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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科24巻2号

1970年02月発行

雑誌目次

図譜・308

Angioblastomaの1例

著者: 小野公義 ,   木村恭一

ページ範囲:P.114 - P.115

患者 生後1年5カ月の女児(岡大皮膚科外来番号昭41-4568)。
家族歴・既往歴 特記事項なし,出産正常。

図譜・309

痛風結節

著者: 井上勝平 ,   木村晴世

ページ範囲:P.116 - P.117

患者 37才男子,農業 初診 昭和43年9月10日
家族歴 母親に慢性関節リウマチ(RA⧻,血清尿酸値3.8mg/dl)あり。

綜説

血管炎の臨床と病理組織

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.121 - P.133

I.血管炎とは
 一般に炎症の場は毛細血管ないし細小血管を中心とする結合織であるが,特に血管壁の結合織を反応の場とする炎症,換言すれば血管壁を1次的におかすような炎症を血管炎と呼ぶ。従つて血管炎は,大動脈より皮膚の細小血管まで,あらゆる大きさの血管におこり得るが,毛細血管炎(Capillaritis)という概念は正しくない。
 毛細血管の変化がきわだつて眼につく場合は,たとえば強い線維素性炎症(壊疽性丘疹状結核疹),出血性炎症(Angiodermatitis),または変性性変化(慢性放射線皮膚炎),種々の沈着症などがある。これらの場合は,毛細血管の炎症すなわち毛細管炎ではなくて,炎症に関与している毛細血管の"変化"と呼んだ方がよい。

原著

尋常性乾癬のコルチコステロイド外用におけるステロイド皮膚貯留

著者: 松沢徹 ,   久木田淳

ページ範囲:P.139 - P.143

はじめに
 閉鎖包帯法(ODT法)にて外用されたコルチコステロイドの正常皮膚での貯留現象は近年よく知られている。Malkinson, Ferguson1)(1955)は,正常人皮膚に放射性ハイドロコーチゾン軟膏を外用し,1957年には2),皮膚病患者に放射性コーチゾン軟膏を外用して,その後尿中17—KS分画中の放射能を測定する方法を用い,放射性軟膏塗布後尿中に6日間にわたつて放射能の排泄を認め,このことから外用されたコーチゾンおよびハイドロコーチゾンがいつたん皮膚に貯留し,その後徐々に体内に吸収されていくことを推測した。おそらくこれがコルチコステロイドの皮膚貯留を推測した最初の報告である。Vickers3)(1963)は毛細血管収縮試験を指標に用いてトリアムシノロン・アセトナイドの皮膚吸収および皮膚貯留現象の実験をおこない,外用されたトリアムシノロン・アセトナイドが,皮膚の角質層に沈着しそれが2週間にわたつて貯留することを証明した。この現象をコルチコステロイドの皮膚吸収の指標に用いる事を推奨したのは,McKenzie, Stoughton4)(1962),McKenzie5)(1962)などである。Stoug-hton6)(1965)は,正常皮膚に各種の放射性コルチコステロイドを外用した後その部分の角質層をスコツチテープを用いて剥離し,その剥離された角質層中の放射能を測定する方法を用いて角質層に放射性コルチコステロイドが沈着しているのを証明し,コルチコステロイドの沈着部位は皮膚の角質層であるとした。Carr, Wieland7)(1966)は放射性トリアムシノロン・アセトナイドの溶液を正常皮膚に外用した後,スコツチテープにてその部分の角質層を剥離し,剥がれた角質層中の放射能を測定する方法を用い,角質層内にコルチコステロイドが沈着することを証明した。Kligman8)(1967)は,クロトン油皮膚炎試験を指標に用いて閉鎖包帯法(ODT法)にて外用されたフルオシノロン・アセトナイドが皮膚に貯留し,抗炎症作用を発揮して何日間クロトン油皮膚炎に拮抗するかを測定し,フルオシノロン・アセトナイドで1回の24時間ODTをおこなつた場合その抗炎症作用は8日間にわたつて残存し,クロトン油皮膚炎を発生させないことを示した。このことはフルオシノロン・アセトナイドの皮膚貯留が,少くとも8日間は存在するということを示しているものであろう。
 以上はほとんどが正常皮膚における外用コルチコステロイドの皮膚貯留に関する報告であるが,一方Vickers9)(1966)およびScoggins10)(1963)の見解によれば,尋常性乾癬においては外用コルチコステロイドの皮膚貯留がおこらないとされている。

Apocrine cystadenomaの1例

著者: 山本哲雄 ,   辻卓夫 ,   須貝哲郎

ページ範囲:P.145 - P.149

はじめに
 apocrine cystadenomaはapocrine hidro-cystomaともよばれ,通常球状の結節として顔面に単発し,分泌液の貯留により半透明にすけてみえる。組織学的には嚢胞とアポクリン腺分泌細胞の増殖性変化がみられるのを特徴としている。本症は一般外科医などに治療を受けたりするためか,報告は少ないものの,さほど稀な疾患でないともいわれている1)。しかしながら本邦の皮膚科領域において,私どもの調べた範囲では肥田野および溝口2)の地方会発表をみるのみで,欧米においてはMehregan3),Gross4)などの報告がみられるが,さほど多くない。最近私どもも本症と思われる症例を経験したので報告し,併せて若干の文献的考察を行なつた。

Fanconi症候群の1例

著者: 前田一郎 ,   中村肇

ページ範囲:P.151 - P.155

はじめに
 1927年Fanconi1)は大血球性高色素性貧血,白血球および血小板の減少,骨髄造血機能の減弱とともに,小頭症,内斜視,睾丸発育不全,深部腱反射亢進,全身性の褐色色素沈着等を伴なう3人の兄弟例を家族性幼児性悪性貧血様貧血(fa-miliäre infantile perniciosaartige Anämie)として報告以来,同様症候群は諸家により種々の呼称はあるものの,一般にはFanconi症候群もしくはFanconi貧血として知られている。
 一方,1906年Zinsser2)がatrophia cutisreticularis cum pigmentatione, dystrophiaunguium et leukoplakia orisとして初めて報告した,いわゆる先天性角化異常症(dyskera—tosis congenita)は網状の色素沈着,爪の形成異常,白板症を三主徴とする症候群で,ともにFanconi症候群にみられるような貧血を伴うこともある。

各種皮膚疾患における免疫電気泳動法による血清蛋白の分析

著者: 橋本功 ,   木村瑞雄 ,   山本欣一 ,   山内晢

ページ範囲:P.157 - P.166

はじめに
 1953年Grabar & Williamsが免疫電気泳動法を創始して以来,皮膚科領域でも広く応用され,数種の皮膚疾患で特有の変化が認められている。今回著者らも各種皮膚疾患に対して本法を実施し,疾患特有の変化がみられるか否かを検討したのでその結果を報告する。

学童期における手指爪疾患の頻度

著者: 吉岡郁夫

ページ範囲:P.167 - P.170

はじめに
 爪甲の疾患に関する我国の文献は比較的少なく,これについては加納(1955)および大矢(1965)が総括的にのべている。しかしこれらの文献の多くは臨床的に爪疾患のみをとりあげたものであつて,今までに記載されている爪の変化が,1つの集団においてどれ位の頻度にみられるかということについて触れた統計は殆んどない。著者は静岡市南藁科小学校において生体計測を行なつた際,手指の爪甲についても観察したので,その結果を報告する。ただ,この調査はあくまで生体計測が主体であり,爪の調査は著者個人で行なつた2次的なものであるから,充分に観察できなかつた点が少なくない。この点については予め御諒承願いたい。

印象記

第20回日本皮膚科学会中日本連合地方会印象記

著者: 渡辺昌平

ページ範囲:P.176 - P.179

 第20回日本皮膚科学会中日本連合地方会は昭和44年10月18日(土),19日(日)の両日にわたつて大阪科学技術センターにおいて,阪大藤浪教授を会長として行なわれた。
 本学会は終戦後の昭和25年に始めて第1回が名大において開催された。その後は中日本の14の大学が交代で当番機関となり,毎年秋季に恒例として行なわれてきた。今回はすでに第20回を迎えるに至つた。

皮膚科学の流れ 人と業績・2

Ferdinand von Hebra

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.180 - P.182

(前号から続く)
多形滲出性紅斑(Erythomaexsudativum multiforme)4)
 Willanは皮膚病分類において第3類を発疹(Exanthemata)とし,これに属するものとして紅斑(Ery-thema)をあげ,紅斑には6種の型があると述べている。Willanはこの型のうち第1を一過性紅斑(E.fugax)と名称したが,著者(Hebra)の分類によれば同類の疾患に属する充血(Hyperaemia)の中にこれを編入した。第2型の紅斑に対しWillanは平滑性紅斑(Elaeve)の名を与えたが,著者の考えではこれは特殊の疾患ではなく,単純な紅斑であつて,浮腫をきたした皮膚の部分に出現する。それゆえ著者がここに述べようとするのは,Willanの名称した輪郭性紅斑(E.marginatum),丘疹性紅斑(E.pa-pulatum),小結節性紅斑(E.tube-rculatum),結節性紅斑(E.nodo-sum)についてだけとなる。しかし他の著述者のうちには上記以外の紅斑形を記載したものもある。すなわち,Rayerは紅彩状紅斑(E.iris),Biettは環状紅斑(E.annulare)または円形紅斑(E.circinatum)または遠心性紅斑(E.centrifugum),Fuchsは迂曲状紅斑(E.gyratum),膨疹状紅斑(E.urticane),瀰蔓性和斑(E.diffusum)を記述している。しかし,これらの異なる名称がそれと同数の別個の疾患に対応するわけでは決してない。したがつて,われわれが第1に目的としなければならないのは,それら紅斑のうちのいずれが,同一疾患の経過中に相前後して生ずる形に相当しているかを決め,またそれら紅斑のうちのいずれが,確かに異なる皮膚疾患であることを指摘しうるかを決定することである。
 さて,この点に関して経験が著者に教えたところによると,丘疹性紅斑,小結節性紅斑,環状紅斑,紅彩状紅斑,迂曲状紅斑は同一疾患の異なる病期における発疹形にすぎない。その外観の変化は,疾患の進行に従つて,またはその経過の晩期において,あるいはその消失時において,これを示すのである。この一疾患に対し著者は,多形滲出性紅斑(Erythema exsudativum multi-forme)の名称を付与することにする。

海外見聞記

ラテンアメリカ便り(10)—ドミニカ

著者: 大城戸宗男

ページ範囲:P.183 - P.184

 革命騒ぎに巻き込まれた青年アベルがオノリコ河上流のアマゾン地域の熱帯林に逃げ込み,そこで神秘的な美少女リマに会い恋に落ちる話はハドスンの小説で,現実が厳しいのは今迄述べた疾患のみを考えても容易に判る。土地の大学には多種の熱帯病の症例が入院しているが,leishmaniasisの皮膚又は皮膚粘膜型は少さな村でも簡単にみられる。この南米では両型が存在するのでお互いの鑑別には皮膚潰瘍のみをみただけでは困難で,field medicineを行なうものには面倒なことである。
 平安時代とジェット機時代が奇妙にまざり,アマゾン河口から1500km上流にあるマナオス市では秋葉原の如く日本製品が氾濫し,国際航空のジェット機も頻繁に出入りする。周辺のジャングルに入るにはテコテコと称すセスナ機に乗るのが近道だ。この定員3〜5人の空のタクシーはしばしば墜落するが,あまり低空を飛んでいるので樹にひつかかつて全員助かる。しかし不幸はその后で密林の中では樹が高すぎて降りられず降りても危険が多すぎるので結局樹の上で飢死する。しかし無事に着いた開拓地はすばらしい。戦前海外雄飛の先駆者とか無限の沃土の開拓者との美辞麗句で貧農を棄民にした話を書いた石川達三の蒼氓にしても,戦后角田房子のブラジルの日系人に関する悲惨な話にしても昔のことであとしばらくすればヨーロッパの棄民が作り上げたアメリカ同様に超一流社会が生まれてくるのは間違いない,実際このジャングルの中に政府がアマゾナス大学医学部を4年前に開設し,その学生の中に多くの日系人をみた時はその感を益々深くさす。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.185 - P.189

THE BRITISH JOURNAL OF DERMATOLOGY 81 : 7, July, 1969
"Actinic Reticuloid" ; a Chronic Dermatosis Associated With Severe Photosensitivity and the Histological Resemblance to Lymphoma : F. A. Ive, I. A. Magnus, R. P. Warin and E. Wilson Jones 469
Hydroa Vacciniforme Occurring in Association With Hartnup Disease : P. J. Ashurst 486

〈原著論文抄録〉

尋常性乾癬のコルチコステロイド外用におけるステロイド皮膚貯留,他

著者: 松沢徹 ,   久木田淳

ページ範囲:P.191 - P.191

 尋常性乾癬の皮疹部における外用コルチコステロイドの皮膚貯留現象をオートラジオグラフ法を用いて検索した。用いた放射性ステロイドはC14がアセトナイド基にラベルされたフルオシノロン・アセトナイドのクリームでこれを尋常性乾癬の皮疹部に24時間ODTによつて適用した。結果は24時間ODT直後においては放射性ステロイドは角質層および表皮のマルピギー層に著明に認められ,それは表皮基底層において真皮との間に明瞭な境界線をなしていた。この所見より,皮膚吸収における第2のbarrierが表皮基底層に存在する事を推測した。ODT後3日目のオートラジオグラフによれば,ステロイド貯留は表皮および毛嚢壁に僅かに認められた。ODT後7日を経たものにおいては,1例ではステロイドは全く認められなかつたが,他の1例で組織学的に軽症のものでは,ステロイドはマルピギー層に痕跡的に認められ,特にマルピギー層の表層においてより明らかであつた。以上の結果より,尋常性乾癬におけるステロイド貯留は明らかに認めらるのであるが,その存続期間は正常皮膚のそれよりもやや短く,これは表皮のturnover time亢進と関係があるごとく推察された。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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