原著
座瘡様皮膚アスペルギルス症
著者:
中條知孝1
辻口喜明1
和田黎吾1
所属機関:
1日本大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.673 - P.678
文献購入ページに移動
Aspergillus属は,元来土壌,植物,穀物などへの腐生菌であり,時として動物への感染もある。特に鳥類の気嚢や肺を侵し,鶏や七面鳥の育成中の雛に多発して育雛肺炎と呼ばれる。これが,時に人体に対して病原性を示して種々の臓器を侵す。1856年,Virchow1)の4例の剖検例の報告を最初として内科,耳鼻咽喉科領域での報告があいつぎ,わが国でも緒方2)(1908年)が肺アスペルギルス症を報告したのを始めとして多数の報告がある。特に最近では,抗生物質,副腎皮質ホルモン剤などの使用によつて真菌症が増加の傾向にあり,本症が重要視されるに至つた。しかし,皮膚科領域では,1925年,Hodara und Behdjet3)の報告以後10余例を算するにすぎず,まれな疾患とされている。筆者らはこのたび僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症の患者の人工弁置換術後に発生した座瘡様皮疹を経験し,その膿疱内にAspergillus fla-vusを証したので,これにAspergillosis cutisacneiformisと命名し,これを下記する。