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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科23巻2号

1969年02月発行

雑誌目次

図譜・284

Letterer-Siwe Disease

著者: 木村英夫

ページ範囲:P.134 - P.135

患者 5カ月,男児。初診 昭和42年9月1日。
既往歴・家族歴 特記することなし。

図譜・285

中毒性表皮壊死融解症の限局型の1例

著者: 和田黎吾 ,   竹村司 ,   豊泉栄三

ページ範囲:P.136 - P.137

患者 5歳,男子。
現病歴 約2週間前より,水痘のためパラキシン,スルピリン,リンコシン,メチロン,フェノバール,シノミン等の注射,内服を受けていた。来院2日前,発熱のためシノミンの内服,来院当日の午前中メチロンの注射を受けたが,約10時間後,突然躯幹に急激な痛みと共に,火傷様病巣の発生しているのに気付き驚き来院した。

綜説

クロロキン療法の現状—とくに適応症,副作用並びに作用機序について

著者: 石原勝

ページ範囲:P.141 - P.151

I.はじめに
 皮膚科領域で抗マラリヤ剤chloroquineが慢性円板状エリテマトーデス1)(以下E.と略記)や日光皮膚炎2)その他の治療に応用されるようになつてから既に15年の歳月を経過した。この間に皮膚科はもとより内科,整形外科方面でも本剤の適応症や副作用,更には製剤上の改良,塩の開発も行なわれて,多くの非ステロイド性抗炎症剤の登場をみた現在もなお不可欠の治療薬として認められている。
 著者は先にE.に於ける皮膚素質についての研究3)を行なつた際,併せてchloroquineの諸皮膚疾患に対する治療効果並びにその作用機序についても検索したが,その後も諸家によつて幾多の研究成果が発表され,とくに近年は本剤による光線過敏症の発生や網膜障害などが注目されて居り,生化学的あるいは電顕的検索による作用機序の研究もみられるようになつて来た。

原著

Letterer-Siwe病の皮膚病巣部の細胞内にみられたいわゆるLangerhans顆粒(Birbeckの顆粒)について—電子顕微鏡的観察

著者: 伊藤光政

ページ範囲:P.153 - P.161

I.はじめに
 表皮のLangerhans細胞は,1868年Langer-hans1)によつて,金染色陽性の樹枝状細胞として最初に記載された。Langerhans細胞は,このように古くからその存在を知られ,それに関する数多くの研究がなされてきたにもかかわらず,その起原や機能については未だに十分解明されていない。これについて,近年まで,大別して2つの対照的な学説が,それぞれの支持者を得ていた。一方は,Langerhans細胞は何らかのかたちでmelanocyteに近縁の細胞であるとするもの2)3)で,これに対して他方は,この細胞を末梢神経性のものであるとしている4)5)。近年は,前者の意見の方がやや多くの支持を得ていたように見受けられる。いずれにしても,両説ともにLanger-hans細胞を外胚葉由来のものと考えている。
 電子顕微鏡的研究の結果,1961年Birbeckら6)が,表皮Langerhans細胞の細胞質中に,特異な形態をした顆粒を発見した。この顆粒は,Lan-gerhans顆粒またはその報告者にちなんで,Bir-beckの顆粒と呼ばれ,それ以来Langerhans細胞に特異的なものとみなされてきた。

Trichostasis spinulosa

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.163 - P.169

I.緒言
 本症はすでにThin & Crocker1)の記載にも見られるが,1901年Franke2)がBraunschweigの学会で報告したのが最初で,彼はその後,1912年に至りようやく本症の稀ならざる事を確信し,その症例を記載している。一方,Galewsky3)は1907年に1例の顕微鏡標本をDresdenの学会で供覧し,それを1911年に発表している。又,1910年Du Bois4)は鼻部に毛嚢虫症と本症の合併を認めている。次いで1913年Nobl5)は6例をもとにしてTrichostasis spinulosaの病名で詳細に記載した。又,同年Csillag6)も報告しているが,当時皆お互いの文献を詳細に知らずにそれぞれの病名で別個に発表している。
 その後,報告が相次ぎ,又アメリカでは1925年Mitchell8)の記載を初め,今日迄各国から多数の報告がある2)−35)(第1表)。かく欧米では本症はひろく知られた皮膚変化で,成書にもその記載は多く見られるが36)−39),本邦においては今日迄同名の報告なく48)49),又,成書には大矢47)の他その記載を見ない。最近,著者は本症に注目し,若干観察することができたのでその症例について報告する。

持久性隆起性紅斑の1例

著者: 木村秀人

ページ範囲:P.171 - P.177

I.はじめに
 Erythema elevatum diutinum (E.e.d.と略す)は比較的稀な疾患とされ,慢性に経過し,あまり自覚症状のない持異な紅斑である。1878年Hutchinson1)は58歳男子の下肢,手指背,前腕にやや隆起した紫紅色の慢性紅斑症を発表し,1889年Bury2)は12歳女子で足趾,膝蓋,肘頭,さらに指におよんだ境界鮮明な結節性肥厚と硬結紅斑の症例を発表した。
 1894年Radcliffe-Crocker & Williams3)は6歳女子の肘頭,手,膝蓋,臀部に紫紅色結節の生じた症例を発表し,類似症例を集めて検討し,経過が長く,隆起性の紅斑を主症状とすることから,一括してE.e.d.なる名称を与えたのである。

膠状稗粒腫—血特に膠状物質の組織化学的性状について

著者: 笹井陽一郎 ,   斎藤信也

ページ範囲:P.181 - P.185

I.緒言
 膠状稗粒腫は,多数の淡黄褐色,半透明な小丘疹が集簇性に生ずるのを特色とする。1866年Wagnerが54歳女性の第1例を報告して以来,既に100例以上の報告をみるが,膠状物質の性状については一致した見解が得られていない。Ferreira-Marquesおよびvan Uden1),Findley2)は本物質を異常弾力線維とみなしたが,Prakken3),Piredda4),そしてAgius5)は膠原線維の変性によるものとした。他方,PercivalおよびDuthie6)は膠状物質は結合組織の変化とは無関係であつて,血液内成分に由来すると考えた。Zoon, JansenおよびHovenkamps7),次いでBeckerおよびWilson8)はペーパークロマトグラフィーを用いて,本膠状物質のアミノ酸組成の定性分析をおこない,膠原線維や弾力線維のアミノ酸組成よりはむしろ血清蛋白質のそれに類似することを述べた。最近,SullivanおよびEllis9),GrahamおよびMarques10)は組織化学的検索の結果から,膠状物質とアミロイド物質が多くの類似点をもつていることを報告した。彼等によると,膠状物質は真皮性線維芽球による異常線維性蛋白質で,コラーゲンともエラスチンとも異なる。そして,この線維性要素が酸性粘液多糖類からなる基質内に包埋されているという。われわれは最近,膠状稗粒腫の1例を経験し,膠状物質の性状について2, 3の組織化学的検索をおこなつたので,その成績を報告する。

スポロトリクム症—本州日本海岸地方における第1例

著者: 佐藤良夫 ,   岡吉郎 ,   関真佐忠

ページ範囲:P.189 - P.195

I.はじめに
 スポロトリクム症は本邦においては,関東1),九州地方2)に多く,山陽3),近畿地方からもしばしば報告されており,近年になつて,北海道4),東北5)6),四国地方7)からも数例の報告をみているが,山陰,北陸および東北地方の日本海側からの本症の確実な報告は未だみられない。最近われわれは新潟県内で罹患したと思われる本症の1例を経験したのでここに報告する。

検査法

ポルフィリンの検査

著者: 佐々木英夫 ,   金子兼三 ,   常山秀夫 ,   牧野英一 ,   石田良平

ページ範囲:P.201 - P.211

I.はじめに
 ポルフィリン(ポ) porphyrinはヘモグロビン,ミオグロビン,チトクローム等ヘム蛋白体の構成々分として重要な紫紅色の生体色素である1)
 ポが尿中に増加すれば特有のブドー酒色を呈し,皮膚科領域では光線過敏症との関係で古くからポルフィリン尿症porphyrinuriaとして注目されており,その検出法もかなり普及している。

薬剤

尋常性乾癬におけるCor-Tar-Quin Cremeの治療成績

著者: 川村太郎 ,   笹川正二 ,   石川英一 ,   森俊二

ページ範囲:P.213 - P.216

I.はじめに
 尋常性乾癬は難治で,屡々瘙痒を伴い,一旦出来ると患者には種々の面で多大の苦痛をあたえ,また治療に当る皮膚科医にとつても,なかなかコントロールの難しい厄介な病気で,しかも近時我が国でも増加の傾向を示している。本症に対する外用剤については,従来より色々工夫されているが,なかでもタール剤(特にコールタール)による治療はゲッケルマン療法として有名で,現在でも本症治療の重要なる地位を占めている。
 しかし,10数年前に始まつた副腎皮質ホルモンの皮膚科への導入は,その優れた治療効果のため,驚くべき速度で普及し,そのため皮膚外用療法には大きな変革と進歩がもたらされつつある。尋常性乾癬に対しても,副腎皮質ホルモンの外用は有効で,特にODT療法は効果的である。現在では初期より引続いて用いられているハイドロコーチゾンの他にかずかずの合成副腎皮質ホルモンが開発され,外用剤に使用されている。今日の様に多種の外用ステロイド剤が出てくると臨床的にどれを選んだら良いか迷わざるを得ないが,こういう時にハイドロコーチゾンは最も手慣れたもので使い易く,また実際に効果の点でもなかなか捨て難い味わいを持つている様である。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.218 - P.219

DER HAUTARZT19: 6, Juni, 1968
Die alimentären Allergodermatosen: I. Teil: F. Ottolenghi 241
Über Bindegewebsnaevi: H.J. Cramer und G. Kahlert 251

〈原著論文抄録〉

Letterer-Siwe病の皮膚病巣部の細胞内にみられたいわゆるLangerhans顆粒(Birbeckの顆粒)について,他

著者: 伊藤光政

ページ範囲:P.231 - P.231

 著者は最近まで正常表皮のLang-erhans細胞のみに特異的とされていた,いわゆるLangerhns顆粒の存在を電顕的観察により,本誌巻頭のカラー図譜に掲載されているLetterer-Siwe病の8カ月男児の真皮病巣部の病的組織球(いわゆるLetterer細胞)の細胞質内に証明した。この事実にもとづいて,①Letterer-Siwe病と,さきに同様顆粒の存在が報告されているhistiocytosis Xのeosinophilic granuloma型との関連性,ならびに②これらの病的組織球と,正常表皮のLangerhans細胞との相互関係および③いわゆるLangerhans顆粒について若干の考察を試みた。まずhistiocytosis Xについては,Letterer-Siwe病をeosinophilic granuloma,Hand-Schuller-Christian病とともに,histiocytosis Xという名称のもとに単一疾患の表現型を異にしたものと考えることの妥当性を論じた。また,Langerhans細胞の由来に関しては,従来大別してmelanocyte近縁説および末梢神経説の2説が唱えられてきたが,さらにLangerhans細胞がmesenchymalな組織球に由来したものである可能性があると考えた。次いでLangerhans顆粒生成の場とその役割については,従来いわれている2つの説であるGolgi装置で生成され,何かを細胞外に分泌しているという説と,細胞膜から形成され,細胞外から何かをとり込んで(endocytosis)いるという説を列挙して,得られた所見のみからは未だどちらとも結論を下し得ないことを述べた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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