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原著
Erythema elevatum diutinumの1例
著者: 番場秀和1 岡本昭二1 加藤友衞1
所属機関: 1千葉大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.1281 - P.1286
文献購入ページに移動1894年CrockerおよびWilliams1)は,四肢ことに関節部伸側に好発する隆起性の慢性紅斑を主徴とする1症例を記載し,その特異な臨床像をとらえてerythema elevatum diutinumなる名称を提唱した。かれらは,すでにHutchinson2)(1878)また,Bury3)(1889)により報告されていた症例もその範疇に入れ,それぞれに若干の臨床的相違点があるものと考えて,その是非は別としてHutchinson型およびBury型なる2型を分けた。しかし,組織学的記載において,現在本症の終末状態であるとされている真皮の線維化のみ強調されていたためにgranuloma annulareとの異同が近年に至るまで永く論ぜられることとなつた4)5)6)。本症の組織像のもうひとつの重要な所見,すなわち真皮上層の多核好中球を主体とする滲出性炎症変化は,Audry7)(1904)またDallaFavera8)(1910)により明らかにされ,現在フィブリノイド変性と見なされているtoxic hyalinなる血管変化の記載は1929年のWeidmanおよびBesancon9)の著述をまたねばならなかつた。諸賢の認めるごとく,1955年のHaber10)の詳細かつ説得力に富む論文の上梓をみて,本症の概念はほぼ確立された。また,いわゆるextracellu-läre Cholesterinoseを本症の1異型とし,またnodular dermal allergideと本症との間に密接な関連をみとめたHerzberg11)(1955)の論文も重要なものである。一方,Duperratら12)(1955)は,最初allergides nodulaires dermiquesに似た臨床所見を示し,のちに定型的なerythemaelevatum diutinumの像を呈した1例を報告して,両者の組織学的類似から同領域の疾患であろうとした。Allen13)またRookおよびWilkin-son14)がその教科書で本症をいわゆるallergicangitisの1型として著述しているように最近では大方の意見がかかる考えに一致しているようである。
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