icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻2号

1971年02月発行

雑誌目次

図譜・332

色素細胞母斑上に生じた悪性黒色腫の1例

著者: 森嶋隆文 ,   今川一郎 ,   森岡貞雄

ページ範囲:P.100 - P.101

患者 23歳,男 初診 昭和45年3月19日
現病歴 生下時より,右下腹部に鶏卵大の色素斑が存するのに気づいていた。本年1月,上記色素斑の一部に黒色腫瘤が生じ,徐々に増大するため来院した。

展望

慢性蕁麻疹の治療

著者: 青山久

ページ範囲:P.107 - P.111

 今まで,蕁麻疹はアレルギー性蕁麻疹非アレルギー性蕁麻疹、あるいは精神性蕁麻疹,食餌性蕁麻疹,寒冷蕁麻疹、機械的蕁麻疹(人工蕁麻疹),日光蕁麻疹などと分類されてきた。私はまず,この分類をやめて蕁麻疹を起こしている化学伝達物質(chemical mediator)によつて蕁麻疹分類を行なつた。すなわち,図1に示すごとき膨疹を起こしている化学伝達物質によつて,ヒスタミン性蕁麻疹,キニン性蕁麻疹,コリン性蕁麻疹,蕁麻疹様紅斑に分類した。この分類の利点は,診断をつけた瞬間,その患者に投薬する薬剤が決定されることにあり臨床上大変便利である。たとえば,今までの分類によつて診断を人工蕁麻疹とつけても,その患者に投薬する薬剤の選択は再度考えねばならないが,私の分類によれば、ヒスタミン性蕁麻疹とつけたら投薬は抗ヒスタミン剤を,キニン性蕁麻疹とつけたらオキシフェンブタゾン(タンデリール)と抗ヒスタミン剤と再び老えることなく薬剤が決定されてしまうわけである。
 まず,化学伝達物質の検査法を簡単にのべる。検査法は皮下灌流法によつた1)。すなわち,図2に示すごとく,患者の前腕外側にL-7の長針の横に穴を5つずつあけ,皮下に平行に刺し,一方より生食水を注入し,他方の針より採取した。この方法によつて採取した膨疹発生時の灌流液中に膨疹発生前の灌流液中にはなかつたウサギの摘出静脈収縮作用がみられた。すなわち,図3に示すごとく,膨疹発生部の皮膚には何らかの化学伝達物質が増加していることがわかる。つぎに,この化学伝達物質を同定してキニン性蕁麻疹,あるいはヒスタミン性蕁麻疹などと診断する。

原著

Hyperkeratosis lenticularis perstans(Benign familial acrokeratoses)

著者: 松岡滋美

ページ範囲:P.113 - P.119

 1958年,Flegel3)は,50歳男子の足背に20年来存続している,多発性角化性丘疹をはじめて記載した。これらは形態学的に,角質増殖を主体とする扁豆大までの丘疹で,白然治癒の傾向がないことから,hyperkeratosis lenticularis perstans(以下HLPと略記す)と命名された。その後1969年に,Beal1)は同様皮疹が同一家系内に多発した例を報告し,本症の遺伝性を重視して,benign familial acrokeratosesと名付けることを提唱した。
 著者は最近,本症と考えられる兄妹例を経験し,本症が優生遺伝性疾患に属するものと考えたので,ここに報告する。

塩酸ベンジダミンによるContact and Photocontact dermatitis

著者: 池村郁男

ページ範囲:P.121 - P.129

 アレルギー性接触皮膚炎の範疇に属する中に特異な一病型として,単純接触によつても皮膚炎を生ずるが,日光照射が加わると一層その症状が増強するものがある。Epstein,S.(1957)1)はph-enothiazine誘導体について以上の特異性(do-uble sensitivity)があることを証明し,これをcontact and photocontact dermatitisと命名した。最近非ステロイド性消炎剤として広く用いられているbenzydamine hydrochlorideによる日光皮膚炎が注目されつつあるが2,3,4),著者もその一例を経験し,同皮膚炎がphenothiazine誘導体におけると同様のメカニズムで発症する日光皮膚炎であることを証明し得たので,ここに報告する。

持続性隆起性紅斑およびアナフィラクトイド紫斑に対するDDS療法

著者: 岡本昭二 ,   苅谷英郎 ,   松葉幹夫

ページ範囲:P.137 - P.143

 持続性隆起性紅斑(Erythema elevatum di-utinum—以下EEDと略す)に対しDDS (Dia-mino-Diphenyl-Sulfone)が卓効を示すことはVollum1),西山ら2),北村ら3)により報告されている。最近DDSにより2例のEEDの治療を行ない,著効をみたが,そのさい細小血管炎が第1に軽快することを認めたため,アナフィラクトイド紫斑の3症例に対してもDDSを投与してすぐれた治療効果を収めたので報告する。

DDSの奏効したPityriasis lichenoides et varioliformis acuta Mucha-Habermannの3例

著者: 加藤友衛 ,   田辺義次

ページ範囲:P.145 - P.151

 本症は,1916年Mucha1)がparakeratosisvariegataないしpityriasis lichenoides chro-nicaに近縁の疾患として報告し,1925年Habe-rmann2)がpityriasis lichenenoides et vario-liformis acuta (以下PLVAと略)と命名,その後,PLVAないしはMucha-Habermann病が本症の名称として広く用いられている。さて,本症は長らく類乾癬の亜型として分類されてき「たが,1959年Szymansk13)が本症の基本的変化を血管炎としたことから論議が重ねられている。したがつて,本症の病因論がまだ確立されていないこと,さらに比較的まれな疾患であることとが相まつて,本症の治療に関しては決め手となるものがなかつた。
 われわれは,最近,本症の2例にdiaminodi-phenyl sulfone (DDS)を使用し著効をみたことを日本皮膚科学会東京地方会第478回例会にて報告したが,その後さらに1例を経験したので,ここに追加報告する。

Hidroacanthoma simplex

著者: 北村啓次郎 ,   中村絹代 ,   長島正治

ページ範囲:P.153 - P.157

 1956年,Smith&Coburn1)は,従来intra-epidermal basal cell epithelioma (Jadassohn)といわれてきた表皮内腫瘍のなかにsudorifero-us natureの腫瘍が含まれているこを指摘した。すなわち表皮内に多中心性限局性にみとめられ,形態的に単一な小型の基底細胞類似の細胞よりなる腫瘍塊をsweat germの形成と老え,かかる腫瘍に対してhidroacanthoma simplexという名称を提示した。
 最近,著者らはほぼ定型的と思われるhidro-acanthoma simplexの1例を経験したので,その詳細を報告するとともに,表皮内汗管由来の腫瘍とくにeccrine poroepitheliomaとの関係につき若干の考察を行ないたい。

図譜・333

陰嚢被角血管腫

著者: 山辺靖夫

ページ範囲:P.132 - P.133

患者 39歳,会社員
家族歴 特記すべきことなし。

図譜・334

ノルウェー疥癬と感染例

著者: 岩尾英一

ページ範囲:P.134 - P.135

患者1 (ノルウェー疥癬,図1)63歳,男子,高知県山間に1人住まいの老農夫
現病歴・既往歴 特記する既往症はない。4年前からとくに秋口になると指間,腋窩,ソ径部に瘙痒性及疹をみた。5カ月前発熱で内科に入院し,デカドロン総量約360mgほど投与されて皮疹は急速に全身化し,厚い鱗屑を付着した。

薬剤

合成ACTH製剤による副腎皮質機能検査ならびに2,3の皮膚疾患の治療

著者: 大河原章 ,   水元俊裕 ,   高木章好 ,   青柳俊 ,   杉原平樹

ページ範囲:P.163 - P.167

 ACTHが39個のアミノ酸が直鎖状に結合したpoly-peptideであることは,1954年Bell1)が豚、Liら2)が羊のACTH構造を明らかにして以来広く知られている。1959年Leeら3)はさらにヒトのACTHのアミノ酸配列を明らかにした。天然のACTHを副腎皮質機能検査ならびに治療に用いるさい注意を要するのは,時にアレルギー反応を起こすことであるが,それはACTHのpolypeptideの部分によるというよりは,ACTHの中に含まれる不純物によることが多く,純化された合成ACTHには一応その心配はないとされている。39個のアミノ酸の中で1〜24番目までのアミノ酸は各種共通で動物特異性はない。合成ACTHはこの1〜24番目までのアミノ酸を有し、生物学的活性は天然のACTHに劣らず,すでに副腎皮質機能検査に,また副腎皮質ホルモン剤に代わつて治療に用いられている。
 今回われわれは合成ACTH (コートロシン)を副腎皮質機能検査に,合成ACTH-Z (コートロシンZ)を2,3の皮膚疾患に用いる機会を得たのでその成績を報告し,少しく考察を加える。

Drenison tapeによる皮膚疾患治療成績と動物小実験

著者: 谷奥喜平 ,   高岩尭

ページ範囲:P.169 - P.179

 皮膚科領域で外用剤の使用にさいし,基剤および配伍剤の選択が重要であることは論をまたない。墓剤については戦前よりの油脂性膏薬に加えて乳剤性膏薬,水溶性軟膏,さらにplastibase, veriderm (皮脂基剤)など新らしい軟膏基剤が開発され,化粧品に似て,ベトつかず,水で容易に除去でき美容的となつた。しかし皮膚疾患の診療の実地上では油脂性膏薬も捨て難い長所をもつているので,今日では油脂性膏薬と乳剤性膏薬とがそねそれの長所を活かして使用されている。一方配伍剤でも合成corticosteroidがその優れた抗炎症性効果のゆえに賞用され,その誘導体の種類も多く,適応の選択に迷い,一般には基剤によりステロイド軟膏を選ぶことにしている。
 Corticosteroid hormoneで局所的使用が有効なのはhydrocortisonおよびその誘導体で,全身的投与に用いられないものも外用しうる利点がある。たとえば,9α-,6α-位置に弗素(F)を有するprednisolone誘導体のうち,fluorometholone,flurandrenoione (抗炎症作用は皮下投与でprednisoloneの15〜20倍),fluocinoloneなどがこれに相当する。Flurandrcnoloneは0.05%drenisolon軟膏(親水性ワゼリン),drenison creamとして湿疹・皮膚炎群,炎症角化症でその効果が認められている。この場合でも塗擦のみでは,強度の浸潤肥厚を伴う慢性炎症性疾患では治療に長期間を要したり,治療に困難を感ずるようになり,Grab(1960),Sulzberger etWitten(1961),Scholtz(1961)によりocclusive dre-ssing technique(O.D.T.)療法が推奨されているが,市販されているサランラップでのO.D.T.療法では運動部(関節部)においては密封に困難を感ずることはよく知られている。また皮膚面との問に空気が入つてだぶつき,密着せず密封効果がおちたり,あるいは悪臭を放つ欠点もみられ,時には接触皮膚炎(サランラップ,絆創膏)が発生するりこれらの副作用・欠点を取り除く方法として局所皮内注射法(hydrocortisone acetate,predonisolone acetate,prednisolone sodium hemisu-ccinate,dexamethasone phosphate)が好んで用いられるが,病巣部が広範囲にわたる時には皮内注射は繁雑であり,疼痛を訴える患者がある。以上の治療法に代るものとしてdrenison-tapeが登場した。このdrenisontapeとは強力な局所性抗炎症作用を有するflurandre-noloneをblenderm surgical tape 1cm2あたり4mcg含有しているのである。Blendermはつや消しした半透明な薄いポリエチレンフィルムで,その表面にアクリール樹脂系の不活性な密着剤を塗布したテープである。このテープは仲縮性,耐水性で,除去が簡単でしかも密着剤が身体に残らない点が特長とされている。このテープは皮疹の形にあおせて貼用されるように台紙に接着されているりこのテープはサランラップを使用したO.D.T.療法に比して操作が簡単である。また掻破,機械的刺激や化学的刺激から皮膚を守ることができる。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.180 - P.181

ARCHIVES OF DERMATOLOGY102:1, 1970
Systemic Amyloidosis Complicating Dermatoses: M. H. Brownstein and E. B. Helwig 1
The Cutaneous Amyloidoses. I. Localized Forms: M. H. Brownstein and E. B. Helwig 8

〈原著論文抄録〉

Hyperkeratosis lenticularis perstans(Benign familial acrokeratoses),他

著者: 松岡滋美

ページ範囲:P.183 - P.183

 数年前より,46歳と39歳の兄妹の両足背・下腿・手背などに生じたhyperkeratosis lenticularis perstansを報告し,内外文献による17例を総括して,臨床的・組織学的特徴を述べた。
 本症を優性遺伝性疾患とみなし,病名としては,Beanの提唱したbenign familial acrokeratosesがより適切であると考えた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?