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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科24巻2号

1970年02月発行

文献概要

皮膚科学の流れ 人と業績・2

Ferdinand von Hebra

著者: 高橋吉定

所属機関:

ページ範囲:P.180 - P.182

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(前号から続く)
多形滲出性紅斑(Erythomaexsudativum multiforme)4)
 Willanは皮膚病分類において第3類を発疹(Exanthemata)とし,これに属するものとして紅斑(Ery-thema)をあげ,紅斑には6種の型があると述べている。Willanはこの型のうち第1を一過性紅斑(E.fugax)と名称したが,著者(Hebra)の分類によれば同類の疾患に属する充血(Hyperaemia)の中にこれを編入した。第2型の紅斑に対しWillanは平滑性紅斑(Elaeve)の名を与えたが,著者の考えではこれは特殊の疾患ではなく,単純な紅斑であつて,浮腫をきたした皮膚の部分に出現する。それゆえ著者がここに述べようとするのは,Willanの名称した輪郭性紅斑(E.marginatum),丘疹性紅斑(E.pa-pulatum),小結節性紅斑(E.tube-rculatum),結節性紅斑(E.nodo-sum)についてだけとなる。しかし他の著述者のうちには上記以外の紅斑形を記載したものもある。すなわち,Rayerは紅彩状紅斑(E.iris),Biettは環状紅斑(E.annulare)または円形紅斑(E.circinatum)または遠心性紅斑(E.centrifugum),Fuchsは迂曲状紅斑(E.gyratum),膨疹状紅斑(E.urticane),瀰蔓性和斑(E.diffusum)を記述している。しかし,これらの異なる名称がそれと同数の別個の疾患に対応するわけでは決してない。したがつて,われわれが第1に目的としなければならないのは,それら紅斑のうちのいずれが,同一疾患の経過中に相前後して生ずる形に相当しているかを決め,またそれら紅斑のうちのいずれが,確かに異なる皮膚疾患であることを指摘しうるかを決定することである。
 さて,この点に関して経験が著者に教えたところによると,丘疹性紅斑,小結節性紅斑,環状紅斑,紅彩状紅斑,迂曲状紅斑は同一疾患の異なる病期における発疹形にすぎない。その外観の変化は,疾患の進行に従つて,またはその経過の晩期において,あるいはその消失時において,これを示すのである。この一疾患に対し著者は,多形滲出性紅斑(Erythema exsudativum multi-forme)の名称を付与することにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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