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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科23巻6号

1969年06月発行

雑誌目次

図譜・292

色素失調症

著者: 宗像醇 ,   瀬底洋子 ,   荻生真章

ページ範囲:P.568 - P.569

Bloch-Sulzberger型色素失調症は,すでに本邦においても100例に近い報告があるが,本症の初期像としての水疱形成を観察した症例は稀である。
患者 1カ月,女児。初診 昭和42年11月16日。

図譜・293

レントゲン皮膚癌

著者: 坂東嫩葉

ページ範囲:P.570 - P.571

患者 62歳,女。初診 昭和42年8月21日。家族歴・既往歴 特別のことはない。
現病歴 昭和9年手掌の湿疹に対し近医によりレントゲン照射を5回うけた。次第に左手掌の皮膚硬化乾燥落屑を認めるようになり,更に爪の変化,手指の萎縮,運動障害が現われた。昭和40年左第1指基部に指頭大の腫瘍発生をみとめ某大学皮膚科で4カ月間加療をうけたがその後腫瘍は潰瘍となり難治のため当科を受診した。

展望

色素失調症に就て—A. Franceschettiを偲んで

著者: 北村包彦

ページ範囲:P.575 - P.578

 色素失調症Incontinentia pigmenti(I. p.)には,1938年長崎の教室からその本邦第1例を報告1),2)したのちも関心を持ち,そのもの,殊に又その本邦に尠くない存在に就てしばしば述べてきた3〜9)。これが病名としては世界的には1925年最初の記載者Bloch10)の択んだI. p.,本邦では横山11),12)の訳名,色素失調症が使われているが,Pfeiffer13)に拠れば,これに該当する事例を求めると1905,1906年のGarrod,Adamsonまで溯ることができると云う本症は,皮膚に止まらず,中枢神経系,眼,歯等,外葉起源性諸器官の畸形,障害を伴い,症候群として広義の母斑症に属せしむべきものである。その女子偏好性と家族内発生,その発症に根底となると思われる,そしてそれは母体ヰルス感染に基づくと想像される胎生期障害等,発症病理上の諸問題こそ,色素異常その他の皮膚病変に比し,より深い意義を持つとせねばならない。この点に就てWilli-Bruckhardt14)は,I. p. なる病名は全病像のうち偶々はじめに見出された,むしろ特異的でない一小部分を謳つたに過ぎず,失敗名である,併しそれは最早抜き難いものに今ではなつていると述べている。
 扨て,Hautarzt誌の今年,1968年,6月号にGenèveの眼科学者兼遺伝学者で,皮膚科にはFranceschetti-Valerio症候群の記載者として知られているA. Franceschettiへの追悼文を同地のJadassohn教授15)のものしたのが載つており,その今年3月8日に歿くなつたことを知つた。1953年,Madridの国際癩学会議へ行く途中Genèveに訪ねて面識となつたが,それはかねて眼障害のある遺伝性皮膚疾患を研究し,その一部としてI. p. の日本文献を眼科の三井幸彦教授を介して求めてきたことがあつた,そうした関係からで,のち1956年来日した折には東京で再会した。

原著

Acropathie ulcéromutilante familiale de Thévenard(familiäre Akroosteolyse)の1例

著者: 谷藤順士 ,   平山晃也 ,   有賀昭俊 ,   永井盛人

ページ範囲:P.579 - P.584

I.はじめに
 足穿孔症(Malum perforans pedis)は,古くから癩,糖尿病,脊髄癆,脊髄空洞症などの中枢神経または末梢神経の障害として生ずることが知られているが,近年,特別な前駆疾患なしに骨変化を伴つて生ずる症例が,相次いで報告されている。
 海外ではすでに19世紀の終りに,本症に属する疾患が記載されているが,Kienböck1)は,二分脊椎に起因するものをTrophopathia pedismyelodysplasticaと命名し,1つのclinicalentityとした。一方Thévenard2)は,臨床的にはほぼ同じ像を呈するが必ずしも二分脊椎を伴わず,家族性に発生するものをAcropathie ulcéromutilante familialeとして分離した。さらにBureau et Barriére3)は,ThévenardのAcropathieとほぼ同様の病像を呈する,非遺伝性のものにAcropathies ulcéromutilantes pseudosyringomyeliques non familiales des membres inférieursの名称を与えている。

レントゲン癌の1例

著者: 佐藤昭彦 ,   笹井陽一郎 ,   斎藤信也

ページ範囲:P.585 - P.591

I.緒言
 慢性放射線皮膚炎に発生する悪性腫瘍はほとんど有棘細胞癌である1)。最近著者らが経験したレントゲン癌の症例もその組織所見は有棘細胞癌であつたが,極めて多様なBroders2)の悪性度分類に従えば1度から4度に亘る像を示した点,我々の興味を引いたのでここに組織所見を中心として症例の概略を報告する。

Werner症候群の1例

著者: 中内洋一

ページ範囲:P.593 - P.600

I.はじめに
 本症はWerner1)(1904)により"Über Kat-arakta in Verbindung mit Sklerodermie"の下に報告された遺伝性疾患である。その主要症状は,若年性白内障,特徴ある短躯を示す思春期以後の発育障害,早期老化,皮膚の萎縮性変化であり,遣伝形式は劣性遺伝を示し,家族内発生,時に同一同胞内に多数の本症患者を発生する点が特徴的であり,欧米では現在までに百数十例の報告がみられている。Werner自身が眼科の医者であり,患者も多くは眼科にて発見される事が多い為に,本症候群の皮膚変化は充分に検討される事なく,Sclerodermieとの異同も不明のまま,一時混乱した時代もあつたが,Oppenheimer2) (1934),Thannhauser3)(1945)の報告以来,漸く両者の異同もはつきりして来た。
 本邦においても石田4)の報告例以来,同症と思われる報告例は40例以上に達するが,主に眼科領域からの報告例が多く,皮膚科領域での報告例は,坂本5),小林6),江原7)以下僅か数例しか見られず,従つて,本症の皮膚変化に関する検討もまだ充分にはなされていない様である。

老人性角化症,皮角,有棘細胞癌および脂漏性角化症の合併せる1例

著者: 辻卓夫 ,   須貝哲郎 ,   浜田稔夫

ページ範囲:P.601 - P.606

I.はじめに
 老人性角化症は,1869年Neumannが初めて記載し,以後Dubreuilh1),Freudenthal2)により脂漏性角化症から分離独立された希なる疾患で,癌前駆症(precancerous dermatosis)の1つと考えられている。本症をLever3)は1/2度の有棘細胞癌であるとし,その悪性化は20〜25%に達するという。一方皮角の多くは,その組織像より老人性角化症の増殖型の中に含有されている。
 以上のごとく,老人性角化症は皮角,有棘細胞癌と密接な関係があり,一方脂漏性角化症との鑑別も必ずしも容易ではない。

猫を感染源としたMicrosporum canisによる毳毛部白癬の家族内集団発生例

著者: 垣内洋二 ,   吉田暁子 ,   宗像英子

ページ範囲:P.607 - P.610

I.はじめに
 本邦に於けるMicrosporum canis (M.canisと略称)の最初の症例報告は,1929年殷1)による米国から帰つた子供のM.lanosumによる禿瘡例についてであるが,本邦に於ける発生例としては,1934年高橋(信)2)の札幌に於て発見したものである。氏はこの病原菌にM.sapporenseと命名したが,続いて1936年高月3)が樺太に於ける症例を報告している。1950年以来小田島4),青木5)6)8),小室7)等が主として北海道に於ける症例を報告している。東京に於ける最初の発生例は,1952年香川9)が報告したケルスス禿瘡例で,続いて1961年堀江10)が頭部の発生例を,1965年柳沢,高木11)が幼児の顔面に発生した症例を夫々報告している。最近著者らは本菌による家族内集団発生例を経験したので報告する。

髄膜炎を併発した汎発性帯状疱疹の1例

著者: 福士堯 ,   山内哲

ページ範囲:P.611 - P.615

I.はじめに
 帯状疱疹が,時に汎発化することは,よく知られており1〜7),とくに白血病などのように,全身状態が強く障害される疾患に発症した場合に,汎発する傾向が多いとされている1)
 さらに,本症の場合,合併症として,神経痛,神経炎,運動神経麻痺,眼科的障害等はよく知られているものであるが8),これらの他に,稀に髄膜炎,脳炎の併発例が報告8〜18)されている。

Lymphocytic Infiltration of the Skin(Jessner & Kanof)

著者: 徳丸伸之

ページ範囲:P.619 - P.625

I.はじめに
 1953年,Jessner及びKanof1)はBronx Dermatological Societyの学会にて,lymphocyticinfiltration of the skinの命名のもとに初めて本症を発表した。その時彼等は本症を次の如く述べている。"この疾患は扁平,円板状,多少とも隆起し,色調は桃色から紅褐色で,始め丘疹から出発し遠心性に拡がり,時に中心治癒傾向を示したり,渦巻状配列を示したりすることがある。表面は滑らかであるが時々凹凸不平を示し,毛嚢性角化はない。硬く触れ,皮疹は1個から多数と種々である,数週から数カ月以上続くが瘢痕を残さず消失する。同じ場所或は他の場所に再発する。自覚症状は無く,顔が好発部位である"。これ以後欧米では多数の報告が見られるが,本邦に於ては,西村等2)が第7回中部連合地方会で本症の1例を報告したのを最初とし,須貝等3)が第158回大阪地方会でlymphocytic infiltration of theskin or lymphocytic lymphomaの題でスライド供覧し,第27回東日本連合地方会で田中等4)が,第14回中部連合地方会で青木等5)が,第28回東日本連合地方会で斎藤等6)が,第65回日本皮膚科学会総会で上田7)が,第30回東日本連合地方会で西山等8)が,信州地方会第56回例会・総会で渡辺9)が1例ずつの計8例を見るのみである。今回3例の本症と思われる症例を得たので,以下に報告する。

興味あるRecklinghausen氏病の4例

著者: 所祥子

ページ範囲:P.629 - P.639

I.はじめに
 Recklinghausen氏病(以下R病と略す)は,皮膚腫瘍及び色素斑の他に全身諸臓器に多彩な症状を示すため,そこに現われる症状は個々の症例によつてまちまちである。今回,臨床的・組織学的に興味深い像を示す4例を経験したので報告し,いささかの考察を加えてみたい。

海外見聞記

ラテンアメリカ便り(2)—ペルー

著者: 大城戸宗男

ページ範囲:P.640 - P.641

 知らぬ所へ旅をするなら案内書一冊位読んでも良いと思うが,面倒だからキップを買えばそれで充分,どこへ着くか位分るからいいよといつていた関西の男が東京の地下鉄で3駅間を2時間かかり,これが旅のキビシサであると喜んでいた。パンアメリカン航空の宣伝1)によればペルーは偉大なるインカの廃墟と20世期の現代が入りまざり,住む人々ときたら素朴で女性は最高にイキとあつたから,今でも多分間違つた国に一泊したに違いないと信じている。これもパンアメリカンを利用しなかつた罰に決つている。
 なにしろ住民の1/3が白人で残りがインディオまたは混血2)とあつて,彼らときたら生れた時しか風呂に入らないよと教えてくれた人は紳士だつたから出歯亀趣味がなかつたためであろう。もつともそれが本当らしく思われる程匂つてくる。ここは一晩で通過するだけであるから,ここでやめれば本来無口な小生にぴつたりであるが,皮膚科に若干関係あるので迷惑承知で続ける。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.642 - P.643

ACTA DERMATO-VENEREOLOGICA 48: 5, 1968
Erythema Nodosum Migrans :B. Bäfverstedt 381
Thermographic Evaluation of Patch-Test and Tuberculin Reactions: P.I Branemark, K. Hersle, B. Magnusson and H. Mobacken 385

〈原著論文抄録〉

Acropathie ulcéromutilante familiale de Thévenard(familiäre Akroosteolyse)の1例,他

著者: 谷藤順士 ,   平山晃也 ,   有賀昭俊 ,   永井盛人

ページ範囲:P.645 - P.645

 23歳,女,会社員。両足の変形,右足底潰瘍および四肢の知覚鈍麻を主訴として昭和42年5月13日初診。両親は血族結婚で,姉に同症を認める。6-7歳頃から,外傷を受けても疼痛を感じなかつたが,10歳頃に右第1趾の凍瘡様変化と爪の異変に気付いた。その頃から脱疽と診断されており,15歳頃には右足の変形腫脹が増し,左足にも症状を認めるようになつた。17歳(昭和38年)の時に左第1趾の腐骨の掻破,翌年右全趾切断,昭和40年には右交感神経切除術を受けたが,右足底の潰瘍は治癒せず,かえつて増悪傾向をみた。初診時所見。右足の先端は欠如し,全体に板状硬に腫大しており,足底には胼胝様角質増殖で囲まれた鶏卵大の潰瘍があり,その底は弛緩性顆粒状肉芽面である。左足では第1趾,第2趾の腫脹,変形が著明で,第3趾基部の背蹠両面に瘻孔を認める。骨レ線像で,右足のLisfranc関節から先端は欠除し,左第1中足骨と基節骨の欠損,第2〜5趾中足骨または基節胃の融解,腐骨,骨折およびPeriostose様変化などが認められる。膝蓋腱およびアキレス腱反射の減弱,下腿および前腕の知覚鈍麻,両足の知覚脱失,可沈亢進,ASLO価高値を認めたが病的反射,直腸膀胱障害は認めず,筋電図および椎骨レ線像に異常はなかつた。以上の所見よりAcropathie ulceromutilante familiareと診断し,若干の文献的考察を試みた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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