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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科24巻7号

1970年07月発行

雑誌目次

図譜・318

広汎な疣贅状列序性母斑上に多発性に続発したHidradenoma papilliferum

著者: 池田重雄 ,   水谷ひろみ ,   宮里肇 ,   新村真人

ページ範囲:P.620 - P.621

患者 (初診昭和35年9月)31歳未婚女子
既往歴 数年前左側乳房にfibradenoma mammae発生,その摘出術を受けている以外特記すべきことなし。

図譜・319

TIrichofolliculoma

著者: 江竜喜史 ,   福井米正

ページ範囲:P.622 - P.625

患者 29歳,男子
初診 昭和43年11月28日

綜説

Lymphadenosis benigna cutis(Bäfverstedt)について(1)

著者: 上野賢一 ,   徳田安基

ページ範囲:P.627 - P.635

 われわれは,さきにLymphadenosis benigna cutis (以下LABCと略す)の軟レ線療法につき報告したが107),今回は本症の本邦症例を中心に,これの綜説を試みたい。

原著

成人の紅皮症—紅皮症の概念と分類とに関する考察

著者: 小林健正 ,   石井孝男

ページ範囲:P.641 - P.648

まえがき
 われわれ皮膚科医が日常の診察に当たつて生命の危険に迫られた疾患に煩わされることは,それほど多いことではない。のみならず,今日ではコルチコステロイド剤の導入が適切な抗生物質の併用とあいまつて,多くの頑固な皮膚疾患に対しても以前は想像もできなかつたような抑圧効果を誇るようになり,従来生命に対する高い危険率のために恐れられていたE (略語一覧参照)の予後も決定的に改善されて来たことは疑いのないところである。しかし,Eはむしろ稀有であるとはいえ,今日でもなお皮膚科領域における最も重篤な状態といつても過言ではなく,しかもその本態に関する見解が,今世紀前半のそれとは異なつたものに変遷しつつある点で注目される病像でもある。すなわち現在の皮膚科学者の間ではEは最早sui generisの疾患ではなく,一定の基本疾患に対するréactions cutanéesにすぎないという考え方が次第に支配的となりつつある。したがつて著者らは昭和34年より昭和42年に至る9年間にわが教室において経験したE症例を総括的に検討してEの皮膚科学的地位およびその症候学的分類について考究する。

スポロトリクム症—宮城県下における第1例とその温浴療法について

著者: 笠井達也 ,   佐藤昭彦

ページ範囲:P.649 - P.655

はじめに
 本邦におけるスポロトリクム症の分布をみると関東地方にはなはだその症例の多いのに比し,それに隣接する東北地方においてはまれであつて,昭和40年鈴木ら1)の福島県下における第1例の報告以後,菅原ら2)によつて福島県下の症例が追加されているのみで,それ以北の地域における確実な本症の報告は知られていない。今回われわれが経験した症例は,宮城県仙台市在住の女子例であり,これは従来の確実な本症報告例中の,本邦における最北限感染例である。われわれはこの症例に対し,最近注目されている温熱療法の1つである温浴法による治療を試み,比較的短時日の問に全治せしめ得た。よつて,ここに症例の概略とその治療経過を報告し,併せて温熱療法に関し若干の考察を試みることにする。

白癬性毛瘡の2例

著者: 田中睦子 ,   西川武二 ,   原田鍾造 ,   長島正治

ページ範囲:P.657 - P.663

はじめに
 白癬性毛瘡(Sycosis trichophytica)はSy-cosis parasitaria, Trichophytia barbae, Tineabarbae, Barttrichophytie, Bartflechteなどと呼ばれ古くから知られている鬚髯部の深在性白癬であるが,本邦における本症の報告例はけつして多くはない。
 著者らは最近,紅色菌(Trichphyton rubrum)による本症の2例を経験したので,ここに報告し現在までの本邦報告例とあわせて,若干の考察を試みたい。

水庖性多形滲出性紅斑患者に発生したテトラサイクリンによる薬疹

著者: 姉小路公久

ページ範囲:P.665 - P.671

 最近抗生剤による薬疹が増加しているといわれるが,テトラサイクリンによるものは文献的にそれほど多いとは思われない。著者は内服試験によつてテトラサイクリンが原因薬剤であることを確かめた症例を経験したので報告する。

座瘡様皮膚アスペルギルス症

著者: 中條知孝 ,   辻口喜明 ,   和田黎吾

ページ範囲:P.673 - P.678

 Aspergillus属は,元来土壌,植物,穀物などへの腐生菌であり,時として動物への感染もある。特に鳥類の気嚢や肺を侵し,鶏や七面鳥の育成中の雛に多発して育雛肺炎と呼ばれる。これが,時に人体に対して病原性を示して種々の臓器を侵す。1856年,Virchow1)の4例の剖検例の報告を最初として内科,耳鼻咽喉科領域での報告があいつぎ,わが国でも緒方2)(1908年)が肺アスペルギルス症を報告したのを始めとして多数の報告がある。特に最近では,抗生物質,副腎皮質ホルモン剤などの使用によつて真菌症が増加の傾向にあり,本症が重要視されるに至つた。しかし,皮膚科領域では,1925年,Hodara und Behdjet3)の報告以後10余例を算するにすぎず,まれな疾患とされている。筆者らはこのたび僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症の患者の人工弁置換術後に発生した座瘡様皮疹を経験し,その膿疱内にAspergillus fla-vusを証したので,これにAspergillosis cutisacneiformisと命名し,これを下記する。

カンジダ性痤瘡の1例

著者: 東禹彦 ,   池上隆彦 ,   須貝哲郎

ページ範囲:P.679 - P.682

はじめに
 皮膚カンジダ症は間擦疹の形をとることが多く1),毛包炎の形を示すことはきわめてまれである。これまでにカンジダによる毛包炎の報告は散見されるが2)〜5),毛包内に菌要素を証明した例はほとんどない。最近,堀口・石津6)によりカンジダ性痤瘡の報告がなされたが,著者らも臨床的には尋常性痤瘡の像を示し,組織学的にはカンジダ性毛包炎と考えられる症例を経験した。自験例について報告するとともに,カンジダ性毛包炎について若干の考察を試みた。

皮膚科学の流れ 人と業績・7

Robert Willan Thomas Bateman

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.694 - P.697

(Robert Willanの項前号から続く)
落葉状落屑性皮膚疾患(Scaly Diseases of the Skin8)
 皮膚疾患の第2日(the secondOrder)は,定義第2において詳述したように,表皮の病的状態から発生する鱗屑の外観に特徴を有する諸疾患を含んでいる。しかし,表皮がこれらの疾患(these complaints)の唯一の所在部位ではない。それらはしばしば,堅くなつた丘疹あるいは真皮のなお大きな隆起から発生する。この丘疹や隆起は,圧迫あるいは伸長によつて表皮の紋理を損ない,肥厚した不規則な層を生ずる。こうして形成された葉状鱗屑あるいは層状鱗屑は,融合した膿疱あるいは表在性潰瘍に続く痂皮と必ずしも常に鑑別しえない。著者は,定義第2および第3を厳守して,このような不正確さを避けることにする。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.699 - P.701

THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY 54 : 1, January, 1970
In Vivo Observations of Skin Appendages in the Bat Wing : T. A. Cortese, Jr., and P. A. Nicoll1
The Granular Layer Thickness in Atopy and Ichthyosis Vulgaris : J. Erickson, Major, and G. Kahn 11

〈原著論文抄録〉

成人の紅皮症—紅皮症の概念と分類とに関する考察,他

著者: 小林健正 ,   石井孝男

ページ範囲:P.703 - P.703

 著者らは皮膚科学における概念としての紅皮症に関する歴史的変遷を概説し,それがもはや独立疾患ではなく,相異なる原因からも同じ症候像を取りうる症候群にすぎず,海外においては純症候学的特徴あるいは皮膚における一次的侵襲の部位によつて紅皮症を分類する試みがなされていることを論じた。
 次に昭和34年より昭和42年までの9年間に千葉大学医学部附属病院皮膚科で加療した52症例の臨床および組織像を検討し,2例が悪性リンパ腫の紅皮症型(3.8%),10例がいわゆる紅皮症様皮膚疾患(乾癬4例〔7.7%〕,湿疹3例〔5.8%〕,毛孔性紅色枇糠疹2例〔3.8%〕,扁平苔癬1例〔1.9%〕),18例(34.6%)が中毒アレルギー性の浮腫・小水疱型(サルワルサン3例,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン,サイクロセリン各1例,他の11例は惹起因子不明であり,そのうち1例はいわゆる術後紅皮症)を呈し,他に湿疹様皮疹が先行して旧に復さない17例とまつたく原因不明の5例があることを知つた。後2者は紅皮症の原因疾患が不明の例ともいうべく,著者の全症例の42.3%を占めた。しかし紅皮症がsui generisの疾患として論ぜらるべきでないことを例をあげて述べ,臨床的にはDegosのérythrodermies érythémato-squameuses sèchesとérythrodermies vesiculooedemateusesとのみを対立させる分類が便利であると考えた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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