icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科24巻8号

1970年08月発行

雑誌目次

図譜・320

第II期梅毒疹

著者: 平田光夫 ,   平田輝夫

ページ範囲:P.722 - P.723

患者 T.K.,19歳,女子,バーのホステス
初診 昭和42年10月18日

図譜・321

多発性陰嚢粉瘤

著者: 棚橋善郎

ページ範囲:P.724 - P.725

患者 42歳,男子 家族歴・既往歴 特記すべきことなし。
現病歴 初診の約1年前から陰嚢に小結節を生じ,次第に増大かつ数を増してきたため来院した。時々瘙痒感があり,つぶすと中から"おから"のようなものがでるという。しかし,特に痛みを覚えたことはない。

綜説

Lymphadenosis benigna cutis(Bäfverstedt)について(2)

著者: 上野賢一 ,   徳田安基

ページ範囲:P.729 - P.737

発生論
 本症は種々の病変ないし疾患に併発もしくは続発することが記載されている。このさい組織学的のみに認められたもの,たとえばある腫瘍ないし炎症の典型組織像の中に本症の組織像がみられたというがごときものであつては,2疾患が併発したという表現をとることは好ましくない。このような現象を西山127)は皮膚におけるリンパ濾胞様構造形成と称し(Lymphfolliculose),表皮の腫瘍性変化(Paget病・Bowen病・基底細胞腫・Epithelioma spinocellulare segregans・白色角板症・Dyskeratoma lymphadenoides・Syringocystadenoma),結合組織の変化(石灰沈着症・鞏皮症・慢性放射線皮膚炎・瘢痕),リンパ細網性の腫瘍性変化(細網症),リンパ細網性反応を伴う病変(萎縮性慢性肢端皮膚炎・慢性エリテマトーデス・多型日光疹・酒皶・昆虫刺傷),肉芽腫性病変(脂肪肉芽腫・スポロトリクム症・ゴム腫・慢性増殖性膿皮症・癩腫癩・好酸球性肉芽腫),粘膜の病変(白色角板症・扁平苔癬・肉芽腫性口唇炎・光線口唇炎・Plasmocytosis circumorificialis・物質代謝異常による口唇炎)などにおいて少なからず観察される所見であり,かかる基礎疾患なく特発性に生ずるもののみをidiopathische Lymphfolliculoseとなし,Lymphadenosis benigna cutis(以下LABCと略す)と木村氏病とをこれに属せしめている。このことは,たとえば乳嘴形成性汗腺嚢胞性汗腺腫(SCAPと略す)の組織像中に基底細胞腫の構造がみられた時に,これを両者の合併と表現するのはあまり妥当でない(一部にbasaliomatösな組織構造を示したSCAPと表現すべきである……これはこれらが分化の異なる一系統の腫瘍であることを考えればその解釈は明らかである)と同じ関係といえよう。ただしのちにふれるようにたとえば萎縮性慢性肢端皮膚炎(ACAと略す)の萎縮性局面の上に半球状に隆起した小結節(組織像がLABC)を生じたといつたような場合(同じくSCAPの腫瘍の一部が特に隆起してき,そこの組織が基底細胞腫であつたような場合)には,少なくともclinicalには両者が合併したという表現をとつても,あながちこれは否定すべきほどのこともない。これはclinical entityとhistological entityの問題にもどるであろう。
 その表現はともかくとして,LABCと他疾患との併存は次のごとくである。

原著

Porphyria cutanea tarda symptomatica—自験例とその成因とくにporphyrin代謝について

著者: 大久保達也 ,   佐野栄春

ページ範囲:P.743 - P.757

まえがき
 尿中にポルフィリン体またはその前駆物質の排泄増加をきたす疾患のうち,1次的または遺伝的にポルフイリン代謝異常をきたす群をポルフィリン症と呼び,他のある種原疾患により2次的に惹起されたポルフィリンの代謝異常により尿中排泄増加をみるものをポルフィリン尿症と呼んでいるが,後者はポルフィリン体による皮膚症状ならびに精神神経症状などは示さず,ポルフィリン体自身その原疾患の副産物と考えられる。いずれにせよ,尿屎中のポルフィリン体の消長は,その代謝率の大きい骨髄赤血球系と肝の代謝異常を反映するもので,他の組織におけるポルフィリン代謝にはほとんど関係しない。
 ポルフィリン体は生命の基本的機能である呼吸と密接な関係にあるヘモグロビン,ミオグロビン,チトクローム属,カタラーゼなどと絡がるので,あらゆる組織または種々の疾患においてその代謝異常をきたすことが予想されるが,現在のところまだその排泄遊離体を通して間接的にその異常を知るのみである。しかしながら近年生化学の大きな成果の1つとして,ポルフィリンの生合成過程が明らかになり,組織呼吸との関係から代謝疾患としてのポルフィリン症の解明は一段と重要性を増すとともに,従来の古典的な臨床的分類より脱皮して生化学的基礎的知見を基として,ポルフィリン代謝経路の障碍の場およびその閾値により,疾患の動態ならびにその成因を究明する時期に至つたと考えられる。

Post-steroid panniculitis

著者: 松岡滋美

ページ範囲:P.759 - P.765

はじめに
 1949年,コーチゾンが関節リウマチ患者に初めて使用されてから,すでに20年を経過し,副腎皮質ステロイドホルモン剤(以下ステロイドと略す)は,現代医学に不可欠の存在となつたが,反面,ステロイドの副作用も数多く報告され,iatr-ogenic diseaseとして問題になつている。
 1956年Smithら3)は,リウマチ熱および白血病患者におけるプレドニゾン投与中止後に生じたpanniculitisを初めて報告したが,1961年同様の症状を経験したSpagnuoloら4)は,これをステロイドの新たな副作用と考えて,post-steroidpanniculitls (以下P-SPと略す)と命名した。外国における本症の報告は比較的少なく,Roen-igkら2)によれば,1964年までに17例が発表されたにすぎない。本邦においては1961年以来,本症と考えられる症例が8例あり7)9)12)13)16)17)20)22),そのうち4例は皮膚科領域で報告されている7)9)16)17)

Wegener肉芽腫症の1例—本症の皮膚型は存在するか?

著者: 木村恭一 ,   三浦国輝 ,   小山高司

ページ範囲:P.767 - P.774

はじめに
 古典的結節性動脈周囲炎(以下P.Nと略)をその典型とし,皮膚をふくめて全身諸臓器に壊死性血管炎という1つの特徴ある病理組織学的変化をその共通基盤とする一連の疾患概念がある中でも,Wegener肉芽腫(以下W.Gと略)は特に気道を選択的に侵す点のみを取つても,P.Nから独立した理由がうなずけるほどに,きわめて特異な位置を占める疾患といえる。侵襲部位が気道および腎を主体とする関係上耳鼻科領域,内科領域からの報告が多いのは当然としても,本症の約半数には皮疹を伴うというReedら7)の指摘にもみるごとく,皮膚科領域にも深い関連のある境界領域疾患の1つである。わけても病変がまれならず皮膚に初発する事実は,すでに教室でも植木4)が報告したところであるが,本症の早期診断に皮膚科医の十分な知識が必要であることを示している。そして早晩起こるであろう腎変化(致命的結果につながる)をきたす以前にできうる限り適切な治療を早期に開始することは,予後不良な本症治療に当たつて重要なポイントとなるのではなかろうか。最近われわれは顔,四肢の多発性潰瘍を主訴に来院し,当初壊疽性膿皮症を疑われたが,鼻腔に特異な病変を併発してきたことからW.Gと考えられる1例を経験した。その皮膚症状,発症経過などに若干の興味ある知見を得たので以下に報告する。

銀皮症の2例(症例追加)

著者: 内山光明

ページ範囲:P.777 - P.780

はじめに
 銀製剤の長期内服によつて惹起される銀皮症は最近まれな疾患となつているが,昨年当教室で1例経験1)したのについで,本年,まつたく同様の原因と推定される汎発性の銀皮症の2例を経験したので,ここに追加報告する。

ペラグラの1例

著者: 平井義雄

ページ範囲:P.781 - P.785

はじめに
 ペラグラPellagraはイタリヤ語のpelle agra (荒れた肌)からきた語でpellagra-preventive factor (p-p factor)といわれるニコチン酸の欠乏を原因とするビタミン欠乏症である。
 ペラグラの典型例は3Dすなわち,Dermati-tis, Diarrhoe, Demenzに代表される皮膚症状,消化器症状,神経精神症状を伴うのを常とする。

皮膚科学の流れ 人と業績・8

Thomas Bateman

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.796 - P.799

(前号から続く)
 BatemanがWillanの門にはいつたことは,単に師弟の縁を結んだという程度のものではなかつた。のちにBatemanはWillanのもつとも信頼する助手となり,Willanがその死(1811)によつて残した膨大な仕事は,Batemanの影響を深くかつ広く世に与えた巨匠的な著書"皮膚病摘要(Synopsis of Cutan-eous Diseases, 1813)"によつて完成されたのである。後世において,この両人の関係はSocratesとPl-atonのそれにたとえられ,師の仕事の終わりと弟子の仕事の初めとは,渾然として区別できないといわれている。皮膚病を図で画いて示したいというのがWillanの希望であつたが,生前それは果たされず,その考えの上に立つたBatemanは初めて図版を作りあげて,世界最初の皮膚病図譜Delineations of Cuta-neous Diseases,1814-17を発刊した。
 個人的にみて,Batemanは謙遜な人柄であつた。その言葉は単純,卒直であり,その態度全体が平凡であり,素朴であつた。彼ははなはだ宗教的であり,音楽を好み,かつ立派なオルガン奏者であつた。彼のある友人が語つたところによると,"彼は1分間たりとけつして浪費したことがない,といつてもいいすぎにはなるまい。朝,階下におりてくるときも,常にペンを手にしていた。テーブルについて朝食の運ばれるまでの短い時間中にも,彼の紙と書籍とはそのそばにあつた。診療所での毎日の回診にも,時間を浪費しないように注意を払い,あらゆる近道を選んだし,また歩数の節約さえ工夫して恥としなかつた。このようなわずかずつの貯蓄は,つもりつもつて,彼に莫大な時間を得させることになつた。"

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.800 - P.801

ANNALES DE DERMATOLOGIE ET DE SYPHILIGRAPHIE 97 : 1, 1970
Le rôle de l'hérédité dans la porphyrie cutanée tardive dite acquise. A propos d'une forme familiale : H. Perrot et J. Thivolet 1
Alternaria tenuis en pathologie cutanée humaine : J. Delacrétaz, D. Grigoriu et A. Grigoriu 15

〈原著論文抄録〉

Porphyria cutanea tarda symptomatica—自験例とその成因とくにporphyrin代謝について,他

著者: 大久保達也 ,   佐野栄春

ページ範囲:P.803 - P.803

 1)顔面および頸項部にpseudosclerodermie様変化をきたした38歳男子において,排泄ポルフィリン体およびその前駆物質の生化学的検索(尿中:UP 6.2mg/day,CP 2.98mg/day,ALA 1.41mg/day,PBG(−)。屎中:CP(⧺),PP(trace)),慢性肝機能障害ならびに生活歴(大酒家で遺伝のないこと)からporphyria cutanea tarda symptomaticaと診断した1例につき,その大要を報告した。
 2)上眼瞼,頸項部の集簇せる帯黄白色丘疹,胸背部の魚鱗癬様変化,声帯の黄変,頭蓋内,海馬回における沈着像レ線陰影などの所見は,lipoid proteinosisの臨床像ときわめて酷似していた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?