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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科23巻9号

1969年09月発行

雑誌目次

図譜・298

ヂューリング疱疹状皮膚炎幼児例

著者: 河村俊光 ,   深田馨子 ,   田嶋公子

ページ範囲:P.884 - P.885

患者 3歳,女子
初診 昭和43年9月2日

図譜・299

全身性エリテマトーデスの男性老人初発例

著者: 斎藤義雄 ,   鈴木重興

ページ範囲:P.886 - P.887

患者 71,歳男,農業
初診 昭和42年8月31日

綜説

蛋白合成に関与する細胞小器官の超微細構造とその機能—表皮特殊構造に関連して

著者: 黒住一昌

ページ範囲:P.891 - P.903

I.緒言
 近年,一躍脚光を浴びて来た分子生物学の成果は,細胞の蛋白合成機能の詳細を,掌を指すごとく明白に示すことに成功した。その多くの業績は主として微生物についてなされたものであつて,ヒトをふくむ高等動物の細胞について完全に適用され得るものか否か,多少の疑点が残されているが,大綱においては,すべての生物の細胞に共通する原則を示しているものと思われる。その研究の手法は主として生化学的方法に拠つたとはいうものの,電子顕微鏡によつて得られた細胞小器官の超微細構造に関する知識がきわめて有力な参考を供したことは否定し得ない。
 動物細胞の蛋白合成機能についての超微形態学的研究は,蛋白合成の最も旺盛な蛋白分泌腺について多くなされて来た。その中でも膵臓と下垂体前葉とは好んで用いられた材料である。これらの腺細胞は,合成された蛋白が分泌題粒という形態学的に明瞭な物体として把握し得るところに研究材料としての利点を有する。研究方法としては,正常な腺細胞の観察に始まつて,各種の生理学的あるいは薬理学的刺激を加えた場合の観察,ラベルされたアミノ酸を用いる電顕的autoradiogra-phy,電顕的に検出可能な酵素の組織化学的証明,電顕レベルの免疫組織化学,生化学研究のためのfractionを同時に電顕で観察する方法などが行なわれて来た。

原著

Osler病の1例

著者: 南春恵 ,   辻本恵子 ,   山田統正 ,   田島正和 ,   川口良人

ページ範囲:P.905 - P.910

I.はじめに
 Osler病(遺伝性出血性血管拡張症)は1901年にOsler1)が報告して以来,1つの確立された疾患とされている。その主要症状は多発性毛細血管拡張症と出血傾向で家族的に発生するとされている。
 本邦においては昭和17年に大久保2)の報告以来,およそ22家系に見られるにすぎない。最近,Osler病の3主徴(①多発性毛細血管拡張,②出血傾向,③家族的発生)を有する15歳,女子の例を経験したのでここに報告する。

汎発性環状肉芽腫の1例

著者: 三宅一夫 ,   近藤湘子

ページ範囲:P.911 - P.915

I.はじめに
 環状肉芽腫Granuloma annulareは1895年Foxによって第1例が報告されて以来,欧米および本邦においてかなり多数の報告に接することが出来る。しかるにその汎発例(汎発性環状肉芽腫generalized granuloma annulare)は極めて稀有であり,最近の藤沢1)の報告によると本邦における123例の環状肉芽腫中わずか5例が認められるにすぎないという。我々は最近本症の1例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する。

搾乳者結節の1例

著者: 井上勝平 ,   木村晴世

ページ範囲:P.917 - P.922

I.はじめに
 搾乳者結節は乳牛を飼つている国ではほぼどこでも発症しているようである1)が,我国では,本症のself-limited diseaseであることが経験的に知られているため,医療を受けることが少いとも考えられるが4)11),わずか3例2)3)4)の報告をみるにすぎない(第1表)。
 そこで最近経験した1例を報告,併せてNase-mann1)(1961)の詳細な論文を中心に,病原ウイルス,伝播様式ならびに細胞質内封入体形成などについて私見を述べてみたい。

砒素癌の1例

著者: 山崎啓二 ,   斎藤稔 ,   田代孝男 ,   菊井英進 ,   坂元征行

ページ範囲:P.923 - P.928

I.はじめに
 1887年Hutchinsonが皮膚癌の原因因子として砒素の役割に注目して以来,欧米では砒素癌の報告は多く,Neubauer1)は1947年までの医薬品による143例,職業的接触による24例を集録している。一方本邦では砒素癌の報告はまれで,この点は第64回日本皮膚科学会総会シンポジウムでも注目きれている2)〜5)。最近我々は精米に使用するつき粉と誤つて砒素剤が混入した米を長期間とり,中毒症状を示した患者に発生した砒素癌の1例を経験したので報告する。

Melkersson-Rosenthal症候群の1例

著者: 池沢英子 ,   浜崎マス

ページ範囲:P.929 - P.932

I.はじめに
 Melkersson-Rosenthal症候群(以下M-R-Sと略記)は1928年Melkersson,1931年Rosenthalによつて記載された,①再発性顔面神経麻痺re-lapsing facial palsy②口唇腫脹thick lip③皺襞舌linguaplicataを3徴候とする疾患である。最近当科外来患者で既往に顔面神経麻痺と顔面の腫脹を有し,現に上下口唇の腫脹と皺襞舌を示す1症例を経験した。後述の諸検査成績からこれをM-R—Sとして報告するとともに,若干の考按を試みた次第である。

薬剤

皮膚科領域におけるコリマイフォーム(CF)の使用経験について

著者: 池田重雄 ,   水谷ひろみ ,   宮田肇 ,   新村真人 ,   前田豊秀

ページ範囲:P.941 - P.953

I.はじめに
 近時,種々の抗生物質含有軟膏が市販されるようになり,一般家庭常備薬的に使用されるためか,ペニシリン,クロラムフェニコール,マクロライド系抗生物質に耐性を示す黄色蕃葡状球菌(Staph. aureusと略す)感染症が多くなつてきている様な傾向が伺われる。また広範囲熱傷潰瘍面ないし陳旧性熱傷潰瘍面(第Ⅲ度),慢性放射線皮膚炎に屡々見られる難治性放射線潰瘍,癌性潰瘍面等では,ペニシリン,クロラムフェニコール,マクロライド系抗生物質耐性のStaph. aureusの他に,緑膿菌の混合感染がみられ,より一層潰瘍面の創傷治療傾向を遅延させている様な印象を受ける事が稀ならず認められる。
 コリマイフォーム(CFと略す)には,泡沫中1gにコリマイシン(硫酸コリスチン,CLと略す)3mg力価,フラジオマイシン(FRMと略す)3.3mg力価が含有されている事からして,CLおよびFRM感受性菌による種々の皮膚感染症がその適応となるが,上述した様な種々の難治性潰瘍が本剤の良い適応となりうるように考えられる。

学会印象記

第5回国際実験皮膚科学会を語る—表皮角化機構に関する最近の知見を中心に

著者: 三島豊 ,   橋本健

ページ範囲:P.958 - P.965

 国際実験皮膚科学会の第5回総会は,パレルモ大学のI.Bosco教授を会頭として,3月28日から3日間シシリー島のパレルモ市(第2図)で開催された。今回の会議の主たるテーマは正常および病的角化機構であつた。今年はちようどパレルモ大学の100年祭に当り,新装成つた4階建ての皮膚科学教室内の講堂が会場にあてられここに招請された,主として欧米の専門家約150人により,盛大に行なわれた。
 パレルモ市はシシリー島の北海岸に位置しローマからはプロペラ双発機で約1時間半海上を真直に南下する(第2図)。紺碧の地中海を背景に,亜熱帯の花が咲き乱れる旧火山島(第3図)の素晴らしい海風に吹かれ,まことに心地よい会場でつた。

海外見聞記

ラテンアメリカ便り(5)—アルゼンチン

著者: 大城戸宗男

ページ範囲:P.966 - P.967

 アメリカのMount Sinai病院のごとく人種の混合した国の少数民族は自分らの病院を持つものだが,このアルゼンチンには英,独,シリア—レバノン,ユダヤ系の病院に加えて多数かつ先住民族である筈のスペイン,イタリア人らまでが自分らの病院を作りだした。
 首都ブエノスアイレスを中心にして3世迄含めて約2万人近くの邦人がいるが1),その多くは洗濯屋さんと花屋さんの職業についており,夫々約5〜600軒位はあるそうだ。花を愛し,きれい好きな国民性のため充分ペイするのであろうか。所がその上,南米で1,2を争う先進国であるそうで,邦人が多く開拓に入り込んで比較的開けていると思われるメンドサ近辺でもサシガメ—Tria-toma現地ではVinchucaで親しまれている−10匹中3匹にChagas病のTrypanosoma cruziが発見されるという。上下水道が不備の為かアメーバ赤痢や回虫を初めとする消化器系寄生虫が多く,その他ScabiesやPediculosis capitisも外来を訪れる(Mendoza州,Hospital Emi-liocivit de General Alvear,Dr.Juan Boailchuk談)事からも,その程度は見当がつく筈である。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.968 - P.969

ARCHIVES OF DERMATOLOGY 99 : 4, April, 1969
Influence of Oral Prednisone on Eczematous Patch Test Reactions : S.E. O'Quinn and K.H. Isbell 390
Solar Urticaria : W.M. Sams, J.H. Epstein and R.K. Winkelmann 380

〈原著論文抄録〉

Osler病の1例,他

著者: 南春恵 ,   辻本恵子 ,   山田統正 ,   田島正和 ,   川口良人

ページ範囲:P.979 - P.979

15歳女子。昭和38年に口唇出血および顔面,手背,口唇の発疹に気付いた。昭和43年12月に左側上肢,下肢に5分程度持続する痙摩発作があつた。昭和43年暮に血尿を認めた。家族歴は父方祖父,父にも毛細血管拡張斑を認める。顔面(頬部),耳後部,手背,前腕,口唇,舌の上面に粟粒大,点状ないし樹枝状,紅色を呈する毛細血管拡張斑を認める。いずれの皮疹も圧迫により褪色し,手背の点状疹の周囲には貧血性の白色斑を認める。
 眼底,鼻咽頭粘膜,膀胱粘膜に異常なし。肝臓,脾臓は触知しない。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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