〈原著論文抄録〉
Acropathie ulcéromutilante familiale de Thévenard(familiäre Akroosteolyse)の1例,他
著者:
谷藤順士1
平山晃也1
有賀昭俊1
永井盛人1
所属機関:
1北海道大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.645 - P.645
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23歳,女,会社員。両足の変形,右足底潰瘍および四肢の知覚鈍麻を主訴として昭和42年5月13日初診。両親は血族結婚で,姉に同症を認める。6-7歳頃から,外傷を受けても疼痛を感じなかつたが,10歳頃に右第1趾の凍瘡様変化と爪の異変に気付いた。その頃から脱疽と診断されており,15歳頃には右足の変形腫脹が増し,左足にも症状を認めるようになつた。17歳(昭和38年)の時に左第1趾の腐骨の掻破,翌年右全趾切断,昭和40年には右交感神経切除術を受けたが,右足底の潰瘍は治癒せず,かえつて増悪傾向をみた。初診時所見。右足の先端は欠如し,全体に板状硬に腫大しており,足底には胼胝様角質増殖で囲まれた鶏卵大の潰瘍があり,その底は弛緩性顆粒状肉芽面である。左足では第1趾,第2趾の腫脹,変形が著明で,第3趾基部の背蹠両面に瘻孔を認める。骨レ線像で,右足のLisfranc関節から先端は欠除し,左第1中足骨と基節骨の欠損,第2〜5趾中足骨または基節胃の融解,腐骨,骨折およびPeriostose様変化などが認められる。膝蓋腱およびアキレス腱反射の減弱,下腿および前腕の知覚鈍麻,両足の知覚脱失,可沈亢進,ASLO価高値を認めたが病的反射,直腸膀胱障害は認めず,筋電図および椎骨レ線像に異常はなかつた。以上の所見よりAcropathie ulceromutilante familiareと診断し,若干の文献的考察を試みた。