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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科24巻2号

1970年02月発行

文献概要

原著

尋常性乾癬のコルチコステロイド外用におけるステロイド皮膚貯留

著者: 松沢徹1 久木田淳1

所属機関: 1札幌医科大学皮膚科教室

ページ範囲:P.139 - P.143

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はじめに
 閉鎖包帯法(ODT法)にて外用されたコルチコステロイドの正常皮膚での貯留現象は近年よく知られている。Malkinson, Ferguson1)(1955)は,正常人皮膚に放射性ハイドロコーチゾン軟膏を外用し,1957年には2),皮膚病患者に放射性コーチゾン軟膏を外用して,その後尿中17—KS分画中の放射能を測定する方法を用い,放射性軟膏塗布後尿中に6日間にわたつて放射能の排泄を認め,このことから外用されたコーチゾンおよびハイドロコーチゾンがいつたん皮膚に貯留し,その後徐々に体内に吸収されていくことを推測した。おそらくこれがコルチコステロイドの皮膚貯留を推測した最初の報告である。Vickers3)(1963)は毛細血管収縮試験を指標に用いてトリアムシノロン・アセトナイドの皮膚吸収および皮膚貯留現象の実験をおこない,外用されたトリアムシノロン・アセトナイドが,皮膚の角質層に沈着しそれが2週間にわたつて貯留することを証明した。この現象をコルチコステロイドの皮膚吸収の指標に用いる事を推奨したのは,McKenzie, Stoughton4)(1962),McKenzie5)(1962)などである。Stoug-hton6)(1965)は,正常皮膚に各種の放射性コルチコステロイドを外用した後その部分の角質層をスコツチテープを用いて剥離し,その剥離された角質層中の放射能を測定する方法を用いて角質層に放射性コルチコステロイドが沈着しているのを証明し,コルチコステロイドの沈着部位は皮膚の角質層であるとした。Carr, Wieland7)(1966)は放射性トリアムシノロン・アセトナイドの溶液を正常皮膚に外用した後,スコツチテープにてその部分の角質層を剥離し,剥がれた角質層中の放射能を測定する方法を用い,角質層内にコルチコステロイドが沈着することを証明した。Kligman8)(1967)は,クロトン油皮膚炎試験を指標に用いて閉鎖包帯法(ODT法)にて外用されたフルオシノロン・アセトナイドが皮膚に貯留し,抗炎症作用を発揮して何日間クロトン油皮膚炎に拮抗するかを測定し,フルオシノロン・アセトナイドで1回の24時間ODTをおこなつた場合その抗炎症作用は8日間にわたつて残存し,クロトン油皮膚炎を発生させないことを示した。このことはフルオシノロン・アセトナイドの皮膚貯留が,少くとも8日間は存在するということを示しているものであろう。
 以上はほとんどが正常皮膚における外用コルチコステロイドの皮膚貯留に関する報告であるが,一方Vickers9)(1966)およびScoggins10)(1963)の見解によれば,尋常性乾癬においては外用コルチコステロイドの皮膚貯留がおこらないとされている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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