文献詳細
綜説
文献概要
I.緒言
近年,一躍脚光を浴びて来た分子生物学の成果は,細胞の蛋白合成機能の詳細を,掌を指すごとく明白に示すことに成功した。その多くの業績は主として微生物についてなされたものであつて,ヒトをふくむ高等動物の細胞について完全に適用され得るものか否か,多少の疑点が残されているが,大綱においては,すべての生物の細胞に共通する原則を示しているものと思われる。その研究の手法は主として生化学的方法に拠つたとはいうものの,電子顕微鏡によつて得られた細胞小器官の超微細構造に関する知識がきわめて有力な参考を供したことは否定し得ない。
動物細胞の蛋白合成機能についての超微形態学的研究は,蛋白合成の最も旺盛な蛋白分泌腺について多くなされて来た。その中でも膵臓と下垂体前葉とは好んで用いられた材料である。これらの腺細胞は,合成された蛋白が分泌題粒という形態学的に明瞭な物体として把握し得るところに研究材料としての利点を有する。研究方法としては,正常な腺細胞の観察に始まつて,各種の生理学的あるいは薬理学的刺激を加えた場合の観察,ラベルされたアミノ酸を用いる電顕的autoradiogra-phy,電顕的に検出可能な酵素の組織化学的証明,電顕レベルの免疫組織化学,生化学研究のためのfractionを同時に電顕で観察する方法などが行なわれて来た。
近年,一躍脚光を浴びて来た分子生物学の成果は,細胞の蛋白合成機能の詳細を,掌を指すごとく明白に示すことに成功した。その多くの業績は主として微生物についてなされたものであつて,ヒトをふくむ高等動物の細胞について完全に適用され得るものか否か,多少の疑点が残されているが,大綱においては,すべての生物の細胞に共通する原則を示しているものと思われる。その研究の手法は主として生化学的方法に拠つたとはいうものの,電子顕微鏡によつて得られた細胞小器官の超微細構造に関する知識がきわめて有力な参考を供したことは否定し得ない。
動物細胞の蛋白合成機能についての超微形態学的研究は,蛋白合成の最も旺盛な蛋白分泌腺について多くなされて来た。その中でも膵臓と下垂体前葉とは好んで用いられた材料である。これらの腺細胞は,合成された蛋白が分泌題粒という形態学的に明瞭な物体として把握し得るところに研究材料としての利点を有する。研究方法としては,正常な腺細胞の観察に始まつて,各種の生理学的あるいは薬理学的刺激を加えた場合の観察,ラベルされたアミノ酸を用いる電顕的autoradiogra-phy,電顕的に検出可能な酵素の組織化学的証明,電顕レベルの免疫組織化学,生化学研究のためのfractionを同時に電顕で観察する方法などが行なわれて来た。
掲載誌情報