icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻10号

1971年10月発行

雑誌目次

図譜・343

多数の腫瘤形成をみたRecklinghausen母斑症

著者: 金田孝道 ,   高木章好 ,   水元俊裕

ページ範囲:P.942 - P.943

患者 71歳,男 初診 昭和41年6月3日 主訴 ほぼ全身の大小種々の腫瘤形成。
既往歴および家族歴 特記することはない。

図譜・344

広範囲の皮疹を伴つた硬化性萎縮性苔癬

著者: 田上八朗

ページ範囲:P.944 - P.945

患者 88歳,男子,瓦職人
現病歴 老人性難聴があるため,家族より得た病歴によると,約3年前より,腹部の皮膚が帯状に硬化し,次第に締まつてきた。約1カ月前より背部,上肢を中心に激しい瘙痒が生じ,患者が,背中の皮膚を掻き破るようになつたため,来院した。

綜説

尋常性痤瘡の治療

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.949 - P.955

 尋常性痤瘡(ニキビ)は,周知のように面皰,丘疹,膿疱,嚢腫,小結節などが通常種々の程度に入り混つている慢性の炎症性疾患である。丘疹が主であるか,膿疱が主であるかなどによつて,またおもな発生部位によつても,臨床的にいくつかの型にわけられている1〜3)。本症の診断は容易であるが,治療には実際上難渋することが多い。
 本症の原因および誘発ないし悪化因子としては,古くから多種多様のものがあげられている(表1)。座瘡ないし面皰の形成機序については,従来から多くの説が唱えられているが,最近は角化亢進と皮脂排出の増加を一次的な因子とみなす人が多い。脂腺排出管内および毛漏斗部における角質増殖,ならびに脂腺機能亢進の2つは,座瘡発症基盤を形成しており,これに影響を与えるものは主としてホルモン,とくにandrogenであり,その他に遺伝的因子,物質代謝,ビタミン,肝機能,胃腸障害など各種の因子が関与している。本症患者では一般に皮脂排出は増大しており,かつ症状が重症になるにしたがつて皮脂量は増加するといわれる4)(図1)。また現在痤瘡を有しないが過去に有したことのあるものは,過去にも現在にも痤瘡を有しないものよりも,どの年齢層を比較しても,常に皮脂排出率は高い4)(図2)。しかし皮脂排出の過剰すなわち脂漏では必ずしも痤瘡を生じるわけではなく,それには角質増殖が関係している。この角質増殖過程は,内的因子の他,種々の機械的,化学的刺激などの外的因子によつてもよく反応する。角質増殖と脂腺機能亢進の両病因論的因子は,必ずしも並行関係になくてもよく,普遍的なacnegenesisは,両者の相対的関係においてこれを理解すべきものと考える。

原著

Intestinal Behçet Syndromeについて

著者: 福井清美 ,   金子史男 ,   村戸克郎

ページ範囲:P.957 - P.965

 Behçet病(Behçet,19371,2))は粘膜・皮膚・眼の3大病変のほか関節,消化管系,血管系,中枢神経系など全身的に多種多彩な炎症々状を呈することが諸家によつて報告されている。塚田ら3)の総説によると粘膜・皮膚・眼以外の諸臓器における症状の発生頻度は報告者により若干の差はあるが,さほどまれなものではない(表1)。
 これらの病変のうち生命の予後に重大な影響を与えるものは中枢神経系,血管系ならびに消化管系の病変であり,それぞれneuro-Behçet syndrome4〜6),cardio-Behçet7),vasculo-Behçet8),あるいはangio-Behçet syndrome9,10),intestinal Behçet syndrome11)と呼ばれている。

実験的接触アレルギー反応における表皮肥厚の意義

著者: 浜口次生 ,   河村幸郎 ,   鍋島勝也

ページ範囲:P.967 - P.972

 標題は厳密に考えると必ずしも単一内容の研究を意味しないが,その点で問題の扱い方に混乱のみられることもあるので,あらかじめ以下の3項目を念頭において考察したいと思う。
1)表皮肥厚部位に加える感作の効果

Sézary症候群の1例

著者: 田代正昭 ,   桑原淑子

ページ範囲:P.973 - P.980

 1938年Sézary & Bouvrain1)は"Erythrodermie avec présence de cellules monstrueses dans le derme et le sang circulant"と題し,58歳,女性で,全身の瘙痒,紅皮症様皮膚症状とともに表在性リンパ節,肝,脾の腫脹を伴い,その末梢血に白血球数増多と異型大型単核細胞の出現を認め,さらに真皮に円形ないし多角形細胞の浸潤を示す1例を報告し,さらに同様の症例2例2,3)を追加してその独立性を主張した。
 その後かかる病変を有する疾患に対して,Sézary's reticulosis,Sézary's syndrome,malignant reticulemic erythroderma,malignantleukemic reticuloendotheliosis,erythrodermische Hautreticuloseなどの種々の名称で報告され,現在まで欧米ではすでに約30数例に及ぶが,本邦では1965年建石ら4),斎藤ら5)の報告を初めとして,笹岡ら6)(1968),正木ら7)(1969),鈴木ら8)(1970),重松ら9)(1970),紫芝ら10)(1970),川岸ら11)(1970),佐藤ら12)(1971)の報告をみるに過ぎない。すなわち本邦例は現在まで9例で,自験例をあわせて10例に達した。Sézaryらは本症候群を菌状息肉症の近縁疾患と考えながらも,特長的な主要症状よりその独立性を主張し,それを支持するものも多いが,一方,細網細胞性リンパ腫,菌状息肉症,Hodgkin氏病,lipolnelanicreticulosis,リンパ性白血病,単球白血病などの一亜型あるいは前駆症と考えるものもありまだ定説はない。

慢性侵蝕性膿瘍性膿皮症の経過中に扁平上皮ガンを併発した1例

著者: 森田吉和 ,   高須俊治 ,   風間善雄

ページ範囲:P.981 - P.985

 最近,慢性侵蝕性膿瘍性膿皮症の経過中に,棘細胞ガンを併発した1例を経験したので報告する。

膀胱ガンと乳ガンの組合わせより成る男子重複ガンの1例

著者: 寺田稔 ,   松本鐐一

ページ範囲:P.987 - P.994

 最近われわれは膀胱ガンと乳ガンいうきわめて稀有なる組合わせより成る重複ガンの1例を経験した。
 しかもそれは男子例で,男子乳ガンのみをとつてみても比較的珍らしいものであり,以下に報告する。なお,重複ガンに関しては,1907年より1961年までの三橋,並木の統計6)(372例)があるが,われわれは1962年より1968年までに147例を集めたので,それと前者との比較を行ない,さらに男性乳ガンについても,2,3の統計的観察を行つてみたい。

薬剤

皮膚腫瘍に対する5FU軟膏の局所療法

著者: 石原和之

ページ範囲:P.995 - P.1002

 従来より,皮膚腫瘍に対し,2,3の局所療法が論ぜられてきたが,ブレオマイシンさらに5-Fiuorouracil (5FUと略)の局所的化学療法が相ついで報告されると,その効果が注目されてきた。
 すなわち,三木によれば,尖圭コンジローマ,青年性扁平疣贅,ボーエン病,ページェット病,基底細胞ガンなどに,5%5FU軟膏を使用し,きわめて優秀な成績を報告している。

皮膚科学の流れ 人と業績・17

Erasmus Wilson

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.1004 - P.1006

("扁平苔癬"のつづき)
 構成上,扁平苔癬の丘疹は,毛嚢の周囲に滲出を伴う充血であつて,角質性の透明な薄い表皮の層によつておおわれている。そして毛嚢の開口部とその円錐状の表皮の栓とは角質板の中心に認められる。丘疹の角質性のおおいは決して鱗屑ではない。それは丘疹に沿つて起伏し,剥離したり脱落したりすることはない。丘疹が治癒の経過中消退するとき,その角質性のおおいは,なお残留し,剥脱することなくて,しだいに消失する。この疾患の一形においては,各中心孔の真上には,高まることなくて,微細な角質の小板が存し,皮膚の表面は光る金属の小片あるいは雲母の輝く細粒子をはめこんだかのように見える。ただこの微小片は表皮の他の部分とまつたく同質のものである。このことは,くどくいう必要もあるまいが,ただ孤立性の発疹,個別の丘疹にだけ当てはまるのである。発疹の融合形においては,新たな要素が入りこんでくる。すなわち,広がつた滲出,剥脱,落屑が起こり,既述した丘疹の角質性のおおいは,表皮の他の部分と一緒に剥脱する。この剥脱が生ずると,角質板の下面と毛嚢の表皮性の内張りとは連続していることが認められて興味深い。しかし,この時期に達しても,角質板は正しい意味での"鱗屑"ではなく,栄養の一時的停止の結果,表皮の他部と同様に離脱した,脱ぎ捨てられた表皮の一部にすぎない。
 扁平苔癬の症状は主要な2形を示す,孤立形と集合形とである。一般の始まりは孤立性の発疹としてであるが,体のある一部位に孤立した丘疹としてあるいは諸所に散在して現われる。そこここでは,少数の丘疹が相い接して発疹し,あるときには同時に,さらに多くは引続いて出現する。そのとき丘疹の間の皮膚は発赤して浸潤し,その結果生ずる局面は,炎症を生じて浸潤を示す基部によつてつながれた丘疹の集団から成るのである。数多くのかかる局面には,孤立性の発疹があるいは多く,あるいは少なく混在する。局面の大きさは直径1/2インチから数インチに2)たり,ときには四肢の一つをり広くおおうこともある。この集合形発疹において丘疹間の充血と浸潤とはもつとも重要な考慮すべき点である。すなわち,浸潤した皮膚はしばしば丘疹の頂の高さまで隆起するので,丘疹はいわば埋没したようになり,これが広汎な落屑と混じ合つて,診断を確かにするためには,孤立性の丘疹を局面の周辺や体の他部に探さなければならなくなる。しかし,しさいに観察すれば,各個の丘疹の形は局面の中ににいてさえ発見できる。そして,とくにすでに述べたその構成の特異性,すなわち落屑する表皮と毛嚢上皮との連続性を観察しうるのである。まれならず,融合性局面はその形が環状で,その大きさが小さいので,尋常性乾癬(lepra vulgaris)と誤りやすい。とくにこの種の局面は周辺に増大し,中央のくぼむ傾向があるのでそうである。しかし本症においては乾癬の鱗屑の存することは決してなく,また既往歴,好発部位,個疹の存在は診断を確実にする。他面,融合性の広い局面は慢性湿疹のあるものに酷似するので皮膚病を見つけていない者が誤つたとしても,これはいたしかたがあるまい。最近,本症に悩んでいるひとりの患者をみたが,経験豊かなある皮膚科医がこの患者の皮膚病に下した診断名はlichen agrius pruriginosus(注:このラテン語の直訳は瘙痒性重症苔癬。重症の慢性湿疹を古くこの名で呼んでいた)であつた。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.1007 - P.1008

THE JOURNAL OFINVESTIGATIVE DERMATOLOGY56 : 1, 1971
Hair Neogenesis : S. A. Muller 1
Langerhans Cells in Epidermoid Metaplasia : Yong-Chuan Wong and R.C. Buck 10

〈原著論文抄録〉

Intestinal Behcet Syndromeについて,他

著者: 福井清美 ,   金子史男 ,   村戸克郎

ページ範囲:P.1010 - P.1010

 47歳,女子の眼病変をともなわないBehcet病において,8年にわたる経過の後,回腸末端部から上行結腸にわたつて大小多数の潰瘍ならびに腫瘤を形成し,大量下血を反復して不幸な転帰をとつた症例を報告した。
 切除腸管ならびに外陰潰瘍部の病理組織学的検索は共通所見を示し,血管壁の硝子様変性,肥厚,fibrin沈着,血栓形成を基調とし,これに血管周囲性リンパ球および多核白血球の稠密な細胞浸潤が認められた。6種のbacterial antigen皮内反応においては正常人とBehcet病患者の間に有意の差を見いだした。Behcet病に共通する陽性反応はstreptococcus viridansおよびhe-molyticusであり,pneumococusでは不全型に陰性であつた。以上の所見からBehget病の多彩な症状発現の基調をなすものはアレルギー性血管病変であろうと推測した。臨床検査所見でもγA,γM,γGの増加が認められた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?