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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科24巻5号

1970年05月発行

雑誌目次

図譜・314

光沢苔癬の1例

著者: 原田栄子

ページ範囲:P.422 - P.423

患者 5歳,女児
既往歴・家族歴 特記すべきことなし。

図譜・315

外陰部萎縮性硬化性苔癬の1例

著者: 菅原宏

ページ範囲:P.424 - P.425

患者 49歳,女子農業。
初診 昭和44年6月15日

綜説

高脂血症

著者: 麻生和雄 ,   飯谷稲子 ,   関悦子

ページ範囲:P.429 - P.436

はじめに
 高脂血症(コレステロール血症,トリグリセライド血症)はコレステロール,トリグリセライドなど脂質そのものよりその転送にあずかるリポ蛋白から整理した方が,成因,病像など理解し易い。したがつてこんにちでは,一般にhyperlipopro-teinemiaと呼ばれている。糖尿や甲状腺機能低下症,ネフローゼなどの異常代謝により生ずるものを続発性といい,家族的にみられ遺伝を証明するものを,家族性あるいは原発性という。hyper-lipoproteinemiaは動脈硬化,心筋梗塞,黄色腫と関係し,その興味は皮膚科領域のみにとどまらない1)
 リポ蛋白脂質は血液中でリポ蛋白と結合,可溶化あるいは安定化されて各組織に転送される。リポ蛋白にはα,β,Pre-βリポ蛋白,カイロミクロンの4種がある。α-リポ蛋白は1.063〜1.21のdensityをもち,45〜55%の蛋白,30%の燐脂質,18%のコレステロール(大部分はエステル型)よりなり分子量は165,000〜400,000,蛋白はA蛋白と呼ばれ,アミノ酸構成および免疫的にもβ-リポ蛋白のB蛋白と異つている2)3)。β-リポ蛋白は超遠心で1.006〜1.063 densityにあるもので,20〜25%のB蛋白,43%のコレステロール(大部分エステル型),22%燐脂質,10%のトリグリセライドをふくみ,コレステロール量が多い。分子量326,000蛋白はアミノ基末端にグルタミン酸,カルボキシル末端にセリンをもつている4)5)。Pre-βリポ蛋白は6)0.93〜1.006のdensityにあるもので85%が脂質(大部分がトリグリセライドでコレステロールおよび燐脂質は少ない)で蛋白は2〜5%といわれAおよびB蛋白よりなるが最近C蛋白のあることが明らかにされた7)。カイロミクロンは脂質(大部分がトリグリセライド)および0.5〜2.5%の蛋白よりなる平均1μのparticleである8)

原著

Cole-Engman症候群

著者: 坂本邦樹 ,   北村弥

ページ範囲:P.441 - P.452

はじめに
 Dyskeratosis congenita cum pigmentatione,dystrophia unguium et leukokeratosis orisは先天的外胚葉形成異常の極めて稀な一表現であり,その完全型はこれまでに39例,ことに我国では5例の報告をみるのみで,これに不全型を加えても53例にすぎない。最近,我々は本症の完全型に真性尿崩症とその他の2,3の症候を合併した1例を経験したので,これに蒐集した文献例の統計を加えて報告する。

東北地方北部においてMicrosporum canisを分離した皮膚白癬の2例

著者: 福士堯

ページ範囲:P.453 - P.457

はじめに
 Microsporum (以下「M.」) canisを起因菌とする皮膚白癬が,本邦の文献にはじめて登場したのは,1929年で,殷1)が米国帰りの子供の病巣から分離した菌株をM.lanosumとして発表したものである。しかし,本邦在住の患者からの分離は,1934年に,高橋(信)2)が,札幌において,小水庖性白癬を有する患者からM.Sapporenseとして得たものが,事実上の最初の例とされている。これらの菌は後にM.canisと同じものとされた3)
 本菌はその後も,主に北海道,樺太において分離されていた。上記以外の地域で本菌が分離されたのは,1952年に香川4)が,東京で得たのがはじめてである。その後も堀江5),柳沢ら6),垣内ら7)がそれぞれ東京において,本菌を得ている。しかし,上記の3地域以外からは未だ本菌に由来する皮膚白癬の報告はなされていない。

DDSが卓効した持久性隆起性紅斑の1例

著者: 北村啓次郎 ,   田中睦子

ページ範囲:P.459 - P.466

はじめに
 持久性隆起性紅斑(以下E.e.d.と略す)は,比較的稀な疾患とされ,本邦でも1932年百瀬1)の第1例以後,1960年頃まではその報告が僅かに散見される程度であつた。しかるに,最近数年間に本症に対する認識が増したためか,報告例も年に1〜2例数えられるにおよび疾患概念から治療予後に関する種々の考按がなされるに至つている。
 最近,著者は肉眼的にも,顕微鏡的にも定型的な本症で,しかもDiaminodiphenylsulfone (DDS)により治癒した例を経験したので,その詳細を報告すると共に,本症の病因および治療に関して,若干の考察を行ないたい。

消化吸収障害の認められたジューリング疱疹状皮膚炎

著者: 内山道夫 ,   田代成元 ,   市井吉三郎

ページ範囲:P.467 - P.473

はじめに
 ここ数年間,ジューリング疱疹状皮膚炎における小腸の異常が論じられている。本疾患において高頻度に,空腸粘膜に異常所見の認められることは,1966年Marksら1),により初めて記載されたところである。その後,英国,オランダにおいて,その検索がすすめられ,本疾患の多くの症例に,空腸粘膜の構造変化,機能異常が認めれている。このことは,消化管とジューリング疱疹状皮膚炎の病態発生との関連において,興味のあるところである。しかしながら本邦では,ジューリング疱疹状皮膚炎について,これらの検索がなされた例はみられない。
 この度,我々もジューリング疱疹状皮膚炎の1例を経験し,空腸の生検と,2,3の消化吸収検査を行ない若干の考察を加えたので,ここに報告する。

リンパ管造影実施後皮膚転移が促進された悪性黒色腫の1剖検例

著者: 境繁雄 ,   福士堯 ,   平山泰照

ページ範囲:P.475 - P.481

はじめに
 悪性黒色腫は,症例により,その組織像にかなりの差がみられることはよく知られているところである。
 我々は,転移巣で組織学的に数種の所見を示し,リンパ管造影施行後,皮膚転移が促進された剖検例を経験したので報告する。

稀有な形を示す翼状頸の1手術治験とその周辺の皮膚科的疾患,特に皮膚弛緩症について

著者: 礒良輔 ,   小川正三

ページ範囲:P.483 - P.489

はじめに
 翼状頸ならびに皮膚弛緩症について,欧米では数多くの報告をみるが,本邦の文献は少なく,われわれの検索した範囲では,皮膚弛緩症に起因する翼状頸の報告はない。
 今回,われわれは皮膚弛緩症を原因とし,しかも右に偏位したきわめて稀な形をとる翼状頸の形成手術を行なう機会をえたので,その概要を報告するとともに,翼状頸の概念と定義,その成因,皮膚弛緩症,治療などについて,検討を加えてみたい。

皮膚科学の流れ 人と業績・5

Robert Willan

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.496 - P.499

(前号から続く)
 Willanの,巨匠の名にふさわしい広汎な業績のうちから,ある特別の分野に関するものだけを抜き出して,その卓抜した達見に感服してみても,皮膚科学において成し遂げたその不朽の偉業を理解することにはならない。彼は皮膚病全般を初めて科学的に分析して分類し,皮膚科学の礎石を設置したのである。
 Willanの著述から,その思考の動きを行外に捕え,それを現在の言葉でいい表わすと,次のようになるであろう。渾沌たる状態にある皮膚病の概念を秩序立てるには,自然科学の方法によるしかない。そうとすれば,生物学においてその発展の端緒を掴んだ先縦に習つて,まず皮膚病の分類から始めなければならない。そしてこの分類は方法論的に形態学的観点からのみに限定するのでなければ,ついに纒まりのつかないことになるであろう。形態学的分類を行なうには,基準となる形態を定めなければならない。このためには基本となる単位的発疹を選別して,そのあるものを基準とするのが最も優れた方法であろう。その際,甚だ重要なことは,その単位的発疹の形態を厳密に定義し,分類の全般を通じて終始その定義を遵守することである。ここにおいて初めて,何びとも納得できる皮膚病分類の自然科学的体系が完成することになる。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.500 - P.502

ARCHIV FÜR KLINISCHE UND EXPERIMENTELLE DERMATOLOGIE 235 : 3 1969
Lanthanum Staining of the Epidermal Inter- cellular Spaces. An Electron Microscopic Study : J. Komura, Y. Shimada and S. Ofuji 221
Die Häufigkeitsverteilung der Mitochondrien in der normalen Meerschweinchenepidermis. (Eine quantitative elektronenmikroskopische Untersuchung) : M. Rupec, F. Vakilzadeh und R. Brühl 228

〈原著論文抄録〉

Cole-Engman症候群,他

著者: 坂本邦樹 ,   北村弥

ページ範囲:P.505 - P.505

 33歳の男性。8年前に独特の網状色素沈着,爪発育異常が発生し,漸次,口腔粘膜白板角化症,皮膚斑状萎縮,掌蹠多汗,開口障害,嚥下困難,尿崩症等の症状が発症。入院経過中に強度のヒステリー神経症状を呈した。再生不良性貧血はみられなかった。自験例の症状は,全て外胚葉系の障害と推定できる。
 Cole-Engman症候群は自験例を含めて53例(不全型14例を含む)報告されている。本症の命名と症状,その他について若干の文献的考察を行った。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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