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特集 小児の皮膚疾患
種痘の問題点
著者: 南谷幹夫1
所属機関: 1東京大学医学部分院小児科
ページ範囲:P.1369 - P.1376
文献購入ページに移動 昨年春,種痘実施に際し,その副作用が注目され,折からマスコミに種痘後脳炎を中心とした種痘事故が取上げられていた最中でもあり,重大な社会問題にまで発展し,種痘対象児をもつ家庭も接種する医師も不安に包まれ,遂に厚生行政当局は接種中止の措置をとらざるを得なかつたのである。しかしこの副作用は種痘後にみられた発熱,発疹が殆んどで,むしろ副反応というべきであり,種痘後脳炎,進行性種痘疹,全身性痘疱などのような重症合併症が過去の種痘に比べ特に多発したことはなかつた。元来,予防接種は健康人を対象とし,感染症を防止する予防医学の上にたつものであるから,副反応や合併症は少ないにこしたことはない。この点種痘は最も古くから行われた予防接種でありながら,絶大な予防効果の影にかくれて,改良の努力が余り払われず,その後に現われたポリオや麻疹に比べ,遅れをとつたといえるであろう。
このような種痘事故が一般の関心をひき,また医学的に注目されたのは,わが国ばかりではなく,既に数年前から欧米諸国殊にアメリカにおいて問題となり,種痘施行の可否についてまでアメリカ小児学会で論議された。
このような種痘事故が一般の関心をひき,また医学的に注目されたのは,わが国ばかりではなく,既に数年前から欧米諸国殊にアメリカにおいて問題となり,種痘施行の可否についてまでアメリカ小児学会で論議された。
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