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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻6号

1971年06月発行

雑誌目次

図譜・338

皮膚カンジダ症(限局性疣状型)

著者: 岡吉郎

ページ範囲:P.528 - P.529

患者 58歳,女,農業
初診 昭和44年10月9日

展望

表皮の脂質研究法

著者: 大城戸宗男 ,   花岡宏和 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.535 - P.542

 表皮内における脂質代謝の研究目標は,その代謝異常症を探しだすことにある。しかし,それのみでなく表皮における代謝機構の追求の手がかりともなる。脂質はエネルギー源のみに限らず,蛋白質や糖質その他の複合体として細胞膜や細胞内顆粒膜の構成々分ともなつているからである。たとえばSwanbeck and Thyresson1,2)(1961)がX線回折法と赤外分光分析法により,keratinfibrilが蛋白と脂質の結合したリポ蛋白でおおわれているのを発見したのはその例である。
 われわれ皮膚を対象とするものが,表皮細胞で行なわれている生理,生化学,アレルギーひいては病態生化学上の知見のアプローチを蛋白質に求めても,表皮蛋白の多くは不溶性であり,また研究法の導入が遅れている今日,抽出が容易な脂質に眼が向けられるのは当然である。もつとも,簡単に抽出された脂質を分析した結果から--特に材料の入手が患者の負担にならず,しかも量的に十分とれる皮表脂質を調べた結果から--表皮内の代謝を知ろうとするのは相当な危険があつて反省させられる3)。そのため今後脂質研究法が発展するにつれ,生体内にあるがままの状態で検討されるべきではあるが,それ以前に,現在の常識化された方法を用いても生化学的に不明な点が多く解決されるであろう。脂質分析法に関し,本誌上でも佐藤ら4)が脂腺機能検査法と題して詳述しているが,ここでは表皮を対象としたさい,いかなる点に留意しながら材料を処理したらよいかを中心として,われわれが得た経験3,5〜11)を再検討して紹介する。

原著

先天性皮膚カンジダ症の1例

著者: 河村俊光 ,   深田馨子 ,   関藤成文

ページ範囲:P.547 - P.551

 新生児期に発病する皮膚カンジダ症は少なくないと思われるが,胎児が子宮内で感染し,生下時すでに皮疹の認められるものはきわめてまれで,現在までに報告されている症例は10例に満たない。われわれは最近出生時に,ほとんど全身に皮疹の見られたカンジダ症の1例を経験したので報告し,さらにその感染機序などいくつかの問題点について考察したい。

原発性皮膚骨腫

著者: 菊池禮子

ページ範囲:P.553 - P.559

 原発性皮膚骨腫は,皮膚に原発する良性の骨腫瘍であり,まれな疾患である。本症はhetero-topicな骨新生であつて,二次的な続発性の化生,metaplasiaとは区別されなければならない1〜6)。しかし現在まで,osteoma cutis,osteosis cutis,osteomatosis cutis, osteoidoma cutisなどの名称で両者が区別なく報告されてきた。これらの報告例のうち,皮膚における原発性異所的骨新生例とみなされるものは,Domaldsonら38)によれば20例,Rothら39)では59例と報告され,その数は少ない。
 著者は乳児期に発症した11歳,女子例を経験したのでこれを報告し,現在までのおもだつた文献例から,原発性と続発性皮膚骨腫の相異,発生原因などについて考察をおこなつた。

神経性擦創の1例

著者: 道部秉

ページ範囲:P.561 - P.565

 精神障害を基盤とする皮膚疾患のうち,自傷性皮膚疾患は者患みずから皮膚を傷つけたことを認める神経性擦創(neurotic excoriation)と自己損傷を否定しあるいは自己利益のための詐病の1型として皮膚を傷つける人工皮膚炎(dermatitisfactitia)に大別される。今回,筆者は前者の1例を経験したので報告する。

Angiokeratoma corporis diffusum(Fabry)の1例—臨床的・電子顕微鏡学的研究

著者: 長尾貞紀 ,   菅原久栄 ,   佐藤佳夫 ,   正木盛夫 ,   柳沼良夫

ページ範囲:P.567 - P.575

 Angiokeratoma corporis diffusum(Fabry)(以下ACDと略記する)は,1898年Fabry1)によりPurpura haemorrhagica nodularisとして,また同年Anderson2)によりA case of "angeiokeratoma"として別々に報告されたことにはじまる。その後の研究により,本症は他のAngiokeratomaとよばれるものと異なつて,系統的リピドージスであることが確立されている。
 われわれも本症の1家系の3名を観察する機会を得たので,うち1名について現在までに検索された臨床的ならびに組織学的結果について報告したい。

アトピー性皮膚炎様症状を呈した遺伝性粘液多糖類代謝異常症

著者: 小林健正 ,   落合靖夫

ページ範囲:P.577 - P.584

 遺伝性粘液多糖類代謝異常症(genetic muco-polysaccharidosis:MPS)は結合織を構成する7種の酸性粘液多糖類のうちdermatan sulfate(chondroitin sulfate Bともいう:DS)とhe-paritin sulfate(HS)との2種の粘液多糖類(MP)—Morquio症は例外でkeratosulfate (KS)—の代謝異常を示す遺伝性疾患の総称であり,Brante1)(1952)がHunter-Hurler症候群患者の肝よりchondroitin sulfateを単離し,その本態をMP代謝異常としたことに由来する。もとより,それは臨床的にも,生化学的にも単一の疾患単位ではなく,いくつかの骨ジストロフィーを示す疾患の集合より成る。しかし,これらの疾患は怪異ともいうべき外貌を示すことがしばしばであり,重苦しい眼瞼,長く切れた日,扁平な鼻梁,突出した舌と口唇,間隔のあいた歯列,変形せる歯,狭い肩,制限された関節運動,骨畸型(Burke2)),さらに聾,角膜混濁,肝脾腫,心異常,知能障害(Hambrick & Scheie3))を示し,gargoylismとも称される。この名称は篠原4),小林5)らによると英国の学者R.W.B.Ellis, E,A. Cookayne (1936)の命名になり,本邦に初めて本症を紹介した伊藤6)もこれを用いたので,わが国でも頻用されている。Leiderら7)によると,元来gargoyleとは水路を意味するラテン語に由来し,ゴシック建築伽藍のグロテスクに彫られた顔の形をした放水口の意であるが,医学的には極端な顔面の醜さを意味する。したがつて,この術語は必ずしもMPSに限るものではなく,末端巨大症その他の醜形をも包括した可能性がある。その上,篠原4)はこの名称は日本語でいえば怪奇顔貌症とか,鬼瓦症といつているようなもので,さなきだに畸型による心理的打撃を蒙つている患者や家族に対して用いるべきでないと述べ,Dorfman8)もこの術語は家族にとつて不愉快きわまりないばかりか,gargoyleなる語は語原学的にも,二目と見れない怪物ということよりも,柱を伝う雨水を除くことを意味するので正しくないという。筆者もまつたく同感—ましてgargoyleな顔貌を示さないMPSをもこの名で呼ぶのはどうかと思われる—で,前述の理由もあわせて本論文ではgargoylismの名称を避けたいと考える。
 著者らは最近,いわゆる小児湿疹で発病し,屈曲部湿疹に移行して,遷延経過を辿る間に次第にMPSの諸徴候を具現し,4年10カ月の生命を終つた少年を観察する機会を得た。しかし,本症例における,アトピー性皮膚炎様の苔癬性皮疹は組織化学的に特異な様相を示し,類似の形態に関してはおそらく過去に記載もない。したがつて本例の紹介はMPSの皮膚所見に1項を加えるとともに,アトピー性皮膚炎の発症機序にも考慮すべき問題を投ずるものと考える。

セリ科植物Centella asiatica抽出成分asiaticoside(madecassol®)の汎発性鞏皮症に対する臨床効果と作用機序とくに線維芽細胞に及ぼす影響について

著者: 佐々木宗一郎 ,   新海浤 ,   明石幸雄 ,   岸原幸子

ページ範囲:P.585 - P.593

 近年各種結合織疾患に対する関心が亢まり多くの業績があるが,その病因は依然として不明で,その治療法にも確たるものがない。とくにその内いわゆる膠原病とされる疾患では,難治かつ予後も不良で,日常その対策に窮することがしばしばである。
 このたび,古代よりマダカスカル島,印度などにおいて創傷治療の民間薬として知られていたセリ科植物(Centella asiatica)の抽出成分asiaticosideを主薬とするmadecassol®がフランスにおいて開発され,ケロイドなどの治療剤として登場してきた。本剤は1941年Bontemsによりその有効成分が単離され,化学構造はDevanne,Ledererらにより図1のごとく決定され,1946年Ratsimanmangaにより基礎薬理学的作用が明らかにされている1)。臨床的にはフランス,南米諸国,エジプトなどにおいてケロイド,肥厚性瘢痕の治療に用いられ,創傷治癒の促進の調整,間葉系および外胚葉系組織における賦活作用などの実験報告が多くみられるようになつた1〜4)

ノカルジア症の1例

著者: 筏淳二 ,   藤原武

ページ範囲:P.595 - P.599

 ノカルジア症は,おもにNocardia asteroidesにより引き起こされる深在性真菌症の1つであり,皮膚に限局するものと,内臓を侵すものに分けられる。皮膚ノカルジア症は腫脹・瘻孔・顆粒排出を特徴とする。内臓ノカルジア症は肺に多く,ついで脳・胸膜・心・腎などにみられ,治療を誤ると致命的である。
 われわれは20年間も続いた皮膚型の1例を経験しトリアセチル・オレアンドマイシン(タオシン:三共)の大量投与により治癒させることができた。以下にそのあらましを報告するとともに,とくに放線菌症との鑑別,ステロイド剤,抗生剤使用とノカルジア症の発症との関連などについても言及したい。

皮膚科学の流れ 人と業績・14

Ernest Bazin Thomas Addison

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.602 - P.605

Antoine Pierre Ernest Ba-zin
 バザンは1807年2月20日に中産階級の大家族の1員としてパリの近傍で生まれた。その少年期の学業ならびに医学の勉学はともにすばらしいものであつた。彼の早いころの医学的興味は皮膚科学ではなかつたが,それでもBiettの臨床講義やAli-bertの晩年の講義には,もつとも熱心に出席した。彼が1834年に提出した学位論文の題は"発熱を必須とする疾患における肺の病変に関する研究"というのであつた。
 10年あまり一般診療に従事したのち、バザンはサン・ルイ病院にはいつた。ここで彼は独特の旺盛な精力で数年間勉学を続けたのち,Hardy,Devergie, Cazenave, Gibertといつた優れた皮膚科学者の提携者となることができた。

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.608 - P.615

 従来本誌では,外国文献欄にて海外論文の紹介に努めてまいりましたが,かねてあとがきなどでお知らせしましたように,Archives of Dermatology掲載全論文のsummaryを随時掲載致します。外国文献同様ご活用下ささい。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.616 - P.617

BRITISH JOURNAL OF DERMATOLOGY 83: 2, 1970
Human Hair: a Genetic Marker: P.S. Porter and W.C. Lobitz, Jr. 225
The Scope and Limitations of the Immunofluorescence Method in the Diagnosis of Lupus Erythematosus: S. Jablonska, T. Chorzelski and E. Maciejowska 242

〈原著論文抄録〉

先天性皮膚カンジダ症の1例,他

著者: 河村俊光 ,   深田馨子 ,   関藤成文

ページ範囲:P.619 - P.619

 生下時すでにほぼ全身に皮疹の見られた皮膚カンジダ症はきわめてまれで,いままでに,全身性カンジダ症で汎発性皮疹を伴つた2例を加え7例を数えるにすぎない。
 自験例では,母親の妊娠中の経過は異常なかつたが,破水より分娩まで約9時間を要し,また中等度の羊水混濁が認められた。皮疹は軽度の瀰慢性紅斑と,多数の粟粒大の漿液性丘疹および小水疱が播種状に見られ,あたかも中毒疹を思わせる状態であつた。さらに1〜2日後には多数の膿疱が出現,次第に増強した。これらの所見は特に顔面に顕著で,膿疱は他部位より大きく,融合傾向が認められた。また生後数日に,口腔の両側頬粘膜に,数個ずつ半米粒大の白色偽膜様病変を認めたが,爪囲爪炎はなかつた。皮疹,口腔粘膜病変および母親の腟分泌物より,培養によつてCandida albicansを検出した。組織学的には,角層下に水疱形成,角質増殖,一部に海綿状態などが見られ,またPAS染色で角層内に胞子および菌糸状の菌要素を認めた。治療は抗白癬剤の外用を行ない,約25日後に治癒した。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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