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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科23巻3号

1969年03月発行

雑誌目次

図譜・286

銀症

著者: 小幡宏子 ,   水野信行

ページ範囲:P.244 - P.245

患者 57歳の家婦。5〜6年来下痢気味て,コロイド銀及び塩化銀を含有する止瀉剤を内服していた。はじめのうちは月に3〜4回内服する程度であつたが,約9ヵ月前から殆んど連日内服を続けていた。半年位前から鼻唇溝部の色素沈着に気づいた。
現症 稍々やせていて,下痢の傾向があり,胃下垂を証明する。その他の理学的所見には異常がない。顔面,頸囲,前腕伸側などの日光の当る場所が青褐灰色て,眼囲,鼻唇溝でとくに濃い(第1図)。また指趾の爪半月部(第2図),歯齦縁にも青灰色の色素沈着を認める。

図譜・287

疣贅状表皮発育異常症

著者: 植村隆 ,   高田善雄

ページ範囲:P.246 - P.249

患者 30歳,男,会社員。家族歴両親は「いとこ」同志。同胞中3人に本疾患を認め,発病は3人共幼児期に顔面より発症したという。家族関係は第1表に示した。
現症 小豆大から拇指頭大の軽度の落屑を伴つた扁平な淡紅色の丘疹(若年性疣贅状)が全身に粗密種々に認められ頸部,胸部,背部,手背では融合している(第1図)。又顔面,腹部に黒色の老人性疣贅状の発疹が認められ,その1部は糜爛面を形成し治らない。この糜爛面を形成している発疹は放射線治療によく反応し,瘢痕をのこして消退する(第2図)。臨床検査で特記すべき所見はない。

綜説

皮膚科領域における非特異エステラーゼの組織化学

著者: 川田陽弘 ,   森俊二 ,   林懋

ページ範囲:P.251 - P.258

I.はじめに
 健常の皮膚ならびに各種の皮膚病変についての非特異エステラーゼ(nonspecific esterases)の組織化学は既にFindlay6)(1955),Montagna13)(1955),Steigleder-Löffer16)(1956),Steigle-der-Schultis17)(1957),Wells23)(1957),三浦11)(1959,1964),菅原19)(1960)などによつて検討されてきており,またBraun-Falco1)(1956)は角化異常に,田中21)(1958)は脂腺につき本酵素の組織化学を検索している。その後に至り,主としてBraunsteinら3,4)(1958,1962),細田7),Lennertら9)(1962)の研究によつてこの染色法が細網内皮系の細胞の増殖症の観察,診断に有用なことが明らかになつてきた。そこで著者らは最近数年間種々の皮膚皮患について,改めて同酵素の組織化学を検討してみたので,その成績を総括的に報告することにする。

原著

Hyalinosis cutis et mucosaeの1例

著者: 中村家政 ,   木村晴世

ページ範囲:P.259 - P.270

I.緒言
 本症は劣性遺伝する比較的稀有なる疾患で,生来性あるいは幼少の頃より発症し,臨床的には全身各所の皮膚に黄白色丘疹,淡紅色ないし紫褐色の疣贅状結節,痘瘡様あるいは痤瘡様瘢痕,魚鱗癬様皮疹,脱毛症を生じ,また粘膜疹として上気道に白色ないし黄白色の板状,結節状,ポリープ状浸潤を来し,歯牙異常や特異な嗄声を発するなど極めて多彩且つ特異な症状を呈する。
 本症に関しては,1908年スイスの耳鼻科教授Siebenmann1)がその綜説"Über Mitbeteiligung der Schleimhaut bei allgemeiner Hyperkeratose der Haut"の中で,Hyperkeratosis cutis universalisと上気道粘膜のKeratosisを来した19歳女子の患者について述べたのが恐らく本症の第1例であろう。その後はEberhartinger u.Niebauer30)およびGrosfeld22)の統計150例に,我々が文献的に渉猟した20例を加えた170例の報告をみる。

Pachydermopériostose:Syndrome de TOURAINE, SOLENTE et GOLÉ

著者: 加藤友衛

ページ範囲:P.275 - P.283

I.はしがき
 Pachydermoperiostosis (以下p.p.と略す)は,idiopathic hypertrophic osteoarthropathyとも呼ばれているが,肺疾患などに続発するsecondary hypertrophic osteoarthropathyなどと長らく混同されていた疾患である。脳回転状皮膚および太鼓撥指さらに骨膜性の骨新生を特徴的症状とする本症は,Friedreich1)の兄弟例の記載(1868年)以来,疾患概念が混沌としていたため,数多くの異なつた名称で呼ばれていたが,1935年,Touraine, Solente et Golé2)は,それまでの症例を再検討し,"un syndrome ostéoder-mopathique: pachydermie plicaturée avecpachypériostose des extrémités"と命名,独立疾患としての地位を確立させた。それゆえ,syndrome de Touraine, Solente et Goléとも称されている。その後,とくにフランスからの報告が相次いで,症例数が増加するに伴ない注目を惹くようになつて来た。名称に関しては,1948年Vague3)の提唱した"pachydermopériostose"が簡潔かつ正確に概念を表わてしいることから,現在一般的に使用されている。
 しかしながら,本症のすべての症例が完全な臨床像をそなえているわけではなく,Touraine2)らはこれを3型に分類している。すなわち,

Microsporum canisによるKerion Celsiの3例

著者: 白取昭 ,   嶋崎匡

ページ範囲:P.285 - P.293

I.はじめに
 近年頭部浅在性白癬は著しく減少し,それに伴なつて深在性白癬であるKerion Celsi (ケルスス禿瘡)も稀有な疾患となつている。特にMi-crosporum canis (以下M.canisと略す)によるものは1952年以来ほとんど影をひそめた感があり,1965年までは1例も報告がない。元来,M.canisは本邦では1934年北海道で高橋1)(信)によつて発見されたもので,その後も臨床報告はすべて北海道内からに限られており,糸状菌としては特異な分布を呈していた。ところがその後は(Kerionのみらなず) M.canis感染症自体次第に減少し,青木ら2)によつて報ぜられた札幌地方を中心とした流行(1952年)以後にはまつたく影をひそめた感があつた。しかるに最近札幌において2,3の施設から再びM.canis感染症が報告されるようになり,Kerion Celsi 7例,毳毛部白癬23例,頭部浅在性白癬2例の計32例が今までに知られている。われわれの外来でもKerionCelsi 3例,毳毛部白癬4例,頭部浅在白癬1例の計8例を経験したが,毳毛部白癬については次の機会にゆずり,今回Kerion Celsiの症例について所見を報告し,あわせて若干の考察を行ないたい。

皮膚病変を伴える骨髄線維症の1例

著者: 菊池滋 ,   宇野千春

ページ範囲:P.295 - P.301

I.緒言
 骨髄線維症は骨髄の線維化,髄外造血巣,特異な血液像(leucoerythroblastic anemia)を3主徴とする疾患で,これまで報告された例では脾,肝,腎,リンパ節などの臓器に髄外造血巣が認められている。しかし,皮膚に髄外造血巣を生じる例は非常に稀なもので,特に骨髄細胞,赤芽球,巨核球の3系統を備えた症例は未だその報告に接しない。
 著者等は今回皮膚に髄外造血巣を伴つた骨髄線維症の1例を経験したので報告する。

汎発性鞏皮症のCRST症候群

著者: 宗像醇 ,   荻生真章 ,   高木繁

ページ範囲:P.303 - P.308

I.緒言
 本症候群はその名の示すように,subcuta-neuos calcinosis, Raynaud's phenomenon,sclerodactylia,multiple telangiectasiaの4つの症状を有するもので,1964年Winterbauer1)により命名された。ついでCarr等2)(1965年)が7例の本症候群を報告して注目され,その後本邦においても,1967年10月東日本連合地方会において,河村,田島,深田3)が51歳女子例を報告し,最近では,前田等4)が症例報告とともに詳しく綜説を述べ,本症を鞏皮症の良性の1亜型とし,上記症状は共通基盤の上に発生して密接な相互関係をもつものと推論した。その他,前田5)はその第2例目において,又本間6)もそれらしきものを認めたと述べている。又河村等7)は,昭和17年原田がこの4症状をもつた1例を既に報告していることを指摘している。今後このような症例は増えるものと思われるが,最近我々も上記症状を伴つた1例を経験したので報告するとともに多少の考えを述べてみたい。

検査法

アレルギー・クリニックにおける検査法

著者: 吉田彦太郎 ,   谷奥喜平

ページ範囲:P.315 - P.324

I.はじめに
 最近各地の大学病院皮膚科では種々の専門外来を設け,目的とする疾患群の検査,治療,経過の観察などが詳細に行なわれるようになつたが,岡大皮膚科アレルギー・クリニックは昭和38年5月に開設され,すでに5年有余を経過し,最も古い専門外来の1つではないかと自負している。
 われわれのアレルギー・クリニックはいうまでもなくアレルギー性皮膚疾患の抗原証明を主目的として設けられたものであるが,とりあつかう症例は種々様々であり,行なう検査法も疾患の種類によつて当然異なつている。従つてアレルギー・クリニックそのものを中心に考えると,各種検査法の手技を詳細に記すことよりも,各症例に対する検査法の選択基準およびそれらの臨床的価値についてのべることがより合目的的ではなかろうかと考えられる。それ故検査法の手技は要点を記すにとどめ,主な疾患群における検査結果について報告し,アレルギー・クリニック診療担当者の御参考の一助に役立てたいと考える。

薬剤

色素沈着症に対するビタミンC長期大量内服療法と安定型ビタミンC軟膏外用療法の治療効果の比較

著者: 市川浩 ,   川瀬健二 ,   麻生和雄 ,   竹内勝

ページ範囲:P.327 - P.331

I.緒言
 皮膚科領域で後天性色素沈着症と称される疾患には肝斑,リール黒皮症,発疹後色素沈着など多くの疾患が含まれる。これらはいずれも難治性で,各々の病因論に基ずいて多彩な治療法が試みられて来たが副作用が強かつたりあまり著効を示すものが無く,現在ではビタミンC(以下V.Cと略記)の長期大量内服療法が最も普遍的に行われている。
 V.Cが後天性色素沈着症の治療に用いられる理由としては,(1)臨床的治効,(2) in vitroにおけるtyrosi-ne-tyrosinasc反応に対する還元作用,(3)既成mela-ninの還元,(4) tyrosine代謝におけるV.Cの介在,(5)顕著な副作用なく長期間投与が出来ることなどが挙げられている。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.337 - P.341

ACTA DERMATO-VENEREOLOGICA 48: 4, 1968
Cutaneous Manifestations in Capillary Dilatation and Endovascular Fibrin Deposits: H. Brodthagen, V. Larsen, J. Brockner and C.J. Amris 277
The Sulzberger-Garbe Syndrome: H. Schmidt and K. Midtgaard 287

〈原著論文抄録〉

Hyalinosis cutis et mucosaeの1例,他

著者: 中村家政 ,   木村晴世

ページ範囲:P.345 - P.345

 18歳女の本症を経験したので,症例報告し,内外既報告例54例を集め,文献的考察を行つた。
 家族歴に母系祖父母と両親の2代に亘る従兄妹同士結婚がある。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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