icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻5号

1971年05月発行

雑誌目次

図譜・337

良性若年性黒色腫の1例

著者: 大川原脩介

ページ範囲:P.410 - P.411

患者 3歳,女児
初診 昭和45年5月13日

綜説

医真菌学における最近の進歩—不完全菌の新分類法を中心として

著者: 松本忠彦

ページ範囲:P.417 - P.422

 医真菌学は医学の分野としては比較的新らしい方に属し,とくに皮膚科とのつながりは密接である。カンジダ症,白癬,癜風,スポロトリクム症(本症の呼称については後に詳述する),黒色(分芽)菌症などは皮膚科医にとつて耳慣れた名称である。
 しかし,われわれ臨床家は真菌症を疾患として取り扱うにとどまり,菌学の全体を見渡すまでに至らないのは残念である。われわれは菌学第一線の仕事を成すのは困難であろうが,現在の菌学界の常識となつていることについては知識をとり入れておくことが望ましい。

原著

Trichophyton verrucosumによる白癬の疫学と臨床—岩手県遠野地方における集団的発生とケルスス禿瘡の姉妹例について

著者: 高橋伸也 ,   牧野好夫 ,   福士尭

ページ範囲:P.427 - P.442

 わが国におけるTrichophyton verrucosumによる人の白癬は,昭和36年11月から37年4月にかけて岩手県遠野地方において集団的発生をみたのが最初と思われる。われわれはその臨床的ならびに菌学的概要を昭和38,39年に学会報告した40,41)。T.verrucosumによる白癬は主として牛白癬から感染するもので,時を同じくして牛と人とに集団的発生の形でみられることが少なくない。このような集団的発生はイギリス,カナダ,アメリカにおいてはすでに20〜30年あるいはそれ以前から知られており,ここ10数年来その他の欧州諸国,中近東諸国からも報告されている。近年のわが国における牧畜,酪農の隆盛は上記諸外国からの牛輸入の増加と集団育成という新らしい牛育成法の普及をもたらし,その結果これまでほとんど見ることのなかつたT.verrucosumによる牛白癬が数年前から日本各地においても認められるようになつた31,32)
 遠野以後われわれはT.verrucosumによる人の白癬をみる機会をえなかつたが,昭和45年5月に山形県において,牛白癬からの感染が明らかなケルスス禿瘡の姉妹例を観察した。これを契機に山形県最上地方,宮城県北部のいくつかの牧場における牛白癬の発生状況を調査し,さらに北海道の釧路地方および札幌市郊外新川の牧場における牛白癬をも調査して,予想以上に多い集団的発生を確認し,同時に人への感染も少なくないことを知りえたのであつた。

Melanoses neurocutaneesの1例

著者: 祖父尼哲

ページ範囲:P.443 - P.450

 1949年Touraine1)は皮膚と軟脳膜に共通の色素性病変を有する疾患をMélanoses neurocu-tanéesと称し,その綜説を発表したが,その報告例はまだ数10例に過ぎず,本邦においても20例に満たない稀有な疾患である。
 最近,著者は生前にMélanoses neurocu-tanéesを疑い4年後に中枢神経系の悪性黒色腫により死亡し,剖検によつて本症を確定診断することができた症例を経験したので,本邦報告例と比較考察し以下に報告する。

弘前大学最近8カ年(1961〜1968)における皮膚結核の統計的観察

著者: 鷹觜研一 ,   山本欣一 ,   石戸谷忻一

ページ範囲:P.451 - P.457

 近年,潰瘍形成をみる真正皮膚結核は内外ともに減少の一途をたどり,ここ数年その報告にほとんど接しない。最近,われわれは42歳農夫の既往に特記すべきことがないが,2年前肛囲に生じた点状赤色丘疹が次第に拡大,6カ月前から有痛性潰瘍形成,鶏卵大となつた1例を経験(図1,2),局所より人型結核菌を培養検出,さらに肺結核も証明(Gaffky 2号),3者併用療法約1カ月にて潰瘍をほぼ治癒せしめたので,これを機会に,皮膚結核症の統計的観察を行ない,以下のごとき成績を得たので報告する。なお,今回の報告は,先に島ら1)の行なつた弘大皮膚科昭和21年より35年までの観察に引き続く,昭和36年より43年までの8年間のそれである。

Rhabdomyosarcomaの1例

著者: 山田和宏 ,   神保孝一 ,   井村春光

ページ範囲:P.459 - P.467

 Rhabdomyosarcoma (横紋筋肉腫)は,骨格筋由来の,比較的まれな腫瘍とされ,最近の本症に関する欧米の文献においても,幼児および小児に関するものが多く,成人例に関するものは,ほとんど注目されなかつた1)
 最近われわれは,高齢者の左上肢内側面に,再発を繰り返す,骨格筋より発生した症例を経験し,電子顕微鏡学的観察でも,本症と確信を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する。

Ichthyosis congenita gravisの1剖検例

著者: 稲田修一 ,   正岡吉則

ページ範囲:P.469 - P.476

 先天性魚鱗癬は,Richter1)により1792年に初めてSingularis epidermidis deformitasと記載され,その後Riecke(1900)2)は本症をIch-thyosis congenita(I.c.と略)と称している。このうち,重症でしかも予後絶対不良とされているものはきわめてまれであり,その名称も諸家によりI.c.gravis(I.c.gr.と略),Harlequin fetusあるいはKeratosis diffusa fetalisなどと称せられている。かかる症例の剖検例報告は,本邦では20例にも達しない。われわれは最近その1剖検を得,かつ1957年にCurt Stern3)の報告したI.c.gr.例の剖検所見をも参照し得たので,本邦の文献上に認められたI.c.の剖検所見を要約し,若干の文献的考察を加えることとした。

悪性リンパ腫に対する真菌菌体内外成分の効果

著者: 渡辺昌平 ,   森田吉和 ,   須藤直文

ページ範囲:P.477 - P.483

 悪性リンパ腫の治療としては現在,放射線療法および種々の抗腫瘍剤による化学療法が行なわれている。個々の腫瘍に対する放射線療法の効果には刮目すべきものがあるが,非照射部位に陸続として発生し,療法中止後の再発も多く,生命に対する予後に関してはこの療法の限界を感じさせる。化学療法もまた次々と新薬が登場するが,効果,副作用の点を勘案すれば,真に患者に福音を与えるにはいまだしの印象を受ける。
 われわれは昭和41年にGottronのReticulo-sarcomatoseに相当する一症例に遭遇した。この患者は本院を訪れる前にすでに他医療機関でendoxanを長期にわたつて注射していたが,改善されず,当院での初診時には皮疹が全身諸所に多発し,全身倦怠感も著しく,処置に困惑する状態であつた。この症例に真菌菌体内外成分を3種類作製,連日皮内注射を行なつたところ,顕著な効果が認められ,約1年後には皮疹がほとんど消失し,4年後の現在ではまつたく異常を認めることなく元気に生業に励んでいる。

薬剤

ドレニゾンテープ(LT−86)による若干の皮膚疾患の治験

著者: 熊谷武夫 ,   金原武司 ,   石崎宏 ,   貝原弘章

ページ範囲:P.485 - P.491

 金沢大学皮膚科においてドレニゾンテープ(LT−86,大日本製薬株式会社提供)を用いて若干の皮膚疾患を治療した。以下にその成績を述べる。

皮膚科学の流れ 人と業績・13

Alphee Cazenave

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.492 - P.494

 Pierre Louis Alphee Cazenaveは1795年にパリで生まれた。そしてその医学に関する履歴はパリにおいて終始した。彼の興味が早くから皮膚科学にあつたことは,学位論文の題目が"皮膚疾患の2,3の問題について"というのであつたことからもおかるのである。カズナーヴはビエ(Biett)の門弟であつたことから,ウィラン主義者であつた。その師ビエこそ,ウイラン(Willan)とベートマン(Bateman)の学説に傾倒し,これを初めてフランスに導入した人である。学位論文提出ののち1年たつて,カズナーヴはシェデル(Schedel)と共著で"皮膚病の実際(Pratique des Maladies de la Pe-au)"という単行書を出版した。これは師ビエの臨床講義を集めて編集したもので,はなはだ好評を博した。その英訳がまもなく現われ,とくにアメリカにおいて,すみやかに飜訳書が出版され,たちまちアメリカ皮膚科学界においてもつとも影響力の著しい著書となつた。
 カズナーヴはまつたく皮膚科学にのみ関する専門誌を初めて発刊した。その名は皮膚梅毒疾患年報(Annales des Maladies de la Pe-au et de pa Syphilis)(注1)であつた。そしてこの雑誌に落葉状天疱瘡の最初の記載や紅斑性狼瘡の決定的記載を掲載した。なお彼は梅毒に関して重要な業績を発表した。それはその第2期の症状をきわめて詳細に記述したものである。また彼が駆梅療法の進歩に大きな貢献をしたことは有名である。そのほか,円形脱毛症の研究や湿疹と被髪頭部疾患の新知見発見についてもその名を高からしめるものがあつた。

From Arch. Derm.

From Summary of ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.497 - P.500

 従来本誌では,外国文献欄にて海外論文の紹介に努めてまいりましたが,かねてあとがきなどでお知らせしましたように,Archlves of Dermatology掲載全論文のsummaryを本号より掲載致します。外国文献同様ご活用下さい。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.502 - P.503

ARCHIVES OF DERMATOLOGY102: 5, 1970
Bullous Pemphigoid: W.M. Sams, Jr. 485
Liver Disease Associated with Methotrexate Treatment of Psoriatic Patients: H.V. Dubin and E.R. Harrell 498

〈原著論文抄録〉

Trichophyton verrucosumによる白癬の疫学と臨床—岩手県遠野地方における集団的発生とケルスス禿瘡の姉妹例について,他

著者: 高橋伸也 ,   牧野好夫 ,   福士堯

ページ範囲:P.505 - P.505

 著者らは,これまでわが国において報告をみないTrichophyton verrucosumによる白癬41例,すなわち昭和36〜37年の岩手県遠野地方における集団的発生39例と,昭和45年5月の山形県におけるケルスス禿瘡の姉妹例を報告し,併わせて本症の疫学,臨床ならびに菌の分離に関する諸問題について考察を行なつた。
 T. verrucosum白癬一般について要約すると,1)本症は牧畜,酪農が盛んな農村部において,主として冬期にみられる。2)牛白癬からの直接あるいは間接感染である。3)家族内発生をみることが多い。4)罹患は青壮年男子および小児に多くみられる。5)露出部位に好発し,とくに前腕,顔面,頸・項部,小児の頭部に頻発する。6)病変は膿疱形成を伴い,中心治癒傾向が弱い浮腫性,浸潤性紅斑局面で,一般に多発する。硬毛部においては急性深在性白癬を生じやすい。7)菌の分離,同定(大・小分生子形)には抗生物質,Thiamine HCl添加Brain HeartInfusion Agarが適している。8)菌の発育は室温よりも37℃の方が良い。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?