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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻13号

1971年12月発行

雑誌目次

特集 小児の皮膚疾患

小児皮膚の特異性

著者: 肥田野信

ページ範囲:P.1247 - P.1252

 小児の皮膚が成人や老人とちがつた性質をもつことは誰でも漠然と理解していることである。しかし小児といつても年齢によつて非常な差異を示すし,小児の皮膚が成人とどうちがうかを正面からとりあげた研究もあまりない。
 一方小児には種々の特有な皮膚疾患があり,また全年齢層にみられる疾患にしても特に小児に多いものがあつてその臨床症状がまた小児期においていくつかの特徴を有することも確かである。小児における種々の全身的機能ことに免疫学的条件がことに重視されねばならないが,ここでは年齢的発達という立場からみた研究をいくつか取りあげ,主として小児における皮膚の機能について述べてみたい。

発疹のみかたと病型の考え方

著者: 宮沢偵二

ページ範囲:P.1253 - P.1257

 筆者に与えられたテーマは発疹のみかたと病型の考え方である。発疹をみて診断をつける,このことは,皮膚病診断の最も基礎的なことがらであり,きわめて重要なことである。皮膚病の診断にあたつて,もう一つ重要なことは疾患の有する基本的皮疹(個疹)を十分把握しておくことである。発疹の性状をみきわめるという出発から始まつて,その発疹はどの疾患にあてはまるかということに行きつく訳であるが,終着駅を知らずに出発してしまつては目的を達することはできない。発疹をみた場合,先ずどのような病気を頭に浮べるべきかということが診断にさいしてのKernpu-nktである。診断にさいして皮疹の性状を知ること以外に,参考となることは疾患のもつ側面的な特徴,たとえば小児皮膚疾患ならば,小児皮膚疾患の発生頻度,年齢的特長,季節的頻度等である。筆者は本論に入る前に,まず,当科外来患者から得られた小児皮膚疾患の2,3の統計的観察を資料とし小児皮膚疾患の側面的様相をのべる。

小児の湿疹(定義,病型,分類)

著者: 筧秀夫

ページ範囲:P.1259 - P.1264

 筆者に与えられた命題,小児湿疹の定義,病型,分類については,内外多数の論述が繰り返されており,ここに更に浅学非才の記述を加えて煩を増すことに,いささか躊躇を感じているが,日常診療にたずさわりながら,また文献を読みながら,常々考えていることを,あまり先賢の説にこだわらずに,述べさせていただいて責を免がれたいと思う。
 もともと小児湿疹を,概念的に成人の湿疹と切り離しているのは,皮疹の形態,経過,治療面などでの特殊性が認められるからであり,それは大部分,小児の皮膚の特異な生理的条件に基づくものと考えて差支えないであろう。従つて小児湿疹を理解し,これを定義づけるためには,小児の皮膚生理,あるいは病態生理に準拠することが最も必要であり,妥当な方法であろうと考える訳である。しかしながら,皮膚生理の研究は未だにこの要求を充足させる程には発展を見ていないようで,筆者が以下に試みる定義づけも,従つて充分な論拠を持つとはいい難いのが甚だ残念である。

小児脂漏性湿疹

著者: 帷子康雄 ,   木村瑞雄

ページ範囲:P.1265 - P.1271

 脂漏性湿疹Eczema seborrhoicumは1887年Unnaにより尋常性湿疹Eczema vulgareとは異る疾患として記載されたものであり,以来,その名称,帰属,病因,病型などに関して諸説が輩出し,未だ一定の帰結が得られたとはいい難い。
 従つて,成因の明らかにされないうちはMor-bus Unnaの名称を妥当とする考え(Gans)や,脂漏必ずしもHyperseborrhoeでなく,むしろ質的異常である点からdysseborrhoische Der-matitsの名称の提唱などが行なわれている1)

アトピー性皮膚炎とその病態生理

著者: 廻神輝家

ページ範囲:P.1273 - P.1279

 アトピー性皮膚炎(A.D.)とはアトピー素因をもつ個体にアトピー性アレルギー機序をもつて起る炎症性皮膚疾患である。しかし,一方A.D.患者にみられるアトピー皮膚という特異的な素因をもつ皮膚に外的刺激が加わり,アレルギー機序によらないで皮膚病変が発生することもある。近年病理解明にその知見が豊富となつた観があるも完全に解明せられた訳ではない。鱗屑,花粉,絹,豚毛等によるアレルギー説,食餌性抗原ならびに吸入性抗原の陽性反応出現率の高値を示す事実,更には苔癬化傾向を示す点,これを要するに抗原抗体反応としての膨疹,これと反対に苔癬化との発病機序の問題は釈然としないものがある。
 A.D.が食餌性,吸入性アレルゲンの皮内注射により高率に膨疹反応を示す傾向がある。これは即時型の反応性を示すものであり,この場合膨疹形成に留り,苔癬化しないということはA.D.の皮膚所見と矛盾する。また陽性反応を呈する食餌を与えても皮膚炎を惹起できなかつた事実は臨床症状と皮内反応とは一致せぬようである。我々1)2)はかつてA.D.の増悪因子を問診で調査を行い次の回答を得た。季節的には冬季増悪を訴えるものが多く,次いで夏,春,秋の順であり,更に食餌の影響を訴えるもの,次いで日光,汗,外気等の気象学的影響のもの,また公害的影響のもの,その他衣類,ストレス,疲労,風邪及び胃腸疾患との関連の訴えが目立つた。これらの内容はアレルギー性のものもあり,単に外的刺激と考えてよいものもある。いずれの発生機序においても,アトピー素因というものがその背景にあり,このアトピー素因が生理的体内変動によつて修飾されるものと考える。生長,あるいは年齢によるホルモン変動等はA.D.皮膚に影響を及ぼしA.D.の皮膚変化の消長を示すものと思う。

小児湿疹の治療

著者: 儀保元彦 ,   小嶋理一

ページ範囲:P.1281 - P.1286

 小児湿疹の発生病理,臨床像,および分類等の詳しい点に関しては諸家の著述に譲るとし,本稿では主として軟膏療法について述べたい。
 小児湿疹は15歳以下を対象とするが,新生児,乳児期を除いて年長児の小児湿疹は,成人湿疹の軟膏療法となんら変るものがない。近年,副腎皮質ホルモン剤(以下,ステロイド剤と略す)と軟膏基剤の開発により,種々のステロイド外用剤および内用剤を用いることにより,それらの診断が不明確なままに,簡単に湿疹に用い,これらを治癒せしめ得ると考える傾向が,無きにしも非ずであるが,このような外用剤の乱用は,副作用の点からも,また皮疹形態の変化の点からも慎しんで欲しいものである。戦後,数多くの優れた軟膏基剤—乳剤性基剤,ローション基剤,水溶性基剤—の登場により,従来の油脂性基剤は忘れられた感があるが,筆者らは,乳児湿疹の場合には,やはり今日でも油脂性基剤を併用した方がより早く完治せしめ得るものと信じている。

乳児湿疹と乳児期栄養

著者: 松村龍雄 ,   川辺志津子 ,   小栗政夫 ,   黒梅恭芳 ,   多嶋幹太郎

ページ範囲:P.1287 - P.1307

はじめに
 筆者らは小児科医であつて皮膚疾患については門外漢である。ただ,アレルギー,殊に食物アレルギーの立場から小児疾患を眺めているうちに,皮膚の発疹をも避けて通るわけにはいかなくなつてきている。それで,乳児湿疹についても,いささか関心がないではない。依頼に応じて稿をものして,専門家の御批判を仰ぐ次第である。
 主題にも並べてあるように,現在,乳児湿疹と乳児期の栄養が無関係であると考えている人はいない。しかし,その関係がどの程度であり,その関係がどのようであるかとなると,議論は大いに分かれてくると思われる。筆者らは湿疹のうち,乳児の湿疹は特に栄養即ち食物と関係が深いと思う。そして,乳児湿疹を乳児栄養のうちの人工栄養との関係,即ち牛乳の粉乳や,大豆の粉乳との関係において観察をし始めて,間もなく,問題が後天感作acquired sensitizationのみを考えていては解決されず,先天感作congenital sen-sitizationの基礎の上の後天感作として把握しなければならないことに気がついた。と同時に,先天感作の基礎の上の後天感作を研究するには,最初に母乳栄養児のアレルギーを勉強し,次いで人工栄養児のアレルギーに及ぶのが便利であろうと感ずるに到つた。アレルギーの一環をなすと思われる乳児湿疹についても,全く同様なことが考えられる。よつて,まず,母乳栄養児の乳児湿疹の症例,次いでミルク栄養児の乳児湿疹の症例について述べ,それらの関係の理解のために,食物アレルギーの一つの型としての母乳栄養児のアレルギーに及び,更に先天感作について記したい。

小児湿疹の疹型と乳児期栄養

著者: 山碕順 ,   五十嵐俊弥

ページ範囲:P.1309 - P.1313

 近年,小児湿疹,特に乳児湿疹では湿潤・糜燗の目立つ症例をみることが少ないのに,乾燥性の皮疹を示すものをしばしばみるといういわばおおまかにいつて小児湿疹の疹型頻度に変動があるのではないかという疑問がもたれてきた。そして人工栄養児が近年増加していたことをその主因と想像する考え方もあつた。筆者らはこの因果関係,すなわち小児湿疹の疹型と乳児期の栄養との間に何らかの関連を認め得るデータが実際に得られるものかどうかを知りたいと思い,いささか調査した成績を約3年前に報告しておいた1)が,この機会にその後の調査をも追加し,皮膚科からみた一つの成績として以下記載してみようと思う。

小児の皮膚悪性腫瘍

著者: 三木吉治

ページ範囲:P.1315 - P.1321

 小児の悪性腫瘍は成人のものとは異なる。その理由は小児の場合,発癌の誘因,原因と考えられる因子が出生前にすでに作用しており,出生後の影響は比較的少ないからであり,しかも,催奇形性因子や遺伝子の影響が強いことによる。
 従つて,小児の悪性腫瘍は配偶子病(Wilms腫瘍),染色体異常によると考えられるもの(網膜芽細胞腫,白血病),あるいは胎児病(神経芽細胞腫)など,その誘因によって区別され,また,胎児期には高率に腫瘍が発生するものの生後,悪性化するものはそのごく一部にすぎないもの(神経芽細胞腫)など,成人の悪性腫瘍を理解する上でも役立つものがすくなくない。

小児のウイルス性皮膚疾患

著者: 西脇宗一

ページ範囲:P.1323 - P.1332

 ウイルスによる発疹を伴う急性感染症および種痘疹は別項に述べられているので,ここでは単純性疱疹(Kaposi水痘様発疹症を含め),帯状疱疹,疣贅,伝染性軟属腫について述べる。
 以上のうち帯状疱疹はHerpesvirus varicel-lae (varicella-zostervirus)によつて起こるが,このウイルスの初感染病変は水痘であり,のちにこのウイルスの再感染または再発が帯状疱疹として現われるので,小児における帯状疱疹の発生頻度は低い。これに対して単純性疱疹,疣贅,伝染性軟属腫は小児に多い疾患で,とくに単純性疱疹の初感染病変は全身症状を伴い症状が激しいので,小児疾患のうちでも重要なものの一つである。以下各疾患別に述べる。

小児の真菌性皮膚疾患

著者: 渡辺昌平

ページ範囲:P.1335 - P.1343

 小児の真菌性皮膚疾患といえば,戦前では頭部白癬がその代名詞となるほど広く一般的に蔓延していたが,戦後の昭和30年頃から急速に減少し,最近では全く稀な疾患となつてしまつた。
 一方,他の白癬,とくに小児の汗疱状白癬が近年増加を示しており,かつその罹患年齢も年々低下している印象を受ける。また,従来では乳幼児には余り見られなかつた爪白癬も少なからず散見するようになつて来ている。これは最近の生活文化の著しい変化が大きな影響を及ぼしているものと考えられる。

小児の膿皮症

著者: 朝田康夫

ページ範囲:P.1345 - P.1353

膿皮症発生母地としての小児皮膚
 小児期を更に以下の如き年齢期に分けることができる8)
 新生児期(neonatal period):生後から4週間迄(WHOによる)一般には生後から10日間)。

種痘疹の問題点

著者: 野口義圀 ,   千葉紀子 ,   内山光明

ページ範囲:P.1355 - P.1367

 痘瘡の予防法として,種痘(Jennerian va-ccination)は効果的であり安全なものとながく信じられてきた。おそらくその予防効果について疑問をもつ者は少なく,むしろ,いわゆる生ワクによる免疫の草分けとして高く評価されているものと思われる。
 種痘が安全であるというイメージがこわれたのは,昭和45年夏種痘による事故が多発し,これが種痘禍として社会問題化してからのことである。種痘の副作用に対しては,痘苗の改良,いわゆる特効薬としてのVIG (vaccinia immune globulin)およびマルボラン(Marboran)の輸入,第Ⅰ期種痘年齢の暫定的修正などの対策が示された。しかし,これらの施策はあくまでも対症的なものであり,なぜ種痘の副作用が起こるかという本質的な問題が忘れられている。

種痘の問題点

著者: 南谷幹夫

ページ範囲:P.1369 - P.1376

 昨年春,種痘実施に際し,その副作用が注目され,折からマスコミに種痘後脳炎を中心とした種痘事故が取上げられていた最中でもあり,重大な社会問題にまで発展し,種痘対象児をもつ家庭も接種する医師も不安に包まれ,遂に厚生行政当局は接種中止の措置をとらざるを得なかつたのである。しかしこの副作用は種痘後にみられた発熱,発疹が殆んどで,むしろ副反応というべきであり,種痘後脳炎,進行性種痘疹,全身性痘疱などのような重症合併症が過去の種痘に比べ特に多発したことはなかつた。元来,予防接種は健康人を対象とし,感染症を防止する予防医学の上にたつものであるから,副反応や合併症は少ないにこしたことはない。この点種痘は最も古くから行われた予防接種でありながら,絶大な予防効果の影にかくれて,改良の努力が余り払われず,その後に現われたポリオや麻疹に比べ,遅れをとつたといえるであろう。
 このような種痘事故が一般の関心をひき,また医学的に注目されたのは,わが国ばかりではなく,既に数年前から欧米諸国殊にアメリカにおいて問題となり,種痘施行の可否についてまでアメリカ小児学会で論議された。

小児の熱傷とその処置

著者: 林田健男 ,   松田博青

ページ範囲:P.1377 - P.1382

 小児の熱傷は現在でもなお小児の事故のうちで最も多いものである。熱傷の治療は,第二次大戦および朝鮮戦争を境にして急速に進歩したが,本稿では難かしい病態生理はともかくとして,主として外科からみた熱傷の治療について触れてみたいと思う。
 先ず小児の熱傷の原因として挙げられるものは熱湯によるものが圧倒的に多く,家庭内におけるヤカン,ナベ,カマ,コーヒーポット,湯タンポ等の熱湯を上方からかぶつたり,その中に手足をつつこんだりして受傷することが多く,これに比べればアイロン,ストーブ,ガソリン等による火傷は最近症例が増えて来ているとは云つても,先述の熱湯による症例よりもその数は少ない1)。

急性発疹性伝染病

著者: 野波英一郎

ページ範囲:P.1384 - P.1392

 急性伝染病のうち発疹を主症状とするものは急性発疹性伝染病あるはい急性発疹症と呼ばれ,これに属するものとして,麻疹,風疹,猩紅熱,猩紅熱様風疹,泉熱,伝染性紅斑,突発性発疹症,水痘,痘瘡,発疹チフス,デング熱などがあり,また最近ではコクサッキーウイルスその他によるウイルス性発疹症も多く見られている。
 急性発疹性伝染病では,発疹の出現時期,性状,経過にそれぞれ特徴があり,皮膚症状から比較的容易に診断の下せる場合が多い。

小児の口腔粘膜疾患

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.1393 - P.1398

 小児の口腔粘膜疾患は,成人の場合と同様に,1)口腔粘膜だけに限局したもの,2)皮膚疾患の部分現象であるもの,および3)全身性疾患の部分現象ないし随伴症状であるものに大別される。ただし成人に比べると,全身的影響を反映する病変は比較的少なく,先天的遺伝的病変がやや多い傾向がある。
 小児の口腔粘膜疾患の全べてを限られた枚数で記述するのは不可能であるので,そのうち日常しばしば見られる変化のいくつかを簡単に記述してみたい。

先天性代謝異常症と皮膚病変

著者: 長島正治

ページ範囲:P.1399 - P.1405

 代謝障害性疾患には,先天性・原発性また本態性に発症するもののほか,後天性に各種の疾患に続発して生ずるものがある。このうち,小児にも炉とも関係の深いものとしては,近年化学的研究の進歩にともない,その原因が解明されつつある各種の先天性代謝異常症(inborn errors of metabolism)をまずあげねばならぬであろう。
 今回,筆者に与えられたテーマは,代謝障害性皮膚疾患(含先天異常)であるが,ここでは,先天性代謝異常症と皮膚病変と題し,皮膚に各種症状を発現することの多い先天性代謝異常症の数種をとりあげ,若干の解説を試みたいと考える。

私は小児湿疹をこの様に治療している 皮膚科

小児の湿疹の治療

著者: 北郷修

ページ範囲:P.1406 - P.1407

 小児湿疹といわれている疾患は,湿潤している病巣から,苔癬化した病巣までも含み,素因としてアトピーが根底にあるものと考えられる。以下湿潤びらん面の存在している場合と湿潤びらん面がなくて潮紅小丘疹,紅斑,苔癬化局面痂皮,落屑などからなる病変をもつている場合とに分けて治療法を記述する。

小児の湿疹の治療

著者: 西脇宗一

ページ範囲:P.1408 - P.1409

 乳児,小児期の湿疹で代表的なものに,乳児脂漏性湿疹,乳児急性湿疹,アトピー性皮膚炎の3種類がある。

小児の湿疹の治療

著者: 原田昭太郎

ページ範囲:P.1410 - P.1411

 小児湿疹は体質的な皮膚素因が病因的に一義的意味をもつアトピー性皮膚炎の乳児期,幼小児期に相当する病型が大きな比率を占めている。そのため成人の湿疹群に多いアレルギー性接触性皮膚炎での治療の根本原則が接触アレルゲンの検索及び,それからの逃避であるのに対して,小児湿疹では接触アレルギーが問題になることはむしろ稀であり,湿疹病変を悪化させる諸因子を避け,自然に軽快ないし治癒状態に至る時期まで上手にCont-rolすることが大原則である。故に治療は必然的に対症療法であり,小児湿疹に対する根本的な特別の治療法はあり得ない。外用軟膏療法が中心となる。そのため治療の第一歩は患者の家族,特に母親に小児湿疹が体質的な病気である点及びその予後について十分に説明し治療上の注意点を教えることである。特に素因の強い場合,症状の高度の場合には事情が許せば短期間入院させると共に外用療法を習得させることが望ましい。家族に年寄りがいる場合は,いまだに小児湿疹,特に乳児湿疹を胎毒といつて体内から毒が出る現象と見做し,軟膏療法その他では皮膚病変の治療を嫌うことがある。また一部の地域ではやはり体内の毒を流し出すといつて額,背部等にカミソリ等で線状の切り傷を作り瀉血する習慣が残つている。次に治療および治療上の問題点い注意事項についてat randomに列挙してみる。
 1.局所外用療法が治療の中心である。症状に応じて適当な軟膏療法を行う必要があるが,多くの場合はステロイド含有軟膏のみで十分のことが多い。湿潤傾向ある病巣にはステロイドにネオマイシンを加えた軟膏の方がより効果的のことがある(外国での報告ほどネオマイシンによる感作は実際には多くない)。我々の外来では乾燥性,湿潤性病変共にステロイド軟膏に硼酸亜鉛華軟膏ないし0.5%〜2%のイクタモール棚酸亜鉛華軟膏を重ねるいわゆる重層法を好んで行なつており適応範囲の広い良い方法だと思つている。

小児の湿疹の治療

著者: 高橋久

ページ範囲:P.1413 - P.1414

 小児の湿疹類の病型については本特集に詳しく述べられている事と思うが,一般臨床病院を訪れるこの種の患者の大部分は大ざつぱに次のような病型に分けられる。(1)肘窩,膝膕など定型的部位に生じたアトピー性皮膚炎およびそれと関連ありそうに思われる発赤の少なく,毛孔角化のある乾燥性小児湿疹。(2)最近減少の傾向にあるが,顔面,殊に頬部を主とする滲出性の乳児湿疹。(3)乳児の乳痂の拡大を思わせる被髪頭部,眉毛部の脂漏性湿疹。(4)このような脂漏傾向の乳児に多いと言1)われる分芽菌感染症の乳児寄生性紅斑をも含めたおむつかぶれ,の4群がそれである。
 これ以外の湿疹様の病変としては薬疹をも含めた中毒疹,ビールス性発疹症,接触皮膚炎,或いはLetterer-Siwe等の稀有疾患をも一考応考慮に入れる必要がある。

小児の湿疹の治療

著者: 山本一哉

ページ範囲:P.1414 - P.1415

 小児湿疹の主体をなしているものは,アトピー性皮膚炎と考えられる。そして,このアトピー性皮膚炎の各時期の中でも,小児皮膚科学の臨床上,その発生頻度などからみて最も問題となるのは,本症の乳児期であろう。私共の外来でも患者の約40%強は2歳以下の年齢層で占められており,しかも,その大半は湿疹・皮膚炎群に属する症例である。したがつて,ここでは対象をアトピー性皮膚炎(乳児期)として,現在これに行なつている治療の内容を具体的に述べることにする。本症の治療には,その難治性などからみても単に薬剤の使用を試みるということだけではなくて,患者の家族との相互理解の基盤に立つた診療ということが必要である。それ故,まず治療に際しての私共の考え方を明らかにしておきたい。

小児科

小児の湿疹の治療

著者: 大国真彦

ページ範囲:P.1409 - P.1410

 小児科医は乳児の湿疹を診る機会が極めて多い。とくに気管支炎などの主訴のために来院した乳幼児に湿疹を見出したようなばあい,湿疹に対する治療をも併せて行なわねばならないことが多い。従つて筆者らの教室では一寸した湿疹の治療はなるべく自分達で行なうようにしている。ただし筆者が日頃行なつている湿疹の治療法は,嘗て筆者が娘のアトピー性湿疹の治療に苦労した時に,畏友日立病院皮膚科部長勝又博士に御教示戴いたものをもとにしているものである。

小児の湿疹の治療

著者: 嶋田和正

ページ範囲:P.1411 - P.1412

 湿疹は小児とくに乳児には頻度のかなり高い疾患である。都立大塚病院外来で調査した成績では1カ月児の約35%に主として顔面の湿疹が観察された。この湿疹に対して,私が都立大塚病院,母子保健院において治療した方法を中心にして,以下述べることとする。

小児の湿疹の治療

著者: 鈴木栄

ページ範囲:P.1412 - P.1413

 小児とくに乳幼児では湿疹はきわめて多い疾患であるが,綜合病院に勤務しているため,重症なものはすべて皮膚科に治療を依頼して了うので,自分で治療する対象は軽症に限られ,これらは放置してもなおるかもしれないようなものが多いので,自分のやつていることが果して有効なのかどうか甚だ心許ないが,以下おもな点について記し,ご批判を頂きたい。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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