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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻3号

1971年03月発行

雑誌目次

図譜・335

Giant Neurilemmoma

著者: 徳田安章 ,   大久保正己 ,   望月正子

ページ範囲:P.202 - P.203

患者 45歳,未婚女子
現病歴 約25年前より臍の左側皮下に小腫瘤を生じ,以後着実に増大の一途をたどり,直径約30cmに及ぶ巨大な球状腫瘤に達する。2年前より表面中央部で潰瘍化し悪臭を放つようになる。

綜説

乾癬の治療

著者: 中村家政 ,   桑原宏始 ,   阮豊慶 ,   佐藤隆久 ,   河南憲太郎 ,   衛藤延江

ページ範囲:P.209 - P.219

 ご承知のごとく,乾癬は遺伝的背景の濃厚な疾患とされ,かつてLomholt1)がフェール諸島の住民に行なつた分析調査によると,健康な夫婦の間に生れた子供に乾癬患者が1人いると,次の世代に発現する確率は17%,また両親のいずれか一方が本症に羅患していると,その子供へは25%発生する。また両親とも罹患していると,70%が乾癬を発症するとし,本症が乾癬患者の家系にはなはだ濃厚に遺伝することを示唆しているが,過日来日したFarberら2)が乾癬患者491例について家系の罹患状況を調査した結果によると血縁9996名中5%が本症皮疹を発生しており,すでに死亡した142例を加えても6%を出なかつたという。この成績から窺うと,本症はそれほど濃厚に遺伝するとは思われない。ことにわが国においては遺伝的関係の明らかな患者はむしろまれで,当教室の最近3年間の統計的観察でも,血族結婚は97例中2,家族内発生1をみたのみで,他はすべてかかる関係が不明であつた。
 このように考えると,本症は両親から乾癬を発生しやすい素質(psoriatic diathesis)を受け継いでも,これを顕症化する別の誘発因子が加わらないと顕性乾癬へは移行しないものと理解される。

展望

色素異常の治療について

著者: 加納魁一郎

ページ範囲:P.221 - P.227

 昨年西日本連合地方会において,私に上記の演題について臨床講義をやるように依頼されたが,私は現在研究から遠ざかつていてその任ではないと思つたが,おこがましくもお引き受けすることにした。と同時に本誌から同じ演題についての原稿を投稿するように依頼されたが,こんどこそ大分迷つたが,決心して厚かましくも投稿することにした。
 以下は私の在職中,その後の名大皮膚科教室で研究されたことを基盤として,目下私が一診療医として行なつている自分だけの治療方針についてのみ述べることにした。目下私が勤務している所は研究機関でないので,その後私自身研究していないしまた外国文献などについてもまつたく目を通していない。したがつて一診療医の手記としてお読みいただきたい。しかしその中でもやや目新らしい療法もあるので,これらは十分ご批判願えれば幸甚である。

原著

集簇性痤瘡の1例

著者: 新井亮一

ページ範囲:P.233 - P.237

 本症は慢性膿皮症の一病型で,Spitzer1)がその師Langの指導によりDermatitis folliculariset perifollicularis conglobataとして発表し,その後間もなくAcne conglobataという名称にとつて変つた疾患である。しかしその後,本症はAcne conglobataの名称で報告されることが多く,本邦でも一般に集簇性痤瘡といわれている。
 欧米にはすでに比較的多くの報告例をみるが,本邦では後述するごとく,あきらかな記載は自験例を含めてもわずか5例にすぎない。これは慢性膿皮症自体,比較的少なく,しかも膿瘍性穿掘性頭部毛嚢周囲炎,頭部乳頭状皮膚炎あるいは尋常性痤瘡など本症ときわめて類似する疾患群があり,それらとの鑑別上,若干の問題がみられるため,明確な診断が下されなかつたためであろうと考えられる。

水痘・帯状疱疹の抗体価と免疫グロブリン

著者: 熊坂鉄郎 ,   宮沢偵二 ,   樋渡久雄 ,   沼崎義夫 ,   安藤弘一 ,   茂田士郎

ページ範囲:P.239 - P.244

 これまでherpes属virusの疾患といえば,herpes simplex,herpes zoster,varicellaを考えればよかつたが,最近においては,この考えはもつと拡大しなければならない。すなわちherpes型のvirusにcytomegalo virus1),EBvirus2)の2者が関心を持たれるようになり,herpes virusによる疾患は,今や再認識・再評価されてきつつある。
 cytomegalo virusの場合は,風疹ウイルスと同様に胎児の奇型の一因をなすものであり,その感染型式は従来知られているherpes virusによる感染とまつたく異なり,妊娠後期になつて,母体より胎児へと垂直感染を起こすことが知られている3)。またEB virusが原因とされているアフリカン・バキットリンパ腫は,悪性腫瘍であるにもかかわらず,自然あるいは治療による退縮のしばしばみられる特異な疾患4)である。このような新らしいherpes virus感染症における個体の免疫反応については,従来知られているherpes virus感染症と比較して興味あるところであるが,今日までその詳細はまつたく明らかでない。

膿瘍性穿掘性頭部毛嚢周囲炎を伴つたガーゴイリズム

著者: 小林登喜子 ,   肥田野信 ,   木沢英夫

ページ範囲:P.245 - P.251

 ガーゴイリズムはいわゆるinborn error ofmetabolismの範躊に含まれる糖質〜脂質にわたる遺伝性代謝疾患で,結合織ないし神経組織にひろく変化の及ぶ系統的疾患であり,特異な顔つき,体形を特徴とする。本症については従来小児科方面の報告が多く,皮膚科領域ではあまり知られていなかつたが,最近廻神ら1)の論文に本症に関する詳細が紹介されているので,ここでは症例の記載を主としたい。

シンポジウム アレルギー性接触皮膚炎における抗原形成

展望

著者: 谷奥喜平

ページ範囲:P.253 - P.261

 接触皮膚炎ですが,これには日光皮膚炎も含めますが,haptenが蛋白と結合するのには図1のようにhapten (H)がprotein (P)と結合するとの想定の大筋はPillsburyに書いてある通りだと主張しているものです。私はさらに血管を通つて皮膚の中にhaptenが入る場合もあると思います。日光皮膚炎ではhaptenとproteinとの結合に光線が関係する,さらにPとHが両方とも皮膚で代謝されるのでないか。この代謝の基本には皮膚はorganであるという私(表1)考があるのです。
 以上の想定で以下の実験を進めます。

Haptenの皮膚内代謝

著者: 水野信行

ページ範囲:P.263 - P.272

 谷奥先生はきわめて進歩的に,光線過敏で自己免疫ができるとお考えですが,私自身はおそらくそこにまだ薬が残つているだろうと考えます。
 一般的にいえば血液型物質なんかは30数年リンパ節内に残つていたという記録があります。東大の松橋教授によればγ-グロブリンをウサギにうつとそれがリンパ腺に少なくとも4年間は残存していたといわれます。そこで殺したからストップしたのでもつと放置しておけば長くなるわけです。異物は意外に体の中に残つている可能性があるということを,考えるべぎだと思います。後でもう一度谷奥先生にどうして変性した蛋白ができるか,一度感作されると,どうして変性した蛋白が簡単にできるようになるのか,ご説明願いたいと思います。

Haptenの代謝

著者: 森川藤凰

ページ範囲:P.273 - P.285

 ハロゲン化フェノール化合物の検討にとりかかつてまだ日も浅く,代謝の研究というところまで至つておりません。実験をやつてみて気が付くことは,物質の性状,たとえばpHやpKa値,実験動物の管理状態,紫外線光源の特性などの条件がデータの再現性やバラツキに非常に強く影響することです。今回はこれらの条件または要因に留意しながらハロゲン化フェノール化合物の感作反応の検討を行ないましたのでご報告申し上げます。
 皮膚に接触したり,経皮的に吸収された化学物質の多くは体内で代謝を受けます。代謝過程は酵素によつて進められますが,この酵素系は哺乳動物では一般に二つのカテゴリーがあることが知られています。その第1は体内で産生される生理学的な物質にあずかる系,あるいは生理学的物質と近似の外来化学物質に対して触媒的変化をつかさどる系であります。第2は生理学的な物質でない外来物質の構造を変化させる酵素系であります。これらのおもな反応として,酸化,還元,加水分解などの非合成的な反応と,グルクロン酸抱合や硫酸抱合のように生合成的な反応の二つに分けられほとんどの薬物代謝はこの第2のカテゴリーに含まれます。しかし感作反応は外来化学物質の代謝と同時に,自己,非自己の認識を行なうもので,さらにこれに免疫機構という非常に複雑なものが関与する反応で,通常の薬理作用とは異なつた異常作用であり代謝過程もまだ明らかでない点の多い反応であります。

皮膚科学の流れ 人と業績・11

Jean Louis Marc Alibert

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.288 - P.291

(昭和45年10月号から続く)
 前回の本稿を書いたのち,数か月執筆しないまま時がすぎた。その間わたしはヨーロッパをめぐつて,本稿に名前の出てくる著名な皮膚科医の活動したあとをいささか尋ねまわつた。そして彼らの活躍した病院などを見て,いまさら彼らの偉大さにうたれたりした。

印象記

第21回日本皮膚科学会中日本連合地方会

著者: 白井利彦

ページ範囲:P.292 - P.295

 第21回日本皮膚科学会中日本連合地方会は昭和45年11月28日,29日の両日に京都市西京極の京都工業会館において行なわれた。
 昨年の本連合地方会の総会で,従来の学会のあり方が問題にされ,種々論議された結果,新らしく評議員を選出しなおして,その人たちに次年度の本会の運営および今後のあり方を検討してもらうという結論で終わつた。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.296 - P.297

DERMATOLOGICA 140 : 5, 1970
Conversion of Dithranol in Ointments and Pastes : E. Young 281
A Study of the Incidence of Haemolytic Streptococci in the Throat in Patients with Psoriasis Vulgaris, with Reference to their Role in the Pathogenesis of This Disease: W. C. Cohen, Tervaert and H. Esseveld 282

〈原著論文抄録〉

集簇性痤瘡の1例,他

著者: 新井亮一

ページ範囲:P.299 - P.299

 21歳,女性の4年来存在した項部,背部の集簇性痤瘡に対して病巣を広汎に切除して植皮術を行ない治癒せしむることができた1例を報告して,本症の成因などについて若干の文献的考察を加えた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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