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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科24巻9号

1970年09月発行

雑誌目次

図譜・322

ブレオマイシンによる特異な皮疹

著者: 中川昌次郎 ,   竹中守 ,   川合淳

ページ範囲:P.824 - P.825

ブレオマイシン(以下BLM)により著明な瘙痒と掻爬に一致した特異な紅斑を生じた3例を供覧する。
現病歴および現症 〔症例1〕46歳男性,肺癌のためBLM計45mgを投与したところ,腹部に著明な瘙痒と掻爬に一致した線状の暗紅色斑を生じ,四肢伸側および背部から腰部にかけて多発した。一部皮膚の肥厚と軽度の落屑がみられた(第1図)。〔症例2〕62歳男子,食道癌に対しBLM計75mg投与時,腰部,左上腕,前頸部,右下腹部に同様の皮疹を生じた(第2図)。〔症例3〕46歳女性,口腔の扁平苔癬に対しBLM計105mgを投与して左足背,肘,膝関節,肩に同様疹を生じさらに投与を続けたところ発熱,嘔吐などの全身症状とともに,ほぼ全身に中毒疹様の丘疹,紅斑が多発し(第3図),顔面,上肢ではそれらが融合して浮腫状の腫脹をきたした。

図譜・323

カポジー水痘様発疹成人例

著者: 富田洋 ,   菱田宏 ,   馬場えつ子

ページ範囲:P.826 - P.827

患者 32歳,男子
初診 昭和43年12月2日

綜説

皮膚疾患と血清補体価

著者: 河島敏夫 ,   横山文男 ,   嶋田孝吉

ページ範囲:P.831 - P.842

 補体研究の歴史,現在明らかにされている補体および補体成分の生物学的意義,さらに人の疾患(炎症)において,補体が果たす役割のうち明らかにされている2〜3の点をのべ,次いでわれわれの患者血清補体価および補体成分値検索のうち,特に皮膚科領域の知見を記載する。

原著

いわゆる顆粒変性を伴つた角化母斑に対するビタミンA酸の局所的応用(予報)

著者: 長島正治

ページ範囲:P.849 - P.853

はじめに
 いわゆる顆粒変性を伴つた角化母斑についてはすでにその3例を一括報告し,水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症との関係について考察した12)
 今回は,すでに報告した13歳女児例ならびにその後経験された2例の同症に対し,ビタミンA酸を局所的に応用したので,その結果を報告する。

子宮癌を伴つた皮膚筋炎の1例—教室例21例の検討を含めて

著者: 小野公義

ページ範囲:P.855 - P.860

はじめに
 皮膚筋炎に子宮癌を合併した1例を報告するとともに,岡大皮膚科教室の本症,計21例(昭和30年より43年までの14年間)を検討し,特に悪性腫瘍との関係をふりかえつてみたい。

4世代にわたり慢性円板状エリテマトーデス様皮疹を発生した一家系について

著者: 石川芳久 ,   安積輝夫 ,   小林敏夫

ページ範囲:P.861 - P.868

はじめに
 皮膚疾患において,家系内発生をみ,遺伝性が問題となつている疾患には多くのものがある。尋常性魚鱗癬,遺伝性掌蹠角化症,ダリエー病,先天性表皮形成不全症,雀卵斑,色素性乾皮症などいく多のものが数えられるが,最近著者らは,顔面,耳殻,四肢の露出部に紅斑,角化,萎縮の三主症状をそなえ,夏季軽快,冬季悪化を幼児期よりくり返している皮疹を,4世代にわたつて発症している一家系を経験した。この家系にみられた皮疹の性状,共通点などを紹介するとともに,この疾患が包含する問題点について論じてみたい。

下肢に生じたスポロトリクム症の1例

著者: 田辺義次 ,   苅谷英郎

ページ範囲:P.869 - P.875

はじめに
 スポロトリクム症は近年増加の傾向にあり,関東地方を中心に各地から多数の報告に接するが,その大部分は顔面または上肢に生じたものであり,下肢を侵した症例は非常にまれである。われわれは今回,右足背および右下腿に生じた皮膚リンパ管型の本症の1例を経験したので報告する。

色素血管母斑症(高野—Krüger—土肥型)の1例

著者: 原田敬之

ページ範囲:P.877 - P.881

はじめに
 色素血管母斑症Phacomatosis pigmentova—scularisの高野—Krüger—土肥型は,1921年高野1)がほとんど全身にわたり単純性血管腫および色素性母斑を併発せる1例と題して,その第1例を報告して以来,本邦での記載の明らかな症例は,自験例も含めて34例1〜33)報告されている(第1表)。
 本病型の臨床像は,蒙古人斑様の青色斑と単純性血管腫の合併であり,一部ではそれぞれが単独で存在し,また一部では両者が混在するとされている。

Rothman-Makai Syndromeの経験

著者: 西山千秋

ページ範囲:P.883 - P.886

はじめに
 Makai1)は1928年,1歳半から8歳までの幼少児に,全身症状や圧痛を欠き,躯幹四肢に生じた皮下硬結の4観察例と1920年以後に発表された同様の皮下硬結をきたす疾患例をまとめてLipo-granulomatosis subcutaneaと命名した。しかるに,実はRothman2)がすでに1894年,小児にみられた,全身症状が軽微で皮下に硬結を生じた症例をÜber Entzündung und Atrophiedes subcutanen Fettgewebsと題して報告していた。これらに対してBaumgartnerおよびRiva3)は1945年,Pfeiffer-Weber-Christian syndromeと診断するには根拠の乏しい,病因不明の皮下に生ずる特発性炎症性変化で,ことにそれが可動性であり,熱発その他の全身症状を伴わない場合には,Rothman-Makai syndromeを考慮すべきであると報告して以来,にわかにこの名称が広まったようである。今回,躯幹に対称的に発生したほぼ典型的と思われる本症の1例を経験したので,以下に記載する。

印象記

大きく一歩前進—日本皮膚科学会第69回総会

著者: 川村太郎

ページ範囲:P.893 - P.896

連帯感を強める
 日本皮膚科学会の社団法人の定例総会と,これと同時期に開かれる学術大会との両者をわれわれは漠然と総会と呼んでいるが,本誌は学術雑誌であるから,総会という意味は毎年1回開催される学術大会と解してよかろう。本年は熊本大学教授中村家政教授会頭,熊本市民会館を使用,設備万端申し分なかつた。
 明年の日本医学会から割り当て予定の会場は,これに比べてかなり見劣りのすることをこの機会に記し,あらかじめご了承をお願いしたい。学術大会の意義についても人それぞれの考え方があろうが,スライドをみながら話をきき,質疑応答し,展示をみながら意見を交わし,廊下でだべつたり,懇親会でアルコールの入つたところでうちとけるというような機会が,同じ専門の医師の間にあるということの意義は大きいと思う。大会の途中で会頭にうかがつたらすでに参会者が800名をかなりこえていたようだつたから,全ての人と親しく話すということはもちろんできるはずもないが,新しい知己を得たり,古いつき合いを深めるということの効果は大きかつたと思う。人間はとかく井の中の蛙になりやすい。一口に皮膚科医といつても大学人,勤務医,開業医その他それぞ異なる環境に住み,また年齢や考え方も異なつているが,共通の興味である皮膚科学を通じてややもすれば閉じこもりがちな小さな城廓から抜けでるということが,人間としても大切であろうし,臨床医学の発展のためにも欠くことのできないものではなかろうか。

皮膚科学の流れ 人と業績・9

Samuel Plumbe

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.898 - P.902

 Batemanが1821年に死去したのち,イギリスの皮膚科学界は,史上もつとも沈滞した時期をしばらく経過することになつた。それは,この学問において独創的業績をあげうる人物にきわめて乏しかつたからである。19世紀後半に至ると,ErasmusWilson, Tilbury Fox, JonathanHutchinsonなど,後世のわれわれ日本人にさえ名の聞こえている大家を輩出し,イギリス学派を世界に重からしめたのであるが,19世紀前半はまことに不毛の時代であつた。この中にあつてイギリス皮膚科学界のために,ひとり気を吐いたのはSamuel Plumbeであつた。もつとも,Plumbeを上記の諸大家に比較すると,業績において必ずしもこれを抜いているわけではない。しかし,国内に同僚もなく,単独でイギリス皮膚科学を推進せしめた功績は,特筆に価すると思われる。彼の偉大なのはこの点ばかりではなく,皮膚科学において近代的発展の方向を明瞭に打ち出したことである。彼以前のイギリス皮膚科学は,まつたく臨床の立場からのみ皮膚病を観察する学問であり,純粋の臨床皮膚科学と称すべきものであつた。しかるにPlumbeは,皮膚病の病理を理解するために,初めて解剖学と生理学とを皮膚科学の中に導入したのであつた。
 Plumbeは,19世紀の前半において知らぬ人のないほど著名であつたにかかわらず,まことに奇妙なことには,その若い時代の記録はまつたく残つていないのである。どこの学校で医学の修学をおえ,どこで皮膚科学の修練を受けたかさえわかつていない。しかし彼が皮膚科学者として活動し,その名声を専門家の間に高からしめた著書を出版したことは動かす余地のない事実である。その著"Diseases of the Skin"が,当時において4版も重ねたことをみると,これがいかに宣伝され,普及したかわかる。実際にその書の第4版(1837)をみると,記述は簡潔であり,しかも実際的であり,それにもまして独創的であることがわかる。

外国文献

外国文献—専門誌から/外国文献—一般誌から

ページ範囲:P.903 - P.907

ARCHIVES OF DERMATOLOGY Vol. 101, No. 4, April, 1970
Psoriasis, Methotrexate, and Cirrhosis : S. A. Muller 379
Is It Safe to Treat Psoriasis with Methotrexate? : J. J. Voorhees 380

〈原著論文抄録〉

いわゆる顆粒変性を伴つた角化母斑に対するビタミンA酸の局所的応用(予報),他

著者: 長島正治

ページ範囲:P.909 - P.909

1)いわゆる顆粒変性を伴つた角化母斑3例にビタミンA酸(retinoic acid)を局所的に試用,同剤の角化性皮膚病変に対する予備実験とした。
2)0.1%ビタミンA酸吸水軟膏が,臨床的また組織学的に強力な角質溶解作用を示すことを知つた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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