icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻11号

1971年11月発行

雑誌目次

図譜・345

乳房Paget病

著者: 富沢尊儀 ,   滝沢清宏 ,   安西喬

ページ範囲:P.1036 - P.1037

症例 80歳,女
現病歴 約5年前より右乳頭に発赤を生じ,次第に湿潤,徐々に拡大,やがて乳頭から乳暈にかけて潮紅糜爛を呈するようになつた。

原著

皮膚刺激反応に影響する諸因子

著者: 石原勝 ,   吉井田美子

ページ範囲:P.1043 - P.1052

職業性皮膚疾患と皮膚刺激反応
 接触皮膚炎は発症機序の面から刺激性,アレルギー性接触皮膚炎に2大別され,もしもphotocontact derm-atitisも広義の接触皮膚炎と見なすならば,光中毒,光アレルギー反応についても考慮せねばならない。皮膚科領域でしばしば問題にされ,あるいは研究対象になつているのは,これらのうちとくにアレルギー性あるいは光アレルギー性接触皮膚炎であるが,刺激性接触皮膚炎も実際にはかなりの症例数があることが推測される。
 皮膚刺激反応がとくに問題になるのは職業性皮膚疾患の場合である。すなわち,Weinberger1)(1950),Birmingham2)(1957)は職業性皮膚疾患の80%が1次刺激物質により発症していると報じ,Klauder4)(1962)も27.5%が刺激反応,16.2%がアレルギー反応という統計数値を示した。主婦湿疹も広義の職業性皮膚疾患の範疇に入ると考えられるが,その発症機序について,Skog5)(1959)は63%が皮膚刺激反応,37%が皮膚アレルギー反応であつたと述べ,Agrup6)(1968)も60%が刺激反応によるとした。著者7)もいわゆる進行性指掌角皮症(KTPP)型の主婦湿疹の発症・増悪に,水,石鹸,洗剤,漂白剤などの洗浄剤や機械的刺激による皮膚脂質の除去,角質層の障害を重視,KTPPは1種の刺激性皮膚炎であると考えている。ただしKTPP以外の手の皮膚炎には,ニッケル,クロームなどの金属,ゴム,フォルマリン,その他のアレルギー反応で発症している例も少なくない8)

スポロトリクム症の局所温熱療法

著者: 渡辺昌平 ,   森田吉和 ,   須藤直文 ,   高須俊治

ページ範囲:P.1053 - P.1060

 従来,スポロトリクム症は関西地方ではまれとされていたが,昭和41年本院開院以来,5年余りの間に8例の本症を経験した。これらの症例の治療に当たつては,主としてMackinnonらの提唱する局所温熱療法を試みた。すなわち,この中の7例に本療法を施行し,6例に顕著な効果を認め得た。Mackinnonらの原法は局所温湿布療法であるが,自験症例のうちの2例についてはカイロの貼布,または超短波による局所温熱療法をも試みて好結果を得たので,ここに取りまとめて報告する。

棘細胞ガン死亡42例

著者: 石原和之 ,   緒方孝俊 ,   柳田英夫

ページ範囲:P.1061 - P.1067

 国立がんセンターにおいて,過去8年弱に経験した原発性皮膚悪性腫瘍は,348例でその内訳は棘細胞ガン201例,基底細胞ガン58例,ページェット病19例,ボーエン病19例,悪性黒色腫32例,皮膚線維肉腫8例,カポジー肉腫1例,悪性リンパ腫18例,汗線ガン3例である。この内,棘細胞ガン201例について,おもに死亡せるものについて記載する。死亡者数は58例(男43,女15)で,その内,腫瘍死は42例(男30,女12)である。この42例について,性,年齢,誘因,発生部位,既治療,当院での治療,経過などについて記載し,併わせて全症例について,比較検討し,その死因の一端をうかがい,治療に役立てば幸いである。
 棘細胞ガンの全症例は201例(男145例,女56例)で,その中,重複ガンは7例(予宮ガン,胃ガン各2例,胃ガンと肝ガンの3重複ガン1例,甲状腺ガン1例,基底細胞ガンと喉頭ガンの3重複ガン1例)である。重複の因果関係は論ずるところではないが,放射線照射部位において,基底細胞ガン,棘細胞ガンおよび喉頭ガンの発生したことはあるいは一因かもしれない。

多発性Bowen病の1例—当教室における過去11年間のBowen病の集計を含めて

著者: 北村啓次郎 ,   真海文雄 ,   古明地廸子

ページ範囲:P.1069 - P.1076

 Bowen病を表皮内ガンとする概念が確立されてすでに久しいが,その原因についてはなお漠として明らかでない。
 最近,著者らは砒素摂取の既往のある多発性Bowen病の1例を経験したので,これを報告するとともに,この機会に,慶大皮膚科における過去11年間のBowen病を集計,統計的観察を行ないたい。

接触感作による動物実験的表皮湿疹反応に対する市販各種コルチコステロイド外用剤の影響について

著者: 清水正之

ページ範囲:P.1077 - P.1082

 モルモットにおける単純化学物質による接触性皮膚炎が比較的人のそれに類似することから,アレルギー性皮膚反応の発生病理解明のために多く使用されてきた。一方,皮膚科領域においては接触性皮膚炎をはじめとする急性炎症のみならず,尋常性乾癬などの慢性皮膚疾患にコルチコステロイドホルモンの外用が広く利用されてきている。コルチコステロイドの皮膚におよぼす作用について,Kligman1)は血管収縮作用,表皮のturnoverの著明な抑制,Lysosomeの安定化などをあげているが,なお接触性皮膚炎などの急性炎症に対する作用機序は不明な点が少なくない。さらに臨床的に各種のコルチコステロイド剤の効果を,同程度の炎症の場で比較検討することは慢性病巣を除いては困難である。
 現在,実験的2-4-dinitrochlorbenzene (DNCB)接触感作によるモルモット表皮湿疹反応に対して,各種市販コルチコステロイド剤を使用し,その効果を組織学的に検討しているので,その結果についてのべる。

Juvenile melanomaの3例

著者: 加藤友衛 ,   田辺義次

ページ範囲:P.1083 - P.1090

 いわゆる若年性黒色腫juvenile melanoma(以下JM)は,Spitz1)(1948)以前には小児のmalignant melanoma (以下MM)と考えられていた。本症の名称はSpitzの命名せるJMが広く用いられてはいるが,論議のあるところで,したがつて,数多くの同義語がある。これを列挙すると,Naevus prominens et pigmentosus(Du Bois2)1934),spindle cell and epithelioid cell nevus(Helwig3)1954),pseudomélanome (Grupper et Tubiana4) 1955),benign juvenile melanoma(Kopf and Andrade5) 1954),Mc-Whorter and Woolner6)1954, Steigleder u. Wellmer7) 1956, Lever8)1967, Montgomery9) 1967,石川10)1969),tumeur de Spitz(Du- perrat et Mascaro11) 1961),Spindelzellen-, Epitheloidzellen-oder gemischter Spindel Epitheloid-zellennävus(Gartmann12) 1962), Naevus Spitz(Cottini13) 1963),nevus with large cells(Duverne et Prunieras14) 1965), Blasenzellnaevus(Schauer u.Vogel15) 1967), juvenile pseudomelanoma(小嶋ら16) 1968), mélanome de Spitz(Degos17) 1964, Fischer18) 1968, Hadida et al.19) 1969),Sourreil et al.20) 1969),melanocytic nevus, Spitz nevus(Mc-Govern and Brown21)1969)など枚挙にいとまないが,アメリカではbenign juvenile mela-noma,ドイツではsog juveniles Melanom,フランスではmélanome de Spitzないしtu-meur de Spitzが多く用いられているようである。名称に関する問題点は,成人例がかなりあるのに"juvenile"が,また悪性ではないのに"melanoma"が用いられていることにある。Degos17)は,"mélanome"という語は黒い腫瘍という意味でもなければ,悪性という意味でもないからmélanome de Spitzがよいとしているが,"melanoma"はAmerican Medical Associa-tion's Standard Nomenclatureによれば,malignant lesionに対する公式の用語であり,すなわちMMを意味する(Kopt and Andra-de5))。したがつて,histogenesisがより明確になるまでは,暫定的にSpitz nevusあるいはtu-meur de Spitzとしておいた方が妥当かもしれない(McGovern and Brown21))。
 近年,本邦においても本症の報告例は増加してきており,現在までに57例を数えるに至つた。著者らは,最近,本症の3例を経験したので若干の文献的考察とともに報告する。

Dermatitis gangraenosa infantum

著者: 渡辺進 ,   渡辺悟

ページ範囲:P.1091 - P.1093

 水痘に罹患後,胸部,右上腕,背部に発赤,腫脹とともに発熱などの重篤な全身症状を生じ,次第に皮疹は壊死に陥つたが,種々の治療により全身状態は収まり,壊死部には植皮を行なつて無事軽快した3歳女児の1例を報告する。

研究メモ

特異な爪の変型

著者: 籏野倫

ページ範囲:P.1068 - P.1068

 爪の病気は先天的な奇形,局所障害に基因するもの,あるいは皮膚疾患の随伴症状として,また全身疾患の続発症状としてくるものなどがあつてその原因は種々であるばかりでなく,その病変もまた多種多様である。しかし,必ずしも同じ原因によつて常に同じ病変を生ずるとは限らず,また同じ病変と考えられた場合であつてもその原因は異なることがしばしばである。しかもその解剖学的な特殊性から容易に検査をし難い場合があつて疑診は下し得ても適格な診断・治療を施し得ぬ場合が少なくない。先天的なものはしばらくおくとして,後天的な爪の疾患は爪甲に器械的,化学的ないし寄生性原因を有するもの以外は主として爪母の病変に起因するもので,その爪母の病変が全身的および局所的要因にもとづくことを考えれば,爪疾患には一層注意を払つてよいと思う。
 私は最近,極くまれな爪の変形を経験したので簡単に紹介したい。

紅斑性天疱瘡と重症筋無力症と胸腺と

著者: 籏野倫

ページ範囲:P.1094 - P.1094

 重症筋無力症と胸腺との関係は古くWeigert (1901)が本症患者の剖検により胸腺腫を発見し,Blalock(1939)がその剔出により著明な症状の改善を認めて以来注目されており,最近本邦においても本症に対する治療法として胸腺別出術は漸く一般化した感がある。一方胸腺の別除後に他の自己免疫的な疾患群たとえば紅斑性天疱瘡,エリテマトーデスの出現することがしられている。
 胸腺はなんらかの働きを有する重要な臓器であるらしいことは古くからわかつていたが,免疫機構における役割が注目されるようになつたのはMiller (1961)のマウスの新生仔胸腺別出術にはじまるようである。あたかも免疫学的寛容の概念やclo-ne選択説の展開に伴なつて胸腺は中枢性リンパ組織として免疫機構の調節にあずかる重要臓器の一つとして重視され,就中自己免疫疾患において異常所見ならびにそれの別出による疾病の改善が認められるようになつて更に胸腺の役割が注目されるようになつた。

薬剤

Betamethasone 17-Valerate Creamの皮膚吸収について

著者: 竹田勇士 ,   松沢徹

ページ範囲:P.1095 - P.1097

 正常皮膚にTritium標識Betamethasone 17-vale-rate含有クリームをO. D. T. 法(密封包帯法)にて外用した後の皮膚吸収をdirect mounting methodによるautoradiographyを用いて検索したので報告する。

皮膚科学の流れ 人と業績・18

Tilbury Fox

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.1098 - P.1100

 William Tilbury Foxは,有名な医師の息子として,南部インゲランドにおいて1836年に生まれた。大学カレッジで,予備教育を受けたのち,ロンドン大学に入学し,1857年に外科は優等,内科は金メダルを得て卒業し,M.B.の資格を得た。その職歴の始めには,彼はランベス(Lambeth)の総合産科病院に宿直医として勤務し,産科に力をいれたので,大腿静脈炎(phlegmasia albadolens)と産褥熱とに関して1篇ずつの重要な論文を書いた。しかし,まもなく毛髪と皮膚との疾患に真菌学的興味を抱くようになり,それ以後は皮膚科学の研究に専念した。
 エラズマス・ウィルソンとともに,フォックスは独立した専門科としての皮膚科学の草分けであり,イギリスにおいてこの専門科を医学の有力な分野として確立するのには彼に負うところが僅少ではなかつた。

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.1103 - P.1105

 本年5月よりArchives of Dermatologyの掲載全論文のSumrnaryを転載しております。
 外国文献同様ご活用下さい。
 The Original source of publication:Reprinted from the ARCHIVES OF DERMATOLOGY;Vol. 103, Number 6;pages 575, 581, 599, 606, 615, 623, 628, 632, 640, 649, 654, 661 and 670. June 1971. Copyright C 1971, AMA.

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.1106 - P.1107

DER HAUTARZT 21 : 10, 1970
Neues aus der amerikanischen Dermatologie, I. Teil : A. Hollander 438
Die Behandlung der Xanthome bei Hypercholesterindmie : N. Zollner und G. Wolfram 443

〈原著論文抄録〉

皮膚刺激反応に影響する諸因子,他

著者: 石原勝 ,   吉井田美子

ページ範囲:P.1109 - P.1109

 皮膚刺激反応は臨床上,職業性皮膚疾患,主婦湿疹,外用による接触皮膚炎,パッチテストなどで問題になり,弱刺激物質の場合は連用による蓄積効果について検討する必要がある。刺激反応は物質や皮膚の諸性状,接触条件などの諸要因により左右される可能性があり,本論文ではこれまでの代表的な報告例を総括した。さらに著者が2年間にわたり施行した非イオン活性剤,プロピレングリコール,柑橘系香料,エタノールのクロースト・パッチテストの成績を整理し,年齢,性,湿疹・非湿疹,室温,湿度,貼付部位などの背景の解析を行なつた結果,活性剤やプロピリングリコールは,低湿時に,香料は高温・高湿時に,またプロピレングリコールは湿疹患者に刺激反応を生じやすいことなどを認めた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?