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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科25巻5号

1971年05月発行

原著

Trichophyton verrucosumによる白癬の疫学と臨床—岩手県遠野地方における集団的発生とケルスス禿瘡の姉妹例について

著者: 高橋伸也1 牧野好夫1 福士尭2

所属機関: 1東北大学医学部皮膚科教室 2青森県立中央病院皮膚科

ページ範囲:P.427 - P.442

文献概要

 わが国におけるTrichophyton verrucosumによる人の白癬は,昭和36年11月から37年4月にかけて岩手県遠野地方において集団的発生をみたのが最初と思われる。われわれはその臨床的ならびに菌学的概要を昭和38,39年に学会報告した40,41)。T.verrucosumによる白癬は主として牛白癬から感染するもので,時を同じくして牛と人とに集団的発生の形でみられることが少なくない。このような集団的発生はイギリス,カナダ,アメリカにおいてはすでに20〜30年あるいはそれ以前から知られており,ここ10数年来その他の欧州諸国,中近東諸国からも報告されている。近年のわが国における牧畜,酪農の隆盛は上記諸外国からの牛輸入の増加と集団育成という新らしい牛育成法の普及をもたらし,その結果これまでほとんど見ることのなかつたT.verrucosumによる牛白癬が数年前から日本各地においても認められるようになつた31,32)
 遠野以後われわれはT.verrucosumによる人の白癬をみる機会をえなかつたが,昭和45年5月に山形県において,牛白癬からの感染が明らかなケルスス禿瘡の姉妹例を観察した。これを契機に山形県最上地方,宮城県北部のいくつかの牧場における牛白癬の発生状況を調査し,さらに北海道の釧路地方および札幌市郊外新川の牧場における牛白癬をも調査して,予想以上に多い集団的発生を確認し,同時に人への感染も少なくないことを知りえたのであつた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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