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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科25巻13号

1971年12月発行

文献概要

特集 小児の皮膚疾患

アトピー性皮膚炎とその病態生理

著者: 廻神輝家1

所属機関: 1東京医科大学皮膚科教室

ページ範囲:P.1273 - P.1279

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 アトピー性皮膚炎(A.D.)とはアトピー素因をもつ個体にアトピー性アレルギー機序をもつて起る炎症性皮膚疾患である。しかし,一方A.D.患者にみられるアトピー皮膚という特異的な素因をもつ皮膚に外的刺激が加わり,アレルギー機序によらないで皮膚病変が発生することもある。近年病理解明にその知見が豊富となつた観があるも完全に解明せられた訳ではない。鱗屑,花粉,絹,豚毛等によるアレルギー説,食餌性抗原ならびに吸入性抗原の陽性反応出現率の高値を示す事実,更には苔癬化傾向を示す点,これを要するに抗原抗体反応としての膨疹,これと反対に苔癬化との発病機序の問題は釈然としないものがある。
 A.D.が食餌性,吸入性アレルゲンの皮内注射により高率に膨疹反応を示す傾向がある。これは即時型の反応性を示すものであり,この場合膨疹形成に留り,苔癬化しないということはA.D.の皮膚所見と矛盾する。また陽性反応を呈する食餌を与えても皮膚炎を惹起できなかつた事実は臨床症状と皮内反応とは一致せぬようである。我々1)2)はかつてA.D.の増悪因子を問診で調査を行い次の回答を得た。季節的には冬季増悪を訴えるものが多く,次いで夏,春,秋の順であり,更に食餌の影響を訴えるもの,次いで日光,汗,外気等の気象学的影響のもの,また公害的影響のもの,その他衣類,ストレス,疲労,風邪及び胃腸疾患との関連の訴えが目立つた。これらの内容はアレルギー性のものもあり,単に外的刺激と考えてよいものもある。いずれの発生機序においても,アトピー素因というものがその背景にあり,このアトピー素因が生理的体内変動によつて修飾されるものと考える。生長,あるいは年齢によるホルモン変動等はA.D.皮膚に影響を及ぼしA.D.の皮膚変化の消長を示すものと思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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