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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻4号

1971年04月発行

雑誌目次

図譜・336

Naevus lipomatosus cutaneus superficialis(Hoffmann-Zurhelle)

著者: 徳永信三

ページ範囲:P.318 - P.319

患者 15歳,男子
初診 昭和45年8月19日

綜説

脂漏性湿疹の治療の検討

著者: 帷子康雄 ,   鷹觜研一 ,   鹿野宏子

ページ範囲:P.325 - P.330

 1887年UnnaによりEczema vulgareとは異なる疾患として記載されたEczema seborrh-oicumは以来,諸家により名称,病型,分類,病因などに関して種々の見解が提唱されており,いまだ一定の帰結に達したとはいい難い。現在,本邦では名称として脂漏性湿疹と脂漏性皮膚炎の両者が広く用いられているが,Gansらは本症の病因が明らかにされないうちはMorbus Unnaの名称を用いる方が妥当であるとしている。ただし,本症は病因が完全に解明されないままに,近年次第に減少の傾向をみせている。すなわち,九大皮膚科60年(明治39年〜昭和40年)の湿疹・皮膚炎群の統計1)によれば,本症の外来患者総数に対する頻度は明治39年より昭和5年までの25年間に5〜10%を上下する大きな山があつたが,以後急減して0.5〜1.0%の低率となつている。一方,弘前大最近20年間のそれでは図1に示すように,昭和28年の3.05%をピークとして比較的険わしい起伏を示しながらも次第に減少していることが窺われる。
 本症の典型は成人において,いわゆる脂漏部位に境界明瞭な紅斑と帯黄色,脂性鱗屑(鱗痂)の発現することが特徴とされている。すなわち,被髪頭部に汚黄色で比較的厚い鱗痂およびこれを中心とする境界鮮明な発赤が生じ,同様の変化が髪際を越えて下行性に眉毛部,鼻唇溝,耳囲,外耳道におよび,さらに腋窩,前胸,肩胛問(汗溝),臍窩,陰股,肛囲にも現われる。自覚的に掻痒は軽度であり,全体として乾燥性であるが,軽度の湿潤を示すことがあり,間擦部では間擦疹の形をとる。組織学的には不全角化,表皮肥厚,軽度の海綿状態,真皮の軽度の浮腫,血管囲性細胞浸潤,毛包角化などが認められ,多くの点で普通の湿疹あるいは乾癬と類似せる所見がみられるが,小水疱形成が病巣の主要素となることはない。本症は時として乾癬との鑑別に苦しむことがあるが,真皮乳頭における血管の態度が有力な指標と考えられる。すなわち,乾癬では真皮乳頭体に入る血管が特有の迂曲・拡張・蛇行を示すのに対して,脂漏性湿疹のそれはそのような所見を呈さず,正常に近い像であり(針生2)),乳頭下血管網においてわずかに拡張・蛇行・屈曲がみられる(最上3))。なお,乾癬の年次消長は,われわれの場合,本症と対照的に近年増加の傾向にあるといえる(図1)。

原著

Malignant hemangioendothelioma

著者: 堀嘉昭 ,   石橋康正 ,   新村真人 ,   池田重雄

ページ範囲:P.331 - P.339

 血管由来の悪性腫瘍は,はなはだまれな疾患である。血管を構成する内皮細胞から由来した悪性腫瘍が,malignant hemangioendothelioma悪性血管内皮細胞腫であり,一般に本腫瘍の好発部位は,顔面,頭部で,老人に多くみられ1,2),肺,肝,骨などに転移して急速に死の転帰をとる3)。もちろん,若年者にもみられるし4),頭部,顔面以外の部位にも原発する5)。血管に由来する悪性腫瘍がまれであるためか,その術語には,統一を欠く。たとえば,malignant hemangioendoth-eliomaを,angiosarcomaと同義語とするもの2,5)と,両者を別のentityの疾患名として用いるもの6)とがある。
 血管由来の悪性腫瘍としては,hemangioend-othelioma-angiosarcomaと異なるものとして,malignant hemangiopericytomaがあるが,この概念はかなり把握し難い。またKaposiの肉腫は,その臨床所見,経過,組織学的所見にhem-angioendothelioma-angiosarcomaと異なる点があるにせよ7),また腫瘍細胞が未分化であり,分化傾向の特徴をつかみ難い場合には,鑑別診断が困難となり,そこに諸説の唱えられる余地が生ずる。

カンジダ肉芽腫(Hauser-Rothman型)

著者: 西本勝太郎 ,   阿南貞雄 ,   広渡徳治

ページ範囲:P.341 - P.346

 皮膚カンジダ症は,その臨床症状より種々の病型に分類されているが,そのなかには,単なる病変部位の解剖学的な差異による病状の差を表わすものから,その根底に,個体の真菌に対する抵抗力の減弱を想像させる特異な病像までを含んでいる。このなかで,1950年HauserおよびRothman1)により,自験例および文献上の14例を集めて報告されたカンジダ肉芽腫(monilialgranuloma)は,後者の代表的なものと考えられる。
 今回われわれは,このカンジダ肉芽腫に一致する症例について若干の検索を行なつたのを機会に,本邦例を含めて考察を行なつた。

皮膚科領域における補体の研究—皮膚疾患患者の血清補体価,日差変動,補体9成分力価

著者: 白石聡

ページ範囲:P.347 - P.352

 20世紀のはじめ,補体は,血清コロイド状態の機能的な変化で,抗体の作用をおぎない,抗原抗体結合物に非特異的に結合する易熱性の因子と考えられていた。補体の物質としての追求は,Fer-rata (1907年)1)に始まり,Ritz2),Coca3),Gor-don,Whitehead,Wormall4)らの研究により4成分に分画され,その後,非特異的手段による不活性化を利用して,精製が試みられたが,その定量化は困難であつた。1953年Levine5)は,補体成分の反応過程にCa++,Mg++イオンを必要とする段階があると報告,その後これを利用して中間反応体が作られるに至り,基礎的研究が進み,現在,補体は9成分に機能的に,分離されている6〜9)。一方,その反応過程での生物学的性質も徐々に明らかにされ,その臨床的意義は,ますます重要になりつつある。
 筆者は,その機能を活性の変動でとらえうる補体を指標として,アレルギー性皮膚疾患の病因,発生機序の解明を試み,Mayer10,11),Nishi-oka8,12〜14)らにより開発された血清補体価(以下CH50),各補体成分の力価を測定し,それらの変動と臨床経過の関連を検討し,興味ある知見を得たので報告する。

検査法

Kveim反応

著者: 北郷修

ページ範囲:P.353 - P.358

Kveim反応の歴史とその特異性
 1941年Kveim1)はサルコイドージスの患者のリンパ節を摘出磨砕し,加熱滅菌して懸濁液とし,13例のサルコイドージス患者の皮内に注射した。その内12例に9日から4週間後に小丘疹が発生し,その組織像がサルコイドージスのそれと類似していることを発見した。しかも尋常性狼瘡を含む対照例には,このような小丘疹が発生しないことを確認している。Appel2)(1941)の報告によれば,Nickersonはサルコイドージス患者の脾臓懸濁液を皮内注射して小結節が発生することを観察し,組織学的に類上皮細胞集団を認めた。よいKveim抗原であれば症状が活動期にあるサルコイドージスの患者では高い陽性率を示す。
 Siltzbachら3)および広川,水野4)は多くの報告を総括して,Kveim反応の特異性はかなり高く,サルコイドージス以外の疾患で陽性反応を起こす率は低いと述べている。Chase5)およびSilt-zbach3)が脾臓から作製した抗原は非常に優秀なものであつて,確実なサルコイドージスの症例165例中139例すなわち84%が陽性,サルコイドージスが疑われる症例282例中52%が陽性,結核63例中1例(2%)が陽性,その他の疾患(結核を含むこともありうる)240例中1例が陽性であつた。したがつて疾患特異性は相当に高いものではあるが,非特異反応もありうることを常に念頭においておく必要がある。またサルコイドージスの病変が,最盛期の場合にKveim反応が陽性になりやすく,消褪期には陰性となる傾向が認められる。

シンポジウム アレルギー性接触皮膚炎における抗原形成(2)

Haptenと表皮SH

著者: 小倉良平

ページ範囲:P.363 - P.367

 きようはハプテンが結合する蛋白,その中でも私が少し関係しておりますシステインのSH基がハプテンと結合し得るかという問題に限つてお話をしてみたいと思います。
 ハプテンと蛋白とが結合するといつても,蛋白の適当な場所に隙間があつて,そこにハプテンが自由勝手に入り込むというものではありません。たとえばアミノ酸のCOOHとNH2基とが結合してpeptide結合ができ上るように,ちやんとした結合が起きないといけないわけです。そうしますとやはり蛋白を構成しているアミノ酸の側鎖つまり遊離したCOOH,NH2とかOH,SH,CH3基とかが関係を有してきます。本日はその中でもSH基についてのみ話したいと思います。

Haptenと表皮アミノ酸

著者: 野原望

ページ範囲:P.369 - P.375

 アレルギー性接触皮膚炎の発症メカニズムを探ろうとする場合,抗原の側からの問題としては,ハプテンと表皮性蛋白との結合の問題が焦点となるのは当然のことでありましよう。あいにくわたくしには,この問題に直接関連をもつような実験成績の持ち合せがありませんが,ただこれまで,ヒトや動物の表皮とか,また表皮細胞の最終生成物である角質,これは表皮にみられる特異な複合蛋白でありますが,これらについてその蛋白部分のアミノ酸分析をかなり詳しく検索してみたことがありますので,それらの観察結果をまとめてご紹介したいと思います。
 材料(表1)は1)熱分離したヒト表皮,2)ギプスでおおつた皮膚に生じてくる鱗屑,乾癬の鱗屑,3) callus,4)乾癬の鱗屑,5)紅皮症の鱗屑の5種ですが,この他に後に出てきますように動物の材料も用いております。炎症性あるいは病的なといいますか,そういう材料としては,4)とか5)とかいうものを一応それと考えて,これから話を進めたいと思います。

皮膚科学の流れ 人と業績・12

Jean Louis Marc Alibert

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.378 - P.381

(前号から続く)
 アリベールが医師になるよう説得されて,パリの医学校に入校を志し,この大学に入学を許可されたのは1796年で,その年齢は28歳であつた。修道院での修業生活が長かつた上に,その後高等師範学校に入学したのであつたから,医学の勉学を始めたのはおそかつたわけである。一般の医学生ならすでに卒業してしまつたころに,大学に入学したことになる。

印象記

第34回東日本連合地方会に出席して

著者: 久木田淳

ページ範囲:P.382 - P.384

 第34回日本皮膚科学会東部連合地方会は昭和45年10月17,18日2日間にわたり,東京都千代田区,日本都市センターホールで,会頭東邦大学安田利顕教授により開催された。
 今回の学会は安田教授が,学会プログラムの序論で述べられているごとく,病態生理からみた皮膚疾患を主題とし,1) dysproteinemia,および2)ムコ多糖類と脂質代謝の2つのテーマを中心とし,一般演題を募集し,それぞれの主題について,綜説,特別発言,一般演題を配し,その他はスライド供覧を第1会場で,電顕研究会として第2会場で,電子顕微鏡最近の進歩に関する特別講演を1日目に,一般演題を2日目に配して行ない,2日目の午後,会頭が招待された米国Stanford大学の主任教授Dr.Eugcne M.Farberの特別講演があり閉会した。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.386 - P.387

THE JOURNAL OF INVESTIGATIVEDERMATOLOGY55:2, 1970
Xanthomatosis Associated with Hyperlipoproteinemia : F, Parker and J. M. Short 71
Increased Activity of Skin Surface DNASE I after β-Irradiation Injury or Clipping of GuineaPig Hair : J. Tabachnic and J. H. LaBadie 89

〈原著論文抄録〉

Malignant hemangioendothelioma,他

著者: 堀嘉昭 ,   石橋康正 ,   新村真人 ,   池田重雄

ページ範囲:P.389 - P.389

 60歳男にみられた悪性血管内皮細胞腫の1例を報告し,その光顕的,電顕的観察所見を記載し,本症の病理発生について考察した。
 腫瘍は,前頭部から頭頂部にかけての瀰漫性の紅斑と,その紅斑の上の,赤色出血性の軟腫瘤で,剖見にて,皮膚腫瘍の部に一致する頭蓋骨骨髄に至るまでの腫瘍の浸潤,右胸膜と右肺,および第6胸椎にも,腫瘍転移巣を認めた。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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