生物質療法に転換して,すでに20年を経過している。淋疾の治療もペニシリンおよびその他の抗生物質によつて実施されている。梅毒を中心とし,淋疾,軟性下疳および第4性病の治療法につき述べていきたい。

原著

Xeroderma pigmentosum—種々の代謝異常症を伴つた3例

著者: 大城戸宗男 ,   松尾聿朗 ,   新井亮一 ,   間宮群二

ページ範囲:P.23 - P.31

I.はじめに
 1960年,Harris and Keet1)は南アフリカのBantu現地人に認められたXeroderma pigme-ntosum (以下xdpと略す)の6例に各種臨床検査を施行し,多くの代謝異常が存在するのを発見したが,本症に特有なものか,偶発したかは不明のままにした。1962年より1966年にかけて,E1-Hefnawiおよびその一派2)〜9)24)はエジプトにおけるxdpの家系を調査すると共に本症の数10例に生化学的検索を施行した所,血清α2-globulin増加,血清銅上昇,血液glutathion低下,SGOTおよびSGPTの活性変動,尿中17-KSおよび総17-OHCSの排泄減少,アミノ酸尿等と一連の異常を観察し,それらの結果と本症の関係を詳細に検討した。
 最近われわれはxdpの3例について同様の検索を行つた所,1例にクレアチンおよびポルフィリン代謝異常とアミノ酸尿症,1例にクレアチン代謝異常,1例にアミノ酸尿症が合併するのを確認した。これらの代謝異常症の型は過去の文献上に見られるものと異なるので,ここに報告するとともに,本症に通常認められる症状すなわち光線過敏性および色素沈着または脱失,腫瘍発生,筋骨異常を含めた発育障害さらには知能の遅れ等の発生機序について,生化学的検査よりどの程度解明され得るかを検討した。

緑色イレズミによる急性皮膚炎

著者: 須貝哲郎 ,   池上隆彦

ページ範囲:P.33 - P.39

I.はじめに
 イレズミによる事故は近年比較的稀であるが1),硫化水銀を主成分とする辰砂による紅色イレズミで最も頻度が高く2),黄色イレズミではそ主成分である硫化カドミウムで,光線過敏を来たすことがよく知られている3)。また辰砂中に微量混在する硫化カドミウムでさえ,紅色イレズミ部が同様に光線過敏を示すことがある2)3)。他方,緑色イレズミによるアレルギー性反応は現在まで僅か8例の報告をみるのみで4〜9),その中5例は慢性肉芽腫性反応4〜6),残り3例は遅延性の慢性炎症性反応で7〜9),すべてクロームによるとされている。その他に,コバルトにより惹起された明青色イレズミ部の肉芽腫性反応も報告されている10)
 著者らは今回緑色顆イレズミ部に発生した急性皮膚炎の1例を経験し,その緑色顆粒がクロームではなく,水銀およびチタンからなることを確認したので,文献的考案を加えて報告するとともに,チタンの組織化学的検出法を紹介する。

豊中市に発生したHand, foot and mouth diseaseの症例

著者: 高安進 ,   川津友子

ページ範囲:P.43 - P.49

I.はじめに
 Hand, foot and mouth disease (以下,HFMDと略す)は,掌蹠,口腔内に生ずる小水疱を主徴とする疾患であり,水疱内容あるいは咽頭拭い液,糞便等からのウイルスの分雑,血清学的検索から主としてCoxsackie A 16,時にA 10,A 5, A 4ウイルス感染症であることが知られている。1958年にRobinsn et al.1)によつて最初に報告されて以来,国外においては本疾患の大小の流行が英国2)〜8),米国9)〜12),カナダ1),デンマーク13)等から報告されている。一方,日本においては1965年,中村ら14)によつてCoxsackie A 10A 5等のウイルスによる口腔粘膜疹を伴う熱性疾患の流行が報告されており,これがHFMDとほぼ同じものと考えられるが,その外には本疾患の記載が見られなかった。ところが,1967年夏,八尾市15),伊丙市16),豊中市等の大阪近辺の都市,および,京都17)において本疾患の流行が見られた。それらの中でわれわれは豊中市における17例を経験し,水疱内容および糞便より高率にCox—sackie A 16ウイルスを分離し得たのでその成績を報告する。

いわゆる皮膚混合腫瘍症例追加

著者: 長島正治 ,   中村絹代 ,   新妻寛

ページ範囲:P.51 - P.56

I.はじめに
 いわゆる皮膚混合腫瘍は,主として管腔腺様構造を示す上皮性腫瘍組織と粘液腫様あるいはまた軟骨様基質を含む豊富な間質からなる一種の汗腺腫瘍である17)
 本邦では,比較的稀な腫瘍であるが,当教室よりすでに2例が報告され17),その際本邦13例が集計された。その後,三木,久保8)15),猪股14)また服部13)より,6例の症例追加があり,現在本邦例は19例に達する。最近我々は,再び本腫瘍の2例を経験したので,ここに追加報告したい。

Granulomatosis disciformis chronica et progressivaの1例

著者: 正木弘実 ,   神畠茂

ページ範囲:P.59 - P.64

I.はじめに
 本症は1948年MiescherおよびLeder1)により初めて記載されたもので,欧米においても比較的稀らしい疾患とされるが,本邦においては1960年,第383回日本皮膚科学会東京地方会において東大より患者供覧された1例2)および1964年の吉田等3)の報告例があるにすぎず,極めて稀れな疾患と考えられる。我々は最近,本症の1例を経験したのでここにその概略を報告する。

検査法

梅毒トレポネーマ感作血球凝集反応(TPHAテスト)について

著者: 水岡慶二

ページ範囲:P.65 - P.71

I.はじめに
 通常,梅毒の補助診断法としておこなわれている血清学的反応は,Cardiolipin-Lecithin抗原(脂質抗原)を用いる反応であつて,いわゆるWassermann反応としてふるくより親しまれたものである。このような脂質抗原による梅毒血清反応(Serologic Tests for Syphilis,略してSTS)は,抗原に精製されたCardiolipinが使われるようになつて鋭敏度,特異度ともに非常にすぐれたものになつたが,抗原活性をもつと考えられるCardiolipinが梅毒病原体のTreponemapallidum (TP)とは無関係のリン脂質であるため,梅毒でない血清でもかなりしばしば反応が陽性になる。この偽陽性反応は生物学的偽陽性(Biological False Positive,略してBFP)反応としてすでにふるくより知られていたことであり,現在でも患者ならびにその家族間にいろいろなトラブルをひきおこし,BFPのための相談をもちこまれて困惑させられる臨床医家が多いことと思う。
 BFPがおこるのはSTSの抗原がTPと無関係のリン脂質であることに原因があるわけであるから,STSの術式をいくら改良してみたところでBFPを皆無にすることは不可能で,抗原をTPに由来するものに代えない限り解決されない問題である。ここにTPを抗原に使つてTPに対する本当の抗体を検出しようとする研究が進められたゆえんがある1)

薬剤

Amphotericin B lotionの皮膚カンジダ症に対する効果

著者: 安田利顕

ページ範囲:P.79 - P.81

I.はじめに
 皮膚カンジダ症の治療は困難なものの1つにあげられている。それは1つには,その好発部位にもよるが,他方,その発症が種々の因子によつて誘発されるためである。例えば環境因子,すなわち高温,湿度が高いこと,換気が不充分であるといつた条件などが,本症の発症のみならず,再発,あるいは再感染にも関係してくるからである。そうして,今日皮膚カンジダ症の治療には,主として外用療法が行なわれているが,それで軽快した場合においても,再発をみるものが少なくなく,究極の予後は不良なものとみている人も少なくないのである。
 そうして,本症の外用剤としては,古くからゲンチアナ紫のような色素,キノリン製剤のほか,レゾルシン,硫黄剤が用いられてきた。しかし,細菌感染症の治療に卓効をあげてきた抗生物質も,はじめのうちは真菌症に対して有効なものがえられなかつた。しかし,1953年前後にnystatin,1955年前後にamphotericin B,1959年頃からgriseofulvin,さらにわが国ではvariotinと,次々に,真菌症に有効な抗生物質が発見されてきた。そうして,前の2つは,とくにカンジダ症に有効なものとして,今日,広く用いられているものである。

皮膚疾患に対するビタミンK1剤の臨床効果について

著者: 伊崎正勝 ,   昆宰市 ,   前田正彦 ,   坂本政禧 ,   飯尾健 ,   樋口幸子

ページ範囲:P.83 - P.92

I.はじめに
 ビタミンK (以下VKと略記)は従来,凝血に関する因子として発見されたために,その研究は今日においてもなお,血液凝因を中心として展開されつつある。VKにはK1の他,K2,K3,K4,K5などがあり,さらに,これらK剤の誘導体もあるが,いずれも,その構造式はNaphthoquinone核とその側鎖からなつている。しかして,VKの主作用はこのNaphthoquinone核にあり,毒性はその側鎖に関係あるといわれている。K1はこれらK剤のうち,凝血効果が最も強力であり,かつ副作用の少ないことで最も優れており,現在諸種の出血性疾患に応用されつつある。
 さらに,近年,諸家により血液をもたない植物や細菌にも,このK1が含まれていることが明らかにされるにおよんで,その作用は単に凝血のみならず,生命現象の基本である細胞呼吸および生体防御反応にも極めて重要なる役割を演ずることが,次第に強調されるに至つた。

印象記

日本皮膚科学会第32回東部連合地方会

著者: 帷子康雄

ページ範囲:P.97 - P.99

 転換期を迎えた我が国の教育体系と医療制度が激しく揺れ動く裡に,第32回東部連合地方会は竹内教授を会長として,10月19,20日千葉大学医学部記念講堂において行なわれ,一般演題55題スライド供覧40題,特別講演さらに皮膚科以外の3教授を講師とするラウンドテーブル・デスカッションとして「酵素および補酵素に関する諸問題」がとり上げられた。
 〔一般演題〕第1会場,第1日の第1席神村(札医大)はCooling-re—warming testの疾患特異性について報告し,血管障害の機能的か器質的かの区別などが質疑され,萩原(千葉大脳研他)は熱電効果を利用せる組織血流測定法を局所皮膚血流の測定に応用し,精神状態が皮膚血流に反映することを確め,刺激図形などに対する反応性から精神神経疾患を幾つかの型に分けた。

日本皮膚科学会第19回中部連合地方会

著者: 藤浪得二

ページ範囲:P.100 - P.103

第4回電顕研究会
 前夜祭ともいうべき第4回電顕研究会は10月11日(金)金沢市セントラルホテルにて開催された。32の演題が発表され,討論は活発であり,いずれも鮮明な写真が供覧されて内容の充実とともに電顕技術の進歩には深い感銘を受けた。
〔一般演題〕については安部ら(国立がんセンター)はCealterの発表したEpoxi埋包における迅速浸透法について新装置を試作し,Epoxi樹脂の浸透の優れていることを鮮明な写真で示した。ビタミンAのkeratinocyteにおよぼす作用については相模ら(阪大),上田ら(京府医大)はそれぞれ鶏胎仔皮膚,14週人胎児皮膚を材料として観察,ビタミンAはtonofibrilの形成不全,desmosomeの減少をきたすとのべた。河村ら(京大)は硝酸ランタンが表皮細胞間隙を特異的に染色することをしめし,森田(天理)は落葉性天庖瘡における水庖発生はdesmosomeに付着するtonofilamentにまず変化を生ずることによるとかんがえ,水野(名市大)はmethoxypsoralenを海猽腹腔内に投与後,紫外線照射を施した場合のkeratinocyteの核小体の変化についてのべた。荒井ら(金沢大)は種々の異常角化細胞の美麗な電顕写真を示し,水野(房)ら(東京医歯大)はBowen病について分裂像をしめす不全角化細胞内にdesmosomeがとりこまれたとかんがえられる所見をしめした。また田端ら(阪大)はBowen病の表皮真皮接合部について有棘細胞癌のそれと比較考察した。汗腺周囲の毛細血管の微細構造については白井ら(奈良医大),内皮細胞分裂像については橋本教授(昭和大)からの報告があつた。

日本皮膚科学会第20回西日本連合地方会

著者: 野北通夫

ページ範囲:P.104 - P.106

 日本皮膚科学会第20回西日本連合地方会は,広島大学矢村卓三教授を会長として,昭和43年10月26,27日の両日,秋晴れの,広島市見真講堂で盛大に開催された。
 初日の26日には,地方委員会に続いて,病理組織検討会と電顕研究会が行われ,地方委員会では,専門医制度,ことに修練病院の指導医の資格をめぐつていろいろ討議され,西日本では東京地区のようなきびしい枠をはめられては該当病院が殆んどなくなるので,指導医の経験年数に考慮を払うこと,大学のない地域では満点でない病院でも考慮してほしいといつた希望が出された。

外国文献

外国文献—専門誌/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.107 - P.113

THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY 50: 4, April, 1968
The Healing of Skin Wounds in Primates. II. The Proliferation of Epidermal Cell Melanocytes: L. Giacomettia and W. Montagna 273
Observations on the Fine Sturcture of Microsporum Audouini: H.J. Werner, H.W. Jolly and C.L. Carpenter 276

〈原著論文抄録〉

Xeroderma pigmentosum—種々の代謝異常症を伴つた3例,他

著者: 大城戸宗男 ,   松尾聿朗 ,   新井亮一 ,   間宮群二

ページ範囲:P.116 - P.116

 Xdpに代謝異常症を有した3例を検討した結果,これら生化学的異常がxdp本来の症状の発生の説明に便利であることを述べた。今後症例を加えることによって,併発せる遺伝性代謝異常症が発見され,一見互に無関係なxdp本来の症状――光線過敏性,皮膚炎,腫瘤,発育および筋骨異常,知能の遅れ――の発生機構が生化学的に解明されるのではないかと考えた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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